ヘルマン・ヘッセのレビュー一覧

  • デミアン

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    われわれが一度きりの人間以上のものでないとしたら、われわれのだれもが一発の銃丸で実際に完全に葬り去られうるのだとしたら、物語を話すことなんか、なんの意味も持たないだろう。しかし、すべての人間は、彼自身であるばかりでなく、一度きりの、まったく特殊な、だれの場合にも世界のさまざまな現象が、ただ一度だけ二度とはない仕方で交錯するところの、重要な、顕著の点なのだ。だから、すべての人間の物語は、重要で不滅で神聖なのだ。だから、すべての人間は、とにかく生きていて、自然の意志を実現している限り、驚きと注目とに値する。すべての人の中で、精神が形となり、生物が悩み、救世主がはりつけにされているのだ。

    すべての

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    2022年06月09日
  • 車輪の下で

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    主人公の苦悩 車輪の下という題の意味は落ちぶれるという意味合いを持つらしい。
    日本の受験生なら感じたことのあるであろう苦悩、挫折、足掻きを少年は孤独に向き合っているように感じた。

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    2025年12月06日
  • 車輪の下で

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    ネタバレ

    ヘッセの2作目。自伝的小説。
    日本で第1作目の「ペーター・カーメンツィント」より売れている理由は、鬱屈した締め付け型の学校教育・競争受験社会への共感かららしい。

    純粋で繊細で不器用な少年ハンスが周囲の期待=圧力からどんどん身のうちに虚栄心を育てていき、虚栄心が自分のエネルギーを食い尽くして、最後は干からびた身体と魂ですっと消えていく。ハンスを見守ってくれていた親方が埋葬時に父親に語る言葉でハンスが少しでも救われてほしい。「あそこに行く紳士方も」「ハンスが破滅するのに手を貸したんですよ」「いえ、これ以上はやめましょう。あなたとわたし、我々も、あの子に色々としてやれたことを怠ったのではありません

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    2021年12月06日
  • 知と愛

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    原題は『ナルチスとゴルトムント』。知と精神の世界に生きる師ナルチストと、愛と芸術の世界に生きるゴルトムントを描く。ゴルトムントは修道院に入って神に帰依するはずだったが、ナルチスの影響により、愛や芸術の世界に目覚め放浪の旅に出る。清く正しい世界を目指した者が愛欲に溺れ廃退していく姿に、正直戸惑いはあった。しかし、自らの意のままに強欲に生きる姿に不思議と羨望も感じる。人生とはなんなのか、人間の本来あるべき姿とはなんなのか、そのようなことをゴルトムントの姿に重ねながらじっくり味わえた作品である。

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    2021年11月25日
  • シッダールタ

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    「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」とは、あまりに有名で、あまりにも示唆的な方丈記の冒頭である。そこんとこ詳しく教えて下さいよ長明さん、とばかり方丈記を手にとっても大したことは書かれておらず、がっかり。そんなあなたは、本書を読むべき。よもや続きはこんなところにあったかと驚く。

    シッダールタという題名から、釈迦の話かと思い込んでいたが、架空の人物を主人公としたフィクションである。仏教の話ですらない。解説によると「ヘッセ自身の宗教的体験の告白」だそうである。

    ピカソは絵が上手すぎて、「子供のように絵を描く」ために大変な努力をしたという。同様に、頭が良すぎる人が人生について考え

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    2021年10月24日
  • 郷愁

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    ヘッセの処女作。自然を愛するペーターの成長を描いた作品。失恋や親・親友の喪失など、人生の壁に何度もぶつかりながら、強く、清く、正直に生きようとする。ヘッセの他の作品と比べると、自然に対する細やかな美しい情景描写が特長のひとつではないだろうか。小説を読みながら、自然に溶け込むような一体感をも感じる、素晴らしい作品である。

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    2021年10月07日
  • 車輪の下

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    ネタバレ

    教育とは敷かれたレールの上を歩かせるだけのものなのか。一人の貴重な人間の将来が奪われてしまったことに悲しみを覚えた。
    最後の酔っぱらった中での溺死は事故なのか、故意なのか描かれていなかったが私は自ら川に入ったのだと思う。
    救われない少年の話

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    2021年09月25日
  • シッダールタ

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    シッダールタという求道者が悟りの境地に達するまでの体験を描いた作品。あらゆる師の教えは決して彼を満足させられなかったが、自らの体験と苦悩を経て、すべてをありのままに受け入れることでシッダールタは悟りの境地に達する。高尚な言葉で綴られた書物よりはるかに、この本の中に真実が隠されているような気がする。また、教えというものを言葉にしてそれを目指した時、あらゆるものの一側面しか見ることができなくなる、というヘッセの言葉は、私の心にしみじみと染み渡ってきた。

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    2021年08月24日
  • 春の嵐

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    不慮の事故で片足が不自由になってしまったクーンという男の話。不運を嘆きながらも、作曲の喜びに目覚め、人生を必死に切り拓いていこうとするクーン。また、彼と親友との間に現れた女性を巡っての複雑な人間関係も描かれている。“最も不幸なことを捨ててしまうことは楽しかったことを捨てることよりもつらい。避けがたい運命を甘受し、よいことも悪いことも味わいつくし、内的な本来の運命を獲得することが人間生活の肝要である”と冒頭で主人公は振り返っている。その言葉がとても重みをもつ、重厚な作品であった。

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    2021年08月12日
  • 車輪の下

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    ネタバレ

    教育とは何なのかを考えさせられる
    良いとされる人生のレールに子供を乗せる親や教師、そして自分の周りの狭い世界の中では成功しそのレールに乗ることを望んでいる子供は自分の運命がわかっていない
    何も考えずにレールを進む子供もいれば、多感な時期を過ごす中でそのレールから外れてしまう子供もいる
    そして死んでしまったハンス。その死因は語られない。
    そのことがむしろ、読み終わった後に、彼の周囲の彼への期待や強制を自分と照らし合わせて内省に向かわせる。


    以下、あるサイトからのコピペ

    +++

    主人公ハンスは、他の子供たちと同様に自然や動物を愛する素朴な少年。

    唯一違うのは、彼は学問に優れた天才であるこ

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    2021年07月05日
  • 車輪の下

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    この若造の甘ったれ感が嫌いな人もいると思うけど、自分は好き。何せ、年を食った今でも甘ったれなので。

    子供の人生が周りの大人の都合で決まってしまうってことはよくあることだと思うんだけど、よくあるってことが実は怖い。アシストしてるように見せかけて、実は目隠しした少年を自分の都合の良いように歩かせてるんだと思うと怖い。

    それにしても情景の描き方がキレイ。どんどん引き込まれていく。目の前にその世界があるかのように。ここでその形容詞か?!って思うこともあるけど、まあ時代が違うし。言葉は生き物。

    結局はみんな自分中心なんだから、自分中心に生きないと損。そう言われてる気がする。そうしないと戦車にひかれ

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    2021年02月01日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    特別な愛読書。ビーズで飾った、手縫いのブックカバーをつけて、手もとに置いています。   …訳者の高橋健二氏が解説の最後で述べられているように、 ヘッセの書いたものの中で最も美しいものの一つ、だと思います。  短編集。 私は、 別な星の奇妙なたより  という物語が、一番好きです。

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    2020年07月20日
  • 車輪の下で

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    ネタバレ

    ハンスが死を支えに生きるとき、そして冷たい水の中で帰らぬ人となったとき、安堵した。無慈悲に回る車輪の轟音のふもとで生きるには、彼の心は小鳥の雛のように柔らかくはかなすぎた。人生にピリオドをあっさりと打てる人もいるけれど、そうでない人もたくさんいる。小鳥の心の周りを頑丈な鎧で固めたり、小鳥の心に知らん顔して、新たな大人の理性をインストールしたりして生きてる人をたくさんしっている。私の中のハンスは、ぼんやり遠いうつろな目をして日曜日の終焉に絶望している。

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    2020年07月05日
  • 車輪の下

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    ネタバレ

    あまりにも言葉が、文章が、美しく、若者の繊細な感情を表すヘルマン・ヘッセ。自伝的とも言われる物語には、時代を越え国境を越え言語を越え、人々に普遍的な青春時代の脆さ・儚さを彷彿とさせる力がある。
    翻訳は1958年の出版なので古めかしい部分もあるが、それも含めて味わい深い作品。

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    2020年05月08日
  • 郷愁

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    田舎から都会へ、そして都会から田舎へ。
    出会った人々との思い出が、詩人らしい主人公に幸福を与えてるのだとすると、彼は故郷に帰った後も満ち足りた生活をするはずである。
    南風のように煩わしい経験が何か情熱に変化されたり、甘酸っぱい恋が青春の価値を保証したりする、と思う。

    郷愁、故郷を想う気持ちがどれほど大切か。
    いま故郷を離れた現実を、再考したくなる。

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    2020年04月12日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    ヘルマン・ヘッセの『メルヒェン』に収められている、「アウグスツス」に不覚ながら涙した。

    アウグスツは、生まれた時に「誰からも愛さずにはいられないように」と母親から願いをかけられ、その通りになる。

    子どもの彼には、天使の歌声が聞こえた。

    しかし、誰からも愛されるあまり、彼は傲慢になり、
    あらゆる富と名声を得て、堕落し、あらゆる悪事を尽くす。

    あらゆる欲望に満たされても幸福になれない彼は、いよいよ自殺を図ろうとするが、
    魔法をかけた名付け親が現れる。

    そこで、アウグスツスは、
    「それまでの人生にかかっていた魔力を取り消し、愛することができるように」と願う。

    ラストシーンの描写があまりに

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    2019年02月27日
  • 春の嵐

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    ネタバレ

    2019/2/17

    翻訳 高橋健二先生

    ゲルトルートはこの小説に出てくる女性の名だ。

    ラストの数行でボロボロと泣いた。
    歳をとってから青春を思い出すと苦いことも多々あったのに美しく感じる。
    歳をとるということはそういうことなのかな。



    主人公クーンは、ソリの事故で足を怪我し身体障害者となる。
    それにより、自分は誰かと恋仲になることも結婚もできないと思っている。
    そして、自殺まで考えるが、音楽が彼を救った。

    彼は悩みながらも、現実を受け入れつつ生きてきた。

    友人のオペラ歌手ムオトは、容姿にも才能にも恵まれ、どんな女も自分のものにできる。
    ただ、精神面が壊れやすかった。それは自分の中

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    2019年02月19日
  • メルヒェン(新潮文庫)

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    中学校のとき、尊敬する担任の先生が道徳の時間に、この中の「アウグスツス」という作品を朗読してくださり、鮮烈に心に残りました。
    愛されることを望むよりも、自らが人を愛することのできる人間になれることの大切さを、強く刻みつけてくれる作品です。
    当時は作品の本意を理解しきれなかったのですが、何十年も経ち、人生の後半に差しかかってようやく、理解できるようになりました。
    深くて素敵な作品だと思います。

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    2019年02月03日
  • 荒野のおおかみ

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    人は誰しもいろいろな側面を内に持っている。ハリーはヘルミーネと出会うことで、自己の諸側面について気づき、洞察を深めていく。その中には、自身が否定してきたものと相反する矛盾した自身の姿もある。たとえば、反戦思想を唱え人道を叫びながら、裕福な身分のまま亡命し個人の活動に耽っている自分、自殺志願者である自分についてである。

    物語で、ハリーの矛盾する己の存在への葛藤は、ヘルミーネによって解消される。
    しかし、現実はそうした自己の存在に気づくことは容易ではない上に、気づけたとて向き合うことは非常に勇気のいることである。多くの人は気づいていなかったり、気づいても無意識に知らぬふりをしてしまうだけで、実は

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    2018年12月31日
  • 車輪の下で

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    昔大学生のころだったと思いますが。。
    そのころに付き合っていた人に紹介してもらった
    と思う本。
    そのころは読まなかったのですが。
    その時にこの本を読んでいれば、どう思って
    どうなっていたのか?
    もういまとなっては、そんなに重くは受け止めることは
    ないですが。
    やはり、自分のことを考えてしまう内容だったと思います。
    だれでもある感情だとは思いますが。

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    2018年08月29日