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極度の世話焼き男子・木関創也は、世話の焼きすぎで相手をボロボロの依存状態にしてしまう特異体質の持ち主。そんな彼の“運命の相手”野間ゆずは、おはようからおやすみまで創也に世話を焼かれまくっても平気な、こちらも度を越したものぐさ体質です。同じ寮での暮らしは2人にとって理想そのものでしたが、ゆずのズボラさが上層部の目に止まってしまって辞職を迫られ、幸せな生活が崩壊の危機にさらされます。
溺愛系世話焼き男子とマイペースなものぐさ男子というと、世話焼きなほうがものぐさなほうに振り回されて面倒を見るという関係性を連想します。しかし、そこは未散ソノオ先生。本作では世話焼き男子・創也が能動的にゆずを構い、そこに幸せを感じているのです。仕事も家事も完璧なスパダリなのに、ゆずに執着し過ぎて残念イケメンと化しているのが推せる〜〜〜。
そして、王子様のような容姿で、創也になされるがままになっているゆずの、子猫の如き姿が可愛すぎて胸が苦しい……。そうやって猫可愛がりされても謙虚さと感謝を忘れないのが、ゆずの「かまわれる才能」。甘やかされているのに自立しているという不思議な存在感が新鮮で魅力的です。
おっとりとした性格の大企業・三代目社長✕税金を搾り取るのが趣味の国税専門官のファビュラスな恋模様を描いた『上質な男とH』(新書館)や、命知らずの冒険家と世界で唯一彼の居場所を突き止められる追跡者(トレーサー)の物語『タイラント』(芳文社)でも、相手に依存しながらも心の芯は一本通った男たちが登場します。完璧ではないけれど、そこが人を惹きつけてやまない未散男子の魅力に翻弄されてしまいます。