東雅夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
東雅夫・編『文豪山怪奇譚 山の怪談名作選』ヤマケイ文庫。
近代から現代の文豪たちが山の怪異を描いたアンソロジー。12編を収録。
昔から山は怪談や怪異の舞台となり得る霊的な力をたたえた特異な場所であったことが窺える。多くの文豪たちが手を変え、品を変えて描く山の怪異とは……
火野葦平『千軒岳にて』。突然噴火した千軒岳に翻弄される河童たち。
田中貢太郎『山の怪』。猟師の半兵衛が山で体験した怪異。
岡本綺堂『くろん坊』。黒ん坊と冗談で交わした約束を破ったことで起きた悲劇。
宮沢賢治『河原坊(山脚の黎明)』。宮沢賢治らしい世界観の詩編。早池峯山の南にあたる登山口の異世界のような風景。
本堂 -
Posted by ブクログ
乱歩の怪奇短篇傑作集。ほぼ読んだことのある作品ですが。読めば読むほどに味わい深いです。
「目羅博士の不思議な犯罪」がやはり好き。短篇ではこれが一番好きな作品かな。幻想的な光景が目に浮かび、ふっと引き込まれそうになってしまうところがまた恐ろしくもあります。
何度も読んでいるけど、「芋虫」も感慨深い作品。実は愛情に満ちた作品なのでは、と思いました。「ユルス」の一言が心に刺さります。
「蟲」もなんとも凄い作品。これって「虫」だとダメなんですよね。「蟲」でないと。
「防空壕」は読んだことがなかったかも。少しばかりユーモラスな印象だなあ。まさかそんなオチだとは。 -
Posted by ブクログ
乱歩先生の作品の中でも『猟奇と妖美』をテーマにした作品12編。ミステリー作品は入っていないのでご注意を。
未読作品は4編。
「火星の運河」は『私の夢を散文詩みたいに書いたもの』というだけあってストーリー性は無い。乱歩先生お得意の不気味な背景の中で、主人公は男なのに夢の中では女になって自分の体を掻きむしり血をダラダラと垂れ流す。
何とも意味深な夢に見えるがそこに深層意識などを解釈しようとするのもナンセンスか。
「白昼夢」は白昼の往来で堂々自分の猟奇的犯罪を語る男の話。その男が指差す先には彼の犯罪の紛れもない証が。果たして本当に彼は犯罪を犯したのかそれともからかわれたのか。
「目羅博士の不思 -
Posted by ブクログ
気になる作家さんが居るとき、なるべく第1作目を読むようにしている。可能ならば、書かれた順に読みたい派だ。
そんなわけで、最近気になっている郷内心瞳さんのデビュー作が収録されているこちらを手に取る。
そうか。デビュー前から拝み屋としてのスタンスを出しつつ怪談書いてたのか。と驚いた。それから最初から構成力とか文体がずば抜けている。
どうして書き始めたんだろう。供養という意味合いもあるだろうけれど、これでもかというくらい構成を練ったり、余計なものをそぎ落とすような文体は、書いてみた、だけでは収まらない気がする。それはいつか語られるのだろうか。
それから、文末のコンテスト講評を見ると、表 -
Posted by ブクログ
三次もののけミュージアムに行ったので、その記念に購入。
絵巻をカラーで一つ一つのエピソードをしっかり見られたのはよかったなあ。
平太郎本人作という『三次実録物語』はさすが京極夏彦先生、非常に読みやすい小説になっていました。
9日目のエピソードは何度読んでもエグいけど。
聞き取って書いたと伝わる『稲生物怪録』は、『三次〜』との相違点が散見されて、その違いを楽しめるのもいい。
読み手側が詳しくないので、その相違点が先生による脚色によるものかどうなのかまでは判断つかなかったのですが、絵もあり、成立過程の違う2種類の物語を一度に楽しめたりと、稲生物怪録に最初に触れる本としては適切だと思います。 -
Posted by ブクログ
童話作家として名高い小川未明の「影の世界」。
アンソロジスト東雅夫セレクト、未明地獄編とでも呼びたくなる
儚げで残酷で美しい物語の数々(厭戦・反戦感情強し)。
小学生のとき「赤いろうそくと人魚」その他を確かに読んだはずだが、
中身が記憶にない(!)……なんというポンコツだ私は(笑)!!
我が半生に一点の悔いアリとすれば、
読書日記を綴り、保管してこなかったことだなぁ……と、しみじみ。
そんなワケで、定番として扱われる人口に膾炙した名作と
比較しようもなかったのだが、ともかく、この本は面白い。
構成は以下のとおり。
後半は特に、不吉な死の匂いが充満する、
大人の、しかも「好事家」向けの作品 -
-
Posted by ブクログ
エッセイ集。編集のテーマが「文スト縛り」って!(笑) よくぞここまで、というほどに見事なセレクトですが。特別文ストファンじゃなくても面白く読めるのではないでしょうか。さすがの博覧強記っぷりにはひたすら舌を巻くばかりです。
お気に入りは「ランプの廻転」。怪談・幻想小説好きにはたまりません。「草迷宮」は読んでいないのだけれど、これでかなり気になりました。
「パノラマ島奇談」と「黒死館殺人事件」は読んでいるので、それぞれの解説にはなるほどなあ、と感銘を受けました。そしてまた読み返したくなること請け合いなのですが。黒死館……もう一回読むのは根気がいりそうかもしれません(苦笑)。それとも再読ならよりよく -
Posted by ブクログ
怪異小品集。宮沢賢治って児童文学の人だと思っていたので、こんないろいろな作品があったとは、と感嘆しました。でもたしかに、昔読んだ児童文学の数々にも、さまざまな意味での「怪異」は描かれていたのかもなあ。
「幽霊の章」に気に入ったものが多かったです。やはり一番好きなのは、「河原坊(山脚の黎明)」。静かで心地よいとさえ思える恐怖感が、じわじわと染み入ってくる印象でした。「ながれたり」もまさしく流れるような言葉が心地よくって、浸れる一作です。
後半の作品は怪異といえども、怖いというよりはなんだか愉快に思えるものが多い印象でした。「月夜のでんしんばしら」なんてものすごく楽しい気がするのだけれど。それでも -
Posted by ブクログ
山にまつわる文豪怪談集。個人的には山はなんだか怖い、という印象があるのですが。……やっぱり怖い。でも民俗学的な部分も多くて、かなり興味深くもあります。実際行かずに、こういう作品を読みふけるのが一番(笑)。
お気に入りは宮沢賢治「河原坊」。宮沢賢治は児童文学の人、というイメージが強いのですが、まさかこれほどにまで恐ろしい作品があっただなんて! なんともひっそりとして怖い作品でした。「誰かまはりをあるいてゐるな」にぞくぞくさせられます。
中勘助「夢の日記から」、泉鏡花「薬草取」も、非常に幻想的で美しいながらも恐怖があって好きな作品。慣れないと文章がやや読みづらいと感じますが、それもまた味わいだなあ -
Posted by ブクログ
乱歩の短編は3編だけ収録。本書のメインは随筆や評論の数々で、タイトルにもある「怪談入門」が素晴らしい。
乱歩が分類好きなのは貼雑年譜などからも周知の事ですが、ここでも怪談を乱歩なりに分類し、そしてまぁ、土蔵にあれだけの本を集めていた人だけあって、国内外に問わず様々な怪談を読んでおり、それを紹介していく手際のすばらしさ。(インターネット時代の今ならともかく、あの時代にラヴクラフトとかダンセイニとか読んでたのか……!と驚きましたよ)
そして知ってたけど、乱歩、朔太郎の「猫町」大好きだよね……。あちこちの随筆で推しててホッコリしたよ。
その他、乱歩が翻訳したポーの「赤き死の仮面」収録。
個人的に嬉