早見和真のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
競走馬と人々の「継承」を主題に、馬主一家の波瀾に満ちた二十年間を描いた長編小説である。
父を亡くし、深い喪失感に苛まれていた税理士・栗須栄治は、偶然のビギナーズラックによって的中させた馬券をきっかけに、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」の社長・山王耕造の秘書として働くことになる。
競馬に情熱を注ぎ、自らの名を冠した馬の勝利を渇望する山王とともに、栗須は有馬記念の制覇を目指す。
本作は競馬を題材としていながら、競馬に馴染みのない読者でも十分に楽しむことができる。
むしろ、競馬の知識を持たない読者であっても惹き込まれるほどの熱量と、読書中の没入感は圧倒的である。
オーナー、レースマネージャー -
Posted by ブクログ
四人の小学生が中学受験を目指す物語。
明確な意思を持って目指す者、親の期待に応えたい者、仕方なく塾に通っている者など。
主人公の十和は、最近ギクシャクしている父との距離を置くために塾へ通い始めた。最初は成績も良かったが、受験が近づくにつれ成績も落ちていく。塾へ通い始めた目的が逃げであったために目指す中学も決まらず、また仲の良かった友人とも距離が開いていく。
私個人としては中学受験の経験もなく、小学生が自由な時間を削ってまでそんなに自分を追い込む必要があるのかと疑問に思った。だがそれは父親のヨシくんが払拭した。
勉強であれ運動であれ、まだ自分という人間が決定づけられていない時期に遮二無二努 -
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これはやばい。
一気読みしてしまった、普段より早い時間に仕事が始まるから早く寝なくてはいけないのに続きが気になって気になって仕方がなかった。
母性、というものに呪われたとも言える4代に渡る女たちの人生。虐待や機能不全家族は連鎖するとはよく言われている。私も、自分の身を持ってそれを実感することがままある。母のような人生は送りたくないと思いながら、母のような人間になっている気がして仕方がない、良くも悪くも。
これは実際に愛媛県伊予市であった事件をもとに描かれているらしい。読んだあと、検索をしてみた。実際の事件はあくまでもさわりだけ、早見和真さんはそこから母性の連鎖を読み取り物語にしてくれた。
エリ -
Posted by ブクログ
ちょっと人生に立ち止まっている人達の物語。
1話目 鬱の診断を受けたのに、彼女が妊娠。結婚の約束をしてしまい、ニッチもサッチもいかない男の人。
2話目 彼女と結婚したいのに、正社員の仕事がみつからない。
3話目 彼氏と結婚したいのに、誕生日さえ忘れられている。幸せを探す女の人の話。
4話目 ドラフト4位指名を受けたピッチャー。しかし4位だったことで、監督や父親が進学して上位指名を目指せと唆す。しかしメンタルをやられてしまい…
5話目 大学時代の初めての彼氏と同棲。いずれ結婚を考えていたものの、仕事にやりがいを感じ始めてから彼氏との仲が悪くなっていく。
6話目 7年間にわたる交際の末、振られて -
Posted by ブクログ
自分のイヤだと思うところをぐりぐり抉られ問題を直視させられるのに、各章の最後にはなぜか前を向く勇気をくれる、不思議で素敵な短編集だった。
私と同じ年代の主人公たちが、
「わたしたちはもう二十七歳なんじゃない。まだ二十七歳であって、その「まだ」はべつにいつまでだって続くのだ。まだ三十歳の、まだ四十歳の、まだ六十歳の、まだ百歳の人生があるはずだ。わたしは必死にそう生きたい。そのときどんなにおばあちゃんになっていても、心が赴くのなら、オーストラリアにだって、どこにだって行けばいい。」
と、まだ何でもできると思いたい、祈りにも似た願望をはっきり肯定してくれて、
「もうみんな誰かを傷つけたり、傷 -
購入済み
あ~~~~~~、、、、
良すぎる、良すぎたよ、、、
もう何から感想を書いたらいいか分からないけどこんなに泣ける高校野球の小説は初めてかも。
高校野球の小説の中では一番泣いたかもしれない。
強豪にありがちな理不尽なルール、親の間にすら色濃く存在する上下関係、すごくリアルだなあと思った。甲子園を夢見てそれに向かって努力する高校球児の物語であり、中学高校と野球を通して母と子で成長していく話でもあった。
航ちゃんも野球部の子もいい子すぎて眩しかったよ。(´;ω;`)
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Posted by ブクログ
コロナ禍ではさまざまなことが起こった。もちろん命が一番大事なことはわかっているが、夢を奪われた若者はどうなってしまうのか…
2020年の夏、夏の代名詞とも言える甲子園での高校野球全国大会が中止となった。
この本はノンフィクション。神奈川の桐蔭学園で高校球児だった作家の早見和真さんは、愛媛県の済美と石川県の星稜、強豪2校に密着し、彼らに〝甲子園のない夏〟について問いかけた。
幼い頃から甲子園を夢見て、全てを犠牲にして頑張ってきた子どもたち。高校生である3年間しか、チャンスは無い。しかしその夢は試合では無く、どうしようもないパンデミックで絶たれる。野球に素人の僕でさえ気の毒に思うし、彼らの虚し