山田順子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
何、この傑作!出だしからディズニー映画の映像が眼に浮かぶ。イングランドにたどり着いた姉弟のモリーとキップはようやく雇ってくれる森の中の屋敷を見つけた。天性の語り部モリーと足の悪いキップ。一癖も二癖もあるウインザー家の人々。そして夜になると不気味な足音を立てて夜の庭師がやって来る。なんと魅力的な登場人物たち。両親がいなくても健気に召使いとして働く2人と謎めいた屋敷の秘密、そしてゴースト。すべてが明かされると最終章は児童書らしからぬサスペンスアクションのような急展開は血だらけで人がわんさと死んでいく。それでもラストはハリウッド映画のように、そして希望へ。娘が幼い頃に枕元で読んでやりたかった
-
Posted by ブクログ
ビブリア古書堂で「たんぽぽ娘」を知り、井上一夫訳の「たんぽぽ娘」を読み、この本を手に取った。
「特別急行がおくれた日」
「河を下る旅」
「エミリーと不滅の詩人たち」
「神風」
「たんぽぽ娘」
「荒寥の地より」
「主従問題」
「第一次火星ミッション」
「失われし時のかたみ」
「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」
「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」
「スターファインダー」
「ジャンヌの弓」
以上13の短編が収められている。
目的はやはり「たんぽぽ娘」にあった。
本書の訳者は以前読んだものと違い、伊藤典夫氏である。
翻訳者が違うと、やはりどこか質感が変わるもので、私は伊藤訳の方が好きだ。
細かい表現がわかりやすいし、ロマンチックな場面はより素敵だと思う。
「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」という表現も伊藤訳だ。
ストーリーはすでに知っていたのではあるが、何度読んでもいいものだと思う。
他の作品はどうだったかというと、「たんぽぽ娘」に負けない作品ばかりだった。
嘘偽りなく、本当にどの作品もよかった。
その中であえて挙げるならばと思っても、「河を下る旅」、「神風」、「主従問題」、「ジャンヌの弓」と絞りきれない状態だ。
世界観と情景描写はとにかくわたしをわくわくさせるし、物語からは切なさと安らぎの両方を感じられる。
それでいて、二番煎じにはならない。
これだけの物語をこんな文章で書けるのなら、さぞ執筆活動は楽しかったことと思う。
死の前日まで次回作の準備をしていたというのも、それが理由の一つではないだろうか。
とにかく他の作品を読みたい。
しかし、4つの長編と200の短編のうち、日本で翻訳された作品はそう多くはない。
あとがきによると、伊藤氏は次のヤングの短編集を計画しているようだが、彼もすでにご高齢である。
…私は英語ができない。
もし英語を読むことができれば、いくつかの作品は手に入る。
「たんぽぽ娘」の原文を味わうこともできる。
さて、どうするか。 -
購入済み
すごく良かったです
ちょっと悲しいというか、痛ましい真相だと私は思ったのですが、解決までの過程や、登場人物に
作者の健全な思考が感じられる話でした
最後にある作者によるあとがきが一番笑えました -
Posted by ブクログ
ネタバレロバート・F・ヤングが送るSF短編集。全体的にハッピーエンドが多くロマンチックな作品が多い。
「特別急行が遅れた日」
SFでよくある「小さな世界」の短篇。そのネタ自体はオチまで読まずとも察しのつく読者は多いだろう。日常的な日々の中のちょっとした変化と、被造物がこの階層からなる小さな世界とその創造主を意識した所で短篇は終わる。変化はまさに神のいたずらであり、いつもと変わりない日々が固定されているのはゾットするのを通り越して諦観にも似た気持ちを抱いてしまう。
「河を下る旅」
表題作を除けば個人的にはこれが一番面白かった。謎の河下り。薄々その理由に気がついているがそこから目を背けている男女。とどのつまりは三途の川であり、河の上での会話、土手にある宿で泊まっての身の上話などが走馬灯として繋がっていく。途中の自殺の途中であることが分かってからの文字通り急流のようなストーリー展開が見どころである。最後は自殺をきっかけとして二人は運命の出会いを果たすわけだが、ホッとすると同時に非常に美しい終わりであった。最も短篇らしい短篇であり、完成度は高い。
「エミリーと不滅の詩人たち」
詩を読むアンドロイドとそれに魅せられた補助学芸員の話。詩を読むアンドロイドという設定が素晴らしく、そうした芸術は必要とされず、より分かりやすいものほうが喜ばれるという苦悩はとても生々しく嫌というほど理解できる。詩人のアンドロイドを救う方法が、展示物の車に乗車させるという解決策はとてもミラクルで、まさに博物館で働く人間らしい企画とアイデアの勝利であろう。余談だが、「詩の世界の空が落ちてきた」や「エミリーも詩人たちと同じ船に乗っている」などの訳文が雰囲気とあっていてとてもいい。染み渡る一本である。
「たんぽぽ娘」
流石の表題作というだけあって素晴らしいSF短篇である。突然丘の上に現れたタイムトラベラーだと名乗る若い女。そんな彼女に恋をしてしまい、逢瀬を重ねる主人公。彼の知らない不安を目に浮かべる妻。三者三様の思惑が絡み合った恋の物語で、丘の上に現れた若い女の正体が、彼の妻の若い頃だというオチが素晴らしく、まさしく時を超えたラブストーリーである。昔に会っていたからこそ、その日その瞬間に恋に落ちることを妻は知っており、その恋が本物であることを証明するために若い時の主人公と会って結婚する……しかし主人公がその日に恋に落ちることは、すでに決定された未来であり、そこから先のことは分からない。妻の長年の不安の正体が明らかになると同時に、主人公の恋も成就するというアクロバティックなアイディアであり、これはもう思いついたもの勝ちだろう。
「第一次火星ミッション」
子どもの頃のバローズ的世界観の空想的な火星の旅。大人になって宇宙飛行士になり、本物の火星に行くと、そこで子どもの頃になくしたナイフが落ちてあり、それをそっと埋め直す。子どもの想像力は無限であり、ひよっとしたら現実も捻じ曲げてしまう力があるのかもしれない。
だいたい印象に残ったのはこの三篇で、全体的に読みやすい短編集だった。えげつない結末やソリッドな作品はほぼ皆無だが、センチメンタルなアイディアが冴え渡っており、有名作品と言うだけあって一読の価値のある作品集である。 -
Posted by ブクログ
2017/03/09了読。
2017年2冊目。
通勤時にちょっとずつ読んでたので、時間がやたらかかってしまったけれど、最初の一行目から物語の魔法にかかってしまった、幸せなひと時でした。
内容としてはダークファンタジー寄りのホラー。
タイトルから連想していた夜の庭師と実際に出てきた庭師の印象が随分違っていて…思ってたよりホラー要素高めでした。
19世紀半ばのじゃがいも飢饉、アイルランドの多くの人々が飢えで餓死するか、命を懸けて母国を捨ててイギリスやアメリカに渡らなければならなかった。そういうことも、世界史をきちんと勉強していなかったので知らず…(高校は受験対策で日本史だったから…という言い訳)
その時代に両親と船ではぐれて二人だけになってしまった赤髪の姉弟、モリーとキップ。
二人が奉公に向かったウィンザー家の主人夫婦と子供たち、語り部のへスターケトル。
登場人物が皆魅力的で、物語ることの喜び、読書の楽しさに浸れた一冊でした。
ジョナサン・オージェ。もっと読んでみたいです。
それにしても、せめて月一冊くらいは読みたいなあ… -
Posted by ブクログ
ミルン氏の名前を聞いて、思い当たる皆様もいらっしゃる事でしょう。そう、あの「クマのプーさん」を書かれた作者であります。
とは、言え…どうも私は幼き頃より、「クマのプーさん」は読む気がしないのであります。イラストも可愛らしく、世界観も何となくディズニーのキャラクターとして存じ上げてはいるのですが、原作本には手が伸びず。
そんな中、そのミルン氏がミステリーを書いていると知り、だったらまずはそちらから入ってみようではないか!と言う事に。
それでは、あらすじで御座います。
長閑な田舎に建つ名士の屋敷、赤い館。
主のマーク・アブレットは、ハウスパーティーと称して五人の宿泊客を招待していた。
その他に、マークの従弟であり館の管理を任されているケイリー、そして館に勤める従業員達も共に住んでいる。
ある夏の昼下がり、青年アントニー・ギリンガムは旅先の宿屋で「赤い館」の話を亭主から聞く。
宿泊客5人の中の1人、ウィリアム・ベヴァリーはギリンガムの友人であり、まさに先日「赤い館に泊まっている」と言う手紙を受け取ったばかりであった。
折角近くまで来たのだから…と、ギリンガムはべヴァリーに会いに赤い館へ向かう。
すると、其処には激しくドアを叩くケイリーの姿が。
ギリンガムが声を掛けると、ケイリーは「銃声の音が聞こえた」と慌てた様子。
初対面同士ながらも協力し合って窓をぶち破り、中に入ると其処には男の死体が。
ケイリー曰く、それは紛れもなく主マークの兄であり、15年もの間全く姿を見せる事のなかったロバートだと言う。
実は先日「久しぶりに館に戻る」と言う連絡がロバートからあり、あまり褒められた性格ではない兄とマークはうまく行っていないようだった。
それらの状況を踏まえて主のマークが怪しいと思われたが、何とマークは忽然と姿を消してしまったのだ。
ゴルフ場でのプレイを終え、館へ帰って来た5人の宿泊客。
ベヴァリーとの再会もそこそこにギリンガムは彼を相棒役に据え、事件の真相を追う事に。
果たして犯人は?主のマークは何処に?ギリンガムは、ベヴァリーと共にこの謎を解明する事が出来るのか?
流石は、子供向け作品の作者!非常に読みやすく、ミステリー特有のおどろおどろしさも全くないので、そう言った雰囲気が苦手な皆様も気軽に読んで頂けるのではないでしょうか?
外国の田舎の夏の長閑な田園風景の中で起こる、殺人事件でありながらも何処か「赤毛のアン」の情景を彷彿とさせるような自然たっぷりの世界観は、ライトノベルのような感覚で入り込む事が出来るかと存じます。
探偵役のアントニー・ギリンガムも「中々のいい男であり、きれいに髭をあたった彫りの深い顔立ち、どんな細かい事も見逃さない灰色の目」とある通り、様々な観点から鋭い推理を披露して行きます。
相棒役のウィリアム・ベヴァリーは、好奇心旺盛でちょっぴりドジな憎めない性格で、読者は彼と共にギリンガムの推理を御手伝いしているかのような感覚を体験出来ます。
序盤はああでもない、こうでもないと推論を立てながら自分のメモとにらめっこしておりました。
終盤になるとまあ良くある話では御座いますが、新たな証言者が出て来たりして結局の所どうなるのだ?と(笑)。
そして最後、犯人が分かりました時にはまあそうだろうなと思いつつも、何だか物悲しい気持ちに相成りました。
残念ながらミルン氏のミステリーはこの1冊だけのようで御座いまして、このような気軽に読める初心者向けミステリーを、もっと書いて欲しかったと言うのが正直な感想で御座いました。 -
Posted by ブクログ
『くまのプーさん』の作者としてお馴染みの、A.A.ミルン氏によるミステリ。
とある田舎町の名士・マークの屋敷〈赤い館〉で、15年ぶりにマークを訪ねてきた兄のロバートの射殺死体が発見されます。
屋敷の主・マークに疑いがかかるも、肝心のマークは行方不明・・。
屋敷に滞在中の友人・ベヴァリーを訪ねてきたおりに奇しくも死体発見者となったギリンガムは、ベヴァリーと共に独自捜査に乗り出しますが・・。
シンプルですが良質なミステリで良き!
特に凝った趣向があるわけでもないのですが、展開としてちゃんと引き込まれるものがありますし、何といっても探偵役のギリンガムとワトソン役・ベヴァリーの仲良しっぷりが微笑ましいのですよね~。
ベヴァリーが事件の捜査をウキウキと楽しんでたり(遊びとちゃうぞ、ベヴァリー!)、ギリンガムの役に立ちたいと頑張っちゃうところとか、そんな仔犬のようなベヴァリーの無邪気さがなんとも可愛いのですよね。
で、ギリンガムもそんなベヴァリーの頑張りを「君は最高のワトスンだよ」と、ちゃんと称賛していて、まるで兄弟のような二人の関係性にほっこり♪
因みに、どうやらこのギリンガムがあの名探偵・金田一耕助のモデルだとか・・?
解説の加納朋子さん曰く「どこらへんが?」との事ですが(^-^;
う~ん、そうですね~・・人当たりがよくて、頭が切れるのに偉ぶらないところは共通しているかな・・と(個人的には)思った次第です。
ということで、死人が出ているのに何故か雰囲気が良い、“ほのぼの”王道ミステリを楽しませて頂きました。
私としては、ギリンガム&ベヴァリーコンビの探偵譚をもっと読みたいところなのですが、惜しいことにこの一冊のみらしいです・・う~む、残念!