あらすじ
大好評、大人気「山怪」本、黒本。
登山者、山岳人により実話として語られた山の怪談・物語の名作の数々を欺界の雄、東雅夫氏が厳選集成!
山の裏側を垣間見る未曾有のアンソロジー。
<目次>
「不思議な山」夢枕獏
「山の怪談」深田久彌
「焚火をかきたててからの話」上田哲農
「木曾御岳の人魂たち」西丸震哉
「谷底の絃歌」大泉黒石
「山で見る幻影」下平廣惠
「夢」串田孫一
「山のおばけ座談会」山高クラブ
「黒沢小僧の話」務台理作
「奥会津檜枝岐怪異譚」石川純一郎
「雪女」関野準一郎
「山の神の怒」田中貢太郎
「木曾の怪物」岡本綺堂
「炭焼の話」岡本綺堂
「山村民俗随談」柳田國男
ほか、全26話
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この世の中には「不思議」なことはある。だから、それには謙虚に耳を傾けていきたいと思っている。この本の最初の方に「深田久彌」の名前、そして彼が書いた「山の怪談」という話があった。それを読んで、その「体験談」にゾッとしたし、実際にあったんだろうと思う。不思議やことや、怖いことがたくさんあった本だった。
〈本から〉
〈幻の山行〉 西の喜与衛
略
(そんなことはある筈がない)という人がいるかも知れない。しかし私はその後、山小屋で宴会が終わって静寂さをとり戻した深夜、前年なくなった父親に会っている。ノーベル物理学賞受賞の湯川博士は「科学で分かっているのは全体の2パーセントに過ぎない、知らざれる世界こそ現実である」ーと言っておられた。
説明できないものについて、私たちは、しばしば「幻」ということにしてしまっている。そんな「幻の山行」であった。
Posted by ブクログ
短編小説を読む楽しみ、特に怖い話を読む楽しみ、というのは短い中にギュギュッと凝縮された怖い話=構成の上手い話が沢山入っている事である。
当方はこの手の本を夏に読むのが好きだ。特に夕方、闇が落ち始める頃に読むと何か異世界に足を踏み入れていくような気配があってたまらなくよい。
本書は背筋をゾクリとさせる話をいくつも詰め込んでいる。強烈なものはないが、確実に心の中に入ってくるもので夜電気を消した後が怖い。
Posted by ブクログ
山には怪異がいる。
それは間違いない。
ひとえに俺もその怪異に山で出会っているからだ。
本作はアルピニズムの概念が日本に持ち込まれてから、古くから山にまつわる怪異奇譚集だ。
これは自然的というより、人が介在する怪異の話が多い。
これ読んでると、昭和前期は冒険的登山で死ぬ人多いなぁと思う。
今だったら炎上案件ばかりだと思った。
Posted by ブクログ
山で実際にあった怪談をまとめたアンソロジー本。
山の話なので登山用語も多く、登山未経験者の私には分からないところも多々あり読みづらい話もあった。
話自体は実話と銘打っているだけあり、エッセイのような体験談が多い。
そのため、恐怖というより薄気味悪さがある。
ホラー小説のような恐怖を求めている人には物足りないかもしれない。
個人的には炭焼きの話が好みであった。
Posted by ブクログ
実話という表記にあまりいい読後感を持っていないので、どーかなーと思っていたら、今様の読者投稿という体ではなく、明治から昭和にかけてのアンソロジーだった。そういやサブタイトルに『~傑作選』ってあるな。
爆発的ヒットで知られる『山怪』を読んだ時にも感じたけれど、山の話は多分に主観的で、基本的に話者がイコール体験者という話も少なくなく、結果として、怖くない。少なくとも、山を体験したことのない私は。
とは言え、現象やキャラクターには興味津々なので、いわゆる『怪談実話』のなかでは読みごたえがあった。
Posted by ブクログ
柳田國男翁始め、岡本綺堂、夢枕獏、深田久彌、西丸震哉といった、その筋以外でも広く知られたビッグネームが並ぶ小品集。
収められている多くはズバリ分かりやすい怪談というよりも、山という異界を舞台にしたほんのり不思議で薄ら寂しい、そんな話になっている。
そしてインターネットやGPSなどに代表されるテクノロジーが急速に普及した現在とはまた趣を異にする、いかにも昭和という、特有のあの匂いに満ちた各掌編が醸し出す空気がしっくり漂い過ぎている。
巻末の編者解説でも触れられているが、「深夜の客」の類型は私もこれまでに何度か目にしたことがあり、やはり山の怪異話の古典、クラシックなんだなあと腑に落ちたりもした。
家の近所のちょっとした山でも、少し日が暮れかかってくるだけで訳もなく怖いもんなあ、何かが起きても決しておかしくない時空なのだろう、山は。