角川書店のレビュー一覧
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フォロワーさんの本棚で見掛けた『竹取物語』。
子供の頃に知った"かぐや姫"は美しい部分を拾って繋げただけで、もはや竹取物語ではないかも。
それでも、求婚者に無理難題をふっかけて諦めさせる流れは、大人になってからどこかで聞き齧った。
とは言え、古典は初心者には読みづらい。
そこで角川のビギナーズ・クラシックス!
短いお話なので全編収録されていたのも嬉しい。
助かります~。
早速、読み始める。
すると、めちゃくちゃ面白い!!
「竹取物語」は、作者も正確な成立年度も不明。
それでも、「源氏物語」の中でも登場するので、平安時代には存在していたらしく。
子供の頃はおとぎ話として耳にしたけれど、
かぐや姫に最後まで求婚し続ける5人の貴公子にはモデルとされる実在人物がいた。
何も知らなかったのでビックリ。
彼らは皇族・大臣・大納言・中納言という貴族社会の上層で、彼らは物語の中で、かぐや姫にこてんぱんにやられることとなる。
中でも、石作りの皇子のモデルとされる丹比島(たじひのしま)と、庫持の皇子のモデルとされる藤原不比等は、求婚者達の中でも時間を割いて冷酷な権力主義者である人物像が語られ、「竹取物語」の作者が、藤原政権への批判を込めたのであろうとされる。
確かに、そうかもしれない。
この二人に限らず、貴族社会の最上位の人物達がかぐや姫に振り回され、次々と恥をかかされて退散してゆく様は、
当時「竹取物語」を読んだであろう庶民階級の人々にとって、さぞかし面白く痛快だったに違いない。
実際、現代を生きる私が読んでもとても面白いんだもの。
(中納言の結末はショッキングだけれど。)
この面白さと巧みなストーリー展開があったから、作者不明でありながら現在まで語り継がれてきたのだろうな。
しかもかぐや姫は翁に、「どうして結婚などということをするんですか?」と問い掛ける。
この時代、女性は男性に選ばれる側で、妻となり子孫繁栄に尽くすのが当たり前の男性中心社会。
実際つい最近まで男尊女卑の世が続いていたわけだし、現在も完全なる男女平等とは言えない。
そんな中「竹取物語」の作者は、「月という異界から現れた姫」という立場を上手く使って、「女は結婚するものだと決まっているのか?なぜ結婚しなきゃいけないのか?」と問い掛ける。
なんて新しい!
遥か昔、中古の時代に、その時代の"当たり前"に疑問を投じる方が居たなんて!
面白く読めたのは、元々の「竹取物語」のストーリーが面白かった事に加え、
ビギナーズ・クラシックスが上手く作られていたのもある。
本文を短く区切り、『現代語訳』→『ルビのふられた原文』→『解説や捕捉、参考資料』の順で読み進めてゆくことが出来る。
現代語訳を読んでからの原文であり、しかも短い為、苦にならない。
むしろ原文ならではの柔らかな言葉の響きに趣を感じるし、
途中やり取りされる男達とかぐや姫の和歌も韻を踏んでいて、原文で読めることの喜びさえ感じる。
5人の貴公子たちの話にはそれぞれオチもついていたりして、まるで落語のようだし。
武田友宏さんの解説も興味深い。
竹取りの翁は神事にかかわる仕事をしていただとか、
本文の古語がどのように変化して活用形へと発展したのか、現在使われている言葉の語源は何か、
遭難の描写は遣唐使派遣の記事に基づいている…等々。
そしてなんと言っても、その武田さんの解釈文が辛口で笑える。
辛辣に言い放っている部分も多いので、それが面白味を増してくれるのだ。
「竹取物語」をリアルタイムで読んだであろう庶民の皆さんは、傲慢な権力者を自分達に代わってやり込めてくれるかぐや姫に、清々しい思いさえ抱いたに違いない。
末長く語り継がれるって、やはり大衆の心をどれほど掴むか?ってことなんじゃないかなぁと改めて思う。
政権を繋げていくのは上層部だけれど、習慣や流行りを作り上げるのは、いつの世もきっと大衆だろうから。
さて、物語は帝の登場によりぐっと盛り上りをみせる。
前半の面白おかしい痛快話から一転、人の情を描く美しい話へと自然に展開してゆく。
散々な目に遭わされた5人の貴公子たちも、やはり帝の前座に過ぎないと思えてしまう程。
帝もかぐや姫に夢中になってしまうことは変わりないのだが、さすがに帝となる人の立ち振舞いは節度がある。
というか、前座の5人が節操無さ過ぎで、帝は至極当たり前の行動をとっているだけなのだろうが。
さらに、かぐや姫にも変化が起きていた。
5人の貴公子たちとのやり取り、竹取りの翁と媼との生活、これらの日々は、かぐや姫に"人としての情"をもたらした。
彼女の心が、成長したのだ。
いや、成長というより、「天上人であったはずのかぐや姫が、今や地上の人と同じように、情や愛で心を痛めるほどに変わった」という風にこの物語を見た方が、作者の意図に近付くことが出来るのかな?
物語の終盤でかぐや姫は、月の都の人は美しく年もとらず悩みもないという。
その月の都の姫であるかぐや姫は、地上には老いや病、そして死があること、人の人生の儚さや、この世の無情を心で学んだのだ。
そう思うと、初めはじゃじゃ馬娘だったかぐや姫が地上界で様々な経験を積み、愛や悲しみ、人情、無情を学んだというのに、
最終的には天の羽衣を着た瞬間にそれらの心を忘れて天上界へと昇天してしまうのが腑に落ちない。
ならば何故、人の心を学びにやって来たのだろう。
しかし、そもそも"人の心を学びに…"と思っていること事態が私の傲慢なのか。
だって天からかぐや姫を迎えにきた王は言うではないか、"姫は罪を犯したので、汚れた地上の、こんな身分の低い翁の家に滞在させたのだ"と。
だが、姫が月の都でどのような罪を犯したのかは、最後まで一切語られない。
何をしてしまったんだろう。
更に、天の羽衣を羽織って忘れてしまったかぐや姫はまだいい、富士の山頂で薬や文を燃やすことで踏ん切りをつけるであろう帝もいい、
けれど年老いた翁と媼にはあまりの仕打ちではないか。
慎ましく暮らしてきたであろう二人には、何の罪もないのに。
けれど天上の者からみれば、地上は汚れた場所であり、罪人が罰を受ける場所。
地上の者がどう足掻こうと、天上の者には敵わない。
前半の藤原政権批判も、そこには、庶民がどう足掻こうと敵わない権力者の君臨があったのだろうが、
後半の部分にも、有無をいわさず"汚れ"と扱われてしまう理不尽さや、どうにも抗えない天と地の差が描かれている。
この『竹取物語』、ただの人間模様だけでなく、様々な意味合いを内包した奥深い物語なのだと気付かされる。
他にも、言葉の選び方、伝説の引用、キャラクター選び、オチのつけかた、物語の経過年数や翁の年齢など、作者が実に巧み。
ここまでの物語を描ける作者だもの、他に作品を残していないのだろうか。
実は現在に名を残す、誰かだったりしないのだろうか。
それとも、語り継がれ書き写されしていくうちに、色々な人の技巧が加えられていったのだろうか。
勉強不足で、そこまでは分からないが。
子供の頃に聞かされた"かぐや姫"の記憶が、ただ美しい悲恋物語でおしまいとなっていたのが勿体なかったと思えるほどだ。
改めて読み直す事が出来て本当に良かった。
有意義な時間だった。
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Posted by ブクログ
膨大な古典であるにもかかわらず、謎多い奇書、それが、今昔物語集である。
1120年ごろに成立しているようだが、作者もわからないし、成立時の資料もなく、しかも、600年近くも歴史の闇に眠っていた書なのである。
膨大なライブラリーなのに、その痕跡すら歴史には残っていない。
今は昔 で始まる冒頭、となむ語り伝へたるとや で終わる文末 できわめて独創的な形式でできている。
説話集、それも、インド:天竺部、中国:震旦部、日本:本朝部(仏法部、世俗部)からなっていて、31巻千数十話に及ぶ。
今昔物語集をよみがえらせたのは、芥川龍之介である。
「羅生門」「鼻」「芋粥」は、今昔物語集から取材している。
安倍晴明、弘法大師の法力合戦、前妻のミイラと交わう男、
女の生霊が夫ととりころす、平安京の夜に跳梁跋扈する百鬼夜行。
広大な今昔物語集の人生観、世界観に魅了される。
目次
インド(天竺)・中国(震旦)部
・志をたて、王妃マヤ夫人の腹に宿るシャカボサツ
・悟りを開いて、ブツダとなったシッダールタ太子
・死に臨んで、息子ラゴラに父の情愛を示すシャカ
・この世の親子の情愛も通用しないあの世の現実
・炎に飛び込み、身を焼いて食事に差し出したウサギ
・盗みに失敗して親を殺した過去をもつ新人の国王
日本(本朝)部
・法力を競い合い、ライバルを祈り殺した弘法大師
・美女の色しかけのおかげで、学者となった青年僧
・洪水に流され、愛児を捨てて老いた母を助けた男
・清少納言の夫、剛刀一閃、強盗一味を斬り捨てる
・力士を杖のように振りまわした怪力のチビ学生
・矢竹を指で押し砕き、強盗もふるえた怪力の美女
・画伯と名工の大勝負―死体画像とからくり仏堂
・美人患者の色香にふりまわされた好色の老医師
・陰陽道の大スター安倍晴明が操った恐るべき呪術
・紫式部の父、絶妙の詩によって念願の国守となる
・以心伝心の妙技で馬盗人を射殺した武人の親子
・捨てられた女の生霊、薄情な相手の男をとり殺す
・捨てられて窮死した前妻のミイラと愛し合った侍
・変装した自分の妻に言い寄り、なぐられた軽薄男
・全裸になって追いはぎを笑わせ、危機を逃れた役人
・長大な鼻をゆでては脂抜きをする高僧の食事風景
・谷底に落ちても茸取りをする、がめつい役人根性
・色香と鞭で若い男を調教する、盗賊団の美人首領
・死体の捨て場所だった羅城門のある夜のできごと
・名刀と交換した弓矢でおどされ、妻を犯された夫
・部下の公文書を偽造させ、殺害した極悪非道の上司
・天下の色事師を焦がれ死にさせた氷のような美女
・妻の悪口に乗せられ、老いた姨母を山に捨てた夫
解説
「今昔物語集」 作品紹介
付録
「今昔物語集」探求情報
「今昔物語集」組織内容
官位相当表
「今昔物語集」参考地図
ISBN:9784043574094
出版社:KADOKAWA
判型:文庫
ページ数:290ページ
定価:720円(本体)
発行年月日:2002年03月
発売日:2002年03月25日初版
発売日:2005年11月05日9版 -
Posted by ブクログ
吉田兼好こと、卜部兼好とされている。兼好法師の死後、草庵に残っていたものを、まとめたもので、243段あり。
ビギナーズ・クラシックスは、よい部分の抜粋で、しかも、現代訳と原文、解説となっていて、比べながら読める。
文庫版もあって、すきなところ、感じるところ、ぱらぱらと辞書感覚で気軽に読めるのがいい。
冒頭しか知らなくても、こういったダイジェスト版で拾い読みをして、やがては作品全体を知ろうとするものです。
また、各段も、すべてが大事ではく、そのところどころを読むだけでも十分役に立てるかと存じます。
序段
つれづれなるままに、日暮らし硯に向かひて、心にうつりゆく由なしごとを、そこはかとなく書き付くれば、あやしうこそもの狂ほしけれ
今日はこれといった用事もない。のんびりと独りくつろいで、一日中机に向かって、心をよぎる気まぐれなことを、なんのあてもなく書きつけてみる。すると、しだいに現実感覚がなくなって、なんだか不思議の世界に引き込まれていくような気分になる
3段
よろづにいみじくとも、色好まらざらむ男は、いとさうざうしく、玉のさかづきの当なき心地どすべき
どんなにすばらしくても、恋の真味を知らない男は、非常に物足りない、みごとな玉製の盃の底が抜けたように、見かけだけで男の魅力が欠けている
8段
世の人の心惑はすこと、色欲にはしかず、人の心は愚かなるものかな
色欲ほど人間を迷わせるものはない、なんて人間はばかなんだろう
19段
折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ
四季の移り変わるようすは、何につけても心にしみるものがある
29段
静かに思へば、よろづに過ぎにしかたの恋しさのみぞ、せむかたなき
心静かに思い出にふけると、何事につけ、過ぎた昔の恋しさだけがどうしようもなくつのってくる
30段
人の亡き後ばかり悲しきはなし
人の死後ほど、悲しいものはない
75段
つれづれわぶる人は、いかなる心ならむ 紛るる方なく、ただ独りあるのみこそよけれ
時間を持て余す人の気がしれない 何の用事ものかくて、独りでいるのが、人間にとっては最高なのだ
79段
よき人は知りたることとて、さのみ知り顔には言う
立派な人は知っていても、知ったかぶりをしないものだ
108段
寸陰惜しむ人なし
短い時間を積み重ねて大切に使う人はいないものだ
109段
過ちは、やすき所になりて、必ず、仕ることに候ふ
失敗というものはきまって、なんでもないところで、やらかすものなんです
155段
世に従はむ人は、先づ機嫌を知るべし
世の中の動きにうまく合わせようとするなら、なんといっても時期を見逃さないことだ
170段
さしたることなくて人のがり行くは、よからぬことなり
大した用事もないのに、人を訪ねるのはよくない
175段
世には心得ぬことの多きなり
この世の中には、わけのわからないことが多いものだ
233段
よろづのとがあらじと思はば、何事にもまことありて、人を分かずうやうやしく、言葉少なからむにはしかじ。
人前でどんな過失もないようにしたい、と思ったら、何事にも誠意をもって当たり、人を差別せず礼儀正しく、よけいな口をきかないのが最上である
243段
問ひ詰められて、え答へずなり侍りつ
問い詰められて、応えられなくなりました
(兼好の父が、8歳の兼好に問い詰められたのをかたっています) 了
目次 ()は段数
自己発見の道へ つれづれなるままに(序)
出世の本道とは いでや、この世に生まれては(1)
政治の倫理規正 いにしへの聖(2)
いい男の条件 よろづにいみじくとも(3)
長寿への警鐘 あだし野の露(7)
女の色香の威力 世の人の心(8)
住まいは人なり 家居の、つきづきしく(10)
蜜柑の木を囲う独占欲 神無月のころ(11)
友あれど心の友はなし 同じ心ならむ人(12)
読書は古人との対話 独りともし火のもとに(13)
旅は心のシャワー いづくにもあれ(15)
四季の移り変わり 折節の移り変はるこそ(19)
むなしい欲望の遺跡 飛鳥川の淵瀬(25)
思い出は心をうるおす 静かに思へば(29)
葬儀と後日談 人の亡き後ばかり(30)
月見る女の心配り 9月20日のころ(32)
悪筆は個性の表現 手のわろき人の(35)
ばかを嘲る大ばかもの 5月5日、賀茂の競べ馬(41)
独善の悲哀 仁和寺にある法師(52)
住まいは夏向きに 家の作りやうは(55)
会話のマナー 久しく隔たりて(56)
求道者の覚悟 大事を思ひ立たむ人(59)
芋代に財産食いつぶす 真乗院に、盛親僧都とて(60)
謎文字の歌 延政門院いときなく(62)
既視体験のふしぎ 名を聞くより(71)
「うそ」の分析 世に語り伝ふること(73)
利に群がる蟻人間 蟻のごとくに(74)
孤独の哲学 つれつれわぶる人(75)
軽薄人間の定義 今様のこととも(78)
無能の能ということ 何事も入り立たぬ(79)
未完の完ということ 羅の表紙は(82)
偽善も善、偽悪も悪 人の心素直ならねば(85)
滑稽なる骨董品 ある者、小野道風の書ける(88)
怪獣猫またの正体 奥山に猫また(89)
決心即実行の難しさ ある人、弓射ること(92)
生と死は隠れたコンビ 牛を売る者(93)
過度の執心は破滅のもと その物に付きて(97)
生き字引の翁又五郎 尹大納言光忠入道(102)
男は女に磨かれる 女のもの言ひ掛けたる(107)
女の本性ねじけ論 かく人の恥ぢらるる女(107)
人生はこの一瞬の積み重ね 寸陰惜しむ人(108)
安心にひそむ危険 高名の木登り(109)
勝つ思うな、負けぬと思え 双六の上手(110)
分相応にふるまえ 40にも余りぬる人(113)
良友と悪友の条件 友とするにわろきもの(117)
鰹の生食の始まり 鎌倉の海に(119)
ペット飼育批判 養ひ飼ふ物には(121)
男子の必修科目 人の才能は(122)
鏡に映る醜い顔 高倉院の法華堂の三昧僧(134)
始めと終わりの美学 花は盛りに(137)
生前の心得 身死して財残る(140)
京・関東の比較論 悲田院の尭蓮上人は(141)
家族愛の政治論 心なしと見ゆる者(142)
ありのままの死 人の終焉のありさま(143)
理想の老境 ある人のいはく(151)
無常迅速ということ 世に従はむ人(155)
春の日の雪仏 人間の営みあへるわざ(166)
訪問のマナー さしたることなくて(170)
自己本位を貫け 貝を覆ふ人の(171)
酔いどれ百態 世には心得ぬこと(175)
人生は一点突破 ある者、子を法師に(188)
独身礼賛論 妻というものこそ(190)
夜の輝き 夜に入りて(191)
「うそ」と人間鑑定 達人の人を見る眼(194)
非理には非理を 人の田を論ずる者(209)
味噌の酒肴 平宣時朝臣、老いののち(215)
貧富平等論 ある大福長者(217)
技と道具との連携 よき細工は(229)
無技巧の技巧 園の別当入道は(231)
社交の極意 よろづのとがあらじ(233)
主体ある精神を 主ある家には(235)
ずっこけた感涙 丹波に出雲という所(236)
すり寄る美女をかわす意地 2月15日、月明かき夜(238)
父と問答の思い出 八つになりし年(243)
解説 兼好と「徒然草」 作者・作品の紹介
付録
「徒然草」探求情報
兼好略年譜
「徒然草」参考系図
卜部氏系図
天皇家略系図
平氏(北条・大仏・金沢)略系図
堀川家系図
「徒然草」関係京都略地図
ISBN:9784043574087
出版社:KADOKAWA
判型:文庫
ページ数:306ページ
定価:720円(本体)
発行年月日:2002年01月
発売日:2002年01月25日初版
発売日:2015年08月25日39版 -
Posted by ブクログ
やわらかく、日本人らしい奥ゆかし表現で、初夏から、晩秋にかけての風情がよい。
「おくのほそ道」とも、「奥の細道」とも。本書は前者を採用している。松尾芭蕉と、弟子曾良との、俳句付きの旅行記である。
1689年元禄2年3月27日深川を出発し、日光、仙台、鳴子、酒田、新潟、直江津、高岡、敦賀、大垣、を回って、9月8日に、伊勢長嶋に至る。
松尾芭蕉に同行した、曾良とは、出発以来、山中温泉まで同行、曾良は親戚を頼って伊勢へ、芭蕉は、そのあと越前、近江を回って、伊勢長島で再び曾良と合流するというもの。
もともと、伊賀上野の無足人の準武士であった、松尾家の出身であり、のち江戸に下り、俳諧で、俳聖と呼ばれるようになる。
野ざらし紀行、鹿島紀行、更科紀行、嵯峨日記など。
月日は百代の過客にして、行かふ年もまた旅人なり
・行く春や鳥啼き魚の目は涙 千住
・早苗とる手もとや昔しのぶ摺り 福島 信夫の里
・夏草や兵どもが夢の跡 平泉
・五月雨の降り残してや光堂 平泉
・閑かさや岩にしみ入る蝉の声 立石寺
・五月雨をあつめて早し最上川 奥州 大石田
・荒海や佐渡に横たふ天の河 越後
・一つ家に遊女も寝たり萩と月 越後 市振の関
・赤々と日はつれなくも秋の風 金沢
・むざんやな甲の下のきりぎりす 小松 多太神社
・石山の石より白し秋の風 山中温泉
・よもすがら秋風聞くや裏の山 加賀 全昌寺
・月清し遊行の持てる砂の上 敦賀 気比神宮
・蛤のふたみに別れ行く秋ぞ 大垣 これがおくのほそ道の、終句です。
目次
人生は旅―みちのく憧憬
旅立ち―弥生のあけぼの
草加の宿―旅の第一夜
室の八島―木の花咲耶姫
日光―仏五左衛門の宿
黒髪山―同行者曾良
那須野―八重撫子のかさね
黒羽―玉藻の前・那須の与一
雲巌寺―禅の師仏頂和尚の庵
殺生石―那須温泉〔ほか〕
葦野の柳―西行の遊行柳
白河の関―白妙の卯の花
須賀川―風流の初め
栗の花―遁世の境地
浅香山―浅香の沼のかつみ
信夫の里―しのぶもじ摺りの石
飯塚の里―佐藤氏の遺跡
飯塚―飯塚温泉の一夜
笠島―五月雨の道
武隈の松―岩沼の二木の松
宮城野―仙台の名所見物
壺の碑―多賀城出土の石碑
末の松山・塩竃の浦―琵琶法師の奥浄瑠璃
塩竃神社―和泉三郎の宝灯
松島―造化の天工
松島―雄島が磯
松島―瑞巌寺
石巻―繁華な港町
平泉―高舘・光堂
尿前の関―人馬同居の宿
山刀伐峠―危険な山越え
尾花沢―紅花と蚕飼い
立石寺―岩にしみ入る蝉の声
最上川―五月雨を集めた急流
出羽三山―羽黒山
出羽三山―月山・湯殿山
酒田―海上の夕涼み
象潟―能因島・ねぶの花
越後路―佐渡の夜空の天の河
市振―遊女と萩と月
越中路―黒部川・那古の浦
金沢―愛弟子の早世
多太神社―実盛の甲
那谷―白秋の風
山中―温泉宿の美談
別離―曾良の病気
全昌寺―一夜の隔て
汐越の松―西行の歌
天竜寺・永平寺―北枝との別れ
福井―等栽という陰士
敦賀―気比神宮と遊行上人
種の浜―ますほの小貝
大垣―終着、そして新たなる旅路へ
ISBN:9784043574025
出版社:KADOKAWA
判型:文庫
ページ数:258ページ
定価:680円(本体)
発売日:2002年06月15日 第4版 -
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言うまでもなく、最古の当時の全層の人々から収集した歌集である「万葉集」の入門書というか、「ビギナーズ クラシックス」な、ガイドブックである。
義務教育にも、万葉集を取り上げられていて、今さら入門もないとおもうし、日本史史上初の、五経四書以外で、万葉集から引用された年号の令和の出典元であることから近年存在感が大きいとは思いますが。
万葉集には、4期の編纂があって、20巻には、それぞれの特徴がある。さまざまな写本がつたえられていて、収録された歌の数は、4500あまりとされている。
この書は、4540首を採用しているようだが、同じ、角川ソフィア文庫の新版「万葉集」全4巻の合計は、4516首である。
万葉の葉とは年という意味で、いつまでも(1万年後でも)残る歌集であるという当時の意気込みが伝わってきます。
・枕言葉 ある語の前に置かれる決まった表現 千早振る+神代もきかず... 300弱あり、他にも、序詞(じょことば)がある
・長歌と反歌 長歌とは、七五調でかかられた長文の歌であり、その歌を受けて、続けれられる 五七五七七の短歌が、反歌である。長歌は、260余首あり、他の歌集には、ない多さである。
・部立(ぶだて) 歌の種類をいう。
挽歌 死者を悼む歌
相聞 恋、情をうたった歌
雑歌 挽歌でも、相聞でもない歌
正述心緒 心情をまっすぐに述べる
寄物陳思 事物に託して心情をのべる
他 東歌 東国の人の歌
・万葉集の成立 本書によれば、雄略天皇や磐姫皇后の伝承歌を除くと、629年から759年までの130年の歌が収められている。その成立は、700年から780年ごろにかけてとある。
4期にわたっているようであり、母体となったテキストに追加されている形で、膨大なアーカイブが成立したようだ。
構成は、2部20巻
第1部
巻1 各天皇の歌、雑歌
巻2 各天皇の歌、相聞、挽歌 これが、第1期、第2期になる
巻3 第3期、第4期
巻4 同上 相聞
巻5 大伴旅人、山上憶良を中心といた大宰府官人の歌、漢詩を含む
巻6 雑歌、 ここまですべて歌人が判明
巻7 すべてよみびと知らず 雑歌、譬喩歌、挽歌の3部からなる、旋頭歌25首、人麻呂歌集から60首
巻8 四季の歌、雑歌と相聞
巻9 雑歌、相聞、挽歌の3部
巻10 四季の歌、雑歌、相聞、ほとんど、よみびと知らず、人麻呂歌集より70首
巻11 2巻セットで、古今相聞往来歌上
巻12 2巻セットで、古今相聞往来歌下
巻13 大和あたりの長歌 よみびと知らず
巻14 東歌 よみびと知らず
巻15 部立はなく、遣新羅使節の歌、中臣宅守と狭野弟上娘子の贈答歌群
巻16 由縁有る雑歌 伝説歌、地方民謡 巻15,16は、付属ではないかと推測している
第2部 大伴家持編
巻17 家持の歌が日次で巻19までが収められている。
巻18 同上
巻19 同上
巻20 防人の歌(家持が役人として担当していた)
掲載されていた歌の中でこれはと思ったのはこの3首でした。
悲劇の皇子、有間皇子の歌
家にあれば 笥に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る(142)
笠郎女
わが形見 見つつ思はせ あらたまの 年の緒長く われも思はむ(587)
遣唐使の母 反歌
旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 吾が子羽ぐくめ 天の鶴群(1791) -
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神田の古本まつりに行ったときに100円で売られているのを見つけて、松尾芭蕉かあ、人生で一度は読んでみたい気がしなくもないなあ、ということで購入。俳句なんか中学のときに夏休みの課題で覚えた「月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど(大江千里)」くらいしか知らないし(いや待てよこれは百人一首だ俳句ですらない)、大人になってからは月に何回かプレバトで梅沢富美男の句がけちょんけちょんに酷評されているのを見るくらいしかないのだけれど。
読んでみたら意外とおもしろかった。本の構成が素晴らしかったと思う。松尾芭蕉が書いた文章の現代語訳→原文→俳句の解説→他の古歌の紹介など追加情報、という順番になっているから、最初に原文を見てしまって「うわ意味わかんねえ」と及び腰になる隙を与え図に読み進めることを可能にしてくれた。自分が過去に行ったことのある地名が出てきたらにわかに心躍ったし、句の解説もわかりやすかった。17音ではなかなか自力で詳細までは想像が及ばないけれど、解説を読んでみたらああこの言葉の裏にはそういうことが内包されていたのかとか、この時の芭蕉にはそういう背景があったのかとか、感心することが多かった。少し前にあるテレビで番組で東大生が初めて俳句作りに挑戦していたけれど、自分の頭の中にだけあるコンテクストを17音の中に入れ込みすぎて、結果的に読み手には何も伝わらない意味不明な句になっている、と指導者の方に指摘されていたのを見た。入れ込みすぎてもダメ、かといって見えたり感じたりしたものをそのまま文字にしただけでもダメ。どんなに頭が良くても、いろいろな知識があっても、そういったバランスは一朝一夕に得られるものではないんだなあと思ったのを覚えている。
気に入った句がいくつかあったのでメモした。どこかに旅行したり似たような心境になったりしたときに、地名や単語を少し変えて自分流にモディファイしてみたら楽しそうだなあ(もちろん出典を明らかにした上で)。自分でゼロから句を詠むのは、まだまだ無理、、、 -
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『平家物語』は、貴族社会から武家社会への変革の中で滅びていった平家一門への「長大な弔辞」「慰霊の深い祈り」であるという。
平家一門が主人公であるため、とにかく登場人物が多い。何度も巻末の「桓武平氏系図」を参照しながら読んだ。有名な部分はいくつか読んでいたので知っているつもりでいたものの、初めて知ることがたくさんあった。もちろん簡単なあらすじだけがまとめられている部分が多いので、まだまだ知らないことだらけだ。
でも、さすが「ビギナーズ・クラッシクス」。わかりやすい現代語訳と解説。巻末には研究案内書や史跡などの史料があって、どんどん調べたくなってくる。古語のちょっとしたニュアンスの違いも感じながら原文で読めるようになりたいなぁ。 -
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アニメ平家物語が非常に面白く、河出書房の原作を読む前の予習として。
いつも通り訳文・原文・寸評・コラムで理解が深まりつつ原文にも触れることができる。
しかもこの平家物語に関しては、重要な部分は原文訳文が出るものの、他の部分もあらすじを書いてくれてるので途中の流れが切れずに理解できる!とてもありがたいしあらすじだけで面白くてちゃんと全部読みたくなった。
清盛の時代に栄華を極めた平家。平家物語は滅びゆく平家に焦点をあて語り、初っ端から不穏な空気が漂う…。アニメを見ていると映像化されているので、あの姿が頭に浮かんでくる。これがなんとも辛い。
心に残った話は忠度が俊成に形見の歌を託して都落ちする話、木曾義仲の最期、敦盛の最期、維盛の最期、壇の浦の合戦。
歴史に翻弄され命を捨てて逝く平家たち…入水する場面が辛い。重い鎧をつけたまま水に入るのだから言葉にできないほど苦しかっただろう。
維盛や敦盛は時代や生まれた家が違えば幸せに生きられたかもしれない。歴史にifはないが、どうしても考えてしまう。これからアニメでこの場面を見るのが辛い…。
そして源氏と平家は争っているものの、これもまた時代や境遇が違えばお互いが手をとって歩むことが出来たのではと考えてしまう。平家物語は辛い…。