大竹文雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
つくづく経済は人の心理で動いていると感じる。人気の歌手のチケットともなれば、ダフ屋が法外な金額でチケットを売ったり、最近は転売目的で希少な商品を買って、フリマアプリのような個人取引に倍以上の値段で売り出す人もいる。だが、その値付けでさえも欲しいという人がいて更に値段は跳ね上がる。オークションなどは価値のある絵画だから当然ではあるが、価格を決めるのはどうしても欲しい、という人の心理だ。古くはなるがドラゴンクエストというゲームが発売された当時は、それがニュースでも報じられるくらい小学生に混じって大人もおもちゃ屋さんに長蛇の列を作った。確かにゲームは面白いであろうが、中にはみんなが並ぶから並ぶ、人が買うから買うというつられる人も居たのではないか。
ここには欲しい人の数や欲求の大きさ(需要)と、物を作って売る側の生産能力や販売数(供給)の関係がある。当然前者が後者を上回れば、価格に換算した価値は上がるだろうが、物としての価値は同じはずだ。敢えて希少性を持たせるなど、供給側が「価値」をコントロールするケースもある。
近所に複数の家電量販店があるが、ここにも他店より一円でも安くします、という競争が発生しているが、互いに一円でも安くするなら、身を削っての壮絶な戦いになるだろうし、体力が持つなら、何度も店を往復したり交渉して、更に安くさせる事もできるかもしれない。値付けする方も、競合店の価格よりも安くすると言っておけば、楽なのか、それとも…。
本書はそうした人の心理や経済の関係性、タイトルにもあるように競争社外が社会の発展や技術の進歩などに如何にして影響を与えてきたかなど、主には行動経済学を中心に書かれている。現代社会の課題を例に挙げて、私のような経済学が嫌いだった人間にも分かりやすく伝えており、かなり読みやすい。今、日本が抱えている少子化や女性活躍推進、先ほど述べたようなチケット転売問題など身近にニュースで触れる課題を挙げ、人の行動心理を読みながら対策を打つことの重要性を述べている。
本書が出たのは2017年だから、当時の社会問題が多く登場するのだが、現在もなおそうした問題は解消できずに続いているから、自分なりに本書を参考にして、解決方法を考えるのも良いだろう。
あまり詳しく述べると、内容に触れてしまう為、控えるが、経済は昔から感情で動くというし、遥か古代から人は競争の中で生き抜いてきた。生き抜くための知恵も技術も競争があったからこそ発展してきた。若い人の中には競争を嫌い、避けてきた人も多いだろう。一時期は運動会の徒競走で皆んなで手を繋いでゴールするなんて学校もあったくらいだ。だが、そうした競争を排除するやり方が本当に正しかったのか。漸く平成の大不況から抜け出し、日本経済は再び復活に向けて動き出したかに思われるが、人口減少、働き手不足、格差の拡大、過疎化など様々な社会課題が山積している。
豊かな暮らしは誰もが望むが、そこに完全に競争が無い状態を想像するのは難しい。やはり金持ちとそうで無い人の間には、何らかの形で(運もあるだろうが)競争の結果が影響していると考えるのが妥当だ。幸い日本は総中流と呼ばれるように、アメリカなどと比べれば、格差は小さい。たとえ失敗しても人生終わるような事もない。なればこそ、直面する課題に対して、実力を磨き、企業は効率化を推し進め、当たっていくしかない。そこには人間同士、企業同士の競争は欠かせないと感じた。 -
Posted by ブクログ
EBPMの基礎と実例を学ぶことができる。
基礎部分については丁寧に記載されておりよく理解できた。一方でデータ分析手法については概要レベルで書いてあるため、しっかり学びたい場合は別の本を参照した方が良いと思った。
事例の方も国内外様々な事例があり勉強になったが、文章のクオリティがイマイチで結構読みづらいため、なんとなくどんなことをやっているのかサラッと読むくらいにとどめた方が良いと思った。オムニバス本なので、しっかりとした日本語を書いてある章と、そうではない章のムラが激しい印象だった。
いずれにしても、EBPMを最初に学びたい方向けな本だと思った。 -
あなたを変える行動経済学
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あなたを変える行動経済学
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Posted by ブクログ
思ってたよりずっと骨太な内容だった。
なぜ人が合理的な決断ができないのかを考える上で、患者のみならず医師側のバイアス、ヒューリスティックによる影響を受けることについては多く言われることですが、多くの臨床における例を挙げながらそれらについて考察を進めていく。
ケースはいずれも医療者であれば体験したことがあるであろう内容であった。
ただ、行動経済学だけでは意思決定における人間の姿の解像度が低いようにも思えました。
患者家族の決定について語っているところについては、合理性に影響するヒューリスティックに注目するより、家族が責任を感じるのはどのような状況か、についてむしろ個人的には興味を持ちました。なぜ合理的な決定ができないのか?なんて上から見るだけでなく、家族たちが何を恐れているのかによりそう重要性を思い。行動経済学的には、こういう理由であなたが合理的判断ができてないのですよ、みたいな人物が増えるのは鬱屈した気持ちになります。
患者や家族が何を目標にしているのかで、どの決定が合理的になるのかは微妙に異なるとも思うので、医療者はそういう意味でも試されているのだと思いました。 -
あなたを変える行動経済学
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Posted by ブクログ
タイトルになぜか興味を持った。
そもそも「経済学」もよくわかっていないのに。
行動経済学が「分かっていてもできない」ことについての学問だとは、全く知らなかった。
これは楽しそう。
サンクコストは大体わかるけれど、「損失回避」の具体例や「現在バイアス」、「アンカリング」など、他にも様々な特性でボトルネックを引き起こされているようだ。
そこで、「自由に行動できるけれど、できればいい方を選びやすくさせてあげるよ」というナッジを組み込めば暮らしやすくなる。
紹介されている「コミットメント」や「デフォルト」は、他のビジネス書などで書かれている手法のもととなる考えだった。
ナッジ…とまではいかなくても、訴求力を上げるために活用できることはたくさんありそうだ。 -
Posted by ブクログ
メモ用
怒りは不確実な事でも、より確実に生じるように感じ、周囲の事を自分で統制できるように感じる。未知の危険や恐ろしい危険を感じなくなる。その結果リスクのあるものを受け入れてるようになる。
※問題の責任が他人にあるように感じる傾向にあるように感じる。
利益傾向志向に落ち入る。
恐怖の感情
不確実性を大きく感じ、自分で統制している感覚が減少する。その為、リスクに対して、回避的な行動を取る。直感的な感情ではなく理論的意思決定を用いる傾向にある。
悲しみ
自分で統制する感覚を減らすうえ、利益志向的になり、短期的視野を持つようになる。他人を信頼しなくなり他者との協力も減ってしまう。 -
Posted by ブクログ
前作『医療現場の行動経済学』の続編として、様々な医療の現場での行動経済学の”実践”的な事例を示した一冊。2018年に出版された前作から今作への大きな変化といえば新型コロナウイルス感染症の猛威と、編者である大阪大学 大竹教授が政府の新型コロナウイルス感染症対策部会に行動経済学の専門家として招集された点であろう。行動経済学を用いた行動変容への期待が高まっているこのタイミングで、様々な領域での実践事例が紹介される意義は大きい。
前作でも様々な領域での実践事例が紹介されていたが、本書ではその領域の広がりを感じられる構成となっている。
例えば、40歳以上の国民に受診が義務付けられている特定健診の受診勧奨においては、一般的なハガキではなくSMSを利用することで、ハガキよりも費用対効果を高められる可能性が示唆されている。
また、”稀有な事例がメディアなどで報道されることで非常に高い確率で発生する”かのように誤解してしまう利用性可能性ヒューリティクスの典型例として、HPVワクチンの事例に加えて、アトピー性皮膚炎などに対するステロイド剤利用への忌避が取り上げられている。後者はまさに極めて強固なバイアスがステロイド剤への忌避を生み、結果として悪質な代替医療ビジネスが跋扈しているという点で、行動経済学などの知見をフルに活用してその忌避を解きほぐしていくことの重要性は非常に大きいはずである。
行動経済学自体は当然、どんな場合にも効果を発揮する万能薬なわけではないものの、医療現場において極めて汎用的に使える一つの”ツール”である。その幅広い領域での有用性を実感できる良書である。