山田順子のレビュー一覧
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ネタバレA.A.ミルンのもうひとつのマスターピース。
赤い館で銃声が響き、男の死体が発見される。それはオーストラリアから帰ってきたロバート、この赤い館の主マークの兄だという。しかし肝心のマークも行方不明になっている。マークの従兄弟で遺体を発見したケイリーが何かしたのか? たまたま赤い館を訪れて事件に遭遇したギリンガムは、年下の友人ベヴァリーをワトソン役に私立探偵をやってみようとするのだった。
推理自体はそんなに難しくなくてミステリをよく読む人なら遺体のすり替えだと早いうちに気付いてしまうかもしれない。しかしそんなことが気にならないほど、このミステリは読んで楽しい。まず素人探偵のギリンガムは優れた記憶力を持ちながらも探偵は初めてで雷光が走るように事件を解決するわけではない。思考を整理するために友人にワトソン役を頼み、ディスカッションをしながら徐々にありえない可能性を潰し、確たる証拠を得る方法を考えていくのだ。年下の友人ベヴァリーを可愛がる様子も好ましいし、犯人だったケイリーへの配慮もよい。ワトソン役を務めるベヴァリーもよい。前向きな性格で雰囲気を明るくするし、ギリンガムに友情と敬意を持っているのが伝わるし、探偵の頭脳を引き立たせるための馬鹿でないところがとてもいい。ときにギリンガムが熟考に沈んで置いてきぼりにされるが、それに対する不満もさらりと伝えるにとどめ、ギリンガムの思考を尊重しているのがいい。こんな名コンビを今まで知らなかったことが悔しいし、出会えて嬉しい。
ミルンの「『赤い館の秘密』に寄せて」も収録されている。ミルンの理想とする探偵小説の条件はどれも頷くことばかりで、理想を体現したことに驚く。そしてそんなこの作品が探偵小説を愛した父に捧げるものであることがさらりと書かれている。ここを読んでミルンの大きな愛情を感じた。とても素敵な名作だ。
訳者が自分の生涯の愛読書であるアーモンド『肩胛骨は翼のなごり』の訳者でもある山田順子氏である。それでさらに好きだと感じたのかもしれない。 -
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19世紀アイルランドからイングランドに命からがら辿り着いた幼い姉弟が、サワー・ウッズと呼ばれ、誰も近寄らない森の中にあるお屋敷で雇ってもらえることになった。しかし、どうも様子がおかしな主人一家と屋敷の中にまで侵入した巨木。奇怪なことが起こる中、姉弟は屋敷と主人一家の秘密を探っていく。
中盤まではミステリーを読んでるように楽しく読み進めていたが、終盤に差し掛かるにつれ、姉弟愛と姉として、弟として胸に秘めた想い、そして登場人物それぞれの人間らしい欲望と葛藤にどこか共感しながら胸を打たれていった。
大事なものはいつだって本当はとってもシンプルなものだと思う。
切なくも勇気をもらえるゴーストストーリー。 -
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1926年エジプト。若くして寡婦となったジェーンは叔母の誘いでカイロにあるメナハウス・ホテル滞在中、殺害された女性客の第一発見者となってしまう。警察に疑われたジェーンは独自に真犯人を捜し始めるが→
エジプトの風景がとてもよく描かれていて良。ミステリだから当然殺人があり犯人探しがあるんだけど、合間にピラミッド見学の場面やラクダに乗るシーンが丁寧に描かれていて読んでいて楽しい。
ジェーンの一人称で描かれるから、人物描写がブレブレなのも、ミスリードと考えたら面白い。→
物語の流れ的にはテンプレ感があるんだけどそれがありならすごい読んでいて楽しいミステリじゃないかと。
私はラストが良かったので、続編が出たら読みます。
いやぁ、レドヴァース、好きだわ(ボソリ) -
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旅行先エジプトで殺人事件発生… 事件にもロマンスにも可憐に上品に挑んで #メナハウス・ホテルの殺人
■あらすじ
第一次大戦が終わった1926年、エジプトの観光地。主人公ジェーンは叔母に付き添いながら旅行に来ていた。
高級なメナハウスホテルに滞在していたが、客室で知り合いが殺害されてしまう。刑事は彼女が怪しいと目を付けられ、容疑者になってしまうことに。疑いを晴らすべく、ジェーンは真犯人を探し始めるが…
■きっと読みたくなるレビュー
海外ミステリーとは思えないほど文章読みやすく、プロットも分かりやすい。
登場人物も特徴のある人たちばかりで、人物も関係性も追いやすい。
誰にでもおススメできる良作ですね。
またエジプトの情景描写がお上手で、当時の街並みや観光地が目に浮かぶ。
パーティなんかも楽しそうで、私も1ヵ月仕事を休んで、ゆっくり楽しく旅行に行きたいなぁ。できればひとりで、お金も自由に使えて、しかも独身に戻って(無理
さて本作の読みどころは、やっぱり明るく魅力的な登場人物たちですね。
主人公ジェーンの好奇心、探求心がスゴイの。読んでるこっちがハラハラしちゃうくらいアクティブ。危ないよ!
しかしどんな人種や年齢であっても、上品&前向きな女子はとても素敵です。
そして紳士レドヴァースですよ。
男子たるやこうでなきゃイカンすね。女性をしっかりエスコート、困ったときには頼りになり、決して不道徳なことはしない。しかもイケメンでクールで謎めいている。これは間違いねぇ、モテる。私もモテたい。
本作は時代背景の中、性別による格差の現実も描かれています。
いまだにジェンダー問題は残っていますが、この時代はあまりにひどく目を覆いたくなるばかり… こうなってしまうから、力や権力みたいなものが大嫌いなんですよね。
さて犯人さがし、謎解きについてですが、こちらも素晴らしい。
話の筋から妥当といえば妥当ですが、よくできています。これがミステリー小説って奴ですよ、うんうん。面白かった!
続編もあるようですし、いろんな人たちの関係性がどうなるか期待しちゃいますね。
■ぜっさん推しポイント
旅行先で事件に巻き込まれつつ、ハラハラドキドキしながらロマンスもあるなんて、超絶にドエンタメなミステリーじゃないですか?!
いつかどこかの映画で見たのようなベタな世界観の作品って、案外ありそうでないんですよね。押しつけがましくなく、説教臭くなく、気軽に楽しめるのがイイですね。
読みやすいですし、海外ミステリーを普段読まない方にもお勧めしやすい作品でした。 -
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本書の作者は、言うまでもなく「クマのプーさん」でおなじみのA.A.ミルン。
本書は文庫サイズで330ページほど。
結構文字もぎっちり詰まっていて、ちょっと読み終わるのに時間かかるかなあ…と思ったら、いざ読み始めると軽妙でスイスイ読めてしまう。
そしてシンプルで面白い!
探偵役のギリンガムは、母の遺産のおかげで働く必要がないほどお金に困っておらず職を転々とし、つい最近また仕事をやめたばかり。友人であるベヴァリーが訪れているときいていた赤い館にぷらっと顔を出したら、たまたま殺人事件に出くわした。
そこで思い立つ。探偵業、結構自分に向いてるんじゃね?(意訳)
素人探偵発足!である。
そして探偵にはもちろん、優秀な助手が必要だよね!
私があまりミステリをたくさん読んでないからだとは思うけど、主人公探偵が熟練のそれではなく素人だなんて新鮮ですごく面白い!とわくわくしながら読み進めた。
話の展開も子気味よく、新しい発見があった!と思えばすぐに新たな疑問に直面したり。
そして、自らたちをホームズとワトソンになぞらえながら、共に謎を解いていくギリンガムとベヴァリーのやりとりが見ていて楽しいというか和むというか。
えっ、一応人死んでるミステリなのにこんなに和んだり二人のやりとりを楽しんでいていいのか?ってくらい二人がかわいい。
どちらも大の男で紳士的な側面もあるのに、なんだか少年が探検をしているようなかわいらしさ。
いや、人死んでるのに、こんな感想もなんだけど。
あとがきではミルンの探偵小説かくあるべき!な熱い語りが読めるのでぜひ。
私はてっきりプーさんのあとに本書(探偵小説)を書いたのかと思いきや、逆だったんですね。
この赤い館の秘密で好評を博し、次もぜひ探偵小説を!と所望されていたところにプーさんを書いたと。
その経緯もなんだか面白い。 -
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記憶を無くした世界に響く鐘の音。
それは世界の秘密を閉ざす魔の旋律...
装丁に惹かれコレクションとして購入。
これが幻想文学。
ファンタジー とでは表しきれない、
淡い言葉のベールで包み込まれるような
どこか不思議なジャンル。
小川洋子さんの 猫を抱いて像と歩く と似た雰囲気。
終始ふわふわふわ...
きちんと理解出来ていなくても読み進めてしまうのは、
道筋の分からない地下トンネルを、
僅かな音を頼りに突き進んでいくのと似た感覚だろうか。
読みかけの本だからという使命感ではなく、
本の中になにか大切な忘れ物があるような...
上手に言い表せられないが、そんな気持ちにさせられる。
ストーリーの着眼点も鋭く、
冒険、ミステリー、恋、友情と内容もぎっしり面白いので、
大衆向けにデフォルメし、
映画やアニメに落とし込めば、きっとうけるだろう。
記憶を無くして作った平和な世界にも、
やはり搾取する者とされる者が存在する。
時代や手法が変わっても、変わらないこの縮図を通して、
あなたならどんな平和を作るかと問われている気がした。
400というページの中で、
記憶の微睡みに浸る、そんな不思議な体験をした一冊。
時間に余裕があるときに、ぜひ。 -
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遂に出ました新訳版! クマのプーさんで有名な英国の劇作家ミルンが書いた長編探偵小説。百年前に書かれた素人探偵二人組のホームズとワトソンっぷりを堪能あれ。
この作品が大好きで、旧訳も何度も読み返してますが、新訳の方もとても読みやすく仕上がっていて良いですね。この話が好きなのは、ワトソンがちゃんと役に立つ。機転が利いて仕事ができて、それでいてホームズ役との揺るぎない友情に溢れていて、そして文章の端々から匂い立つミルンらしいユーモア、作家自身が推理小説好きだから伝わってくる「英国黄金期」の良いミステリの空気感……とどこを読んでてとても心地よいのです。
加納朋子さんの巻末解説がこれまた素晴らしかったです。
旧訳版で入ってた見取り図がなくなったのでちょっと屋敷の構造が分かりにくいかもしれません。それと、はしがき(『赤い館の秘密』によせて)は、旧訳版では文庫頭に入ってました(現在手に入る英語の原書も、イントロダクションとして冒頭に入ってます)が、この新訳では末尾に持っていっちゃいましたね。理想の探偵小説とは、ワトスン役について…と熱く語ってるこのミルンのイントロダクションは、これまたとても好きな文章です。