あらすじ
誰からも愛される子に、という母の祈りが叶えられ、少年は人々の愛に包まれて育ったが……愛されることの幸福と不幸を深く掘り下げた『アウグスツス』は、「幸いなるかな、心の貧しき者。天国はその人のものなり」という聖書のことばが感動的に結晶した童話である。おとなの心に純朴な子どもの魂を呼び起しながら、清らかな感動へと誘う、もっともヘッセらしい珠玉の創作童話9編を収録。
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これが作者の持ち味だなとホントにおもったのです。自我の強さとそれにともなう挫折みたいなところからファンタジーと甘い生活への憧れへとゆくが届かないんだ。
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頭を柔軟にして読むべし。そうでないと読みにくい。大人のための童話だと思うが、もしかしたら子供のほうがすんなりと受け止められるかもしれない。気づかされることが多かった。ヘッセらしさが充満している。
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読みにくい短編もあったけど、『アウグスツス』で一気に心惹かれて、凄く面白かった。
『ファルドゥム』と『アヤメ』も好きだったな…
大人の童話って言われているようだが本当にその通りで、宝箱にしまいたいような、温かさのある本だった。
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特別な愛読書。ビーズで飾った、手縫いのブックカバーをつけて、手もとに置いています。 …訳者の高橋健二氏が解説の最後で述べられているように、 ヘッセの書いたものの中で最も美しいものの一つ、だと思います。 短編集。 私は、 別な星の奇妙なたより という物語が、一番好きです。
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ヘルマン・ヘッセの『メルヒェン』に収められている、「アウグスツス」に不覚ながら涙した。
アウグスツは、生まれた時に「誰からも愛さずにはいられないように」と母親から願いをかけられ、その通りになる。
子どもの彼には、天使の歌声が聞こえた。
しかし、誰からも愛されるあまり、彼は傲慢になり、
あらゆる富と名声を得て、堕落し、あらゆる悪事を尽くす。
あらゆる欲望に満たされても幸福になれない彼は、いよいよ自殺を図ろうとするが、
魔法をかけた名付け親が現れる。
そこで、アウグスツスは、
「それまでの人生にかかっていた魔力を取り消し、愛することができるように」と願う。
ラストシーンの描写があまりにも美しくて涙を誘う。
ヘッセの文章は、精神が実体を持った風景として、あたかも「美」そのものが内側から語らせるようだ。
実にシンプルで王道のおとぎ話だが、
手塚治虫が漫画で描いていそうな、
またディズニーが設定を変えて映画にしても面白いかもしれない。
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中学校のとき、尊敬する担任の先生が道徳の時間に、この中の「アウグスツス」という作品を朗読してくださり、鮮烈に心に残りました。
愛されることを望むよりも、自らが人を愛することのできる人間になれることの大切さを、強く刻みつけてくれる作品です。
当時は作品の本意を理解しきれなかったのですが、何十年も経ち、人生の後半に差しかかってようやく、理解できるようになりました。
深くて素敵な作品だと思います。
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ヘッセは天才だ。
訳者の高橋健二さんも。
それ以外言うことがないですね‥。
言葉の魔法。単語の天国。本を開けばいつでも見せてくれる。
こんなに素晴らしい本が古本で105円で手に入るなんて、日本はすごい国だと思いました。
今まで幸福論が一番好きだったけれど、これは同じくらい好きになるかもしれないです。
【追記】
もったいねーーーと思いながら読み終わっちゃったー!
さいごこピクトルの変身めちゃくちゃカッケーーーー!!しびれた‥
とくに好きだったのは「詩人」「別の星の奇妙なたより」です。アヤメもよかったな‥
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表現が綺麗でとても好きです。アウグスツスと詩人が特に好きです。愛されるのと愛すことの違いはやっぱり大きいなと思いました。そして、詩人も興味深いです。全体的に、音楽を聴いているような感覚で本を読んでいました。本当に綺麗な話です。
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まさにオルゴールのような短編集。小さな箱を開けると、懐かしさとともに封じられていた世界の秘密が鳴り始める。
特に忘れられないのが「アウグスツス」と「アヤメ」。
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ヘッセの短編集。
特に『笛の夢』が好き。
暗い話なのか明るい話なのか、夢が真実で真実が夢なのか、分からないことだらけ。
笛とか歌の上手な女性は何を寓意しているのだろう。
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「Märchenの中の Augustus と Iris は Hesseの書いたものの中でもっとも美しいもので、いわばHesse文学の縮図とも言える」郁文堂 Irisあとがきより
生きるための支えになる本。私はつねにこの文庫をカバンに入れている。500円硬貨でお釣りの来るこの本が私の歩みを後押ししてくれる。Ich will ! Ich will !
以前の版をお持ちの方は、今の版は『ピクトルの変身』が追加されたので是非再読されたし!Anselmがたどった小路は、果たしてここにたどり着いたのか否やは、皆様のご判断で。
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ひとの無意識とか感覚とか深層心理的なところに直接響いてくる、ものすごい密度の短編集。
いまのところ最初のアウグスツスがいちばん好き。
こんな言葉の構成ができるヘッセは神様みたいだと思った。
ぞくっとしてきゅんとするかんじ。
一日にたくさんは読めない。
おはなしひとつでおなかがいっぱいになる。
気がむいたときにひとつずつ心をこめて読みたい。
そんなかんじの本でした。
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単なる童話には終わらない作品ばかり。「生きること」「愛すること」「死ぬこと」という、人生において誰もがいつかは直面する大きな、そして重要な問いについて、平易な言葉で厳粛に表現されている。愛すること・愛されることの恐ろしい側面を描いた「アウグスツス」、死へ向かう人の苦しみ、あきらめ、そして解放を描いた「苦しい道」など、すべての作品の中で美しい文章の中に「人生」そのものが凝縮されている。苦しいとき、哀しいときに何度でも読み返したい一冊。
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実は、いちばん好きなヘッセの作品集です。他の作品も、文庫になっているようなものはひととおり持っていたはずなのに、なぜか今は手元にありません。少し気恥ずかしくて(何がでしょう?)、実家に置いてきたままのようです。もう少し時間が経ったら、また読み返せるでしょうか。
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ヘッセの作品は『車輪の下』と、教科書に載ってた『少年の日の思い出』くらいしか読んだことがなかったけど、タイトルに惹かれて手にしてみた。
メルヒェンというのはグリム童話などに代表される口承の昔話のことを言うものだそうだが、それをヘッセが手掛けるとこうなるのか‥という感じだった。
詩のような、様々なメタファを感じさせるものが多かった。
今、この歳で読んでこそ染み入る話もあった。
短編集で、メロディアスライブラリーで取り上げられそうな本だな‥と思ったら、すでに何年か前のリストにあった。小川洋子さん、好きそうな感じがしたんだよな。
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短編集でしかも本が薄いので、すぐに読み終わるかと思いきや、これがなかなか手強かった…
『苦しい道』
『夢から夢へ』
これはもう読んでて訳が分からなくて、頭がおかしくなりそうだった。
ニューエイジミュージックをイヤホンで聴きながら、なんとか読み切った感じ。
……
感想もいつもはすぐに記すのだけど(というか、読みながら感想を考えてる)メルヒェンから離れたいのと反芻したい葛藤があった。
訳された高橋健二さんの解説の中に、ヘッセが精神病を患っていたとあったので、『本当に苦しかったんだ、でも、逃げずに表現したのか…』という思いに今は至りました。
……
『アウグスツス』
『別な星の奇妙なたより』
不思議な、でも、忘れてはいけない、心に刻んで置かなくてはいけない作品。
言葉に簡単にできなくて、もどかしい。
「アウグスツス」でわかった事は、
充分に誰にでも愛されていれば幸せだとは思えなくなった。誰かの愛すべきところが、どんな状況であっても見出す事が出来たら、それこそ幸せなのかな?と。
「別な星の奇妙なたより」は、戦争の痛ましさで胸が苦しくなった。でも…いつか忘れてしまうものなんだな、と。
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今年は毎日読書をしようと決意し、手始めに高校時代に大好きだったヘッセの本の中で、短編集で最も読みやすいこちらを再読です。
物語は、割と共通点があり、
アウグスツス、笛の夢、アヤメ、は人生の歩みを進める中で失っていく悲しみと感慨。
詩人、ファルドゥムは更に大きな時間から人間の営みを観察しています。
そんな中で「別な星の奇妙なたより」「苦しい道」「夢から夢へ」は不穏な世界に連れていかれます。中でも「夢から夢へ」は全く異様でした。
「ピクトルの返信」は、同じような書き方ながら少し変わっていて、仏教的な雰囲気がありました。("大聖歓喜天"のイメージと重なりました)
言葉がレース編みかガラス細工のように繊細な輝きを持っているのは、ヘッセのみならず高橋健二の翻訳によるもので、改めて感心しました。
「アヤメ」の花の表現を追っていると、写実画の筆のタッチを勉強するような気分でした。
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童話集と呼んでも差し支えない内容の寓話がぎっしりと詰まった作品。スケールが大きい、哲学的な(ブッ飛んだ)話も多いが、いくつかの話には共通点が見られる。
「アウグスツス」と「アヤメ」ではそれが特に顕著だと思う。
壮年期を迎えるに当たり、幼年期に持っていた宝を失ってしまったことに気付き、自身にとって大切なものが何かを探し、老いてようやく辿り着けるというプロセスが非常に似ている。
就職活動で悩む人や、自分の仕事に疑問を感じている人に読んでほしい話だ。
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文豪・ヘッセが美しい言葉でつづるおとぎ話。一番最初と一番最後の話が良かった。言葉の裏にある物語の真意には気づけてないかもしれないけど。いやー、本当にヘッセは文章が美しくて読みやすい。その読みやすさゆえさらさらっと読んでしまっているんだけど。そのうち再読しよう。ヘッセの瞳で見る自然や世界はどうなんだろうっていつも思う。2012/177
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外国文学というものがどうしても苦手なのです。そんな中オススメされたのがこの本でした。
最初はやはり苦手意識が先行し、いつもよりは読むスピードがかなり遅かったのですがその中に紡がれている文章の綺麗さに、後半は割とスラスラ読むことができました。
ものすごい感動があるわけでもないですが読んだ後、心に残る。私にとってはそんな作品でした。
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童話集ということで宮沢賢治的なロマンチックな世界観をイメージして読んでみたら、初っ端からいきなり子どもに読ませてはいけないような話で、何ともヘッセらしいと思ってしまった。
全編に共通することだけど、これは疲れた大人向けの作品集と言えるだろう。
ヘッセの魅力はドロドロとした怨念にも似た感情を見事なまでの美文で表現しているところにあると思うのだけど、それはこの作品集に所収されている短編童話でもその本領を発揮している。
ここまで詩的な美しさがありながら読み易い文章を書ける人もそういないと思う(もちろん翻訳も素晴らしいのだろうけど、原文で読める能力がない自分が本当に惜しい)。
特に印象に残ったのはやはり「アウグスツス」「アヤメ」の二作。
愛に翻弄される・・・なんて有りがちなテーマのはずなのに考えさせられた。
ヘッセは少年期に読むべき作家というイメージが強いかもしれないが、この二作に関してはこれから結婚を考えている女性に推薦したい。
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この訳を「メルヘン」じゃなくて「メルヒェン」にした高橋健二はエライ!!どっからどーみても絶妙にメルヒェン。穏やかで情熱的な話の展開とか、優しい登場人物がいまいち甘やかしてくれないところとか、どーにもドイツ文学。なにより美しい。
アウグスツスが一番人気みたいですが、わたしは詩人がとても興味深かったです。
男の人が男主人公でえがく求道小説というのは読んでいて「自分勝手だなあ!」と思ってしまうことが多いのですが、この話は前半多少汗臭いものの全体的に童話っぽくてなんとなく可愛らしい。とても短い話なんだけどちゃんとポエティックで、ラストはゆっくりと息を吐いてしまいました。
五感全部で小説を読んだのは久しぶりです。ヘッセはこれですきになった。
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誰からも愛される子に、という母の祈りが叶えられ、少年は人々の愛に包まれて育ったが──愛されることの幸福と不幸を深く掘り下げた『アウグスツス』をはじめ、大人の心に純朴な子供の魂を呼び起こし、清らかな感動へと誘う、最もヘッセらしい珠玉の創作童話9編を収録。
9編の物語に共通しているのは、死へと向かっていくということである。けれども、その死は不幸なものではなく、幸福な気持ちを持ったものであるというところに、この童話集の素晴らしさがある。
こうした童話を創りだすことができるのは、人々と自然を愛したヘッセならではの魅力であろうと思う。
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大人向けの創作童話集。8編収録。自然の美しい描写で心が洗われたり、生や死などに関する観念的な語りかけによってその世界にどっぷり浸れたりするような素晴らしい作品たちである。いつの時代でも心に響く内容で、かつ、文体も柔らかいため、子どもから大人まで幅広く楽しめるのではないだうろか。
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個人的にこの手のおとぎ話的なものはあんまり好みでは無いので、少し評価は辛目かも。
でも最初と最後から二番目の作品は、少なくとも当方にとっては現実感が感じられ、なかなかによろしいかと。まぁ若干道徳臭が強すぎて教科書的かもしれませんが、この作家の特徴なんでしょうかね、何かそんな気がする。
そしてそれは日本人好みかなと思います。
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ドイツの叙情詩人が挑む『知らない人についてったらえらい目に遭った』アンソロジー。
『 別な星の奇妙なたより』だけ好き。ろくでなしにも矜恃くらいあるんだってとこがいい。
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メルヒェン/ヘルマン・ヘッセ 読んだ。
解説にもあるとおり、母から授かった無償の愛と死生に対する考察が混じりあって、価値観の放擲がなんどとなくくり返される。憧憬と回帰に関する一貫したテーマのなかで、短編集ながら連作を思わす生活くささが妙に生々しい。
メルヘンとはなにか、読みすすめるうちに何度となくこう自問したくなる。この一冊の中に読み取るべきものは『アヤメ』のなかで、他作品とくらべてスローダウンした筆致で書かれてあるのでページを戻りながら読むとわかりやすいが、読み終わってそこに答え(救いのようなもの)をもとめるなら「ノー」と言わざるを得ない。
たち返ることが必要で純粋なものに同調し、なじむこと、をヘッセはよく最上のもののように書くふしはあるけれど、ヘッセに限らずこの種の道徳をもった恋人は病に倒れるか何かして、早死にする場合がほとんどであるから、主人公が死を目前にして『そこ』へたち返ると確信したとしても、それこそメルヘンということもできるだろうし、だからこそ母を思うのだろうし、答えはいつもノーとなるわけ。
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ヘルマン・ヘッセの短編集。大人のための童話みたいな物語がたくさん収録されている。いくつか好きな作品があった。が、ヘッセの良さは短編では出きらないな、とも思った。なぜなら、ヘッセの良さというのは、人間が心の奥底で悩んでいることについて、それが自分自身にもよく言い表せないような状況において、それを見事なまでに文章化する点にある。そしてもっとすごいところは、さらに自分自身でもそこに存在していたことに気が付かなかったような細かな感情の揺れ動きまでを見事に表すことができる点にある。こんな事をするには長ーい前ふりと細やかな記述が必要なのだけれども、短編ではそこのところができなくなってしまう。なのでヘッセの作品は長編の方がいいと思う。