芦辺拓のレビュー一覧
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あとがきで作者自身も語っているように、試行錯誤期に書かれた初期の作品は地の文の文体が今ひとつ整っていないせいか、不自然に感じる言い回しが散見される。では、新しく書かれたものはどうかと言えば、これもさして変わらないという印象。まあ、この辺りはそういうものだということにして読み進めていけば多少は慣れるのだが、“ともあれ”という言い回しの頻発や、“秒針は変わらぬ律儀さでセコンドを刻み続けていた”や“今やシガレットの墓場と化して”などの無意味な外来語表記には首を傾げてしまう(勿論これは個人的な趣味嗜好の問題だが)。 そういった、ある種の読み難さはあるものの、本書構成上の前半は思いの外なかなか面 -
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ネタバレ大阪を舞台に、現在と過去の事件がまじわるお話です。
東京に住んでいる樹里という少女が父親の選挙出馬の関係で、大阪に行くことになった。
東京から大阪に移動中の新幹線で誘拐される。
犯人から連絡があり、阿月という青年にお金を運搬させろと言う。
彼は、この家とは全く関係ない。
ことごとく犯人に裏をかかれる警察。
警察の一歩上をいく犯人。最終的に3億の身代金は、
まんまと奪われてしまいます。
奪われたので、八つ当たりで彼に責任転換をしようとする警察。
阿月青年を容疑者にしたてあげようとします。
身代金運搬前に森江春策に依頼をしていた彼はそこで、森江春策に弁護を正式に依頼します。
過去の -
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これは、ぼつぼつミステリを読んできた私も度肝を抜かれるハイペースで事件が起きます。この数ページの間に何人殺しちゃったの作者さん⁈って突っ込まずにはいられない超弩級展開。…こーゆーの、好きなのよね~(笑)。
ただでさえ多くない容疑者候補が次々殺されて行く上に、変装したワトソン役が最重容疑者になっちゃったり、その上見取り図は頻出(大好物)、謎解きが犯人究明以外にも及ぶわ、アラビアンナイトは語られるわ。とにかく、内容が詰め込まれていて息つく暇もありません。
…でも、一番の大オチは、かなり早い段階で看破できちゃったんだぜ~(*^o^*)わーい
伊達に館もの読んでないんだぜ!笑
久しぶりだなー大オチ -
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新聞記者の宇留木くんと推理小説好きの女学生鶴子さんが事件に巻き込まれる(というか自ら渦中に入っていく)探偵譚シリーズの第1作。時代は昭和9年。舞台は大阪。このシリーズの特徴はその時代の映画演劇文藝に関する事物が大量に登場すること。興味は連続殺人事件の犯人探しより、エンタテイメントの歴史にいってしまいます。ページをめくるごとに、ふ〜ん。へ〜。そうだったの。と、知らなかった昭和初期のエンタメの世界が拡がります。しかしホントに良く調べられていますね。肝心の推理部分ですが、密室、時刻表、衆人環視の中で‥など多岐に富みます。そして最後には大きなどんでん返しが‥。推理小説はあまり得意ではありませんがそれな
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これを読む前には必ず前作「殺人喜劇のモダンシティ」を読んでおいたほうが良い。時代は昭和10年の初め頃から11年の夏頃。場所は大阪。前作とは異なりその間に起こった7つの事件が連絡短編として収録されている。人気舞台役者の大阪進出。満州国皇帝溥儀の来日。コロンビアやテイチクの前身となるレコード会社が販売するSP盤。実験段階のテレビ。NHK大阪放送局の人気落語家のラジオ放送。トーキー映画。など、その時代の先進的なメディアや芸能がふんだんに登場し、それらにまつわる殺人事件を府立高等女学校4年〜5年生の主人公が解決していく。(前作時は女学校3年でしたが進級し最終話では最高学年の5年生となっています)そして
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“(これは、ひょっとして……?)
ある予感が胸にわき上がるのを覚えながら、似たようないでたちの男たちの中から目指す人物の姿を探し求めた。もっとも、それは造作もないことだった。というのも、おなじみの彼の後ろ姿、それも他の連中より妙にオタオタと所在なさげなそれを選び出すのにまごつく鶴子ではなかった。
(いたいた、あそこやわ……)
内心ほくそ笑みながら、相手の背後に忍び寄った。息がかかるほどに間合いを詰めてから、いきなり相手の後頭部めがけて、
「宇留木さん!」
そのとたん、びっくりしきった顔がはじかれたように振り返った。
「おおっ…なぁんだ、君か。びっくりするじゃないか。どうしたんだよ、今ごろこんな -
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鷹見瞭一は表現者として世に出る夢を捨てかねていた――つまり、いまだ作家として生きて行くことを諦めきれずに無味乾燥な毎日を送っていた。そんな時、高校の先輩であり、唯一出版の世界のコネクションを持った人物である船井に、とんでもない計画をもちかけられる。DNA鑑定をも欺き通せる方法があるから、わざとやってもいない事件の容疑者となり、後で無実の罪を証明して、自分自身が冤罪事件の当事者となってその出来事を記事に書かないかというのだ。突拍子もない話だったが、容疑者といっても、被害者は架空の人物だし、何よりそれが作家としての最後のチャンスだと思った鷹見は、その計画にのることにする。だが、いざ捕まってみれば