東雅夫のレビュー一覧

  • 文豪山怪奇譚 山の怪談名作選

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    山の物怪小説のアンソロジー

    泉鏡花の「薬草取」は文章の美しさ際立ってたし、太宰治の「魚服記」には凄味を感じた。
    でもこの中では、やはり岡本綺堂の「くろん坊」が秀逸だった。
    怪談だけど、一番怖いのは人間よね。

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    2022年02月21日
  • なぜ怪談は百年ごとに流行るのか

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    巻末の「日本怪談文芸年表」がありがたい。
    この一冊で怪談文芸の興りから現代までをプレイバックできます。

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    2022年01月23日
  • 文豪山怪奇譚 山の怪談名作選

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    ネタバレ

    ヤマケイの「山怪」モノ。
    火野葦平「千軒岳にて」で開幕するのがエンタメ感あって好きでした。
    平山蘆江「鈴鹿峠の雨」と泉鏡花「薬草取」の対比が美しい。
    太宰治「魚服記」は小説が上手すぎて感動。
    そして大トリ柳田國男「山人外伝資料」。山人先住民説、という棒で伝承・民話・怪談・伝聞の類を殴りまくっていて笑いました。

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    2022年01月20日
  • ふしぎな話 小池真理子怪奇譚傑作選

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    ネタバレ

    怪奇と幻想は一つになるのだなぁと読みながら思っていました。

    あの世とこの世の幽世を隔てるのは何なのだろうなぁとも。

    ですが、ここで読んだ懐かしい光景は怖いというよりも郷愁を呼ぶものでしたね。

    こういう作品は大好きです。

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    2021年11月23日
  • 山怪実話大全 岳人奇談傑作選

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    山で実際にあった怪談をまとめたアンソロジー本。
    山の話なので登山用語も多く、登山未経験者の私には分からないところも多々あり読みづらい話もあった。
    話自体は実話と銘打っているだけあり、エッセイのような体験談が多い。
    そのため、恐怖というより薄気味悪さがある。
    ホラー小説のような恐怖を求めている人には物足りないかもしれない。
    個人的には炭焼きの話が好みであった。

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    2021年09月26日
  • 文豪怪奇コレクション 幻想と怪奇の夏目漱石

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    ネタバレ

    新潮文庫で読み、ちくま文庫全集で読み、これで三度目。
    ちくま文庫でいえば第2巻(初期)と第10巻(小品)を並べ直したようなセレクト。

    ■鬼哭寺の一夜 ……新体詩。女人幻想。
    ■水底の感 ……藤村操「女子」(!)について。
    ■夢十夜 ……まあいつもの。
    ■永日小品(抄) ……蛇/猫の墓/暖かい夢/印象/モナリサ/火事/霧/声/心 ……二度読んだあと、ポッドキャストやCDやで何度聞いても、憶えられず、そのうち眠ってしまうのが、こちら。このままの付き合い方を続けたいとも思う。
    ■一夜 ……確かに「だからどうした」という感想。とはいえ「草枕」の萌芽があるとも感じる。「猫」や奥泉光の諸作でも度々感じる

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    2021年08月31日
  • 文豪怪奇コレクション 猟奇と妖美の江戸川乱歩

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    光文社文庫の全集でだいたい読んだので、初読は「防空壕」「夏の夜ばなし――幽霊を語る座談会」のみだが、既読の作品も改めて面白い。
    講談調の語り手の文体も、語り手が延々告白する口調も、同様によい。
    やはり内容だけでない文章の味。
    語り手が存在する場合は、語り手がある特異な人を観察した上で読み手=聞き手に報告する、という形式があるみたい。
    メディウム=媒介者が、特異な人と読み手の中間に位置するパターンが多いな、とか、つらつら思いながら読んだ。
    以下ざっくりと。

    ■火星の運河
    彼女←私が語り手→読み手
    ■鏡地獄
    彼←(観察)ー私Kー(語る)→冒頭の語り手私→読み手
    ■押絵と旅する男
    兄←(観察)ー老

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    2021年08月06日
  • 文豪怪奇コレクション 猟奇と妖美の江戸川乱歩

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    乱歩の「怪奇・幻想」方面の作品を取りそろえた短篇集。巻末には鼎談「夏の夜ばなし──幽霊を語る座談会」を商業媒体で初復刻収録。

    鼎談は昭和22年グラフ雑誌「トップライト」八月・九月合併号に掲載されたもの。参加メンバーは乱歩と一橋大学名誉教授で検事など歴任した刑法学者の植松正と慶応大学教授でエッセイストの奥野信太郎の三名。それぞれが専門分野が異なるため、三者三様の立場での幽霊談義は面白かった。

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    2021年07月20日
  • 文豪怪奇コレクション 幻想と怪奇の夏目漱石

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    夏なので幻想怪奇系積読消化するぞのじかんです。
    これは最近買った本だからそんなに積読じゃないけど、積む予定だったから読めてよかった。
    幻想怪奇かとゆーとそこまでではなかったけど、「琴のそら音」とか面白かった。
    「薤露行」は、わたしはアーサー王伝説をぜんぜん知らんので、Wikipediaとかで調べながら読んでたよ。擬古文しんどかったけど、話に合った文体やとおもた。

    あと、夏目漱石てやっぱり「人というのはこういうものだから」ていうのを描写するのがものすごくうまいというか、今まで意識してなかったようなそういうのを分かりやすく言語化してスーンと納得させてくれるよね。

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    2021年07月15日
  • ヤマケイ文庫 文豪山怪奇譚 山の怪談名作選

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     トレッキングを楽しむ程度なので、いわゆる深山幽谷に分け入ったような経験はほとんどないが、山を見ていると、「常人の立ち入らないあの奥はどうなっているのだろうか、何か不思議なこと、畏ろしいことがありそう」といった思いが浮かぶ。
     本書は、怪談や幻想系作品のアンソロジストとして名高い東雅夫氏が、「山怪」をテーマとして編集した一冊である。

     一番のお気に入り作品は、やはり鏡花の『薬草取』。愛する人のために薬草を取りに向かう青年が、花を摘みに行く娘と道連れになった道中で語る、年少の時の哀しくも夢のような体験。
     槐多『鉄の童子』は、未完ということもありよく分からなかった。山を下りて下界の村に降りた主

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    2021年06月28日
  • 怪談と名刀

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    古い文体なので歴史小説に馴染みのない私には読み進め辛いかなと感じたが慣れればスッと内容がはいってきた。物語だけでなく刀その物の姿形や刀工の解説もあり読みごたえがあった。

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    2021年05月03日
  • 怪談と名刀

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    ネタバレ

    刀剣好きなら楽しい一冊。各刀ごとの逸話が短編として収められていて、それぞれの短編の末尾にはその刀についての著者の所見が記されている。知ってる刀派が出てくればテンションが上がるし、知らないものについても刃文や地鉄の特徴などが細かく記録されているのでとても参考になる。私はそんなに詳しくないので、地景とか砂流しとか分からない単語が結構多くて検索疲れしてしまったけど、、、予備知識があればもっと気軽に楽しめたろうと思う。

    編者解説より、著者は泉鏡花や柳田國男と同年代だそうで、どうりで文章が古典的なわけだと合点したが、読みづらいというほどではない。むしろ雰囲気と合っていて良い味を出している。ほとんど昔話

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    2021年01月05日
  • 日本の伝説

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    日本昔話を子供の頃、よくテレビや絵本で見ていたが、ほとんどの話はハッピーエンドに終わる。それは子供の教育に良くないということで、「砂糖漬け」してしまっている現状だ。原作の昔話は、婆を煮て食べてしまうなど、残酷な話も多い。その昔話が伝える教訓やメッセージを読み手が汲み取ることが大切なのではないか。
    欲を起こすと、自分に返ってくる。夫婦仲良くすることが大切など、示唆に富んでいる。

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    2020年06月17日
  • なぜ怪談は百年ごとに流行るのか

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    タイトルの一連のお話は『ごと』と冠しつつ200年前で打ち止めになっていて、先にありきの感が否めない。加えて、(著者が著者だけに当然なんだけど)手前みそ感が終始付きまとっていた。
    とは言え、内容は興味深い。特に、明治大正期は残る資料も多く、見ごたえがある。また、巻末の文芸表は、手元に残して一つずつ埋めたくなってくる。

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    2020年05月31日
  • 夢Q夢魔物語

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    ネタバレ

    夢野久作(1889-1936)の小品集。猟奇歌(抄録)、掌編、童話、エッセイ、ルポルタージュなど、他の作品集で選ばれることの稀なものが多い。

    記者として勤めていたことのある『九州日報』に連載されたルポルタージュ「東京人の堕落時代」「街頭から見た新東京の裏面」が貴重でありかつ興味深い。記者杉山萌圓の視る大震災後の東京と作家夢野久作が描く作品世界とは、まるで断絶していない、ぞっとするほど地続きであることが、読めばすぐに感じられる。都市彷徨者としての夢野久作。都市も人物もどこか透明で実体が欠落しているよう。非人称的。

    自己を自己たらしめている何かが実はただの虚無でしかなかった、という感覚。彼の描

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    2020年01月01日
  • 電信柱と妙な男

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    小川未明の幻想・怪異系の作品を集めた1冊。
    未明の作品は純日本を舞台にした作品の一方で、どことも判然としないエキゾチックな国を舞台にした無国籍風の作品がありますが、私はその無国籍風の作品の方にとても心惹かれるのです。
    本書の解説でゴシック・ロマンスやスラヴ浪漫派文学などの影響について触れてて、ああなるほどと思う気付きがあり。西洋風の城や墓場が出てくる訳ではないけれど、そのかわりの工場だったり一軒の小屋なわけで、要は抱えてるテイストがそっち方面と地続きなんですね。
    恩師であるハーンの書く怪談話はあくまで説話的な印象なんですが、未明の作品はロマンチックでかつ童話的でありながら、読んでる最中ずっと読

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    2019年10月24日
  • 稲生物怪録

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    名高い「稲生物怪録」だが、近寄るのは初めて。
    京極さんが手広くお仕事されてるお陰です。
    絵巻は確かに、独特の味が出ていてユニーク。
    京極さんの現代語訳は読みやすく、微かに京極さんの匂いがするところが良きかな。
    「仕方ないので寝た」「(怪異が)使えるかなと思ったが役に立たなかった」という淡々とした感じが、加門七海の実話怪談の様で面白かった。
    最後、魔王が出てくるのね‥知らなかった‥。
    これ以上近寄らないとは思うけど、手に取らせてもらったことには感謝。

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    2019年09月02日
  • 稲生物怪録

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    十年以上前、稲垣足穂「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」を読んで知った。
    その後、妖怪や幽霊の本を収集しているにもかかわらずなかなか本腰入れることができずにいる。
    鬼太郎6期にはまったり、水木しげるをぽつぽつと読んだり、今度松江に行くことになったり、と妖怪づいている。
    だもんだからまず三次の商工会議所でDVD「伝承としての稲生物怪録」を頂いてばっちり予習してから、よきタイミングでこの本に向かったのである。

    面白い!
    まずは絵巻の味。
    主に屋内における怪異が、これでもかと怖可愛く。
    そして京極夏彦による訳も。
    「たいしたことなかったから寝た」のテンドンに吹き出してしまう。
    そして東雅夫の訳も。

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    2019年08月07日
  • 山怪実話大全 岳人奇談傑作選

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    実話という表記にあまりいい読後感を持っていないので、どーかなーと思っていたら、今様の読者投稿という体ではなく、明治から昭和にかけてのアンソロジーだった。そういやサブタイトルに『~傑作選』ってあるな。
    爆発的ヒットで知られる『山怪』を読んだ時にも感じたけれど、山の話は多分に主観的で、基本的に話者がイコール体験者という話も少なくなく、結果として、怖くない。少なくとも、山を体験したことのない私は。
    とは言え、現象やキャラクターには興味津々なので、いわゆる『怪談実話』のなかでは読みごたえがあった。

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    2019年04月21日
  • 怪獣文藝の逆襲

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    東雅夫さん編集ということで手に取ってみたら、有栖川有栖さんや山本弘さんといったミステリ畑やSF畑の方も書いていて驚いた。
    んだけど、アンソロジーの傾向として、「怪獣はあるもの/対峙するもの」として描かれていて、絶対的に抗えない存在という畏怖感には欠けていて残念だった。前作がそういったものらしいので、気にしておこうと思う。

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    2019年03月04日