Nudgeとは、親象が鼻で小象をそっと触れる様子。表紙がズバリそれ。複雑で選択が多い世の中に、仕掛けをして人々が賢い選択をできるようにする。逆がスラッジ。物事を複雑化、ステップを多くすることで人々の選択する行動を止めさせる。携帯電話のキャリア変更が正にそれだった。
著者はNudgeを人々が良い選択を
...続きを読むする手助けをするためであるということは一貫していて、サブリミナル効果と何が違うのか?や、選択の自由を奪うのでは?と言った反論にもきちんと対応している。
カフェテリアのメニュの並べ方も、人々の行動を促しているということが新しい気づきだった。だとしたら、Nudgeは特に権力者や持てるものだけが行っていることじゃない。あらゆるところであるんだなーという気づきが新しかった。
良いNudgeは目的(何を成し遂げたいか)と、透明性と自由度、これらどれもが欠けてはならないと著者は言っている。何百ある投信の中から最適な確定拠出のプラン選択するとなると、たいていの人はしない。それをデフォルトがあることで、将来の蓄えができるようになる。もちろんそれを選ばないという選択肢も残しておく。なるほど。
これからは、Nudgeを受ける側の人間として、あらゆる事象に「あ、これは行動経済学を効かしているな?」「このスラッジに負けてたまるか」という目線で対峙していく楽しみが増えた。そして、正しい判断をするための選択アーキテクチャであるか?この選択肢を設定する目的は何だろう?と問う目線をもっていたい。仕事では、利害のためでなく、世の中のために有効な選択的アーキテクチャを作り出せるような姿勢を持っていたい。
また、アメリカのクレジットカード事情、世界の臓器提供のルール事情等、行動経済学の前に、世界の事象を知るだけでも面白い。
ただ、400p強あるので、読むには根気が必要。