大竹文雄のレビュー一覧
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世の中を経済学者の視点から眺めてみた!的な内容だが、すでに類書を読んでいることもありそれほど新しい発見はなかった。それでも最後まで楽しく読めたのは大竹先生の卓越した文章力と論理構成のおかげなのだろう。
経済学者であるから競争の利点を説くのは理解できるが、それでも競争の負の側面を軽視しすぎているように思える。世の中は経済学者が想定するほど公正でなく、勝者ほどズルいことができる仕組みになっている。勝者が競争のルールを作るから当然だ。中でも弊害が大きいと思われるのは、勝ち負けの結果の差が大きすぎることと、一度負けると世代を超えてそれが維持されることにある。終章に描かれているように、日本が永続的に繁 -
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邦題はややズルい。このタイトルから読者の多くが期待するであろう「いつ、なにをするのが、教育において効率的・効果的なのか」については、中室牧子「学力の経済学」のほうが良書。
ただ、学力の経済学も本書は参照・引用しており、本書の内容も興味深い。
本書はどちらかというと論文である。いや、アメリカ世界における諸問題・格差が幼少期の教育の充実(より正確には教育への政府の介入)により縮小・改善できるとする政策提言である。ちなみに原題(そして第1章のタイトルでもある)は「子供達に公平なチャンスを与える」。まさにこういうことが書かれている政策提言なのである。
著者は幼少期の教育的介入に関する実際に行われた二 -
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就学前(6歳まで)までに、貧困層に対して、忍耐力や協調性といった、非認知能力を高める教育を実施することで、将来の所得向上、生活保護費低減、犯罪率低下など、経済的かつ社会的にメリットありますよ、というのを、実験を踏まえて証明したヘックマン教授の成果を、わかりやすくまとめた本。ちと読みにくかったが、内容は理解できた。
公的資金への投入にフォーカスしているが、数十年単位の長期投資のため、なかなか資金投資しにくい問題がありますよねー。
民間で小さなビジネスモデルを作り、公を交えて普及、高所得から利益を得て、低所得を実質無料、的なモデルが作れないかー、webの広告モデルみたいに、リアルな広告モデルが -
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市場経済と格差についての考察。
まず、日本人が世界各国から見ていかに自由主義や市場経済、格差についての意識が特殊かというのがデータとともに論じられている。
単純に市場経済と言っても最低賃金や働き方、移民問題など、今の政党の政策等に照らして考えても、面白い。幅広く経済学的な問題を取り上げているので、知識のベースアップにはちょうど良い本と思う。著者の言うとおり日本人の金融リテラシーは低いと思われるが、それに加えて客観的なデータを基に考える、生活行動様式を選択できるようになるのが良い。
また、行動経済学の考え方は今や広く知れ渡ってきているが、これが4年程前の文章ということを考えると、興味深い。 -
Posted by ブクログ
身近な題材を通して、学問的な水準を維持しつつ、経済学的分析を試みた本。結果が極めて興味深い。
・身長プレミアム。16才時点の身長が決め手か。
・男性のマリッジ・プレミアム:1.分業仮説。2.労働意欲仮説。3.シグナル仮説。4.差別仮説。
・まともな男は結婚しているではなく、結婚によって男は仕事ができるようになる。
・成果型賃金制度は、1.評価制度の整備と過程の公平性。2.従業員の裁量権が増えることが重要。3.従業員の能力開発の機会が増えることが重要。
・能力の劣った教員から解雇するよりも、組織そのものを解散する方が望ましい。
・2004年の日本の一般政府総支出の対GDP比は37%でアメリカの