宮台真司のレビュー一覧
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恥ずかしながら、著者の宮台氏のことは例の事件の際に知った。そのときに、私は彼を大学で学生に講義して、論文を書いている典型的な学者だと思っていたので、タイトルだけ見て買ったこの本の内容は予期していたものと違った。氏がラジオやYoutubeなどの媒体でご活躍されていたのは全然知らなかった。本書のように対談など会話形式が内容の中心になっている本は嫌いではなくむしろ好きなのだが、社会学の専門的なことを知りたかったというのが正直な感想。
筆者は本書で現在の日本社会のどうしようもなさを明らかにし、痛烈に批判している。私は彼の言っていることの9割以上に同意する。 -
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【314冊目】批評家の東浩紀さんと、社会学者の宮台真司さんが父親になられてからの考察を対話形式にしてしたためたもの。2010年出版。論壇では時の人であったこともあり、従来からお二人の議論を追っている人には目新しさはないのかもしれないが、私は興味深く拝読。
「大きな政府」ではなく「大きな社会」という相互扶助のネットワークを構築していかないといけない。だけど、絆を構築・維持するには相応のコストが必要で、その覚悟が日本人には希薄。今後は個人のスキルを磨くことよりも、スキルのある誰かと繋がれるコミュニケーション能力が大切で、そうした能力を培うことが教育の目的…というのが大まかな議論の流れかな?
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ネタバレ中国は西洋より早くに国として成立したので、西洋的国家概念には当てはまらない。
古代から一貫して支配層は文官。
毛沢東は史上もっともラディカルで、利己主義を徹底した(伝統的な儒教すら破壊しようとした)。
そんな毛沢東を中国人が否定しないのは、伝統的な皇帝システム(天と天子というシステム)の形式が無意識的に残っているから。
日本人は日中戦争が「何であるのか」を意味づけられていないので、いくら誤っても中国側は納得できない。
さらに、日本は戦争当事者世代と現在の世代のあいだの連続性を設定できていないので、過去について謝れない。
日本は米中関係の付属物にすぎず、情勢を正しく分析して最善の選択をし続け -
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・日頃から宮台先生の本、ビデオニュースドットコムのコメント、他メディア上での発言に慣れ親しんできた人にとってはジャストサイズのサマリーになると思った。
・内容は難しいのではなく深くて正しい。深い事柄を可能な限り平易な言葉で伝えようとしてくれている。そのため事柄の本質を抽出・圧縮・簡略した宮台先生用語を知るには上記他メディアにも日頃から触れているとかなり点と点がつながっていく。
・システム世界の侵食に抵抗するためにこそ、生活世界ーシステム世界が統合されたものとして企業の組織マネジメントはあると改めて思った。企業における組織は重要な社会の足場なので。 -
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就職課のサポートやリクルートのビジネスの中で学生側にはふんだんに選択肢が用意されるようになり、「これだけあれば、この中に自分に一番合った企業があるだろう」「自分はこういう人間だから、こういう仕事が向いている」という適職幻想が生まれた。いわゆる「最適マッチング幻想」で、これは就職だけでなく性愛にもある。最適マッチング幻想が蔓延した結果、「もっと良い選択肢があるはずだ」と永久に迷い続け、全選択に失敗する。
「最適マッチング幻想」
不自由の解消が必ずしも幸せに繋がる訳ではない事をこの単語が物語っているように思う。皮肉にもリクルートの社是は「『不』の解消」。 -
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社会の空洞化、感情の劣化。
頑張ったのにこれじゃない感。
社会心理学の観点から、安倍政権、脱原発、憲法、ISILなど、具体的テーマで、何が本質的問題なのか、それを踏まえてどうする、と言った内容が盛りだくさんで、正直、論理の理解はできるけど、情報過多でまだ飲み込めてない。
私が貢献価値として認められて、帰って来れる場所としての共同体はとても共感で、こういう場所はとても大事だと思う。感情が劣化している私ですが、共同体作ってみようと思う。
個人的に、口調が対立的なところがあまり好きじゃないので、評価低めですが、指摘は鋭いなと、いい視点もらいました。
追加で、祭りの大事さも少し理解が進んでよかっ -
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かつて厳しく対立しあった過去をもちながら、その後急接近することになった小林よしのりと宮台真司の二人に、司会役の東浩紀を加えた三者が、現代の日本が直面する諸問題について論じあった鼎談です。
小林は、『ゴーマニズム宣言』シリーズで「サヨク」を批判し「保守」の立場を標榜してきました。他方宮台は、右翼を主意主義、左翼を主知主義とみなしています。そのうえで、カール・ポパーのピースミール社会工学のような漸進主義を評価し、たうえで、「ネトウヨ」が「知性の劣化」ではなく「感情の劣化」として位置づけることで、小林の立場に歩み寄りを見せています。こうした漸進主義には同意をおぼえますが、日本のポパリアンである鶴見 -
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著者は、社会の地域共同体や中間層の分解により、分断され感情が劣化した個人が、メディアやインターネット上での同質な者とのコミュニティ等に承認を求め、果てはイスラム国のようなものにまでそれが拡大される現代に警鐘を鳴らし、基盤としてのコアな場を持つことの重要性を説き、同時に国民の感情劣化による民主主義の危機と日本の政治の知性の劣化にも警鐘を鳴らし、国民や住民の直接投票を活用した健全な民主主義の確立を唱える。
と、言ってることはわかるし、知識が豊富なこともわかるし、勉強にもなる。
一方で、以下の点が少し気になった。
・そもそも他人からの承認を求めない真の自立した個人という理想像が見えず、承認欲求の奴 -
Posted by ブクログ
序盤は中国社会、中盤は日本との関係、終盤は将来についてが書かれている。
序盤では、宗教観についてが印象に残った。
儒教が伝統的に強いというのは知っていたが、それが権力者が統治するのに都合が良く、科挙を突破できるようなエリート向けなのに対して、イマイチどういったものか掴めなかった道教が、科挙を突破できなかったような敗者を救うもので、「裏儒教」といっていたのは今後、道教を理解するきっかけになるものと感じた。
中盤の日本との関係では、第二次世界大戦付近の話が中心だった。
例え話も含めて分かりやすかったが、耳が痛い話が多かったので、読むのが辛かった。
納得する話ではあった。