大竹文雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
日本で市場経済が不人気な理由を行動経済学の視点で分析していて興味深いです。行動経済学が好きな人には超お勧めです。
【以下、興味深かった記述を抜粋】※「?付きの文章」は自分の感想
・【定年層の育った社会環境】好況→失業率の低下(努力すれば職に就ける)→勤勉である事が重要→(市場)競争に積極的。
【若年層の育った社会環境】不況→失業率の上昇(努力しても職に就けない)→運やコネが重要→(市場)競争に消極的→規制強化に賛成。
→好況だと市場競争に賛成な人が増え、不況だと市場競争に反対(規制強化に賛成)な人が増える。最近の草食系ブームの原因は景気なのか?
・規制により、規制の枠内での格差は縮小するが、枠内と枠外の格差は拡大する。例)最低賃金の引き上げは、既に職に就けた人達の格差は縮小するが、職に就けた人と就けなかった人の格差は拡大する。
・最低賃金引き上げは貧困問題として政治的にアピールし易い。しかし、その結果
?最も貧しい勤労者は職を失い、新規学卒者、子育てを終えた既婚女性、低学歴層の人達は就業機会を失う。
?既存の雇用者同士の賃金格差は縮小する
・真の貧困救済策はどうあるべきか?
?教育訓練の充実(子供の頃からの教育も重要)。質の高い労働者には、企業は高い賃金を喜んで支払うだろう。
?負の所得税(給付付き税額控除や、勤労所得税額控除など)。
※賃金規制という強硬手段で失業という歪みをもたらすのではなく、税と社会保障を用いた所得再分配で貧困問題に対応するのが筋。
・非正規雇用を雇用の調整弁と位置づけ、その増加をデフレ化の労務費削減ツールとすることで、正社員の解雇規制と賃金を守るという戦略に経団連と(労組)連合の利害が一致した
→少数の正社員の過重労働と多数の非正規社員の不安定化という二極化
・非正規切りの問題点
→不況期の新卒世代で非正規社員が増加 →次の不況で、雇用の調整調整を受け失業。貧困は子供の世代にも波及(貧困層の固定化) →将来多大な社会的コストの支払いが発生
→企業も景気の波に比例した正社員のいびつな年齢構成 →技能継承がスムーズになされず、長期的な競争力を失っていく
・平日労働時間の増加
週当たりの労働時間は変化していないが、週休二日制が普及した為、平日の労働時間が長くなった(平日10時間以上働く労働者の比率は1976年には17%だったのに、2006年には42.6%にまで上昇)
→平日の労働時間の長時間化は、睡眠時間の短縮によってもたらされた。睡眠時間という健康投資を削って働いている事は、健康にマイナスの影響?
・日本で、有給休暇の取得率が低いのは何故か?
(ヨーロッパ)
労働者に有給休暇のタイミングを決める権利が無い。会社が日程を決め、強制的に休ませる。だから、消化率は100%に近くなる。
病欠は有給とは別に取れる
(日本)
労働者に有給休暇のタイミングを決める権利がある。病気など不測の事態の為に、年休を残す傾向がある
ヨーロッパの有給に当たるのは、日本の場合は国民の祝日。国が祝日の日程を決め(年々増加)、国民を休ませる。
・社会保険料の上昇(=事業主負担の上昇)
事業主は、賞与を中心とする賃金の低下と非正規労働者への代替によって対応する
・スポーツと同じで、1人勝ちが発生してしまうと市場メカニズムはうまく機能しない。大事な事は、競争を否定するようなルールを作ることではなく、市場競争がうまく機能するようなルールを作ること。 -
あなたを変える行動経済学
- カート
-
試し読み
Posted by ブクログ
直感が邪魔をすることがある。ということを知る。
既に支払い、取り返すことのできない分をサンクコスト埋没費用と言う。このサンクコストへの対応を間違えてはいけない。取り返せないものはあきらめることが大事。戻ってこない費用を選択の理由に入れる必要はない。
現在バイアス。遠い将来ならば忍耐強い選択できるけれども今のことならせっかちになる。
この現在バイアスは、先延ばしの傾向を説明する。
この現在バイアスが避けるために、毎日行うことの時間を決めたり。数を決めたり。という次善の策を取った方がいい。
行動経済学については知るきっかけになり、大変興味深い本。 -
あなたを変える行動経済学
- カート
-
試し読み
-
Posted by ブクログ
我が国における行動経済学の第一人者である著者が、経済学は金儲けのための学問だという誤解を解き、経済学者は「世の中をよくするためにはどうすればよいのか」を日々考えているのだとして、経済学者は物事をどのように捉え、考え、行動しているのか、それによって世の中をどのようによくしていこうとしているのかを語っている。
経済学、特に行動経済学の考え方とそれが実際にどう社会の役に立っているのかについて、わかりやすく、よくまとまっている。コロナ禍での経済政策議論に携わっていた著者の経験談も興味深かった。
一方、どういうふうに経済学の研究というのが進められているのかといった経済学者の研究生活の面の掘り下げはちょっと浅く感じた。 -
あなたを変える行動経済学
- カート
-
試し読み
-
Posted by ブクログ
新型コロナウイルス感染症対策分科会に参加していた経済学者の方のご著書。文化人類学者の磯野真穂さんの「コロナ禍と出会い直す」にて紹介されており、興味を持って手に取った。内容は一般的な行動経済学の入門書といったもので、一部コロナ対策についても言及がある。コロナ禍における政府の対応および私たち市民の反応についての反省や振り返りにもう少し重きを置いていたほうが、より読み応えがあった様に思う。
人々は自由にさせておけば放っておいても合理的な選択をするであろうと考える伝統的経済学と異なり、人々は様々なバイアスや計算能力の限界により非合理的な選択をしうると考える行動経済学は、合理的な行動をするためのアドバイスに満ちており、「役に立つ」学問と言える。法学や経済学、理系の学問に比して、人文学や社会科学は「役に立たない」と言われがちで、公的資金を投下して振興すべきでないという議論がしばしば立ち上がる。
経済学では、税負担をもとに政府が行うべきこととして、①行動に正の外部性があること、②所得再分配を目的とするか、借り入れ制約があることの二つが定義されているという。金水敏氏によれば、人文学は「人生の岐路に立たされたときにより良い意思決定ができる」という意味で「役に立つ」。個人がより良い選択ができるようになることは、社会全体のより良い選択につながるため、「公共選択の改善」という外部性があると言うことができる。また、個人の選択ミスから発生する社会問題や犯罪を減らしたり、社会保障の必要性を減らす意味で、「財政支出の削減」という外部性があるとも言える。
今までどちらかというと、学問を「役に立つ/役に立たない」という基準で測ること自体がナンセンスだと思っていたが、税金を使って研究のための人件費や設備費を賄う以上は、説明責任があり、そこにも経済学は「使える」のだなぁと感心した。
行動経済学は流行りの学問で、本も何冊も読んできたが、人間の直感的な印象や判断がいかに脆弱であるかを毎回思い知らされるし、物事をいろんな側面からじっくり考えることの重要さや、「いろんな側面」から見るための視点を私たちに与えてくれる。 -
Posted by ブクログ
誰しも自分が思っているより合理的でない行動することがわかる。それにもかかわらず、適切な対応をしないことが多い。それは我々の行動が合理的に行われていると心のどこかで信じているのではないかと思った。
はじめにの部分で
つまり、人間の意思決定は合理的なものから予測可能な形でずれる。逆に言えば、行動経済学的な特性を使って、私たちの意思決定をより合理的なものに近づけることができるかもしれない。ⅳ
とある。
確実なものと不確実なものでは、確実なものを強く好む傾向がある特性。利得よりも損失を大きく嫌う特性。これら二つの特性から同じ内容でも表現方法が異なるだけで、意思決定が異なってくる。このような特性を知ることは社会において恣意的な情報に踊らされないと共に、ビジネスなどの人の意思決定を操作したい場面でも有効である。
計画はできるのに、それを実行する時になると、現在の楽しみを優先し、計画を先延ばしにしてしまう「現在バイアス」というものがある。これは生活の中で誰しも経験があることだと思う。ダイエットが成功しない、三日坊主になってしまう。
このような意思決定の歪みを、行動経済学特性を用いることで、より良いものに変えていこうという考え方があり、それを「ナッジ」と呼ぶ。利得と損失はデフォルトからの差であると認識している。デフォルトの設定が習慣化や夢の実現のためには重要であるのだ。実際の例が本書ではずらずらとあり、非常にわかりやすい。
このようなバイアスがあるからこそ他人とは違うのが当たり前である。私たちは他人とよく比べたがる。比べたその差もバイアスであるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ競争と公平感
―市場経済の本当のメリット
帯に「週間ダイヤモンド」2010年のベスト経済書とあったので、思わず購入。本の山に眠っていた物を発掘しました。貧困問題、非正社員問題、外国人労働者問題など数々の問題を取り上げながら、全体として日本人と競争に関して論説しています。
日本人は先進国の中でも飛び抜けて競争が嫌い。ふむふむ。それは教育から来ている。なるほど。現在の日本の教育では金融リテラシーは教えられていない。ほー。
著者は公平さを保つ介入を政府が行いながらの競争市場が健全で効率的な経済成長を促すことを盛んに論じています。でも、そうなっていない。そこには、為政者たちが既得権を死守するように誘導している日本社会がひしひしと感じられるようになる良書だと思います。
一般庶民は金融リテラシーなど持たない方が商売人にとっては都合が良い(多くのサラ金が金融リテラシーの低さによって商売していた)。競争市場をつくったら、既存の大企業はたちまち勢いのある企業に淘汰されてしまう(ホリエモンに対しての驚くほど重い実刑判決)。
そういったもろもろの世の中の流れを理解する上で、役に立つヒントがいろいろと入っています。
逆に、竹蔵が経済学の言外を感じたのは、モデル構築によるシミュレーションの結果というのは、モデルの精度次第で大きく結果が異なってしまうということ。経済活動という極めて複雑で人の感情によって大きく左右される活動をモデル化することがそもそも難しいということ。逆を返せば、モデルの構築時の恣意性が簡単に都合の良い結論を導けてしまうことを改めて認識させてくれました。
いずれにしても、いろいろとショッキングな結果(経済学部卒の人の20%が複利計算ができない?)も満載で、そういったところも楽しむことができます。
コストパフォーマンスが異常に高い本で、この本であれば、公平な競争市場でも生き残れると思います。はい。
竹蔵 -
あなたを変える行動経済学
- カート
-
試し読み