諸田玲子のレビュー一覧
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ネタバレお鳥見女房シリーズ五弾。嫡男久太郎の婚姻の日が近づいていた。相手は、珠世の夫伴之助に苛酷な陰働きを命じた前老中水野忠邦に連なる家の娘、鷹姫さま。祝言の日までの心労、婚礼の場での思わぬ騒動、そして次男久之助も人生の岐路を迎えて──。家族が増えた矢島家では、喜びも増え、苦労も増える。姑となった珠世に安寧の日々は訪れるのだろうか。人情と機智にホロリとさせられる。いつも読んだ後、心がほっこりする大好きなシリーズです。
①お鳥見女房②蛍の行方―お鳥見女房―③鷹姫さま―お鳥見女房―④狐狸の恋―お鳥見女房―⑤巣立ち―お鳥見女房―⑥幽霊の涙―お鳥見女房―。諸田玲子オフィシャルウェブサイトには、「小説新潮」( -
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ネタバレお鳥見女房シリーズ第三作。
危険な任務から戻った夫の心の傷。身分の差がある恋をしている次女。結婚したもののまだ浪人暮らしの源太夫と多津の若夫婦。長男の縁談。
色々な悩みと喜びが交錯するお鳥見役人の妻、珠世の日々の暮らしが描かれる。
特別な極悪人も登場しないし、スーパーヒーローも聖人君子もこの物語には出てこない。出てくるのは市井の、平凡に悩み、笑い、泣きながら生きる人々の姿である。
主人公珠世のあたたかさに惹かれて人々は彼女のつつましい家に集まってくる。そして彼女は誰をも暖かく迎える。まるで惑星が太陽の周りをゆっくりと回るように。
二巻では、夫、伴之助の危険な任務という、サスペンスあふ -
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お鳥見女房シリーズの第二作。
一作目から続いている大きなストーリーが佳境に入り、はらはらと手に汗握る展開の二作目。それと同時に主人公珠世の周辺では、相変わらずのどかに、人々の悲しみや喜びが交錯する日々が続く。
読んでいて胸があたたかくなるのは、描かれる人々の姿だけではなく、作者の文体もまた気品がありながら親しみやすいあたたかさをたたえているからだ。
この二作目の終わりでその大きなストーリーはとりあえず一段落する。しかし、まだまだこのプロットは続いていくだろう。大きな政治の動きが珠世とその家族の平和な生活に落とす大きな黒い影。その中で、矢島家の人々と多津、源太夫、そしてその子どもたちは精一 -
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知人に勧められて読んだ本。買って大正解だった。
ミステリーとまではいかないが、それなりに謎や事件があったりもするし、登場人物が命の危険にさらされることもあるが、基本的には人情話の部分が大きいかもしれない。
全体を通して流れている大きなあらすじがあるのだが、それに加えて各章では小さなストーリーが始まって完結する。
主人公は珠世という女性で、お鳥見役をつとめる御家人の家に生まれ、婿をとって四人の子どもに恵まれた。お役目を引退した父、実直な夫、見習いとして出仕を始めた長男、格上の旗本の家に嫁した長女、剣術にたけた次男、まだ幼さが残る10代の次女。現在は長女を除く家族と六人家族で暮らしている。そ -
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中川家には家紋があり、一つは抱柏である。もう一つの家紋は中川クルスと呼ばれている。イエズス会の紋章はアルファベットのIHSであり、中川クルスにはこのIHSが巧妙に隠されているのではないかと言われている。九州は島原の乱にもある通り、キリシタンが多く、そのため弾圧の史実も多い。苛烈な取り締まりを行った当主が、なぜイエズス会の紋章を含んだような、怪しい家紋を採用するのか。
久清は時は四代将軍・家綱の世。天下をゆるがした島原の乱の余燼がくすぶり、幕藩体制が盤石ではなかった時代。公儀の執拗な締め付けに苦しむ豊後・岡藩の第三代藩主となった中川久清が、山中で不思議な娘と出逢う。行方をくらませた娘を探し求め -
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豊後国岡藩の第3代藩主中川久清は、日本人離れした容貌と言われている。なぜそういわれるかというと、かなり目鼻立ちがくっきりした肖像画が残されているからだ。キリシタン摘発を目指しての絵踏みを行なった。久住連山の一つ大船山を愛し、「人馬鞍」と呼ばれる鞍を屈強の男性に担がせて何度も登山した。墓所は、自身が愛した大船山中腹1,300メートルを超える台地上に作られ、入山公墓と呼ばれる。岡藩中興の英主・天下の七賢将と称えられ、プライベートも充実していた、幸せな人生を送った大名のように見える。
ところが、諸田氏が描き出した久清は、これらの事実を全て裏返して作られた人物だ。彼の系図が冒頭に紹介されているが