垣根涼介のレビュー一覧
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「足利尊氏って、結局どんな人物だったの?」
歴史の教科書では征夷大将軍としか書かれない彼の姿を、人間として描き出したのが『極楽征夷大将軍』です。
本書の面白さは、尊氏が決して“強い英雄”として描かれない点にあります。理想を掲げて突き進むのではなく、その場その場で迷い、流れに身を任せながら生き延びていく。弟・直義の合理的で筋の通った生き方と対比されることで、尊氏の「執着しない強さ」が浮かび上がります。
本作の尊氏はどこか悟りを開いた人物として描かれます。自我に囚われず、「できることをする」だけの姿勢が、結果として征夷大将軍へと押し上げられていく。その過程は、英雄譚というより、時代と個人が偶然 -
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リストラ面接官が主人公の「君たちに明日はない」シリーズ第四弾。
中篇四篇いづれも、仕事とは何か、を考えさせられるお話で甲乙つけ難いが、敢えて順番をつけると、ノー・エクスキューズ、永遠のディーバ、リブ・フォー・トゥデイ、勝ち逃げの女王の順。
全てフィクションながら、想像するモデルはそれぞれ、山一證券、ヤマハ、すかいらーく、JAL、とある程度はイメージを持ちやすい一方で、その裏ではこんな人間ドラマが本当にあったりするのかも、と思わせる筆力は素晴らしい。
表題作の「ディーバ」は日本語では「歌妓」。20代で売れ、(本作発表の2010年代前半には)40代で小さな箱で細々と演奏している、という、設定 -
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水観、炎観、月観。止観という幻術を操る三人の男女が人知れず歴史の裏面で織田信長と対峙していた、という歴史時代小説。よくもまあこのような術を思いつき描き、史実と絡ませて紡ぐものだ。『室町無頼』もそうだったが、この作家が描いて見せる修行の有様が滅法面白い! またそれぞれの幻術の描写の凄さよ。三人の主役の人物造形も素晴らしい。自分、登場人物に感情移入するような読みはレベルが低いと思っているが、炎観の遣い手平助の鬱屈自意識には大いに感情移入し、大いに泣き笑った。実に愛すべきキャラクターである。読んでよかった! それにしても織田信長のことがかなり嫌いになったな。