諸田玲子のレビュー一覧
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通説では、早世あるいは離婚したと考えられていた信長の正室=濃姫(帰蝶)。
近年になって、織田家過去帳の記載から、帰蝶が信長の死後も生きながらえたとの説の信憑性が高まったことが、著者がこの小説を書くきっかけだそうだ。
本能寺の変の実行者は明智光秀だが、その黒幕は?と、古来様々な説が流布されている。足利義昭説、秀吉説、徳川家康説等々、かまびすしいばかり。
それだけ、当時の信長の存在が絶大だったという証左だろう。
この小説で著者は、黒幕とまで言わないが、光秀を決起させる舞台を設定し、唆せた人物を提示している。
この人物と帰蝶との、世俗を超えた淡い交流を絡ませながら、作家の想像力と創造力の翼を広げ、こ -
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諸田玲子というと時代小説家という印象。ところが、本作は珍しく昭和26~27年の東京が舞台の近時代小説。珍しいといえば、戦後のこの時代を描いた小説というのも珍しい。
ヒロインの小瀬公子は家族と暮らす荻窪の家から丸の内の企業の医務室に勤務する看護師。恩師を囲む若者たちの集まりで親戚だという絵描きの片岡に出会い心引かれる。片岡も彼女に再三アプローチをかけてくるが、奥手なためか無頼な片岡との恋にまでは発展しない。
一方、一歩踏み込めない公子の周囲ではいくつもの愛欲沙汰が繰り広げられていることに公子自身もうすうす気づいていく。大伯母の老いらくの恋、騙されたのを承知か知らずか若い男に入れ込んだ行かず後家の -
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井伊直弼といえば、安政の大獄。蒸気船に刺激されて巻き起こった尊皇攘夷の声を幕藩体制の危機と捉えた大老は、志士即ち活動家たちを断罪しつつ、水戸斉昭派の大名や公家を失脚に追い込む。安政の大獄は暫時、幕政の崩壊を食い止めた。しかし、弾圧に対する激しい反発からテロリズムが蔓延し、幕末は新たな産みの苦しみのフェーズへと進んでいく。
その井伊直弼をどう描くか。頑迷な保守主義者、世間知らずのお殿様、血に飢えた独裁者・・・敵役としてはこのようなイメージが定着しているけれども、主人公のキャラクターの設定は歴史作家の力量が問われるところ。諸田さんは埋木舎の15年に着目し、そこから物語を展開していく。
井伊直弼