芦辺拓のレビュー一覧
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江戸川乱歩の未完の作品『悪霊』を芦辺拓が引き継いで“事件を解決”した一冊。公開済みの文章から謎や伏線を掬い上げる試みはこれまでにも乱歩ファンや研究家によって行われてきたが、本書が出色なのは「なぜ乱歩は一度始めた連載を中止したのか?」の真相にも新解釈を与えている点。しかもこれが多少ぶっ飛んではいるものの(いや、ぶっ飛んでいるからこそ)乱歩作品へのリスペクトを感じさせるのがニクい。もちろんミステリーである以上は乱歩が執筆した前半部分との論理的破綻は避けなければならず、いわゆる「俺が考えた最強の乱歩風味の小説」では読者を納得させられない。先行研究を前に「これならあっちの説の方が面白いよ」と酷評される
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ホームズの部屋へ来た女性が話した恐ろしい出来事。夜中の口笛、開かない窓、双子の姉が死ぬ前に口にした「まだらのひも」とは…?(第1話「まだらのひも」より)世界一の名探偵が誰も解決できない事件に挑む!「まだらのひも」「六つのナポレオン」「ノーウッドの怪事件」の全3話を収録。
推理マンガは読んだ事がありますが、推理小説を読んだのは今回が初めてです。実際に読んでみると、事件の真相がいったいどんなものなのかすごく気になってしまい、一気に読んでしまいました。ホームズさんの推理力はすごいと思いました。まるで古畑さんや、『相棒』の右京さんみたい…なんて思ってしまいました。
ホームズさんの物語の語り手というのが -
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億万長者の老人が遺言作成の為に法律事務所を訪れ、その帰り道に殺害される。老人は法律事務所に一冊の古めかしい本を託していた。その本に書かれた内容は18世紀初頭から20世紀にかけて世界各所の様々な人によって語り継がれた多彩な物語だった。
本の物語は、作中作的なメタフィクションの体を成している。
夫々のエピソードは、作り物であることを知りつつも、子供の頃に味わった心が弾む躍動感を彷彿させるような物語。著者のあとがきにも、物語や映画へのオマージュと語っているが、まさにそんな感じ。
ただ夫々の物語は、バラバラで脈略の無い物のように思わせるが、ラストには現代と過去も含めて全てが繋がる爽快感が味わえる。
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Posted by ブクログ
怪奇幻想小説や、日本のレトロな雰囲気が好きな人にとっては、この本の醸し出す、なんとも言えない匂いたつ雰囲気がたまらなく心地よいはず。
まずもって題名がいい。
『帝都脳病院入院案内』『這い寄る影』『こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻』…などなど、江戸川乱歩を彷彿とさせるレトロなセンスを感じさせる。
とある埃っぽい古本屋から、「私」は毎回古本を買ってしまう。
本の中身は多種多様であるが、いつの間にか本の中身にのめり込んだり、不思議な出来事が起こったり、奇怪な体験をしていく。
個人的には二作目の『這い寄る影』のなんとも言えない展開が好き。この話は、売れない作家の、貧相な作家性の哀れみが真に迫って