入間人間のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ某掲示板で、「このラノベを読め!」と薦められていたのに踊ってみて読んだ作品。入間人間さんの作品は初読。
20年前、余命を伝えられた青年が、好きだった女性に告白に行く。
彼女は既に結婚している、だから当然フラレて死んでいく。
奇跡など必要ない舞台の中で、彼女の家に向かう道中、唐突に暴漢に襲われてケガをして……そしてその加害者は彼女の夫だった。
その20年後、"僕"は大学のキャンパスで一目惚れした"彼女"に、「あなたのこと全く好きではないけど、付き合ってもいいわ。その代わりに、わたしをちゃんと守ってね。理想として、あなたが死んでもいいから」と奇妙な条件付きで交際を認められる。さて、"僕"はどうしようか……
好きなタイプの物語です。
ライトノベルらしいと言えば良いのか、文体もまとまらない考えをそのまま表現しているように見えてしまう"ハマる人にはハマるけど、駄目な人は徹底的に駄目"な感じで、ウチみたいに中年になると、人には薦めにくい作品です。
出来すぎの「小規模な奇跡」が鼻につくと感じるか、好ましく思えるかで評価が変わるかと思いますが、ウチはやっぱり好きですね。
あと、ツンツンタイプ(でも実際はデレ要素有り)の"彼女"が結構好きです。
あと2,3冊、入間さんの作品を読んでみようかな。 -
Posted by ブクログ
“大学一年生の三月上旬に、私と瀬川は出会った。
確かやつは老婆に絡まれていた。いや、これは正確に言うと違うか。やつが大学の掲示板前で妙な格好の老婆に服の袖を引っ張られて、いわゆるナンパされていたのは、私が最初に瀬川を見かけた日のことだった。それから一週間ほど経った後に、瀬川と初めて話したのだ。
春期休講中の大学内だった為、人気はなかった。扉を開けた瞬間にラベンダーの香りが鼻をつく研究棟の入り口には、プラスチックの青いベンチがある。大抵はそこに寝袋の学生が寝転んで仮眠を取っているのだが、その日は瀬川が座りこんでいた。前屈みに指を組み、両腕で作られた輪の中に頭を下ろす姿勢でジッとしていた。私はその後頭部を、小突いた。
言うまでもないが、私は外から研究棟にやってきたわけではなかった。春期休講中は単位稼ぎの煩わしい講義に参加する必要もないため、嬉々として研究に取り組んでいたのだ。研究棟内に泊まり込んでいるに決まっている。そしてその時の私は、酷く寝不足で不機嫌だった。
私と同じく白衣姿の瀬川が慌てて顔を上げる。無精ヒゲもなく、髪もこざっぱりとしていた瀬川には同学年の私が表するのもおかしいが、初々しい雰囲気があった。大学生となって一年が経過するというのに、新入生のような瑞々しさを保ち続けていた。大変に羨ましい。
私はその顔に見覚えがあることにすぐ気づいた。そう、一週間ほど前に老婆に絡まれていた男だ。その様子が面白いから、話こそしていないが印象に残っていたのだ。
瀬川は最初、不機嫌そうな顔つきだったが、私の顔を認めた瞬間、目を見開いた。どうやら、寝不足が重なりすぎている私の方が顔は険しかったようだ。こちらは目を開けているのが億劫なほどなのに、瀬川は贅沢にも目を丸くし続けていた。
瀬川は明らかに怯えていた。その証拠に、
『な、なんでしょう』
言葉遣いが丁寧だった。上級生と間違われたのかも知れない。想像すると腹が立った。
『老け顔で悪かったな、私は一年生だぞ。そう怯えるなよ』
『え?あ、いやあんた……は別に老けてないが』
私は手を振って瀬川を追い払う仕草を取る。
『そこで眠りたいんだ、座っているだけならどいてくれ』”[P.75]
「携帯電話」
「未来を待った男」
「ベストオーダー」
「時間のおとしもの」
時間を巡る短編集。
「未来を待った男」が一番好きかも。
途中まではてっきり左門も男だとばかり。
「老婆」が出てくる辺りまではどっちともとれないこともないしね。面白い。
“「首尾はどうだ?」
「上々だ。ほら、見ろよ」
1号が勿体ぶるように後ろ手に隠し、摑んでいた札束を掲げる。
「うわ、すげ、ぇ?」
それと一緒に隠していた金属バットを逆の手で振り上げる。
「お?」
金。二つとも金。そんな間の抜けたことを考えている間に、1号がバットを振り下ろしてきた。額に赤い線が走る。バットのぶつかる衝撃はまったくなかった。ただ、赤い。亀裂がどんどんと広がり、それに顔が呑みこまれていく。暑苦しい。熱い。拭いたくとも、指が動かない。
え?
あれ?
「悪いな。お前の報告はいらねぇんだわ」
1号の言葉が遠い。そのまま1号は俺を担ぎ上げて三和土へと放り捨てる。俺は気絶間際で指一本動かせないまま、生温い床を転がる。そして、1号が再び金属バットを大上段に構える。
なんでだろう?
俺は、なにをされているんだろう。
あまりに頭部への衝撃が大きかったからか、混乱が解けない。知恵の輪のように。
そして、1号が俺の頭部に金属バットを振り下ろす。
頭はトマトのように潰れはしなかったが、クッションのように大きくへこんだのを感じた。
そこで俺の意識はぷつんと途切れた。もう繋がることはないだろうなと、最後に感じた。
どういうことなんだろう?”[P.192] -
Posted by ブクログ
体育館で体育の授業を、まーちゃんと壇上の袖に隠れてマットの上で戯れながら過ごしていると、
猟銃を手に、パーカーのフードを被った不審な男が闖入し、生徒や体育教師を撃ち始め、
この難局を切り抜ける、というお話。
久し振りに『みーまーシリーズ』を読み進めたけど、
相変わらず意地の悪い文章で、
難しい熟語や、独特の言い回し、長い文が多用されており、
読むのになかなか神経を使う。
今回、この作品を読んで気付いたのが、
名言っぽいことが沢山言われていることだ。
どの言葉と言われれば思い出せないけど、
3ヶ所ほど、自分の心に響いた言葉があった。
登場人物には、僕とまーちゃんは当然として、長瀬や伏見も出てくるが、二人は特筆すべき行動はとらない。
代わりに、稲沢や杉田というイラスト化されていない男子生徒がちょっと目立った動きをする。
加えて、挿話のような形で色んなキャラクターが登場する。
過去にまーちゃんに誘拐されていた浩太君とあんずちゃんが、長瀬の妹の一樹の家に遊びに行く話や、
恋日先生の怠惰な日常や、
海老原香奈恵という新たな登場人物の生い立ちについてや、
佐内利香ちゃんという、密室殺人の生き残りで和服ばかり着てそうな女と、上社奈月の会話などなど。
しかし、すべての話にオチがなく、恐らくフリとしての挿話だと思われる。
あと、物語のラストで言われていることが本当なら、
次回作がどうなるのか楽しみだ。
最後になって最初のことを言うことになったが、
目次が数式になっていて面白い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレどこまで裸をさらけ出せるか。
◎小説と全裸
小説を書くとはどういうことか。
小説家になるとはどういうことか。
リアルな生態がそこにある。
主人公はライトノベルという現代的なジャンルのルーキー。
京都に住む男子大学生。
しかも、同じ大学に売れっ子女性小説家がいるという展開。
しかし、小説を書くことは裸で走ること。
自らをさらけ出す覚悟のいる商売。
そこんところが赤裸々に出ている。
恰好も考えず、一日中部屋にこもって
パソコンに向かい合う。
それは自分と向かい合うということ。
先輩作家の女子大生も同じ。
そして、二人は同業のよしみからか良く一緒に食事をする。
話をする。
そして。
◎同業者というラブストーリー
しかし、二人は恋愛には発展しない。
女子大生は主人公の師匠というポジション。
しかも、同業者であり、ライバルでもあり、
お互いに裸を知っている。心のね。
だから、何度も何度も
美人だけど、恋愛対象にならないという言葉が出てくる。
この付かず離れずというくすぐったさ。
見よ日本流。
◎連作という禁じ手
あとがきにネタばらしが。
この小説はライトノベル作家の連作。
つまりはお互いの業界裏話的な内容もありつつ
微妙にずれる展開や心理はそのなせる技。
そこがまた愛のような、愛でないような
二人の関係を豊かにしている。
愛はパラレル、とも言えるし、
思いは多重人格とも。
恋愛物語として読んだが
メインストリームである若い小説家の
自分の気持ちと立ち向かう日々が
何とも愛おしい。