角川書店のレビュー一覧
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『平家物語』は、貴族社会から武家社会への変革の中で滅びていった平家一門への「長大な弔辞」「慰霊の深い祈り」であるという。
平家一門が主人公であるため、とにかく登場人物が多い。何度も巻末の「桓武平氏系図」を参照しながら読んだ。有名な部分はいくつか読んでいたので知っているつもりでいたものの、初めて知ることがたくさんあった。もちろん簡単なあらすじだけがまとめられている部分が多いので、まだまだ知らないことだらけだ。
でも、さすが「ビギナーズ・クラッシクス」。わかりやすい現代語訳と解説。巻末には研究案内書や史跡などの史料があって、どんどん調べたくなってくる。古語のちょっとしたニュアンスの違いも感じ -
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アニメ平家物語が非常に面白く、河出書房の原作を読む前の予習として。
いつも通り訳文・原文・寸評・コラムで理解が深まりつつ原文にも触れることができる。
しかもこの平家物語に関しては、重要な部分は原文訳文が出るものの、他の部分もあらすじを書いてくれてるので途中の流れが切れずに理解できる!とてもありがたいしあらすじだけで面白くてちゃんと全部読みたくなった。
清盛の時代に栄華を極めた平家。平家物語は滅びゆく平家に焦点をあて語り、初っ端から不穏な空気が漂う…。アニメを見ていると映像化されているので、あの姿が頭に浮かんでくる。これがなんとも辛い。
心に残った話は忠度が俊成に形見の歌を託して都落ちする話 -
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正直、私の中の松尾芭蕉のイメージは『ギャグマンガ日和』の芭蕉でしかなかった。
改めてこの『おくのほそ道』を読むと、松尾芭蕉というひとの人間性の一端が垣間見える。
’俳聖’と呼ばれるような人物でも愚痴も溢すし疲れもするし気の合う人と会えばちょっとだらけもする
し師匠リスペクトが過ぎる面もあるし…なんとも親しみを感じる。
驚異の移動力には素直にびっくり。夕飯食べてから普通に出かける距離ではないような気が。
俳句そのものに対してどうこうは言えないが、自然や景色、更には自分の心に対して本当に素直に真で向き合っているのだな、という事は感じる。
ビギナーズクラシックスらしく読みやすい。
地図・年譜 -
ネタバレ 購入済み
短編集
一部ご紹介します。
『炎に飛び込み、身を焼いて食事に差し出したウサギ』:昔々、とある場所で、行き倒れた老人を、ウサギとキツネとサルが見つけた。
キツネとサルは、食べ物を探してまわり、老人に与えた。だが、非力なウサギだけは、何も与えることができなかった。
そこで、ウサギは、キツネとサルに焚き火の準備を頼んだ。彼等が火を起こしたところで、ウサギは言った。
「僕には食べ物を探し出す力がありません。だから、僕の体を焼いて食べてください。」と言うや、 たちまちウサギは炎の中に踊り込んで焼け死んだ。
このとき、老人に変身していた神は、このウサギが火に飛び込んだときの姿を、そのまま月の中 -
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学校で必ず習う冒頭の「月日は百代の・・・」以外の部分を初めてまともに(大半は現代語訳で)通読。
風情ある景色の移ろいを書き留めているのかと思うとそうでもない。土産を持たされても重たいだけだし、宿だって道中どこにでもあるわけではなく、冷たい土間で一夜を明かすこともある。奥羽の関所では旅人自体が珍しく通過も難儀する。
そんなようなことを、李白だの西行だのの基本的教養を下敷きに書き綴っている、と言われてもそうわかるものでもない。
それでも旅好きの人が読めば「あーこのあたりか。ルートは今と同じだなー」といった楽しみ方はある。個人的にツボだったのは山形「出羽三山」参詣の下り。ここ数年来、ここを踏破し -
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ネタバレ断片的には読んできたが、今回初めて通して読んだ。
内容はあまりにも有名だが、こうやって通して読むと、松尾芭蕉という一人の天才の魂の軌跡みたいなものが浮かび上がってくる。すでに俳諧の世界ではトップに君臨しながらも全てを捨てて旅を続ける心境がなんとなく分かることで、その俳句の精神世界が少し理解できたような気がする。
ある意味、究極のロードノベル。
詳しい日本語や、旅の経緯が入った地図、俳句の説明など、私みたいに古語や俳句に疎い人間にも分かるように丁寧に編纂されていて本当にありがたかった。入門書として最適で、これを読むと、芭蕉や俳諧の世界がもっと詳しく知りたくなった。 -
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一応中学・高校で古文はやったが、あまり馴染むこともできず、その後はすっかりご無沙汰、でも古典にまったく興味がないわけでもない……といった向き(つまり僕だが)にはありがた過ぎる角川文庫の「ビギナーズ・クラシック」シリーズの中の一冊。
「おくのほそ道」自体は短い作品なので、全文が収載されているが、本書ではそれを場面ごとに細かく項分けしている。各項は現代語訳→原文→解説で構成されるが、これとは別に随所に理解を助けるためのコラムが挿入されている。現代語訳と原文は総ルビ。巻末では「解説」で芭蕉の人物伝と、「おくのほそ道」全体の概説がなされ、「付録」には本作の旅程図、芭蕉の年譜などが付く。まさに至れり尽 -
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旅行記書きとして、そして俳句の読み手として(どっちも中途半端ですが)、一度は読んでおかねばとかねがね思っていた古典。
平泉のような有名なくだりは勿論読んだ事がありますが、通して触れてみると、なぜ芭蕉があんなにも平泉に思い入れがあったのかよく理解できます。
それにしても、驚くほどの簡にして要を得た文章です。本文に対し、訳文(通釈)の長いこと長いこと。こういう物の書き方、爪の垢でも煎じて飲んで学ばなければなりません。
ビギナーズ・クラッシクスと銘打たれた本シリーズは初めて読みましたが、文字通り初心者にはサクサク読めてありがたい編集です。
冒頭の一文を「時は永遠の旅人である。」と訳すこの編者、割 -
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古文への最初の出会いとその後の一般的な付き合い方が、日本人を古典から決定的に引き離していると思います。
「ビギナーズ・クラシックス」シリーズは、原文の直訳だけではなく、訳文の中に解説的な補足と文意をより理解しやくする表現を加筆してくれています。
例えば有名な序段の一文。訳文の括弧内は、訳者の配慮で加筆されたと思われる表現です。
原文
つれづれなるままに、日暮し硯に向かひて、心にうつりゆく由なしごとを、そこはかとなく書き付くれば、あやしうこそもの狂ほしけれ。
訳文
(今日はこれといった用事もない。のんびりと独りくつろいで、)一日中机に向かって、心をよぎる気まぐれなことを、なんのあてもなく書 -
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歴史と名勝を訪ねて、風流を味わう徒歩の旅。それは辛い路だったでしょうが、毎日おなじ時間に起きて、毎日おなじ場所に勤める者としては、憧れてします。
「だったらさ、あんたもやったらいいじゃない」
もし声をかけてくれるようなことがあったなら、芭蕉さんにはそんな風に言われそうだな。
おかしみのある章から、もの哀しい章、愚痴っぽい記事、ちょっと自慢っぽい記事まで、現代でいえば旅ブロクのような感じでも楽しめます。
毎日書き続けた日記的なものとは違って、全旅程が終わってから時間をかけて最終稿に至ったものだそうですから、各章に漂う情緒、各章のつながり、要するに構成にも相当にこだわって作られたのでしょう