【感想・ネタバレ】春の嵐のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2021年08月12日

不慮の事故で片足が不自由になってしまったクーンという男の話。不運を嘆きながらも、作曲の喜びに目覚め、人生を必死に切り拓いていこうとするクーン。また、彼と親友との間に現れた女性を巡っての複雑な人間関係も描かれている。“最も不幸なことを捨ててしまうことは楽しかったことを捨てることよりもつらい。避けがたい...続きを読む運命を甘受し、よいことも悪いことも味わいつくし、内的な本来の運命を獲得することが人間生活の肝要である”と冒頭で主人公は振り返っている。その言葉がとても重みをもつ、重厚な作品であった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年02月19日

2019/2/17

翻訳 高橋健二先生

ゲルトルートはこの小説に出てくる女性の名だ。

ラストの数行でボロボロと泣いた。
歳をとってから青春を思い出すと苦いことも多々あったのに美しく感じる。
歳をとるということはそういうことなのかな。



主人公クーンは、ソリの事故で足を怪我し身体障害者となる...続きを読む
それにより、自分は誰かと恋仲になることも結婚もできないと思っている。
そして、自殺まで考えるが、音楽が彼を救った。

彼は悩みながらも、現実を受け入れつつ生きてきた。

友人のオペラ歌手ムオトは、容姿にも才能にも恵まれ、どんな女も自分のものにできる。
ただ、精神面が壊れやすかった。それは自分の中から生まれているもので、改めることはできない。

ゲルトルートを通して、クーンもムオトも傷ついたが、現実を受け止める力と、自分の中のフィルターを通して見えてくるものの違いのため、生き方が異なってくる。

巻末は、翻訳した高橋先生がヘッセに会いに行った時の出来事が書いてあった。



“若ものたちは利己主義と独立心にかられて、観望が満たされないと生命を放棄するようになる。これに反し、自分の生命が他の生命と結びついているのを知るものは、自分の欲望のためにそんなにまで駆り立てられるにいたらないと、父は言った。”


以下がラスト。
高橋先生の訳はいいな。

“人はとしをとると、青年時代よりも満足している。だが、それだからといって、私は青年時代をとがめようとは思わない。なぜなら、青春はすべての夢の中で輝かしい歌のようにひびいて来、青春が現実であったときよりも、いまは一段と清純な調子で響くのだから。”

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Posted by ブクログ 2015年12月23日

青春時代の淡い、されど激しい想い。
届かぬともそれは青春時代が生み出す1つの生き物ではなかろうか。

妙によそよそしく感じるそれは、その時代特有のものであろう。

揺さぶられる心。そして、そこに諦めを見出してしまう心。様々な想いが錯綜する。

それが青春であろう。

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Posted by ブクログ 2015年06月29日

絶え間なく変わり続ける時に人の心は抗える。
並木道の砂埃とともに舞い上がるゲルトルートの幻を心に抱くシーンが印象的。

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Posted by ブクログ 2013年05月05日

再読。主人公クーンと女の子が夜の山から橇で滑り降りる場面が印象深く残っている。クーンは橇滑りの事故がもとで片足びっこになり、しかしそのおかげもあって音楽で生計をたてていくことを志す。

クーンの女性関係はけっきょく描かれないままだが、それゆえにかムオトやゲルトルートと交わす友情の場面はとてもうつくし...続きを読むい。
ムオトの激しさと明るさへの憧れ。そしてクーンの作曲したオペラを介してゲルトルートとふたりで過ごす時間の鮮やかさ。

青年は自己の願望のために生命までも放棄する。逆に老人は他人のために自己を犠牲にする。青年よりも老年がすばらしいというテーゼ。
しかしながら青年が老人になるためには、それこそ死にもの狂いで苦しみをなめつくさねばならない。

たとえばローエ先生の教えにしたがってクーンは母を愛そうと誓うが、この試みは挫折する。そしてある種の悟りというか、諦観に達する。
「いまは私は、他人の運命に向かって手を伸ばすのは愚かな危険なことだと考えた。(略)今日なお私は、自分の生活と他人の生活とをなんらか意識的に形づくる能力が人間にあるということを強く疑っている。金や名誉や勲章を獲得することはできる。しかし、幸福または不幸を獲得することは、自分のためにも他人のためにも、できないことだ。」

クーンが捉えられていたのは実存主義的な悩みだった。キリストや仏陀のいうように、「この世界はまちがっているし虚しい」。しかしその倦怠や迷妄を越えて差し込む光がたしかにあり、クーンにとってそれはゲルトルートや音楽だったにちがいない。

ゲルトルートのような高貴でうつくしい女性がみずからを破壊しかねないムオトのような男に惹かれること――それはまぎれもなく悲劇的なことであるが、それをどうこうする力は実は誰にもないのだ。

前に読んだときよりも、より多くのものを汲み取ることができるようになったと思う。感謝。

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Posted by ブクログ 2012年09月07日

ゲルトルートは、直感に素直に生きている人じゃないかという印象を受けた。芸術と恋愛等々、古典的なテーマでいい小説だった。愛が修行と呼ばれる所以は...どのような考えを持った人が破壊せず、精神的にも負けず愛を成就できるのか。小説をまたもっと読まなくちゃと思いました。

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Posted by ブクログ 2012年07月12日

報われるあてのない努力でも、心から離れない限り無力に終わることはない。

クーフの作詞家は「ハンス・H」。「車輪の下」のハンスを救済した?そうだといいな。

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Posted by ブクログ 2010年05月04日

クーン、ムオト、ゲルトルート、彼らの中で主人公であるクーンが正真正銘の芸術家であろう。
だが彼を取り巻く人々の苦悩や戦いは、まさにクーンよりもはるかに劇的なものに思われるのだった。
長く、苦しい嵐の只中でも、クーンには穏やかやさ真理に触れる機会がある。彼はとても賢い。
人を受け入れ、認め、自分の分を...続きを読むわきまえている。
手に及ばないもの、しかし諦めないこと。それも分かっている。
そして、尽きせぬ欲求、あこがれ、死を考えるほどに愛することを知っている。
それでもとても孤独でつつましやかである。
芸術とは一時の情熱や日々の刹那ではない。
積み重ね鍛錬、つらく厳しい作業をこつこつとこなす上にあると彼は云った。
ヘッセの描く嵐は、ともすればわれわれの中ですぐに過ぎ去る嵐のようなものである。
しかし、確実に心に吹いた風を云うのである。
ヘッセという人は過敏であり繊細よりももっと繊細であるように思われる。
誰しもが恋をして、失恋をして、そしてまた立ち上がり忘れ、次の人をみつけるだろう。
ヘッセはそれでも最初の痛みを忘れない作家だ。
春の嵐が生ぬるく寂しいのは、雷の落ちるような嵐ではないからだ。
それでも、生きた苦悩の証であり、充実な日々の証拠を忘れない。
そう思わせてくれる。

ムオトのような魅力的な人物がヘッセ作品にはたびたびお目にかかれる。主人公とは雲泥の差なのに、どちらの人も真理までしっかりと描かれる。
ムオトを襲う悲劇は、クーンがいうように逃げの一種である。
だめだと分かっていながらも、それができずに、どうしようもない獣を飼い、生きる苦しみ。
ムオトと彼の関係がとても好きだった。
ムオトのほうがきっと、彼を必要としていたのは一目瞭然である。
ゲルトルートが、彼の想い人であったと知っていても、彼はゲルトルートを手に入れたのである。
ゲルトルート・・・は、正直好きではない。
苦しみのうちに、また立ち上がって生きている強い彼女は皇后しいとはおもう。けれども。どうしてもいつだって結局正しくみんなに同情される彼女である。
それよりも、不具の男をずっと静かに情熱的に、そばにいても触れることもせず、ただその芸術を崇拝し、自分を相手のために押さえつづけたブリギッテが好きだ。
彼女こそ女神だとおもう。奇しくも最初のお産で亡くなっている。

光とは、どんなに重い雲の中から出て来なければならないのかを。

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Posted by ブクログ 2009年11月14日

切なく、やりきれない。昔はゲルトルードと主人公のことばかり身にしみたが、再読するとムオトの悲しみばかりが胸に迫った。彼を救えるのは、ゲルトルードではなく、主人公だったのに。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

人を愛する時の感情ってこうなるだろうなって共感できる文章です。
うん。文章が好き。

あまり本は読まないのですが、これは何度も読み返します。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

ヘッセの作品を読んでいたのはもう10年以上も前になるので、内容はなんとなくしか憶えていなかったりするのですが、この作品だけはタイトルを見るだけで込み上げてくるものがあります。不具者になった主人公の苦しみが自分と重なるのです。ヘッセの優しい眼差しや文体に救われていたのを思い出します。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

若き日の事故によって足が不自由になってしまったクーンの生活は、奔放な音楽家ムオト、美貌のゲルトルートに出会ったことにより変わっていく。

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Posted by ブクログ 2022年09月03日

結婚した人と、老いるときまでそばにいる人が必ずしも同じではない類の物語の結末。
クーンが自らの青春との別れを悟ったシーンが印象的だった。

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Posted by ブクログ 2021年07月25日

なぜかヘッセの自伝と勘違いして読み始めたけど、フィクションでした
人の感情を繊細で豊かに描写する感じが三島由紀夫と似てる気がする
本気に考えられた決心や思想はやはり心の中に平和を残し、変えがたい運命を忍ぶ助けとなる。(文庫p.169)という文章が好きでした

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Posted by ブクログ 2021年03月18日

主人公は作曲家。事故で片足が不自由になった彼の乱高下激しい人生、特に強い愛や友情ゆえに苦悩する日々の物語。感情表現の仕方が絶妙というか分厚い。常に内外、表裏、手前と向こう側が同時に書かれていて、小説ながらに「なるほど」と頷いてしまうこともしばしば。50も近づいてきて、未だどこか作曲家になる夢を懐き続...続きを読むけてる自分にとって、主人公を応援する気持ちも相混じり、一気に読んでしまった。

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Posted by ブクログ 2020年04月14日

若い人は利己的で何か理想と食い違うと自殺したりする、でも、自分の命が他者と繋がってることを知っているものは安易に自殺したりしない

年を重ねてゆくと満足感や幸福感は他者の役に立つことで得られることをしる、
人生自体は空である、

なるほどな、、、

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Posted by ブクログ 2016年07月12日

 才能あふれるオペラ歌手であるムオトは、親友のクーンが自分の妻であるゲルトルートに恋をしていることに以前から気が付き悩んでいた。
 ある日ゲルトルートは病気になり休養のため実家に帰ることとなる。しかし期日を過ぎてもゲルトルートは戻ってこない。その背景には彼女の薄汚い父親とクーンによる陰謀が隠されてい...続きを読むるのにムオトは気づいていた。
 愛するゲルトルートが自分の元へ帰ってこないことに絶望したムオトは酒びたりになり、今では舞台の前に酔わなければ歌も満足に歌えない状態になってしまう。
 頼むゲルトルート、帰ってきてくれ。君がいないと僕は生きていけないんだ。
 次回『ムオト、天国への帰還』――そうだ、ゲルトルートに花を贈ろう

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Posted by ブクログ 2015年03月26日

ただいなくなってしまった人のことや、過ぎ去ったことを忘れず、痛みを内包しながらも、距離を埋めず、穏やかに生きて行く二人の姿に胸が痛くなった。

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Posted by ブクログ 2013年05月22日

不具になってから、満たされない思いを抱きつつも、音楽家として穏やかで落ち着いた人生を歩む主人公。ヘッセらしい優しい物語。

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Posted by ブクログ 2012年04月29日

青春時代の経験は辛いことも楽しいこともあるが、それらを昇華し音楽として客観視できる形にしたことで、主人公はその経験を超えることが出来たんだと思う。私も作曲しますが、音楽はそのような役割を果たしたと思います。
青春期の作品は今の自分とは違うものなんだけど、今の自分を創っている大事な部分だし、それが今は...続きを読む無い美しさを持っているので、ときどき聴き返したくなります。それと同じ気持ちが小説家(ヘッセ)にも青春をテーマとした作品を書かせるんじゃないかな、と想像します。

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Posted by ブクログ 2023年10月20日

人間の無力さ、強さ。人生における孤独。青年時代と老年時代。テーマは刺さったが物語としては退屈だった。
青年時代は利己主義、老年時代とは他人のための生活・・これには思うところがあり納得。
そこまで大人な人間がどれだけいるのだろう。現代は、まさに利己主義が拡大している。いわば子供のままの大人が沢山いる状...続きを読む態だなと思う。

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Posted by ブクログ 2022年04月23日

障害を負ってしまい、普通の恋愛もできなくなってしまった主人公と、彼を巡る人々の人生が淡々と描かれる。ゲルトルート、ムオト、両親、ブリギッテなど、障害者ではない体をもつ人々も、結局のところいろいろなものを失っていく。この淡々さが良いですね。
主人公の母親と友人の友情が破綻する、利己的な友人とのエピソー...続きを読むドって、極端に書かれてるけど、ああ、こういう母親の友人みたいな人リアルでも存在してそう…。

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Posted by ブクログ 2019年06月20日

時代のせいなのか、筆者の育ちの良さのせいなのか、ともかく品が保たれているのは確か。ストーリー的には今でもありそうな感じだが、今だったらもっとギトギトした筆致となりそう。
この意味でその昔の日本人がこの作家が好きだったというのは良く分かる。そして今は物足りないという指摘が多そうなことも何となく推察でき...続きを読むる。
まぁ当方としてはもう少し暗くっても良いかなと思います。直前に読んでいる作品もそうですが、どうもこの作家、ほんとの底に降りてきていない感じがする、しかも意図的に。

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Posted by ブクログ 2011年10月02日

若さ故ともいえる激しい恋心を抱いた主人公が、自己で不具になったことをきっかけにか、多くを望まない、性欲なしに穏やかにみつめる愛を得る。

結局はかなわないんだけど、その過程で出会うひととの応酬がおもしろい。

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Posted by ブクログ 2011年06月07日

卑屈で自尊心の高い主人公の失恋劇は武者小路先生の失恋節に通じるものがあって、私は非常に大好物です。案の定これも、とても面白かったのですが、途中主人公があまりに卑屈すぎて、ちょっと胃もたれ起こしてしまいました。だってヘッセの本当のメインはヒロインでなく親友との友情だもの!

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Posted by ブクログ 2010年08月21日

少年時代の淡い恋が、暴走した橇と共に過ぎ去ったとき、不具になったクーンは音楽に志した。魂の叫びを綴った彼の歌曲は、オペラの名歌手ムオトの眼にとまり、二人の間に不思議な友情が生まれる。やがて彼らの前に出現した永遠の女性ゲルトルートをムオトに奪われるが、彼は静かに諦観する境地に達する・・・。

あとがき...続きを読むで、訳者が筆者のヘッセと出会ったときの様子が描かれており、個人的には本編よりもこちらの文章の方がが印象が強い。ヘッセの、温かな人柄に触れた訳者の感動が綴られている。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

若さ故ともいえる激しい恋心を抱いた主人公が、自己で不具になったことをきっかけにか、多くを望まない、性欲なしに穏やかにみつめる愛を得る。
結局はかなわないんだけど、その過程で出会うひととの応酬がおもしろい。

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Posted by ブクログ 2011年09月07日

ここまで描けるとは…!漫画でいうと一こまの中にぎゅっと情報を詰め込む。あの暖炉?の間のシーン 嵐の中で叫ぶとその声は聞こえない。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

初めて読んだときは「うわ難解!表現回りくどっ」と思ったんですがだんだんいい感じになっていくような。青年の葛藤やら浅はかさやらが青春ど真ん中です。最後はえらい切ない。力技でぶっとばすなり攫うなりすりゃいいと思ってたけどそんな問題じゃないんだな。でも狂気の彼が狂ってく様子はもう少し丁寧に共感持てるようだ...続きを読むったら味わい違ったかも。

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Posted by ブクログ 2012年12月18日

む、難しい……学生の頃に読みましたが、読むうちにどんどん気分が重くなってしまいました。まあ、楽しい話じゃないですからね。

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