あらすじ
京都にあるD**大学の文芸サークル「オンザロック」の一員で、小説家を目指している十沼京一は、元医院を改装した洋館「泥濘荘」で、仲間とともに気ままに下宿暮らしをしていた。だが、年末が迫ったある日の朝、メンバーの一人が館の望楼から縊死体となって発見される。それをきっかけに、サークルの面々は何者かに殺害されていく。犯人は「泥濘荘」の中にいるのか?暗号や密室、時刻表トリックなど、本格ミステリへの愛がふんだんに盛りこまれた、名探偵・森江春策初登場作にして本格ミステリファン必読の書。第1回鮎川哲也賞受賞作。
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Posted by ブクログ
月並みな感想で恐縮だが、真相にはとても驚いた。
もはや「驚いた」がミステリ作品への賛辞なのかどうかも分からないけれど。
記念すべき第一回鮎川哲也賞受賞作品(の改稿作)。
やはり、私はこの賞を獲る作品がとても好きだなと思うし、とりわけ本格ミステリが大好きだなと思う。
まず、部屋数の多い建物がある。
そして、その建物は外界と断絶されている。この断絶は、心理的・物理的どちらでもよい。
そして、密室があり、殺人が起きる。
巻頭に建物や敷地の見取り図があると尚良い。
そして、さんざん惨劇に見舞われたその場所に、名探偵が登場する。
古今東西、あまりにも多くのクローズドサークルが描かれてきたが、何度そのシチュエーションに身を浸そうとも飽きることがない。むしろ、その多彩さに、毎度新鮮に驚かされている。
前置きが長くなったが、本書である。
型通りといえばあまりにも型通りな、クラシックなクローズドサークルもの。とはいえ、本書の「館」は完全なクローズドではない。
京都の大学のとあるサークルメンバーが身を寄せあって暮らす、もとは病院だった建物である。
電話線は通じるし、何より早くから警察が介入している状況ではあるが、若者特有の排他的な雰囲気やその他の要素も相まって、一種閉鎖的な空間で、事件は起きる。
そして、終盤の探偵による演繹、鮮やかな解決。そして、シリーズ第一作でもあることからか、「次」への布石のような最後。
例えるなら、最高の老舗の幕の内弁当を食べたような、そんな安心感と安定感があった。
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昔、講談社文庫版で読んだときはあまり好きでは無かった気がするけど今回は楽しく読めた。登場人物が多いけど割りと分かりやすくて混乱することもなく物語に入り込めた。『名探偵・森江春策』を読んだので十沼が出るのが嬉しかった。しかし色んな殺害方法や動機やら隠された謎やらあって本当に面白いな~。ちゃんと順番に読んでいこうかな~。
Posted by ブクログ
前半読んでいて、こんなにも"新の探偵"の登場を待ち望んだ小説はなかったかもしれない。
"殺人喜劇"というだけのことはある。
前半は読むのがつらいくらいだったが、全ての謎を解く鍵は書いてあったと思う。"小説の中の小説"だと意識して読むことをおすすめしたい。
Posted by ブクログ
森江春策初登場にして鮎川哲也賞受賞作。さすがに書かれた時代が時代だけあって旧さは感じられたものの森江春策の謎解きが始まるまで数多の殺人の謎解き全てはわからず。この時代だからこそできたネタもありミステリを楽しむことは十分にできた。
Posted by ブクログ
京都の共同下宿を舞台に沢山の登場人物たちが、様々なトリックによって殺害されていく…。
京都が舞台なので個人的に地名や電車に馴染みがあって読んでいて楽しかったです。
事件が矢継ぎ早に起こるので、考える間もなく次の被害者が出てしまった…という感じ。
文中に一見すると本筋と関係無さそうな文章がところどころ出てきて、何度か読み直しました。
後半でこの章が手記ということが判明してからは読みやすかったです。
著者の作品を読むのは初めてなので、他の作品も読んでみたいと思いました。
というのも、トリックは流石だと思うし、どんどん読み進めることが出来たのですが、少しクセがあるなあと感じたので…。この感じが他作品でも同じなのかを確認したいと思っています。
Posted by ブクログ
芦辺拓の長篇ミステリ小説『殺人喜劇の13人(英題:Thirteen in a Murder Comedy)』を読みました。
ここのところ、国内の作家の作品が続いています。
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京都にあるD**大学の文芸サークル「オンザロック」の一員で、推理小説家を目指している十沼京一は、元医院を改装した古い洋館「泥濘荘」で、仲間とともに気ままに下宿暮らしをしていた。
だが、ある日メンバーの一人が館の望楼で縊死体となって発見される。
それをきっかけに、次々と死に見舞われるサークル員たち。犯人はメンバーの一員か、それとも……?
名探偵・森江春策初登場作にして本格ミステリファン必読の書。
第1回鮎川哲也賞受賞作。
著者あとがき=芦辺拓/解説=千街晶之
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1990年(平成2年)刊行された芦辺拓のデビュー作品で森江春策の事件簿シリーズの第1作……第1回鮎川哲也賞受賞作で、『弁護士・森江春策の事件』としてテレビドラマ化された作品です。
■綴じ違いの断章
Ⅰ
■序章 奇人が集まった愛の園
■第一章 翼手竜の鳴く夜には
■第二章 泥濘荘検屍法廷
■第三章 暗がりに影を落とすもの
■第四章 遠く時刻表の遥か
■第五章 枕に中毒(あた)って殺された
■第六章 家探しガサ入れ大掃除
■第七章 死者に捧げる捜査メモ
■第八章 殺人講義レッスン一
■第九章 虚ろなものは死体の顔
■第十章 箸と鍋とでクリスマス
■第十一章 密偵(いぬ)には鞭を惜しむなかれ
■終章 血の文字を書いたのは誰だ
Ⅱ
■1 森江春策、京都に帰る
■2 森江春策、傍聴席につく
■3 森江春策、説明を開始する
■4 森江春策、実演に移る
■綴じ忘れの最終章
■創元推理文庫版のためのあとがき
■解説 千街晶之
縛り首、毒殺、密室、連続殺人の恐怖! 京都にあるD**大学のミニコミ誌サークル「オンザロック」の会員たちが利用している共同下宿・泥濘(ぬかるみ)荘で会員の一人が縊死体で発見される……それを皮切りに止まることを知らないかのように連続殺人が繰り広げられていく、、、
残った仲間の誰が犯人なのか!? 会員でもある探偵作家を目指す十沼京一も知恵を絞って推理を展開していくが……友人たちを助けるため、素人探偵・森江春策が立ち上がる。
青年探偵・森江春策初登場作にして本格ミステリファン必読、大幅改稿で贈る第1回鮎川哲也賞受賞作。
D**大学のミニコミ誌サークル「オンザロック」の会員たちが次々と殺されていくというストーリー……時刻表トリックに密室トリック、暗号解読、アリバイ工作、誘拐、血文字によるダイイングメッセージ、劇中劇的な展開 等々、本格推理に欠かせない要素がたっぷり織り込まれたうえに、 犯人の正体や動機に意外性もあり、本格ミステリ好きには堪らない作品に仕上がっていましたね、、、
13と言う数字への拘りも凄かったなー ちょっと詰め込み過ぎ感があることや、マニア気質が強いことがちょっと気になったかな……でも、愉しく読めました。
以下、主な登場人物です。
十沼 京一(とぬま きょういち)
D**大学ミニコミ誌サークル「オンザロック」の会員。
本作の前半部分の語り手。探偵作家を目指して小説を書いている。
森江 春策(もりえ しゅんさく)
「オンザロック」誌の客員執筆者。ずんぐりした体躯のボサボサ頭。
大学入学以来、十沼の小説の愛読者であるが、十沼が考え出したトリックをことごとく見破っている。
水松 みさと(みずまつ みさと)
「オンザロック」の会員。清純派アイドルのように可愛い。
錆田 敏郎(さびた としろう)
「オンザロック」の会員。バサバサ髪に薄あばたのカボチャ面。
少女漫画愛好家。泥濘荘の望楼部分で首吊り遺体で見つかる。
加宮 朋正(かみや ともまさ)
D**大学法学部3年生。みさとの恋人。宮崎県都城市出身。
帰省のために乗っていたブルートレイン《彗星3号》の車内で刺殺体で発見される。
瀬部 順平(せべ じゅんぺい)
「オンザロック」の会員。仕送りとバイト代の大半を映画のフィルムにつぎ込んでしまう映画マニア。
泥濘荘の一室で一人で映画を見ている時に喉を切られ死亡する。
小藤田 久雄(ことうだ ひさお)
「オンザロック」の会員。自室で枕に仕込まれた毒針で死亡する。
堂埜 仁志(どうの ひとし)
「オンザロック」の会長。温厚な性格。元ワンダーフォーゲル部員。
海淵 武範(かいぶち たけのり)
「オンザロック」の会員。全国紙の編集局で編集補助員のバイトをしている。窓に頭を突っ込んで死亡する。
蟻川 曜司(ありかわ ようじ)
「オンザロック」の会員。毒舌で皮肉屋。
野木 勇(のぎ いさむ)
「オンザロック」の会員。
須藤 郁哉(すどう いくや)
「オンザロック」の会員。毒物によって中毒死する。
堀場 省子(ほりば しょうこ)
「オンザロック」の会員。十沼の恋人。十沼の小説の挿画を描いてくれる。
日疋 佳景(ひびき よしかげ)
「オンザロック」の会員。会員の中で唯一泥濘荘に住んでいない。
乾 美樹(いぬい みき)
「オンザロック」の会員。かたせ梨乃と見紛うようなナイスバディ。
Posted by ブクログ
芦辺拓。大学のサークル員が暮らす洋館てメンバーが次々に殺される話。
前半と後半に分かれており、後半は殆ど解決編で事件は前半部分で語られるが、この前半がとても読みにくく、登場人物が多い上に次々と死んていくので、頭の中て整理しきれず何度もやめようと思った。
Posted by ブクログ
「森江春策」シリーズの第1弾なのだけれど、その後の森江から受ける印象とは違う大学生の森江による推理劇である。
十沼京一の手記による前半、森江の推理による後半にわかれている。
論理に基づいた推理。
事件の矛盾点をつき犯人の行動を推測し、解明にむけて思考をめぐらす森江。
時代背景が昔のためか古さを感じる場面も多いが、物語としての面白さには影響していないように感じた。
トリックあり、アリバイ崩しあり、密室あり。
本格派をめざして書かれた物語なのだけれど、少々中だるみというか読みにくいところもあった。
思いついた案を詰め込むだけ詰め込んだ物語でとにかく長かった。
それでも、手記の冒頭部分にすでに伏線となるべき状況がしっかりと描かれていたりとミステリーとして練られている部分も感じた。
新人作家が意欲に燃えて書き上げた意欲作といったところだろうか。
Posted by ブクログ
デビュー作ということで著者の気合いと情熱が十分に伝わります。展開が速いので時系列がいまいち分かりずらかったですが、勢いに乗せられて一気に読みました。
大学のサークルの面々が居住する「泥濘荘」で事件が次々と起きるわけですが、登場人物たちをきちんと把握する前にみんなどんどん死んでしまいます。
密室や毒殺など殺害方法もバラエティに富んでますし、なんて忙しい犯人なんでしょう。
クローズドサークルではないので警察も介入しているのですが、怒涛の展開の前では警察の存在感が薄い。
いろいろと過剰な1冊ですが、このてんこ盛りな感じは嫌いじゃありません。個々のトリックも楽しかったです。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
加宮が背中を刺されたまま電車に乗り、当初の計画通りに行動したというのが一番引っかかりました。
犯人を恐喝するパターンで、油断して逆に殺害されてしまうという展開は嫌いなのですが、十沼の狂気的なまでの推理作家への野望があってこそというのには納得。
十沼はじめちょっとどこか狂ったような人間が多い中、皮肉屋で一番厄介だと思っていた蟻川が最終的に一番まともだったというのはおもしろかったです。
Posted by ブクログ
凝っている作品。
次々と起こる殺人事件。伏線は全て回収していく手法は凄いが、殺され過ぎ。殺される人物に個性が少ないので、誰が誰だか良く解らない。
面白くはあったが読後の印象は薄い。
Posted by ブクログ
創元社から復刊を機に読んでみました。
これだけの趣向も取り込んで、それを綺麗に収束させたことにまず驚きました。殺害方法もバラバラで、誘拐事件まで発生。さらに政治闘争まで絡んできて、散漫極まるといった感じだったのに…
個々のトリックは面白味に欠けるし、前半の手記部分は余りにも読みづらい。
それでも、作者の本格ミステリに対する想いが随所に感じられ、読み終わってみれば、良くも悪くも本格を読まされたと嘆息。
最後に明かされる、内外の密室に纏わる趣向はなかなか面白いと思います。
こういう趣向を凝らしちゃうあたり、やはり本格ミステリが好きなんだろうなぁ…
Posted by ブクログ
第一部の沼視点の話が微妙な語り口だとは読んでいるときに思っていた。それが伏線になっていようとは驚きだった。
「十角館の殺人」を読んだ時と同じような印象を受けた。人によってはとっつきにくいとても凝った推理小説だなと思った。
シリーズものらいしいので他の本も読んでみたいと思った。
Posted by ブクログ
のっけから核心部分のざっくりした感想\(^o^)/ご注意を~
「そこ」に犯人はいないのか…と思ってしまったんですよね~(ざっくり)。「ここ」にはいても、「そこ」にいなければ、いくら見取り図があって被害者全員その屋敷の住人でも、館ものとは括りたくないなあ、って。ちょーっとアンフェアな印象すら抱いてしまった。
(ココとかソコとか変な表記すみません…ネタバレ防止です…。)
これほど色々なトリックが詰め込まれてて、そんな些事に突っかかるなんて、自分で言うのも何ですが偏屈極まりないですね。もうこれはマニアの業とあきらめています(笑)。
ただ、「自分の住んでる建物内でこうも立て続けに怪死が続いてるのに、だれも【俺はこんなとこ出ていくぜ!】ってならない不思議(笑)」とか、その辺のお約束な部分に関してはスルーできるのも、マニアの業だわね~と妙にしみじみしてしまいました。
だからこそ!上記で述べた部分は!何とかクリアして欲しかった!!←くどい
まとめるの忘れてた~\(^o^)/というわけで、またしても引用でっす
縛り首、毒殺、密室、連続殺人の恐怖!
古びたアパート「泥濘荘(ぬかるみそう)」へ転がり込んだミニ・コミ誌仲間の13人。格好の根城を得た喜びもつかの間、縛り首や毒死、密室とあらゆるやり方で、1人また1人と殺されてゆく──。残った仲間の誰が犯人なのか。友人たちを救おうとする名探偵・森江春策の推理は?第1回鮎川哲也賞を受賞した本格長編推理。