早見和真のレビュー一覧
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ネタバレ状況が二転三転とする展開に1ページも飽きる瞬間がなく、とても面白い作品だった。
主人公と野口の対比が素晴らしかった。読み終わってから考えると、共通点が多く親友の野口の噂とセットで自分もパパ活をしているという匂わせは、相手が離婚した父親である伏線となっていて驚かされた。
何ページか前で伏線回収をして確信させてからそれを書くというのが新しかった。普通は言わなくてもわかるだろ?と書かないか、伏線を貼らないかのどちらかだ。おそらく小学生が読むか本を読み慣れている大人で評価が星一個変わるのではないだろうか。具体的には上記+初詣での邂逅、主題にもなっている家族の幸せの形を本屋で店員に質問した時に不自然にメ -
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自分のイヤだとおもっていたところをぐりぐり抉られて問題に直面させられるのに、章の最後にはなぜか前を向く勇気をくれる、不思議で素敵な短編集だった。
私は少し前から、人のためにしか頑張れないのは大問題だよなぁ、と悩むことが多くなった。共感性が高すぎることも。どちらも聞こえは良さそうだけど、全然良くない。
なぜならどこまでいっても人間は結局ひとりで、孤独な生き物だから。人は、前触れもなく、いとも簡単に、私の前からいなくなるから。自分のためじゃなく、人の為にしか頑張れないなんて、これほど危ういことはない。
共感性が高いのは、たぶん、自他境界が甘すぎるから。良い感情ならまだいいけど、悪い感情も、相手の -
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甲子園に向けて頑張るという高校球児の話は、まだ読んだことはないけれど多分あるのだろうと思うけれど、ここではその高校球児の母を中心に展開されています。
自分の子どもは野球をしているわけではありませんが、もう感情移入が半端なかったです。
そうか、全国の高校球児の母は皆、こんな気持ちで子どもを見守っているのだろうな。
主人公の菜々子は、シングルマザーで子どもの夢を叶えるため、子どもは寮に入り滅多に帰れませんが、神奈川から大阪に移り住んで父母会にも入り、支えます。
母親ならではの心情、息子の航太郎の母への思い、野球への思いなど丁寧に描かれていて、終始ギュッと心を鷲掴みされました。最後のシーン -
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あ~~~~~~、、、、
良すぎる、良すぎたよ、、、
もう何から感想を書いたらいいか分からないけどこんなに泣ける高校野球の小説は初めてかも。
高校野球の小説の中では一番泣いたかもしれない。
強豪にありがちな理不尽なルール、親の間にすら色濃く存在する上下関係、すごくリアルだなあと思った。甲子園を夢見てそれに向かって努力する高校球児の物語であり、中学高校と野球を通して母と子で成長していく話でもあった。
航ちゃんも野球部の子もいい子すぎて眩しかったよ。(´;ω;`)
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出てくる人間みんな身勝手だ、田中幸乃も含めて
田中幸乃の人生を概観すると、父・美智子・理子・敬介と彼女を一度は必要してくれた存在に幾度となく捨てられ続けた。辛いなどという平凡な言葉では言い尽くせないだろう。
本当にみんな身勝手だと思う。子どもを育てたいと思って産んだ母ヒカルも、孫が生まれて生じた気持ちの揺らぎから堕胎をすぐに進めなかった産婦人科医も、幸乃を殴って暴言を吐いた父も、幸乃を引き取るだけ引き取ってネグレクト気味の美智子も、自分の罪を肩代わりさせた理子も、幸乃を依存させるだけさせて都合が悪くなったら別れた敬介も、そして自分の正義感で突っ走った翔も、自分の罪を一向に謝罪しなかっ -
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コロナ禍ではさまざまなことが起こった。もちろん命が一番大事なことはわかっているが、夢を奪われた若者はどうなってしまうのか…
2020年の夏、夏の代名詞とも言える甲子園での高校野球全国大会が中止となった。
この本はノンフィクション。神奈川の桐蔭学園で高校球児だった作家の早見和真さんは、愛媛県の済美と石川県の星稜、強豪2校に密着し、彼らに〝甲子園のない夏〟について問いかけた。
幼い頃から甲子園を夢見て、全てを犠牲にして頑張ってきた子どもたち。高校生である3年間しか、チャンスは無い。しかしその夢は試合では無く、どうしようもないパンデミックで絶たれる。野球に素人の僕でさえ気の毒に思うし、彼らの虚し -
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母性という狂気。
女性は産まれながらにして自分の子どもを守り育てようとする本能的母性を備えているというが、決して誰にでもあるわけではない。
娘として生きるか、母として生きるか。
子を授かった時、その二択に迫られる。
そのことに自覚させられる物語だった。
狂気という毒はその血をめぐって、脈々と受け継がれていき、毒性は血を受け継ぐたびに段々と強まっていっている。
話の中で、毒から逃れる方法は人生の岐路でいくつかあるのだが、それは自分で選び取らなければいけなかった。
もし母についていかなければ。もし電話をかけなければ。もし声をかけなければ。もし母とまともに向き合っていれば。
たくさんのもしもをどう