ヘルマン・ヘッセのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
われわれが一度きりの人間以上のものでないとしたら、われわれのだれもが一発の銃丸で実際に完全に葬り去られうるのだとしたら、物語を話すことなんか、なんの意味も持たないだろう。しかし、すべての人間は、彼自身であるばかりでなく、一度きりの、まったく特殊な、だれの場合にも世界のさまざまな現象が、ただ一度だけ二度とはない仕方で交錯するところの、重要な、顕著の点なのだ。だから、すべての人間の物語は、重要で不滅で神聖なのだ。だから、すべての人間は、とにかく生きていて、自然の意志を実現している限り、驚きと注目とに値する。すべての人の中で、精神が形となり、生物が悩み、救世主がはりつけにされているのだ。
すべての -
Posted by ブクログ
ネタバレヘッセの2作目。自伝的小説。
日本で第1作目の「ペーター・カーメンツィント」より売れている理由は、鬱屈した締め付け型の学校教育・競争受験社会への共感かららしい。
純粋で繊細で不器用な少年ハンスが周囲の期待=圧力からどんどん身のうちに虚栄心を育てていき、虚栄心が自分のエネルギーを食い尽くして、最後は干からびた身体と魂ですっと消えていく。ハンスを見守ってくれていた親方が埋葬時に父親に語る言葉でハンスが少しでも救われてほしい。「あそこに行く紳士方も」「ハンスが破滅するのに手を貸したんですよ」「いえ、これ以上はやめましょう。あなたとわたし、我々も、あの子に色々としてやれたことを怠ったのではありません -
Posted by ブクログ
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」とは、あまりに有名で、あまりにも示唆的な方丈記の冒頭である。そこんとこ詳しく教えて下さいよ長明さん、とばかり方丈記を手にとっても大したことは書かれておらず、がっかり。そんなあなたは、本書を読むべき。よもや続きはこんなところにあったかと驚く。
シッダールタという題名から、釈迦の話かと思い込んでいたが、架空の人物を主人公としたフィクションである。仏教の話ですらない。解説によると「ヘッセ自身の宗教的体験の告白」だそうである。
ピカソは絵が上手すぎて、「子供のように絵を描く」ために大変な努力をしたという。同様に、頭が良すぎる人が人生について考え -
Posted by ブクログ
ネタバレ教育とは何なのかを考えさせられる
良いとされる人生のレールに子供を乗せる親や教師、そして自分の周りの狭い世界の中では成功しそのレールに乗ることを望んでいる子供は自分の運命がわかっていない
何も考えずにレールを進む子供もいれば、多感な時期を過ごす中でそのレールから外れてしまう子供もいる
そして死んでしまったハンス。その死因は語られない。
そのことがむしろ、読み終わった後に、彼の周囲の彼への期待や強制を自分と照らし合わせて内省に向かわせる。
以下、あるサイトからのコピペ
+++
主人公ハンスは、他の子供たちと同様に自然や動物を愛する素朴な少年。
唯一違うのは、彼は学問に優れた天才であるこ -
Posted by ブクログ
この若造の甘ったれ感が嫌いな人もいると思うけど、自分は好き。何せ、年を食った今でも甘ったれなので。
子供の人生が周りの大人の都合で決まってしまうってことはよくあることだと思うんだけど、よくあるってことが実は怖い。アシストしてるように見せかけて、実は目隠しした少年を自分の都合の良いように歩かせてるんだと思うと怖い。
それにしても情景の描き方がキレイ。どんどん引き込まれていく。目の前にその世界があるかのように。ここでその形容詞か?!って思うこともあるけど、まあ時代が違うし。言葉は生き物。
結局はみんな自分中心なんだから、自分中心に生きないと損。そう言われてる気がする。そうしないと戦車にひかれ -
Posted by ブクログ
ヘルマン・ヘッセの『メルヒェン』に収められている、「アウグスツス」に不覚ながら涙した。
アウグスツは、生まれた時に「誰からも愛さずにはいられないように」と母親から願いをかけられ、その通りになる。
子どもの彼には、天使の歌声が聞こえた。
しかし、誰からも愛されるあまり、彼は傲慢になり、
あらゆる富と名声を得て、堕落し、あらゆる悪事を尽くす。
あらゆる欲望に満たされても幸福になれない彼は、いよいよ自殺を図ろうとするが、
魔法をかけた名付け親が現れる。
そこで、アウグスツスは、
「それまでの人生にかかっていた魔力を取り消し、愛することができるように」と願う。
ラストシーンの描写があまりに -
Posted by ブクログ
ネタバレ2019/2/17
翻訳 高橋健二先生
ゲルトルートはこの小説に出てくる女性の名だ。
ラストの数行でボロボロと泣いた。
歳をとってから青春を思い出すと苦いことも多々あったのに美しく感じる。
歳をとるということはそういうことなのかな。
主人公クーンは、ソリの事故で足を怪我し身体障害者となる。
それにより、自分は誰かと恋仲になることも結婚もできないと思っている。
そして、自殺まで考えるが、音楽が彼を救った。
彼は悩みながらも、現実を受け入れつつ生きてきた。
友人のオペラ歌手ムオトは、容姿にも才能にも恵まれ、どんな女も自分のものにできる。
ただ、精神面が壊れやすかった。それは自分の中 -
Posted by ブクログ
人は誰しもいろいろな側面を内に持っている。ハリーはヘルミーネと出会うことで、自己の諸側面について気づき、洞察を深めていく。その中には、自身が否定してきたものと相反する矛盾した自身の姿もある。たとえば、反戦思想を唱え人道を叫びながら、裕福な身分のまま亡命し個人の活動に耽っている自分、自殺志願者である自分についてである。
物語で、ハリーの矛盾する己の存在への葛藤は、ヘルミーネによって解消される。
しかし、現実はそうした自己の存在に気づくことは容易ではない上に、気づけたとて向き合うことは非常に勇気のいることである。多くの人は気づいていなかったり、気づいても無意識に知らぬふりをしてしまうだけで、実は