芦辺拓のレビュー一覧
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少し前にブックレビューをたくさん見かけた推理小説で、気になっていた。終戦間際の大阪船場の衰退しゆく商家が舞台。それだけで読んでいて楽しい。一家のメンバーが奇っ怪な殺され方を次々にしていくのだが、和風レトロな時代が合う。御寮人さん、いとさん、こいさん、丁稚、手代、番頭、の世界。赤紙招集、復員兵、憲兵…そこにキャラ濃いめの探偵も現れるんだけど、いまいちなキャラだなと思っていたら…なるほどね。
他の人のレビューを見ていると、探偵役の登場が唐突だとか、ほかのシリーズのキャラクターが出てきてその本を読んでないといまいち共感できないとかあったけど、そんなことはないと思う、単体で十分楽しめた。犯人は何となくこの人かなと思ってた人だったしトリックもオーソドックスなのでサプライズはそこまでないけど、既定路線をこの世界観で楽しむという楽しみ方が正解だと思う。面白かった。映像化されそう。 -
Posted by ブクログ
時代は昭和の戦時下、舞台は大阪商人文化の中心地・船場。一癖も二癖もある者達が揃った大鞠家の長男に嫁いだ陸軍少将の娘・中久世美禰子。夫が軍医として出征した後、大鞠家に単身残された美禰子の前で繰り広げられる惨劇。
船場商人の気位の高さやお家の跡取り問題を巧みに取り入れながら、緻密に張られた伏線は本格推理小説としての読み応えも抜群。
丁稚、番頭、女子衆、御寮人などにノスタルジーを感じ、独特の船場言葉にどっぷり浸っての謎解き。そこにクリスティやヴァンダインといった外国のミステリも絡めていく展開はミステリ好きにはたまらない。
肝心の殺人のトリックはうまくいき過ぎの感はあるものの、小さな謎のピースが全てはまって行く最終盤は見事。
時代背景、戦争がもたらしたもの、そして犯人の動機など切なさとやるせなさも残るミステリでした。 -
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明治21年の質屋六人惨殺、しかも密室殺人事件の、法廷ミステリです。この時期の裁判は、未だ被告人を「弁護」することさえ発想の外だった時期でした。筋書きは出来てるので、刑事裁判事件はよほどの重大事案でも1日で結審するのが通常。裁判長が「弁護人、質問をさし許すぞ」とか「黙りおろう!」とか言って、江戸時代のお白洲習慣が引き継いでいた頃です。主人公2人の弁護と探訪記者は困難を極めます。
ただ、如何せん、わたくしが本書を紐解いた訳はミステリ謎解きにはありません。単(ひとえ)に明治20年代初めの大日本帝国憲法発布前夜の日本の姿に個人的に大いに興味を持ったからに他ありません。
市井の趣味人たる私の今の「専門」は考古学弥生時代後期ではありますが、大学時代の「専門」は日本思想史でございます。威張ることでは無く、反対に恥ずかしい事ばかり乍ら中江兆民を少しばかし齧った身としては、兆民が明治21年、保安条令で大阪にやってきた(東京放逐された)ばかりの「東雲(しののめ)新聞」主筆としての「生の」様子が描かれるのは、人は知らず、胸早鐘打つ心持なのでございます。何となれば、この時代のこの人物を描く小説が極端に少ないからであります。
ずっと疑問であったのですが、どうして時の政府は東京から自由民権論者や新聞人を処払いするだけで、明治帝国体制を完成せしむと判断出来たのか?判明したのは、条令公布の日には、悪名高き三島通庸始めとする警察・軍隊総出で対応したということ。当時政府の総力を使って、自由民権論者は蟻一匹残らず、帝都から放逐したのだということです。大阪の声は東京までには、日本までには届かない。これが1888年段階の日本の姿だった訳でございます。
大阪中之島から堂島川を越え、四ツ橋筋を北に行った角地に、商家を借り受けた体の東雲新聞社があったそうです。主人公・筑波新十郎は東京を逐われて其処の記者になります。新米代言人(弁護士)迫丸孝平と共に、質屋6人惨殺事件で容疑をかけられた少年の裁判を支援することになります。
明治の20年間、江戸の悪弊絶ち難く、されども自由の気風は更に絶ち難く、幸徳秋水少年や、宮武外骨の若き日の姿を見させてもらって満足しております。田辺聖子さんのお爺さんの少年の日の姿も出てくるというおまけもあります。
autumn522akiさんのレビュー読んで取り寄せました。ありがとうございました♪
来週は大学の同窓会があって、その序でに山口から出雲方面に旅をする計画を立てていて、旅に集中するため、来週初めの3日間のレビューはお休みします。水曜日のレビューをアップするかどうかは決めてません。という事で、暫く休んでいるからと言って病気なんだろうか?どうなんだ?とかご心配無用です(←するか-_-メ)。
※今更ですが、1920年→1888年に訂正しました。恥ずかしい。2025年8月25日記入。
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Posted by ブクログ
江戸川乱歩の未完の作品『悪霊』を芦辺拓が引き継いで“事件を解決”した一冊。公開済みの文章から謎や伏線を掬い上げる試みはこれまでにも乱歩ファンや研究家によって行われてきたが、本書が出色なのは「なぜ乱歩は一度始めた連載を中止したのか?」の真相にも新解釈を与えている点。しかもこれが多少ぶっ飛んではいるものの(いや、ぶっ飛んでいるからこそ)乱歩作品へのリスペクトを感じさせるのがニクい。もちろんミステリーである以上は乱歩が執筆した前半部分との論理的破綻は避けなければならず、いわゆる「俺が考えた最強の乱歩風味の小説」では読者を納得させられない。先行研究を前に「これならあっちの説の方が面白いよ」と酷評されるリスクとプレッシャーを乗り越えて一冊の探偵小説を完成させた著者の手腕と情熱には敬服。ある意味で本書のクライマックスはあとがき。
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Posted by ブクログ
ホームズの部屋へ来た女性が話した恐ろしい出来事。夜中の口笛、開かない窓、双子の姉が死ぬ前に口にした「まだらのひも」とは…?(第1話「まだらのひも」より)世界一の名探偵が誰も解決できない事件に挑む!「まだらのひも」「六つのナポレオン」「ノーウッドの怪事件」の全3話を収録。
推理マンガは読んだ事がありますが、推理小説を読んだのは今回が初めてです。実際に読んでみると、事件の真相がいったいどんなものなのかすごく気になってしまい、一気に読んでしまいました。ホームズさんの推理力はすごいと思いました。まるで古畑さんや、『相棒』の右京さんみたい…なんて思ってしまいました。
ホームズさんの物語の語り手というのがホームズさんではなく、親友のワトスンさんであるのが珍しいです。語り手は一人称か三人称のイメージがあるのですが…。これはこれで素晴らしいと思いました。このようなパターンは今まで読んだ事がありませんから…。
ホームズさんのストーリーは60ぐらいあるそうですが、この本に収録されていた3作品だけでなく、他の作品も読んでみたいと思いました。「赤毛連盟」とか、「バスカヴィル家の犬」とか…。それに、コナン・ドイル作品だけでなく、アガサ・クリスティ作品も読んでみたいです。ホームズさんのストーリーがきっかけで、推理小説を読む事ができて嬉しいです。