ストーリーが面白い、のもあるが、人生勉強になるから読んでいるんだな、と自分で思う
『ストレッチ』(アキリ)や『まかない君』(西川魯介)のように実用性が高い訳じゃない。さすがに、靴は自分の手じゃ作れない
何と言ったら、正確に伝わるのか・・・・・・本気で働く、結果を出す、自分を磨く、ってこういうことか、
...続きを読むそう漠然と、この『IPPO』を読んでいて思う
確かに、今、私はちゃんとした仕事に就いて、毎日、働いている
現在の仕事の、就業時間や給料、同僚との関係などをひっくるめた環境には、特に不満はない
しかし、たまに、自分の今、している仕事は誰かのためになっているのか、と考えてしまう時がある
他人に「頑張っているね」と言われたくて、仕事に励んでいる訳じゃないにしろ、判り易い結果が目に見えないと不安に襲われる
だから、この『IPPO』を読むと、そんな事でウジウジ悩んでいる自分の、人間としての浅さに気付かされ、自己嫌悪から曲がっていた背中が一時的にしろ伸びて、今まで見ていたモノが違って見えてくる・・・気がする
何の為に働いているか、は人それぞれだが、大事なのは、きっと、お客さんが信頼してくれている『自分』を裏切らない仕事をする、自分の誇りを自分で損なうよな結果を出す仕事だけはしない、そこなんだろう
主役である若き靴職人・一条歩が天才的なセンスを持ちながらも、まだまだ、職人としても人間としても完成しておらず、自分の至らなさを持ちこまれる仕事と向き合う事で気付き、一気にではなく、人間らしく、ちょっとずつ成長していくトコが、この作品の魅力でもある
また、微妙なラブコメ感もあり、気持ちを向けられている当の歩が、てんで鈍いトコも面白い。やっぱ、一つの才が突出しすぎていると、他人が考えている事に敏くても、女性の恋愛感情には疎くなるのかね?
この3巻に収録されている、どの話も、自分の皮を剥いてくれるモノだが、特に私が他の読み手に薦めたいのは、Episodio.16だ。変わる事、変わらない事に良いも悪いもない、それは生きていれば当たり前の事。大切なのは、自分の何を変えるべきか、何を切り捨ててはいけないか、を自分でちゃんと考え、行動し、変わった自分を自分がまず受け入れる事。“本物”はその形を時の流れの中で変えても、美しさを失ったりしないのだから。それは人も同じ。姿形が違えようとも、自分を貫いている人間はカッコ悪くない
この台詞を引用に選んだのは、歩の職人としての矜持、先人たちへの尊敬を強く感じられたので。自分の持つ、自分が受け継いだ技術への感謝、それを私は持っているんだろうか