諸田玲子のレビュー一覧
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「六郷宿は、雪の訪れこそまだないものの、吐く息が白くなるくらいには冷え込んでいたはずだ。」「道端の小暗い木陰には霜が降りていたかもしれない。」という描写が冒頭にあり、「おや」と首を傾げた。この小説はどういう視点で書かれているのだろう。想像や予測、そんな視点は作者自身の視点でしょうか。少なくとも、この2文、語り手は現場にいないのだね、と思いながら読み進めたが、これ以降はすべて、語り手は現場に寄り添っていた。ここだけなのですね。
ストーリーは面白かったのですが、もう一点、読み進めるのに抵抗を感じたのは、途中に出てきた「怒り心頭」という表現。歴史小説・時代小説をその当時の言葉だけで書けなどという、そ -
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惹き込まれるように読んだ。読んでる間、江戸の町が確かにあった。
北斎を題材にした作品の「さらやしき」
笑いと明るい気分が味わえる「梅川忠兵衛」。「しのぶ恋」は心情を鮮やかに描く。
人生のロマンは誰にでもある。日々生きている日常の中に。
自由とは選択の自由だと思う。どんな気持ちを選ぶのか。
その気持の選択に誇りと自信を持てた時に人は自由を手にするのだろう。
辛い気持を振り切った時に嫉妬にあえぐ心をなだめすかすのではなく、その嫉妬には訣別した時に誰が認めなくても自分を認められるのではないだろうか。
「深く忍恋」のおりきは1本、筋が通っているように思う。 -
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お鳥見女房の第2弾。第1弾は作品や登場人物の紹介的な短編集だったが、第2弾からいよいよ主題に入ってきた。前回少しばかり顔を出してきた水野忠邦も存在感を増してきた。(あまり良い印象ではないが…鷹のように例えられている)
鳥見役というのは隠密の任もあるようで、珠代の夫は隠密仕事で1年近く音信不通になっている。そこへ家族やら居候やらが赴任先へ様子を見に行くのだが…
何しろ登場人物が多いが、2作目になるとそろそろ誰が誰だか分かってきた。
話として好きなのは、まあどれも良い話だったが、「緑の白菊」かな。君江(次女)の気持ちが可愛らしく、その成長が楽しい。
また、もう恋する気持ちを失っている私には、珠代が -
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禁裏での出費増大疑惑を探索するため、女隠密が下級公家の家に嫁として潜り込むなんて、アニメや映画ドラマの世界の話かと思っていたが、史実としてあったそうだ。
著者はその史実に基づき、作家の創造力を駆使し、時代ミステリーに仕上げた。
その探索も、楠の実が熟すまでと期限が設定され、タイムリミットサスペンスともいえるし、公家の家に幽閉されている主の弟とは何者なのかとの謎もある。
何にも増して、ヒロイン利津が、嫁いだ公家の康昆に次第に心を寄せることになり、隠密仕事との狭間で苦悩する様に恋愛小説の面もあり、見事なエンターテイメントになっている。
映画化やドラマ化すれば、きっとヒットするのではないか。その場合