早見和真のレビュー一覧
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ネタバレ何処までも救いがないように見えて、しかしその"救い"の招待すら読み手のエゴであり価値観なだけなのかも知れないなあと思う内容でした。
私は死刑制度は今後もあるべきだと思っています。
司法制度に対してまだまだ勉強中の身ではありますが、今の日本は加害者にばかり寄り添って被害者には厳しい世の中だと感じていました。
もし私が田中幸乃の起こしたニュースを見たとしたら、幸乃が死刑判決を下されてもあまり心は動かないのではないかと思います。
でも、事件の真実や背景を知ってしまうとどうしてもやりきれない気持ちになりますね。慎一の「今は、とりあえず加害者の側だから」という台詞が個人的に1番しっく -
Posted by ブクログ
ネタバレ早見和真先生の作品を初めて見たのがこの小説。あぁ、この人は小説を書くために生まれてきた人だと確信できるくらいに夢中になってのめり込んでしまったからだ。作品が頭で映像化される感覚、声が聞こえる感覚、顔が想像できたりしてしまう作品は傑作だと相場は決まっている。早見先生が魅せる物語のレールに気持ちよく乗っている感覚。
谷原と店長との長いのに距離があるヘンテコな関係性は見ていて面白い。書店員の裏事情が沢山知れて、業界の厳しさも教わった。クレーム対応や仕入れにも沢山の問題があるんやなって書店員の見る目が変わる。谷原の契約社員という立ち位置だからこその考えや悩み、谷原の生き方もページ数を重ねるごとに段々と -
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ネタバレ女性死刑囚の死刑に至るまでの生い立ちが、彼女に関わった人々の目線から描かれる。
メディアを通した彼女の人生は“いかにも”で、“整形シンデレラ”と大衆がいかにも騒ぎ立てそうな呼び名までつけられる。
しかし実際は母親が事故死するまではたしかに幸福なものであり、人生の岐路で信頼していた人にことごとく利用され裏切られたことによる結末だった。
そのエピソードがつくづくしんどかった。
幸乃の死刑確定が報じられ、姉や中学時代の友人らがほっとしているようなのもやるせなかった。
人間の弱さやずるさをこれでもかと見せられたように思う。
追い詰められると自己保身のために他人をここまで貶めることができるのか。
慎一 -
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四人の小学生が中学受験を目指す物語。
明確な意思を持って目指す者、親の期待に応えたい者、仕方なく塾に通っている者など。
主人公の十和は、最近ギクシャクしている父との距離を置くために塾へ通い始めた。最初は成績も良かったが、受験が近づくにつれ成績も落ちていく。塾へ通い始めた目的が逃げであったために目指す中学も決まらず、また仲の良かった友人とも距離が開いていく。
私個人としては中学受験の経験もなく、小学生が自由な時間を削ってまでそんなに自分を追い込む必要があるのかと疑問に思った。だがそれは父親のヨシくんが払拭した。
勉強であれ運動であれ、まだ自分という人間が決定づけられていない時期に遮二無二努 -
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これはやばい。
一気読みしてしまった、普段より早い時間に仕事が始まるから早く寝なくてはいけないのに続きが気になって気になって仕方がなかった。
母性、というものに呪われたとも言える4代に渡る女たちの人生。虐待や機能不全家族は連鎖するとはよく言われている。私も、自分の身を持ってそれを実感することがままある。母のような人生は送りたくないと思いながら、母のような人間になっている気がして仕方がない、良くも悪くも。
これは実際に愛媛県伊予市であった事件をもとに描かれているらしい。読んだあと、検索をしてみた。実際の事件はあくまでもさわりだけ、早見和真さんはそこから母性の連鎖を読み取り物語にしてくれた。
エリ -
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ちょっと人生に立ち止まっている人達の物語。
1話目 鬱の診断を受けたのに、彼女が妊娠。結婚の約束をしてしまい、ニッチもサッチもいかない男の人。
2話目 彼女と結婚したいのに、正社員の仕事がみつからない。
3話目 彼氏と結婚したいのに、誕生日さえ忘れられている。幸せを探す女の人の話。
4話目 ドラフト4位指名を受けたピッチャー。しかし4位だったことで、監督や父親が進学して上位指名を目指せと唆す。しかしメンタルをやられてしまい…
5話目 大学時代の初めての彼氏と同棲。いずれ結婚を考えていたものの、仕事にやりがいを感じ始めてから彼氏との仲が悪くなっていく。
6話目 7年間にわたる交際の末、振られて -
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『アルプス席の母をも凌ぐ最高傑作!』
中学受験と反抗期をテーマにした家族の絆の物語。2025年の本屋大賞で2位にランクインした「アルプス席の母」の勢いそのままに、今作も親子の関係を絶妙な匙加減で描いた感動作品である。
反抗期。特に何かがあったわけではないのに心が荒む。思春期特有の家族から一線を引きたいという感情は、誰もが当事者として経験する苦い思い出だろう。中学受験に挑む小学六年生の主人公・十和(とわ)も、例に漏れず反抗期の渦中にいる。
序盤はまず彼女への“共感”を中心に物語が展開される。学業しかり、友人関係しかり、彼女を取り巻く環境は上手くいかない事ばかり。「あるある」と頷きながら感情