角川書店のレビュー一覧
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今から700年前の随筆であるが、現代にも通じるところが多い。
●無常迅速:考え方や価値観、繁栄、生死は常に変化
●牛を売る者:生死は常に身近にあり、死があるからこそ生が引き立つ。
●高名の木登り:ミスは油断したときに(安きとき)に起こる
●未完の完:あまりに完成された者は趣が無く、どこか欠けていたり、足りない方が趣があるものである。(そのためわざと未完で終わらせる建造物がある)
●蟻のごとくに:多くの人は名誉や金銭のために、蟻のようにあくせくしているが老いと死はすぐにやってくる。名利に明け暮れている人は、老いが近づいていることを意識しない(老いや死を恐れない)。一方で、無常の原理をわきまえず、 -
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東日本大震災が起きた時、私を打ちのめしたのは被害の大きさもさることながら、「東北の地理がわからない」ということだった。連日新聞やテレビのニュースで伝えられる被災地の市町村名を聞いても、そこが東北のどの辺りなのかわからず、とても申し訳なく思った。
翌年、現代ではなく別の角度から東北にアプローチしようと思って読んだのが松尾芭蕉の『おくのほそ道』である。江戸を発って、日光を経てから白河の関を越えて東北に入る。福島は内陸部を通るが、仙台からは海沿いを歩き、松島、石巻を経て平泉へ。険しい峠を越えて日本海側へ抜け、北陸を旅して岐阜の大垣に着くまでの約5ヶ月にわたる旅路だ。
旅情溢れる文章と、今 -
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蜻蛉日記
古典では男女の仲という単語を「世」と表すが、それを痛感できるような話であった。
道綱母にとっては兼家との関係は自分の人生そのものであり、辛いものとしても幸せなものとしても存在していたのだと思う。
最後のシーンが特に印象的で
'今年、いたう荒るることなくて、はだら雪、ふたたびばかりぞ降りつる'
兼家のおとづれが途絶えた日常を表しているが、金家に思い悲しんでいた日々と比べたらこちらの方が圧倒的に辛いと思う。
平坦であることの手持ちぶたさ、辛さを訴えられたような気がした。
自分の生活を振り返ってみると自分の身の回りにもこのような、こんなにも苦しいものなくなってしまえと -
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他人の作った和歌が読みたいなあ、、とふと思いまずは万葉集からでしょと手にとってみました。
万葉集はますらをぶりと言われるだけあって、一首一首が力強く、はっきりとしていて、直接的で感情がダイレクトに伝わる気がする。
悲しい歌は悲しく、恋しい歌は恋しく、1000年以上の時が経っても人が感情を動かされる場面は変わらず、私たちは遠い昔の人々のことを思い感情を動かされる。…とても素敵で素晴らしく、万葉集を読んでよかったと思いました。
好きな歌は笠郎女の歌で、大伴家持を恋しく想いながら歌った気持ちが痛いほど伝わります。
きっと彼女は燃えるように恋をして、耐えがたいほど悲しかったのでしょう。
君に恋ひ -
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「万葉集」は現存最古の歌集と言われている。二十巻。歌数は約4,540首。舒明天皇の時代(629年~641年)から天平宝字3年(759年)まで、約130年間の歌が収められている。700年から780年頃まで数次にわたる作業を経て、奈良時代末に現行の体裁が整ったという。
本書はその中から約140首を選んである。
1200年も前だというのに、歌われている風景が目の前に立ち上がり、心情が心に響く。これは同じ日本人だからだろうか。海外の人がこの本を読んでどのような感想を抱くのか興味がある。
最後に一首引用しておく。
田子の浦に うち出てて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける
田子の浦を通ってひろび -
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1ページに一句とその解説
ページに余白もあるせいか、読んでからゆったりと場面や季節を想像しながら俳句を味わうことができる
年代ごとに読み進めるようになっているので、芭蕉の年をとる毎の心境の変化などもわかりやすい
俳句はプレバトで見ていて面白いなと思い始めたレベル、自分で作るわけでもない。
だけれど、街道歩きや寺社巡りをしていると、あちこちに芭蕉の句碑があるので興味を持ちもう少し理解したいと思い本書を購入した
有名な句も改めて解説を読むと新鮮な発見もある
あー!これ、いいなーと思う句、うふっと声が出てしまうような楽しい気持ちになる句、色んな句に出会えてよかった -
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メンヘラとして心惹かれるものがあり読んでみました。
藤原道綱母のはかない結婚生活をテーマにした日記文学。
まず、現代語訳・原文・解説があり古文の勉強にもなるし、古文に詳しくなくても内容を理解できる。
解説では和歌の縁語など書かれているため勉強になる。受験生の時に出会いたかった…。
内容としては、自分以外の女のもとへ通う兼家を想い不安になる様子が多く書かれている。
いっそのこと出家した方がいいのか、死んだ方がマシと考える様子は今のメンヘラと相違ないし、気持ちが非常に理解できてつらいものがある。
最終的には兼家への気持ちも落ち着きつつあるが、それでもやはり夫婦関係が終わってしまうのは悲しい。。
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高校時代の修学旅行で馬籠に行った。是非とも読んでおくようにとの事で読む試みはしたが、多分数ページで挫折したハズだ。
ビギナーズ・クラシックスの試みは人によっては邪道と思われるかもしれないが、私は大方好感を持って読み続けられた。
あらすじ本だと、「読んだ感」は全く得られないし、かと言って、過去に挫折した本を再度トライしても読み切る自信は無い。そんな中で原作に触れながら背景説明をしてくれるのは本当に助かる。あたかも私設教師に講釈してもらいながら読み進める感覚。何でもそうだが、一度全体図が見えると、始める前には難しいと思っていた事が実は比較的簡単だったと思えてくる事がよくある。
野口悠紀雄氏に -
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新元号「令和」の出典は万葉集からとのことだが、はて万葉集というものの存在は知っているがついぞ読んだことがないと気づく。
せっかく興味を持ったものの万葉集に関する書籍は山のように出版されておりどうしたものかと悩んでいたところ、「ビギナーズ」の文字が躍る一冊を発見し手に取った次第である。
丁寧な解説のおかげで歌意をおおむね掴むことができ、大変ありがたい。
そして歌そのもののダイナミズム。
和歌というものに触れず生きてきたが美しい響きに込められた在りし日の人々の思いは現代に生きる我々に通じるところが少なからずあり、1000年以上受け継がれる伝統の霊力のようなものを感じた。 -
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1300年前には歌しかなかったからなのか、心の有り様を言葉で表現することにおいては現代人よりも遥かに上手(うわて)です。いや、というよりも、気持ちを言葉にすることって、現代人にとっては遠ざかってしまったことのような気もします。
風の様、土のにおい、草木花々の彩り香り、天気や月、星雲の形、誰かを想う気持ちーー。ありとあらゆるものを歌材にしようとする態度は、一瞬一瞬を楽しもうとする姿にも感じます。これほど豊かな表現で万物を歌い上げられる万葉人が我々を見たら、きっと嘆くんだろうなあ。
古典に触れ、その感情を現代で追体験することで、これまでよりずっと素直で豊かな生活が送れるものと思います。 -
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俳聖・松尾芭蕉の五ヶ月に渡る奥羽・北陸の旅日記。崇拝する西行の面影を偲び、雄大かつ過酷な自然に対峙し、源平合戦の昔を想う。紀行文に留まらない俳諧の真髄を貫く。
理由あっておくのほそ道を読もうと思ってそういえばビギクラにあったような……と思い手を取ってみた。文化文政の頃の文章は八犬伝読んでるけど元禄時代のやつって全然読んでないしましてや俳諧紀行文はめちゃ専門外だわ~となってしまった。ビギクラは最初に現代語訳で次に本文なんだけど文語文の簡素さに惚れ惚れしてしまったよね(そこ?
なんというかこの文章をそのまま旅行誌とかに載せてもいいなって思っちゃった。それくらいいろいろ浮かんでくるし実際におくのほ