あらすじ
君は何かを取り逃が(ミッシング)してしまったことはあるかな? とてもとても大切なことだったのに、つまらない意地を張ったり、目の前のことばかりに気を取られて見逃してしまったことはないかい? ……これはそういうことを繰り返さざるをえなかったある魔術師の話だ。彼は天才で、成功者で、そして失敗者だ。この魔術師が辿る一途で愚かで、そして寂しく陽気なこれはアイスクリームの物語。冷たく鮮烈な甘さは、一瞬の、そう、このぼくブギーポップですら見逃してしまうほど速く、あっという間に溶けてきえてなくなっていくひとときの慰み──道化師と死神とそして夢破れた人々が織りなす、無邪気で残酷な哀しいお伽噺。
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見事な愚か者の物語
アイスクリーム作りの天才、軌川十助の成功と挫折と別れの物語。ペパーミント色の肌をもつ彼は人の痛みに応じ様々なアイスクリーム作りをします。その十助の良き理解者であり、アイス作りに協力する楠木玲。二人のアイスクリームはやがて大人気となり、世間に広まります。しかし、やがて玲は十助から離れケーキ作りの道を行き、十助自身も統和機構から処分の対象にされます。彼には自分自身も知らない“世界の敵”になりうる資質を持っているのです。
ここまでのシリーズ作品は様々な人物の多視点で描かれることが多いですが、今回は十助に比重が多く置かれており彼の優しさと哀愁がひしひしと感じられる作品です。
無論、今までの人物も随所に登場します。今回は、ブギーポップの本体である宮下藤花も珍しくそのままで割と活躍してます。
そういえば、はたして冒頭と最後の語り手は誰だったのでしょう?作者本人でいいのかな?