あらすじ
豊かな自然に囲まれて育ったペーターは故郷を離れ、文筆家を目指すため都会生活を始める。彼はそこで多くの人と出会い、多くの事を学ぶが、心の底では常に虚しさを感じていた。文明の腐敗に失望し、故郷に戻った彼を待っていたのは、シンプルな暮らしと新たな出会いだったが……。叙情にあふれた美しい自然描写、青春の苦悩、故郷への思いを見事に描いた、著者の処女作にして出世作。
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Posted by ブクログ
再読1/23
ヘッセ作品で1番好きです。
ヘッセの全作品に通ずる自然への愛は勿論、近代文化の生活への批判や享楽との葛藤も描かれていて源泉的な地位を占めていると実感しました。
最初に読んだときは自然描写に慣れておらず、読み辛いと感じていましたが、再読の際は全く苦しくなく、むしろ非常に読みやすい、おもしろい読み物だと思いました。
ヨーロッパの田舎の描写は実際に目にしたことはほとんどありませんが、眼前にありありと浮かんでくるようで、そうした景色はホッとさせてくれます。
心が癒される読書体験が得られるのでまた何度でも読み直したいです。
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ヘッセの処女作。自然を愛するペーターの成長を描いた作品。失恋や親・親友の喪失など、人生の壁に何度もぶつかりながら、強く、清く、正直に生きようとする。ヘッセの他の作品と比べると、自然に対する細やかな美しい情景描写が特長のひとつではないだろうか。小説を読みながら、自然に溶け込むような一体感をも感じる、素晴らしい作品である。
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田舎から都会へ、そして都会から田舎へ。
出会った人々との思い出が、詩人らしい主人公に幸福を与えてるのだとすると、彼は故郷に帰った後も満ち足りた生活をするはずである。
南風のように煩わしい経験が何か情熱に変化されたり、甘酸っぱい恋が青春の価値を保証したりする、と思う。
郷愁、故郷を想う気持ちがどれほど大切か。
いま故郷を離れた現実を、再考したくなる。
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ヘッセの自叙伝と言える作品です。
新緑を思わせる歓びと、暗く、重いねずみ色の憂鬱―。彼の人生はこの二つの繰り返しではなかったでしょうか。
苦い恋の経験も、彼が大酒のみであることも、彼への親しみを増させています。共通するものを持っている人は読むべきでしょうw
短い作品です。一日で一つの人生を体感できます。お勧めです。
Posted by ブクログ
もっともヘッセらしい作品と高い評価がある作品。27歳の時の処女作とは思えない、高い完成形を見せる。
大昔読んだ記憶では【遠きにありて故郷を思う青年の哲学的な心の揺れ】的なものと思っていた。
今回、じっくり読むと些か様を異にしていた。
山と水、そして取り分け雲を愛する筆者がカーメンチントに乗り移って故郷~スイス、アルプスに囲まれたエリアを思わせる地を基に、イタリアフィレンツェなど各地を旅する。
愛しい人を想い、想われた人をも思い、若くして水死した知人を想い、縁あって身障の男性の最期を看取って人生の旅の先はふるさとへ戻ってきた。
ペーターが口ずさむのは伊を始めとした歴史や広い精神の回想、詩歌。
父を見ながら、伯父の想いにも従う彼の時間はシンプルな生活、そして新たな出会い。
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ヘッセ処女作。
とある村では、右も左も前も後ろもカーメンチント姓だらけ。そんな村から、牧師になるべく村を出た主人公カーメンチントくん。
初めての世界や体験に、穏やかに身を焦がした彼の行末は…。
原題、ペーター・カーメンチントの名に恥じぬ、ペーター・カーメンチントっぷりが最高!
そしてヘッセの表現も好きだと再認識。
このストーリーもそうだけれど、ヘッセの文体って郷愁というか、牧歌的というか、無垢な心の時を思い出させる懐かしさと自然さがあるなぁ。
読む年代によって、この作品に抱く感想が変わりそうだけれど、これを書いた時のヘッセ20代なの信じられない。人生何回か経験してないと書けないよ。
Posted by ブクログ
まず「郷愁」というのは意訳であるが、原題は「ペーター・カーメンチント」というひとりの名もなき男の自叙伝である。故郷はカーメンチントの原点でありいつも彼とともにあるが、本人が認めるのは最後の最後である。チューリヒ編、バーゼル編、アンジ編、バーゼル・ボピー編(パリは大胆に割愛されている!)振り返るとそれぞれ甘苦く生々しい記憶が綴られている。チューリヒ時代の若い輝きが懐かしい。それにしても…(誰しも一生を振り返れば思い出したくもない記憶の一つや二つあるにしても)この主人公は、愛は一度も成就せず、親友はみな死に、なかなか気の毒である。
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田舎から都会へ出て暮らし、田舎を想う気持ちを持ち、時に田舎に帰ってみたりしていること。そんな共通点があるからか、主人公には少し親近感を持ち読み進めることができた。
田舎から都会に出ると決めた時、何がそうさせた?
都会で学び、人々と交わり、友情を育み、恋に落ち、いろいろな経験をし、世間一般の幸せ、青春のあこがれを追い続け、結果として田舎に帰った時、何を想うだろうか?
一人の人間の人生を通して、見えるものはたくさんある。小説を読む醍醐味を味わえる作品だった。
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ヘッセの出世作だが、「車輪の下」の後に読んだので、特段に強い印象は受けなかった。
良くも悪くも「小説」といった内容で、個人的には、心に残るようなインパクトに乏しかった。
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ヘッセの作品を読めば、ヨーロッパのみずみずしい風景が呼吸しながら目前に現れる。処女作である本書も勿論例外ではない。また、甘く酸い青春の所々に表される主人公の抒情性に、思わず自分の体験と重なり感情移入して読んでしまう。ヘッセの全作品を貫く本質がうかがえる。
Posted by ブクログ
地元を離れ詩人として生きる主人公の姿が、自分と重なる部分があり思わず読み入ってしまった。
著書はヘッセ27歳の時の作品であることにも驚きを隠せない。
というのもとにかく文章が綺麗で美しい。
そして自然の描写が素晴らしく読んでいるだけで情景が思わず頭に浮かぶ。
私みたいに田舎で育ち、一度地元を離れたものに読んでもらいたい。
Posted by ブクログ
とにかく、自然や主人公ペーターの周りの情景の描写が美しい。山間の小さな村も、湖も、街も、読んでいるだけで目に浮かぶくらい緻密で美しい表現。これまでに読んだヘッセの作品の中では、ストーリー的に大きな起伏がある方ではないが、全編にわたって「愛」と「死」による静かな感動が波のように押し寄せる作品だった。紆余曲折がありながら、自分のルーツを否定しない生き方には憧れる。自分の生まれ育った環境というのは、生きていく上でたびたび自分を動かす原動力をもたらすものなのだろうと思う。
Posted by ブクログ
狭い故郷を離れ都会に出たアルプスの自然児ペーターは、文筆家として身を立てるが、都会の文明に失望し、幻滅を感じるようになる。この彼を救ったのは、美しい少女エリーザベトへの愛と、姿は醜いけれども美しい魂を持った身障者ボピーへの愛の奉仕であった。ボピーの死後、自然に包まれた故郷へ帰ったペーターが、そこで見出したものとは──。
物語の中で、彼は幾度か大切な友の死を経験することになる。そして彼の恋は、いつも片想いで終わってしまう。
彼の人生の中で幸福かと言われる時期はないように見えてしまうけれども、大切な友と過ごした時間は、彼にとってとても大切なものであったのではないだろうか。
幸せになってほしいと、読み終えた今でも願わずにはいられない。
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すべてがとても美しい小説。
夜のボート、素敵な親友、好きな女の子、心の美しい子供と病人
本当に何もかもがきらきらして感じられます。文章も取り上げてるものも美しい。青春の瑞々しさ、あらゆる愛情。
訳も読みやすくて、60年代のものらしい少し古風で丁寧な言い回しが小説とぴったりですごく良かったです。
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大阪の古本屋で出会った本。
雲を眺めるのが何よりも好きだった。
田舎から都会に出て多くのことを経験し、
きっとこう言った出会いや葛藤が個人としての等身大の経験な気がして、親近感が湧く。
田舎の世間の狭さや、都会の寂しさ。
人生そのものがネタとなる詩人という職業は永遠の憧れ。
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『春の嵐』の後に読んだせいか、やや流れが似ているのと、春の嵐の方がすきなためこの評価に。
体の不自由なボピーとの交流が1番印象に残っていて好きだな。
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ヘッセの出世作。成長小説。アルプス生まれの自然を愛する主人公が、都会に出て様々人と出会い、別れを繰り返し成長して故郷に帰る。
故郷が田舎で現在東京に住んでいる自分も読み終えて郷愁を感じた。薄い本だが、翻訳でもありすらすら読める感じではない。
Posted by ブクログ
人生にはある程度年をとったからわかってくることも多い。ヘッセの郷愁は年をとった今だからこそ理解が進んだんだろうと思うが、ヘッセの若い頃の作品と知り驚いた。心理描写も多く読みやすい作品ではないし、とっちらかっているのは否定できないが、若者の成長については本質をついている。
Posted by ブクログ
まるでヘッセの自伝を綴った小説のよう。
主人公カーメンチントは自然豊かな田舎育ち。
荒々しくも美しい山、川、森、空に囲まれ育まれた純真で透明感のある心で、無二の友人、恋心を抱く芸術家、障害者たちとの出会いを鮮明に際立たせる。
繊細でダイナミックな自然描写と、詩的な感情表現が美しい文学小説。
やや回りくどい感は否めないが、海外文学の入門書としておすすめ。