【感想・ネタバレ】あの夏の正解(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

2020年、新型コロナ感染拡大により春のセンバツに続いて夏の甲子園も中止。愛媛県の済美と石川県の星稜、強豪2校に密着した元高校球児の作家は、選手と指導者に向き合い、“甲子園のない夏”の意味を問い続けた。退部の意思を打ち明けた3年生、迷いを吐露する監督。彼らは何を思い、どう行動したのか。パンデミックに翻弄され、日常を奪われたすべての人に送る希望のノンフィクション。(解説・山本憲太郎)

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Posted by ブクログ

コロナ禍ではさまざまなことが起こった。もちろん命が一番大事なことはわかっているが、夢を奪われた若者はどうなってしまうのか…
2020年の夏、夏の代名詞とも言える甲子園での高校野球全国大会が中止となった。

この本はノンフィクション。神奈川の桐蔭学園で高校球児だった作家の早見和真さんは、愛媛県の済美と石川県の星稜、強豪2校に密着し、彼らに〝甲子園のない夏〟について問いかけた。

幼い頃から甲子園を夢見て、全てを犠牲にして頑張ってきた子どもたち。高校生である3年間しか、チャンスは無い。しかしその夢は試合では無く、どうしようもないパンデミックで絶たれる。野球に素人の僕でさえ気の毒に思うし、彼らの虚しさやるせなさについてはきっと計り知れないものと想像できる。高校球児当人はもちろん、家族や指導者までも夢を失い、路頭に迷うような気持ちになるだろう。『どうしようもない』この言葉が残るだけだ。

2020年の夏に三年生だった高校球児は特別な学年として、『甲子園』を今後も手の届かない場所として思い続けるだろうけど、夏の甲子園中止が止むを得ないこととして、今後の人生についても糧にしてほしいなあとは漠然と思う。

『青春は密なので…』これは2022年に夏の甲子園で優勝し、インタビューを受けた仙台育英の須江監督の言葉だ。この本を読み、再度このインタビューをYouTubeで探して聞いてみたら泣けてきた。

コロナ禍を記録する書籍としても素晴らしい本でした。

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2025年09月22日

Posted by ブクログ

甲子園への道を失った球児達、指導者と向き合って綴ったノンフィクション。
2020年は特別な年だった。新型コロナ感染で社会が揺れ、一人一人が出口のない状況でもがいていた。
私も、職場で闘っていた。「かわいそうな」年にならないよう必死だった。
星稜高校と済美高校の三年生と指導者たちを巡るノンフィクションは読み進めるほど、胸が熱くなっていった。
早見さんも桐蔭で高橋由伸選手を目の当たりにしていた球児だっただけに、インタビューもぐいぐい内面に迫っていく。
最後の最後に、背負っていたものをおろし、ふっと野球を楽しむことができたという内山壮真(星稜)選手。
山田響(済美)選手は、自分が懸けてきたものに挑戦さえできない辛さを味わったと語る。でも、最後に仲間から、「山田(キャプテン)と高校野球をやり遂げられてよかった。」という言葉をもらう。
この経験を奇跡的な経験ととらえる山田選手は、これからどんな困難も乗り越えられる自信を刻み込む。
そうなのだ。かわいそうなコロナ世代ではない。
きっと他の世代ではできない経験ができた世代でもあるのだ。
思い出したくもなかったコロナ期の自分にも向かい合えるようになってきた。
早見さんのインタビュー力、筆力には脱帽。読み応えがあった!

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2025年07月01日

Posted by ブクログ

これは数年後、数十年後に、きっと“あの夏の”と形容される高校生たちの物語だ。

──そしてとうに熱い夏を終えている大人たちの物語でもある。
 
 

第4回 YAHOO!JAPANニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞 候補作。

本作は桐蔭学園出身の元高校球児でもある、作家早見和真氏が書き下ろした、ノンフィクションルポです。

2020年5月20日、新型コロナウイルスの蔓延に伴って、高校球児たちの夢の舞台“夏の甲子園”は中止となった。

その夏、夢の舞台に挑戦することすらできなくなった高校球児と指導者。その当事者となった石川県の星稜高校と愛媛県の済美高校。
この2校にスポットを当てて追いかけた2020年の夏。

彼らの苦悩、葛藤、それらを乗り越えた先に見えたこと、感じたことの数々。コロナ禍だから気がつけた“野球が出来ることの楽しさ”と“決して当たり前なんかじゃなかった日常”。
選手たちや指導者にとっても経験したことのない事態の数々。

この夏を経験した当事者にしか語れない想いの数々に対して、それらを読む中で感じる、胸が締め付けられるような感覚。

辿り着いたその先で、選手たちと指導者、そして作者の早見氏自身が振り返る“あの夏の正解”を綴った物語でした。





コロナ禍で甲子園が中止になった夏。
夢を奪われた選手と指導者はどう行動したのか。

「このまま終わっちゃうの?」
2020年、愛媛県の済美と石川県の星稜、強豪2校に密着した元高校球児の作家は、彼らに向き合い、〝甲子園のない夏〟の意味を問い続けた。退部の意思を打ち明けた3年生、迷いを吐露する監督……。パンデミックに翻弄され、日常を奪われたすべての人に送る希望のノンフィクション。

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2025年04月20日

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自分が、自分の子が、受験生だったり新入生だったりしないタイミングでよかった、と、やはりどこかひとごととして過ごしてしまったあの時間とあらためて向き合うこととなり、息を詰めるようにして読んだ。

あのとき高校3年生だったということ、しかも甲子園を「具体的な(実現可能な、というべきか)」目標としている強豪野球部にいたということ、あるいは、その野球部を導かねばならない大人だったということ、いずれも自分からは遠い存在なのだが、自分ならどうしたろうか?を考え続けた。不安、緊張、絶望、そして切実さが胸に迫り、本を途中で置くことができなかった。

同時に、野球というスポーツの核にも触れていったように思う。個人で戦うスポーツしかしてこなかった自分には、特異にも神聖にも感じられる部分が多くあった。甲子園で映される高校球児、プロの野球選手への見方が変わると思う。

想像したことも経験したこともない現実に直面したとき、それでも、考えて考えて選んでいくこと、自分もやり抜きたいと思う。「正解」は示されずとも(示せるはずもない)、苦い思いも含めて、どこか爽快な読後感だった。

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2025年03月05日

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2020年、済美と星稜の強豪2校に密着し「甲子園のない夏」の意味を問い続ける。

監督、選手の率直な気持ちが見事に引き出されている。
著者の学生時代と照らし合わせながら当事者の迷いや葛藤に向き合っている。

困難から希望を見出す選手の姿に感動する。

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2025年08月28日

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今でも思い出す2020年、甲子園の中止が発表された時。
本当に高校野球って甲子園って何だろう
あの年大なり小なり色んなことが中止になっていく中で甲子園の中止が1番「ありえない」って感じた・・・。
著者の早見さんが、強豪の済美高校、星稜高校に直接足を遊んであの年の夏の正解を探る、ノンフィクション作品です。
監督の声、選手の声、そして元高校球児だった筆者の考え。
苦い苦しい気持ちで読み進めながらも、
不思議と爽快感もある読み応えでした!

特に印象に残ったのは、終盤での「基本的に高校野球の最後って負けるんです」という言葉。
負けることすら出来なかった3年生を思うと………掛ける言葉の正解が見つからない

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2025年05月24日

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ネタバレ

夏の甲子園大会中止を受けての強豪校『済美』と『星稜』の話。
彼らや監督のいつもと違う夏、目指していたものがなくなった夏、その葛藤、成長、思いは心に残った。

だが、それ以上に『メンバー』と『メンバー外』の話が衝撃的だった。メンバー外からメンバーになることはまずないという話、メンバー外でもチームに誇りを持てるという話。わたしは心が狭いから、信じられないし、子供やきょうだいがメンバー外なら、辞めさせるかも。(実際、同じような経験あり)
ただ、競争社会においては必要なことだから、今自分自身が直面している少数精鋭で結果をだすみたいな課題には、非常に役に立つ考え方だと思った。

そして、やはり、甲子園だけが野球だけが特別ではなく、この渦に巻き込まれてた我々全員が何かを失い、何かを得たことに思いを馳せることがきっと力になると思う。

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2023年06月26日

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どうあるべきだったかは本人たちに委ねればよい。ただ、前例のないことに悩み苦しんだ経験は如何にも代え難いものだと思う。

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2023年04月29日

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私は野球が大好きなので、
この時は本当に選手たちが可哀想で、
いたたまれなかった…泣

でも可哀想なだけじゃない!
可哀想はそうなんだけど、
彼らはそれ以上に逞しい!
可哀想にしたいのは私達大人だ
という事が分かった
早見さん自身の事も書かれてあって
とても興味深かった

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2022年12月08日

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のっけから涙、涙。監督の子どもたちを思う気持ちに触れて、心が震えた。

2020年の夏の甲子園に関するドキュメンタリーはテレビでも見たし、中止が決定した時には球児たちの無念を思って心を痛め、涙を流した。
その一方で「仕方がない、受け止めなくちゃね」と思っていた自分もいたのだけれど、そんなこと球児たちはとっくに知っていたのだな、と改めて思った。

甲子園というものにもっと特別な気持ちを抱くのかと思ったけれど意外とそうでもなかったり、本音は違うのに大人が喜びそうな言葉を紡いだり、球児たちの本音に触れることができる一冊。それは、著者の早見さんの経験からも窺い知れる。

早見和真さんは好きな作家さんの1人だが、まさか高校野球経験者であることも知らず、「こんなノンフィクションを書いていたなんて!」と書店に走った。走ってよかった。

高校球児にとっても、誰にとっても、正解はない。
それがコロナ禍の夏なのだなと思った。

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2022年10月11日

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コロナの蔓延から早3年半。コロナの流行により今までの当たり前がそうでないことに気づいた人も多いのではないか。2020年の甲子園が中止になった時、当時の高校球児たちが何を思ったのかがありのままに書かれており、彼らの状況を容易に想像することができ、思いを馳せることができる作品であった。逆境や苦しみの中で、彼らがもがき苦しんだ姿から、学ぶことはたくさんあった。ただ一つの目標、目指すべき場所が失われた時、自分ならどう気持ちを切り替え行動するか、考えさせられる作品だった。壁にぶつかった時、また戻ってきたいと思う。

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2022年08月31日

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2020年、コロナで春のセンバツ、夏の甲子園が中止になった強豪校に密着したノンフィクション。甲子園ファンとして中止決定は「なんて可哀想なんだ」と憤りを感じていたけれど、高校球児達の受け止め方はもっと奥深く、立派で驚きました。一人一人のチームへの思い、強豪校の一員としての立場などが伝わりドラマを感じました。自身も名門校で高校球児だった早見さんの高校野球への感情も興味深かったです。

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2022年07月31日

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 2020年、コロナ禍一年目。全国の高3野球部を始め全運動部員、吹奏楽部等の文化部員、更には中3の部活動部員も、全国規模の大会・コンクールが中止になったり、修学旅行等の大きな行事も変更・縮小・中止になったりし、最悪・悲劇の世代とも呼ばれました。
 当事者である部員、指導者、保護者がどう受け止め、どう次へ動き出したのか等、野球に限らず他の書籍やTVのドキュメンタリーとして取り上げられ、出版・放映されました。
 本書は、元高校球児である著者が、強豪2校に密着したノンフィクションです。語り手全員が悩み、逡巡しながらも本音を吐露し、それらが丁寧に掬い上げられています。彼等は、決して「かわいそうな子たち」ではなかったと思えます。失ったこと以上に、得たことの方が多かったからに他なりません。

 プロローグの前に記載されている夏の甲子園中止決定直後の著者寄稿新聞コラム(以下一部抜粋)から本書は始まります。これが本書を貫く根幹のテーマであり、著者の痛切な願いとなっています。

 〈選手一人ずつ、その立場や思いによって「あの夏の正解」が違う。ならば、自分自身で見つけてほしい。考え抜いた末に導き出す、想像もできない新しい言葉をいつか聞かせてほしい。〉

 果たして、「どういう夏だったか」との問いに、彼等はどう答えたのか…。当事者たちの声が、より多くの方々に届くことを願います。

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2022年07月07日

Posted by ブクログ

早見さん元高校球児
ベンチの子に焦点を当てたひゃくはち読んでないので読みたい
監督と喋るのに萎縮しちゃっていた

甲子園を小さい頃から目指して練習に励んでいたもののコロナ蔓延により言い渡されたのは中止
この気持ちにどう折り合いをつけるのか
監督もどのような声掛けをするのか

甲子園を目指せなかったことを可哀想と思われるのではなくてその経験があったからこそと言われたい

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2025年06月23日

Posted by ブクログ

神奈川の桐蔭高校で野球部だった著者のノンフィクション作品。
コロナで甲子園大会が中止になった2020年の夏、斉美高校と星稜高校の3年生に対して、その思いを取材する。
この年は、この夏の3年生にしか経験できない貴重な体験をしたのですね。そして、選手1人ずつ、その立場や思いによって「あの夏の正解」が違うのですね。納得しました。
それぞれの選手の成長が印象的でした。

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

誰にとっても代わりのない夏だけど、社会に出てからの一年と高校生の一年は確実に重さが違う。

甲子園のある夏が来ていたとしても、同じように正解を探す夏だったかもしれない。でも少なからず誰もが今までよりも自分と向き合わざるを得ない時になった。

出した答えがどうでも、答えが出なくても、ちゃんと自分と向き合った人には失われた時間ではなかったと思える。

苦しさとひたむきさと、そこに生きた学生達と大人からも色々なものが伝わってきて、どの章も涙が抑えられませんでした。

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2024年03月17日

Posted by ブクログ

揺れる選手と指導者と、筆者の思い。特に、ベストメンバーで臨むか、特別な夏を3年生中心で臨むか…のチームとしてのゆらぎはリアルに感じました。

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2023年12月31日

Posted by ブクログ

2020年、新型コロナ感染拡大により春のセンバツに続いて夏の甲子園も中止。夢を奪われた球児は「かわいそう」だったのか?パンデミックに翻弄され、日常を奪われたすべての人に送る希望のノンフィクション。
当たり前のように毎年開催されていた夏の風物詩が消えたあの年の夏。"甲子園のない夏"は、私たちに改めてコロナの恐ろしさを痛感させられた。夢を奪われた高校生が、意外と冷静な言葉を発していることに驚くが、本音は別のところにあると思う。

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2022年08月22日

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