あらすじ
殺人事件を捏造し、警察と報道がいかに冤罪を生み出すか暴こうと考えた男は、思いもよらぬ死体の出現で逮捕されてしまう。民主的司法をめざして復活した陪審制のもと、十二人の市民がこの事件に下す意外な評決とは。
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Posted by ブクログ
うーむ、これは拾い物。傑作といってもいいだろう。 人工冤罪、DNA改変、そして陪審員制度という、 大ネタを惜しげもなく投入する贅沢さ。 またそれを有機的に組み合わせた手際の良さ。 ラストの仕掛けにも素直に感嘆した。 (もっとも、アンフェアと言えなくもないが)
Posted by ブクログ
3+
恣意的な書かれ方が目立つものの、法廷の場面でのやりとりは“裁判員”以前に書かれたものとしては意外なほど現実感があり生々しい。何より3.11を通過した我々にとって、本作のプロローグはありえないことでもSFでも何でもなくあまりにリアルである。そういったベースで本作を読むと、荒唐無稽なプロットなどむしろ脇役ぐらいに思えてくる。
Posted by ブクログ
鷹見瞭一は表現者として世に出る夢を捨てかねていた――つまり、いまだ作家として生きて行くことを諦めきれずに無味乾燥な毎日を送っていた。そんな時、高校の先輩であり、唯一出版の世界のコネクションを持った人物である船井に、とんでもない計画をもちかけられる。DNA鑑定をも欺き通せる方法があるから、わざとやってもいない事件の容疑者となり、後で無実の罪を証明して、自分自身が冤罪事件の当事者となってその出来事を記事に書かないかというのだ。突拍子もない話だったが、容疑者といっても、被害者は架空の人物だし、何よりそれが作家としての最後のチャンスだと思った鷹見は、その計画にのることにする。だが、いざ捕まってみればなんと被害者は実在する人物で、容疑はレイプ殺人、DNA鑑定で鷹見以外犯人はありえないという事態に!
この事件を担当することになったのが弁護士の森江春策。事件の真相と、法廷でのやりとりが主となるが、やはり他と違うのが、この裁判が陪審制であること。専門家たちだけでやる裁判とは違い、何気ない言葉が陪審員たちの心の動きに左右してしまうことに、森江は四苦八苦。ただでさえ、容疑はレイプ殺人、容疑者が訴えているのは冤罪計画という突拍子もない話なのだ。だが、読んでいる方にはそこがおもしろいところ。森江の攻め方に感心、最後まで楽しめた。