東雅夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
半分秋になってしまったが、ようやく読んだ。
なるほどタルホをお化けの切り口で。
奔放に読んでいるつもりでも東大人……東雅夫の掌の上。
本書の中核が「Ⅳ イノモケ鬼譚」なのは間違いないが、結構「Ⅰ 化物屋敷譚」の章立ても面白かった。
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たとえどんなお化けが現われようと、決してたじろぐには当らないのである――。
宇宙文学の大いなる始祖にして、三島由紀夫を驚嘆させた少年愛文学の先駆者でもある、昭和文学の燦爛たる流れ星「コメット・タルホ」が遺した膨大な作品群から怪奇幻想の名に値する名作を初めて集大成!
タルホが熱中した江戸中期の怪異譚、《稲生物怪録》を下敷きにした4編も収録。
文豪怪異小品集シリーズ、第13弾。
目次
Ⅰ 化物屋敷譚
友人の実見譚
怪談
黒猫と女の子
我が棲いはヘリュージョンの野の片ほとり 厭わしきカルニアの運河に沿うた地下墓地だ
我が見る魔ものーお化けの哲学
お化けに近づく人
北極光ーAurora borealis
地獄車
白衣の少女
Ⅱ 愛蘭に往こう!
黄漠奇聞
リビアの月夜
夜の好きな王の話
夏至近く
バブルクンドの砂の嵐ー新居にはいって
『ダンセイニ幻想小説集』推薦文
Ⅲ 幻想市街図
出発
電気の敵ーその日、天は巻物を捲くごとく去りゆかん――黙示録
奇妙な区廓に就いて
如何にして星製薬は生れたか?
塔標奇談 (影絵フィルムのために)
Ⅳ イノモケ鬼譚
荒譚
懐しの七月ー別名「余は山ン本五郎左衛門と名乗る」
山ン本五郎左衛門只今退散仕る
稲生家゠化物コンクール――A CHRISTMAS STORY――
収録作品初出一覧
編者解説 東雅夫 -
Posted by ブクログ
ネタバレ角川ホラー文庫だったので、手に取りましたが、怖い要素は少な目でした。
短編集だからと目次から摘まんで読んでみたら、時系列でつながっているお話もあったので、順に読む方が分かりやすいです。
死者の想いと触れ合う物語たち。読んでいて、死者と生者の境界線の揺らぎを感じ取れました。読み終わった後は、古い友人と再会した時のような、嬉しさ、寂しさと懐かしさが綺麗に混ざったような気持になりました。これがノスタルジーでしょうか。
---13編の中から何個かあらすじと感想---
『死者と生者をつなぐ糸』
あらすじ:私は14年ほど前、いるはずのない場所で、母の形をした何かとすれ違う。
こういう奇妙な体験がいくつもある。昨年、母が死んだ。もう現世にはいないが、
「母」の見た目を保った何かとすれ違うかもしれない。(中身は多分母ではない)
感想:理解不能な領域に踏み込もうとしているなーって感じがした。14年前、すれ違った「母」は、本当に何だったんだろう、、。
『現実と異界』
あらすじ:母は、空想好きの可愛らしい人。母から日常的に怪異譚を聞かされて育った私。これは本当に怖い!という話を聞くと、母はあっさりした口調で、死者を恐れていない様子。母は、日常の一つとして死者と交流している。
私は、母の影響もあってか幽霊話などが好きだった。作家になった私は、ホラー小説を書いている。
感想:
(一部要約)母から聞かされた怪談話は、死者と生者が一体化し、妙に現実的。特に理由もなく、ふらっと現世に顔を出す死者というのは、美しい情景だ①。いくら震えあがるような怖い話であっても、読み手の美意識をくすぐるような情景が潜んでいなければならない②。
①「ふらっと現世に顔を出す死者というのは、美しい情景だ」個人的には美しさというより神秘的という感覚に近いものを感じた。
②「いくら震えあがるような怖い話であっても、読み手の美意識をくすぐるような情景が潜んでいなければならない。」他の話を何個か読んでから「現実と異界」を読んだので、確かにどのお話も一貫してその情景が感じられたなあと思った。
『恋慕』
あらすじ:私の叔父が死んだ。
叔父は亡くなる前、行き先を告げずに家を出て音信不通だったが、死ぬ前日、私に大好き、かわいいと電話をかけてきた。次の日、自殺で死んだ。
アメリカで映画俳優の夢破れ、実家に居候し始めた叔父。叔父は父よりはるかに美男子。叔父は酒におぼれてだらしない男だった。私と同様、母も叔父に惹かれているらしい。私は叔父を大人の男性として意識するが、叔父が好きなのは私の母。しかも母が父と結婚する前から。そんな三角関係で揺れる私。それなのに叔父は、私をお嫁さんにしたいと冗談を言ってくる。思わせぶりなのか本気なのかつかめない。
そして突然の死。何で死んでしまったんだろう。ある夜、叔父が化けて出て、慈しみの念を感じた。私を見たあと、母のところへ向かう、叔父。絡まった感情が伝わってくる。叔父は、名残惜し気に夏の空へ消えていった。
感想:いるよね、叔父さんみたいなどんな年代の女性も惹きつける人。
顔は整ってて、だらしないところが、母性本能くすぐりそう。
私(主人公)の叔父さんへの感情は恋でも愛でもない。ファンとか推しが近いのかな。叔父さんも思わせぶりな言動ばかりして、ホストと女の子みたい。 -
Posted by ブクログ
執筆年1917(大正6)年から1936(昭和11)年ころのアンソロジー。
ほんの2,3ページ程度の掌編小説や連作短歌(!)がたくさん収められている。私は主に角川文庫で夢野久作をいくらか読んできたが、本書で重複しているのは「瓶詰地獄」くらいであり、相当めずらしい作品が集まっている。
やはり夢野久作はカルトの、B級作家であるとしか言いようがない。文体もストーリーもテーマの選び方も妙に「へにょへにょした」感じの変態作家と思い、その作品は最高の芸術品とは言えないものの、メインストリームの文学群にちょっと疲れてきたとき、なんとなく「ほのかに」面白がらせてくれるような、変わり種の口直しのような文学世界を覗かせてくれる。こういう作家の作品をありがたがる人はたぶんカルトっぽいと思うし、そう言いつつ、私もたまに読みたくなるのである。
幾つかの掌編は印象的で面白いと思ったが、つまらないものもそこそこあった。
へにょへにょした作家の、へにょへにょしたアンソロジー。 -
Posted by ブクログ
軽妙な語り口なのに
クセが強い
という相反する性質を纏う澁澤語の
まぁ~、相変わらず読みづらいこと(誉めてる)。
久々に彼の言葉を読みましたが
「やっぱ読みづれぇなぁ!笑」
が第一の感想です。
それもこれも、澁澤の脳内ウィキペディアリンクが次々と無尽蔵に開かれるからであって
凡人には話についていくのがやっとでございます。
エッセイや書評、インタビューなどから「いかにも澁澤」なパーツを寄せ集めたものなので
澁澤初挑戦の方にピッタリです。
あくまでもこちらは「澁澤カタログ」本であって
彼の本来の魅力に触れるなら、やはり原本にあたるのがよろしいかと考えます。
そんなわけで★3つ。 -
Posted by ブクログ
咳のオバ様、神社の片目の魚、神様が決めた国境と山の背比べの話など、日本各地に残る昔話や神話として語り継がれた物語で、似たようなものを集めた本。
類似した昔話がある場所には、「姥ヶ池」などの似たような地名が残っているというのも印象的だった。
また、日本各地には様々なバリエーションのお地蔵様が記録されていた。願掛けのたびに墨汁や酒粕を掛けられて臭くなっているところを見かねた村人が綺麗に洗ったらバチが当たった話や、子供に悪戯されていると思い子供を叱ってお地蔵様を元の位置に戻した人の夢枕で「せっかく子供と楽しく遊んでいたのに」と怒る地蔵、歯が剥き出しの地蔵など。今では語る人も居なくなって、どうしてそのお姿なのかもわからなくなったものも多数。
コニュニケーションが希薄になった現在、語られなくなった昔話を、こうして記録していくことはとても重要なことだと思う。この記録を読むことができたのはとても貴重な体験だと感じた。
話のネタになるので、柳田國男の本は他も見つけたら読んでおきたい。 -
Posted by ブクログ
2018年、角川の文ストコラボカバーで発売された『澁澤龍彦×文豪』縛りで編集されたエッセイ、対談集です。
『ドラコニア』=澁澤龍彦の世界
であり、その世界を覗くにはちと物足りない。
ですが、文豪たちとのエピソードやエッセイを読むと、魅力的な作品が多々紹介されています。
夢野久作『ドグラマグラ』
小栗虫太郎『黒死館殺人事件』
についても語られており、特に黒死館殺人事件については独自で魔術やら心理学の専門書の参考文献をあたっていたりなど、愛を感じます。
個人的には『毒草園』のエッセイが面白くて、1906年フランスでの毒殺事件の件数などを上げていたりする。
マルキ・ド・サドの翻訳をされているのでサドの話はよく出てくるのだが、毒を少量ずつ飲んで、次第に免疫性体質につくり変えるというエピソードがあるそう。
昔読んだ切り裂きジャック系の本にも似たような事が書いてあったなぁ。
当時は毒が手に入り易く、知らずに服用して耐性ができていても不思議はないのかも。無敵。
三島由紀夫との対談では、泉鏡花の魅力が伝わります。
文ストは全巻持っているが、5巻までしか読んでない。
このエッセイ集を読んで、各文豪の小説を読むと、より楽しめるのかなと思いました。
その前にマルキ・ド・サドの『悪徳の栄え』上下巻と、澁澤龍彦の『ホラー・ドラコニアの世界』
を読みたい♥(ˆ⌣ˆԅ) -
Posted by ブクログ
ネタバレ新潮文庫で読み、ちくま文庫全集で読み、これで三度目。
ちくま文庫でいえば第2巻(初期)と第10巻(小品)を並べ直したようなセレクト。
■鬼哭寺の一夜 ……新体詩。女人幻想。
■水底の感 ……藤村操「女子」(!)について。
■夢十夜 ……まあいつもの。
■永日小品(抄) ……蛇/猫の墓/暖かい夢/印象/モナリサ/火事/霧/声/心 ……二度読んだあと、ポッドキャストやCDやで何度聞いても、憶えられず、そのうち眠ってしまうのが、こちら。このままの付き合い方を続けたいとも思う。
■一夜 ……確かに「だからどうした」という感想。とはいえ「草枕」の萌芽があるとも感じる。「猫」や奥泉光の諸作でも度々感じることだが「益体もなさ」を愉しむ時間を持てることこそが読書の醍醐味だ、文章を読んで日常や生活からほんの少し遊離することが読書の経験だ、と。何か得られるものを求めるのではなく、文章を読む時間そのものが娯楽である、と。憂慮、煩悶、輾転反側、真面目腐った理念、から一線引いたところでものを書いていこうという表明のようにも感じる。百数十年後の読者としては、イデオロギーから一線引くための態度を漱石から得るというのも、ありかもしれない。大袈裟な言説は「ひとまず信じるな」というのは、押井守も言っていたことだし、吉本隆明も煎じ詰めればそう言っていたと思う。
■吾輩は猫である(抄) ……首くくりの松の個所。
■琴のそら音 ……なんか心配になったけど結局大丈夫で安心した、というだけの話。だが外界の描写と内面の描写が緻密に溶け合っているので、「どう心配になったか」「どう暗示が埋め込まれたか」「どう不吉な兆候に行き会ったか」読むうちに、体験しているように感じた。それが大丈夫とわかって解放され、床屋と客のいい口調の会話でさらに解放され、最後に嬉し恥ずかしな場面が来ても清々しい。読み手を操作する巧みさに充ちている。家政婦の婆さんもいいキャラ。心霊への興味と対応は「吾輩は猫である」にも似通った水準。
■趣味の遺伝 ……探偵は厭だ嫌いだというのは漱石のいつもの調子だが、自嘲しながらも探偵した結果が開陳される。なるほど「異性の」趣味の遺伝か! 夢野久作を連想せざるをえない。また、結構際どい夢想を繰り広げながら、出征兵士を送り出す群衆に遭遇する。逆かな、群衆の狂乱から、狂騒的な戦場を妄想する。その念入りさが凄まじい。なんとなく「愛のコリーダ」で吉蔵が行進する兵隊に逆行する場面を連想したりもして。ところで「陽気の所為で神も気違になる」という冒頭は印象深いが、それに続く数節で戦争の夢想に至るとは、忘れていた。
■倫敦塔 ……中野京子「怖い絵 泣く女篇」にあった、ポール・ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」をナショナル・ギャラリーで見て、漱石は着想を得ている。ジョン・エヴァレット・ミレー「オフィーリア」が「草枕」の那美の着想の一部であるように、漱石と絵、という着眼点は大学生当時にはなかったので、今回実作を通じて気づけてよかった。
■幻影の盾 ……山尾悠子が「傳説」を書く際に「……と思え」という言い回しを拝借したという文体。漱石は3回、山尾は22回も! 拡大利用甚だしい。
■薤露行 ……断念。
■マクベスの幽霊に就いて ……断念。
■漱石幻妖句集 東雅夫 選 ……「菫ほどな小さき人に生まれたし」は有名だが怪奇の文脈で選ばれると、これはこれで。また「あんかうや孕み女の釣るし斬り」のあまりの残酷絵ぶりよ。
□編者解説 ……この文庫でシリーズを始めようとする気概ばっちり。