垣根涼介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いわた書店の1万円選書でチョイスされた本。
楽しく読めましたが、個人的には上巻と下巻で印象が大きく異なる作品でした。ブラジル移民の過酷な現実や歴史の歪みを描いた上巻は、細部の描写や思想的な厚みが際立っており、社会派小説として強く引き込まれました。
一方、貴子とケイを軸にした下巻は一気にエンタメ感が増し、痛快な展開の面白さはあるものの、上巻で感じたリアリティや重みはやや薄れた印象です。
それでも、「人が人へと恩をつないでいく」というテーマや、国家やシステムに翻弄される個人の姿には一貫した力強さがあり、十分に読みごたえのある作品ではあったと思います。
全体としては、重厚な歴史小説と復讐劇の両面を併せ持つ作品であり、その振れ幅の大きさこそが評価の分かれどころであると同時に、本作の魅力でもあると感じました。 -
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いわた書店の1万円選書でチョイスされた本。
楽しく読めましたが、個人的には上巻と下巻で印象が大きく異なる作品でした。ブラジル移民の過酷な現実や歴史の歪みを描いた上巻は、細部の描写や思想的な厚みが際立っており、社会派小説として強く引き込まれました。
一方、貴子とケイを軸にした下巻は一気にエンタメ感が増し、痛快な展開の面白さはあるものの、上巻で感じたリアリティや重みはやや薄れた印象です。
それでも、「人が人へと恩をつないでいく」というテーマや、国家やシステムに翻弄される個人の姿には一貫した力強さがあり、十分に読みごたえのある作品ではあったと思います。
全体としては、重厚な歴史小説と復讐劇の両面を併せ持つ作品であり、その振れ幅の大きさこそが評価の分かれどころであると同時に、本作の魅力でもあると感じました。 -
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戦国大名あまたいる中でも、悪名高い梟雄(きょうゆう)の一人、宇喜多直家を主人公にした歴史大作。
戦国の梟雄としては、斉藤道三や北条早雲、松永久秀らが有名ですが、この人も成り上がりの出自や手段を選ばない策略家という点では、彼らに勝るとも及ばない悪人として知られています。
しかし、本書で描かれる直家は少しイメージが違います。
没落豪族の嫡子として生まれ、一時は商人に預けられなど艱難辛苦の末、お家を再興。その過程で権謀術数の限りを尽くすわけですが、当時としては当たり前のことだったのではないかと思います。
むしろ彼の素顔は、忍耐強く、受けた恩を忘れず、部下のことにも深く思いをきたす誠実な武将として描かれているのです。
興味深い点が二つ。
一つは彼が早くから重商主義的な考えを持ち、領土を闇雲に広げることよりも、産業の発展や人々の往来の活発化による金銭的利益を重視したこと。
これは、幼少期に商人の薫陶を受けたことから発した、当時としては斬新な考え方だったと思いますが、天才信長の先を行っていたことになります。
もう一つは嫡子、宇喜多秀家の育て方。
彼は徐々に勃興してくる織田家、特に秀吉と接するうちに、これからの時代は、自分自身のように孤高を保ちまさに虎狼の如く生き抜く時代は終わったと気づきます。
これからは大組織の中で、人々の人望を得られるような人好きのする明るい人間が重宝される時代になると考え、息子をそのように伸び伸びと育てていきます。
本書では、秀家の時代は描かれていませんが、後に秀家が豊臣家に忠義を尽くし、関ヶ原で敗れ島流しされた地で慕われて天寿を全うしたことを考えると父直家の遺志が繋がったとの感慨を持ちました。
現代のリアルなアクション・サスペンスの名手、垣根涼介さん!
「光秀の定理」以降、良質な歴史小説を多数書かれています。今後の活躍に期待しましょう! -
Posted by ブクログ
リストラ面接官が主人公の「君たちに明日はない」シリーズの第五弾にして完結編。
全四篇のモデルといえそうな会社は、それぞれ、カネボウ化粧品、シャープ、文教堂書店(公文書店という店名と店舗数28という規模感から)、そしてラストでは、主人公の勤務先自体が自主廃業によりリストラの対象となるわけだが、この会社のモデルはよく分からない。たぶんないのだろう。
三篇目の「さざなみの王国」の書店員、佐久間香織が何とも気に掛かる存在だ。極端な人見知りながら、とても誠実に生きている様子が好感が持てる。ラストの作品で、再登場する人物、2の「借金取りの王子」、4の「永遠のディーバ」、5の「さざなみの王国」の3名は、きっと作者のお気に入りの人物なのだろう。
人生における「仕事」の位置付けについて悩んだことは一度もない、というひとでない限り、本シリーズの一篇くらい読んでみて損はない。読まなくても明日は来るけれど、読めば、きっとよりよい一日になると思う。