あらすじ
合理的な選択か、大きな間違いか
同調は、人類と同じくらい長い歴史をもつ。エデンの園では、アダムがイヴに追従した。世界のさまざまな大宗教が広まったのは、同調の産物だといえる部分もある。
同調によって暴虐な行為が実現してしまうこともある。ホロコーストは同調がきわめて巨大な力をもつことの証だったと言える。
共産主義の台頭もまた、この力を表わしたものだった。現代のテロリズムは、貧困の産物でもなければ精神疾患や無教育の産物でもない。その大部分は、人が人に与える圧力の産物なのである。
同調に単純な評価を下したところで、まったく意味をなさない。一方では、文明の存立は同調によって支えられている。その反面、同調はおぞましい行為を生み出したり独創的な力を潰したりもする。
本書が強調するのは、同調の力学についてである。
とりわけ息苦しい日本社会では、同調の解明が急務だ。SNSはじめ便利になればなるほど、「空気」の支配は苛烈をきわめている。
ハーバード大学の講義から生まれた、記念碑的著作。
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Posted by ブクログ
同調:他者の意見に合わせること。
カスケード:特定の意見が社会に広く伝播して、運動や流れを起こすこと
これらが民主主義においてどのような役割を果たしてきたか。
他人が面白いと言った本を、つまらないと思っていても「そうだね面白いね」というのが同調で、10万部売れたベストセラーという情報で本を買うのはカスケード。
自分が詳しく知らないことを、いちいち全部調べて手間をかけるより、専門家に同調する方が社会的には効率的。でも、もし間違っていると思うなら、その意見は表明する方がいい。なぜなら、本当に間違っているのに、誰も是正できていないだけかもしれないのだから。異論の表明には、重要な役割がある。集団内の極論化(テロリスト集団など)を防止し、深刻な誤りを是正する。
それができていたら、特攻しないで済んだのではないか(無意味だと知っていた人間も多かったと思う)
そのため、社会ために、異論が表明されること、表明者の安全が保障されることは大切。
同調は不案内なことを確認しないで効率的だが、自分で考えておらず、思考のただノリ状態でもある。
情報カスケードによってオバマやトランプが誕生した。ネットにより、カスケードを人為的に起こしやすくなっている。
これらの話が、アメリカの裁判制度やアファーマティブアクションなどの実例とともに説明される。
多様性が何のために必要なのか、どんな社会を理想と考えるのかの一助になる。とても勉強になる。
Posted by ブクログ
<目次>
序章 社会的影響の力
第1章 同調はどのようにして生じるのか
第2章 カスケード
第3章 集団極性化
第4章 法と制度
結論 同調とそれへの不満