長山靖生のレビュー一覧
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萩尾望都氏は、まぎれもなくマンガ界の巨匠である。なにしろこうやって「作家論」の本が出ているのだから。
実は先日、「11人いる! 復刻版」を読んだばかり。昔読んだ時と比べると、かなり違った印象を受けた。自分を取り巻く環境や社会の変化もあるかもしれない。また、それだけの「深さ」がある作品なのだろう。
本書の「あとがき」にこうある。「まだ読んでいない萩尾作品がある人は幸いです。こういう本を書いておいてなんですが、皆さんもまずは他人の言葉など気にせず、読んで感じて味わって、自分の感覚で楽しんで下さい」と。未読の作品に限らず、既読の作品でも読み返せば、また違ったものが見えてくるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2021年9月頃に極私的萩尾望都月間を敢行したことで、萩尾作品を総復習できただけでなく、どこかしら世界の見え方が変わった気がしていた。
ところへ、都合よく作家論が出た。
その上読んでみたら、長山靖生氏の文章がそもそも美味しい上に、萩尾の味が思い出されてきて、評論を読むことでこれくらい「めくるめく」思いをしたのは久しぶり。
「一度きりの大泉の話」以後の歴史観を整理するという意味でも重要な一冊だと思う。
個人的には萩尾作品の幅の広さを一覧すると同時に、対象(読者層)の広大さを思った。
少女ではなく少年を経由することで、当時女性として描きづらかったことを描くという手法が、実は現代においてはフェミニズムの文脈に沿う、と思っていたが、いやそれさえも狭い狭い、実は中年男性にも(紆余曲折などせずとも直に)刺さるように、すでにできていた、と。
萩尾作品は蘇るという言い方では足りない、萩尾作品は常に現在生起し続けている。
長山靖生氏の本にも興味が湧いた。
「偽史冒険世界―カルト本の百年」とか「文豪と女ー憧憬・嫉妬・熱情が渦巻く短編集」とか、積読を崩してみよう。
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目次
はじめに――世界はどこから来て、どこに行くのか
【凡例……というか何というか】
第Ⅰ章 双子と自由とユーモアと
――踊るように軽やかな表現の奥に
萩尾望都はなぜ「双子」を欲するのか/発表の場を移してからの快進撃――描きたかった表現/ファンタジーからドッペルゲンガー恐怖へ/漫画だからって「面白く」なくてもいい――萩尾望都の“文学性”/自由は少年の姿をしていた――あるいはジェンダーへの目覚め/なぜ日本ではなく、ドイツのギムナジウムなのか/幼い頃の萩尾望都――戦前的両親との意識差/三井三池炭鉱争議と漫画との出会い/「ごめんあそばせ!」――自由を模索する少女
第Ⅱ章 美しい宇宙、孤独な世界
――萩尾SFが求める多様性社会
SFは自由への目覚めをもたらす/萩尾の抜群のSFセンス/「闇の中」「星とイモムシ」――デビュー前に描かれた幻のSF/ドタバタSF「爆発会社」、本当に怖い「ポーチで少女が小犬と」/「あそび玉」――美しくて孤独な宇宙/ミュータント迫害と戦後世界
第Ⅲ章 少年と永遠
――時よ止まれ、お前は美しい
『ポーの一族』――時空を超越する少年の物語/『ポーの一族』の反時代性と超時代性/未経験の時空へのノスタルジー/「小鳥の巣」――ギムナジウム物の正典/停滞する時間、動かぬ船としての学校/永遠の少年、永遠の孤独/川又千秋の戸惑い――あるいは奔流する物語と枠線の溶解/一四歳の少年――萩尾望都の発見、あるいは発明/純粋結晶世界としての『トーマの心臓』/少年の時と永遠への意識――『悲しみの天使』と『デミアン』/ヘッセの神秘主義と『トーマの心臓』/ユリスモールの欺瞞と回心――ユーリはなぜ堕落を経験する必要があったのか/漫画評論を魅了した萩尾漫画の〝文学性〟/中島梓の驚愕、橋本治の苛立ち
第Ⅳ章 大泉生活の顚末と心身の痛み
――少女漫画史再考①
伝説のはじまり――萩尾・増山・竹宮の出会い/大泉サロンという幻想/大泉時代の作品と、映画の影響/竹宮惠子による呼び出し事件/目の痛み、心の痛み
第Ⅴ章 「花の二四年組」に仮託されたもの/隠されたもの
――少女漫画史再考②
「花の二四年組」とは何だったのか/「新感覚派」「ネオロマン派」との違い/〝男読み〟の許容、すべての人のための少女漫画/増山による「自分としての二四年組」という限定/大塚英志の特異的な二四年組観/「二四年組」神話の形成と恣意性/声をかけられたのは「ポスト二四年組」/二四年組史観への疑問と漫画史の是正/党派的分断主義への違和感/「コボタン」というもうひとつのサロン、「三日月会」というエコール/この際だから簡単に漫画史のまとめを/開拓され続ける少女漫画の“新しさ”/作品世界の深度に伴い進化する表現技法
第Ⅵ章 SF少女漫画の夜明け
――先人たちの挑戦と萩尾望都の躍進
概観・SF少女漫画史/水野英子や細川知栄子にもSFファンタジーはある/米沢が最初に言及したSF少女漫画は萩尾作品/SFブームに先駆けた『11人いる!』/フロル――愛されるジェンダーSFのアイドル/続々と登場する女性SF漫画家たち/萩尾フォロワー 水樹和佳と吉田秋生の活躍/光瀬龍と二人の女性漫画家の出会い/原作物の歴史に関する竹宮惠子の誤解
第Ⅶ章 次元と異界の詩学
――漫画で拓いたSFの最先端
『スター・レッド』――赤い惑星は人類をどこへ運ぶのか/セイの孤独、宇宙の未来/『銀の三角』――超次元の音楽が響く世界で/時空に挑むタイムループ/音楽と世界と/『マージナル』――男だけの地球は再生できるか/『バルバラ異界』――夢はどこにつながっているのか/火星生命とカニバリズム/「他者」がいない世界に「私」はいるのか/未来を人はやり直せるか/物語構築・世界構造の秘密と秘跡/本に込められた想い
第Ⅷ章 親と子、その断絶と愛執
――母娘問題の先取り
『訪問者』――すべての父は彼を想って泣く/オスカーはモテるうえに、どうやら死なない/『メッシュ』――孤独な二人、それぞれの家族問題/「半神」――他者の視線と自分自身/「カタルシス」――過干渉という愛の困難/「イグアナの娘」――娘は私、という母の病い/母を排除していた初期作品群/親と子――煩わしく慕わしい存在/『残酷な神が支配する』における関係の困難性/『残酷な神が支配する』に見る愛の可能性/「残酷な神」とは何ものか
第Ⅸ章 ふたたび、すべてを
――私たちが世界と向き合うための指針として
時代の停滞と変わらぬ創作意欲/歴史の方へ、そしてあの名作の方へ/枯淡の味わいも帯びた、少し不思議な珠玉の短編群/震災と原発事故――祈り、癒し、そして前進/『AWAY―アウェイ―』――約束のその先に/再開『ポーの一族』――SF的世界観と、依存ではない共生
あとがき
《主要参考文献》 -
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「おひとりさま」であることに着目した19人の生涯。
第一章 恋多き人生を全うする
カサノヴァ、モーパッサン、ココ・シャネル
第二章 憧れゆえに思いを遂げられない
アンデルセン、立原道造
第三章 世を正しく導くために
コルベ神父、マザー・テレサ、エラスムス
第四章 自然と人間の真理を探究する ニュートン、カント
第五章 芸術と自由の精神を求めて
ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ゴッホ
第六章 女性ならではの社会の変え方
ナイティンゲール、津田梅子
第七章 君主でありながら子孫を残さず
エリザベス一世、上杉謙信
第八章 常に自分らしくありたい
ジェイン・オースティン、小津安二郎
主要参考文献有り。
古今東西の著名人19人の、それぞれの生涯について、
何故「おひとりさま」だったのかに焦点を当てた内容です。
評伝は簡潔で分かり易い文章。
章の内容に絡めて、19人以外に名前だけの人物も。
また、カントの日常生活やエリザベス一世への多くの求婚と
愛人たちのエピソードも興味深いものでした。
「おひとりさま」でいたのには様々な事情と理由があること。
信仰や布教、発見と真理の探究、芸術への情熱、
男性社会との戦い、統治安定のため、自分らしさを保つ・・・など。
恋愛は様々で、恋多過ぎ、シャイ、憧れが強過ぎ等々。
当時の身分の問題や病での障壁には、悲しいものもあります。
直接の子孫は残さずとも、信念と自分らしさを貫き、
名を残した生き方は、学べるものもあるなぁと感じました。 -
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ネタバレ挑発的なタイトルですが、「もっと民主主義とはなにかを、今の日本の政治を、知りましょう」という内容。学校で習っていた当時はまったく興味を持てなかった公民分野の現代史、今読むと「なるほどー」とよく分かる。
ずっとずっと日本が引きずって先延ばしにしていたことが、どんどん悪い方向に噴出してきて今に至るんだなということが、現代史を通してみると見えてくるなー。根は深い。でも私は今の時代を生きていくしかない。民主主義を成り立たせるためには、私たち一人一人の意識がいかに大切なのか、痛感させられました。具体的にどうしたら良いのかは分からないけれど、とりあえず今という時代を知ることの大切さを教えられた。 -
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先鋭なる信長、奸智の秀吉、政治・経済・軍事を司る最強の徳川家に、天皇家はいかに対峙し、皇統を存続させてきたのか。神楽・和歌、書道など伝統諸芸の家元を掌握し、圧倒的な「文化力」を育むとともに、お蔭参りや御所参詣を巷に大流行させる「ブランド力」を発揮。公家や女官の艶聞も逆に力に変えていった江戸期の歴代天皇。今なお被災地で放たれる天皇の言葉に宿る力の謎に迫る。
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まさにタイトルどおり、なぜ今まで脈々と受け継がれてきているんだろう。戦国武将や有力者たちは、天皇を殺して自分がその地位につこうとは思わなかったのか。そんな謎がちょっぴり解明。
歴史のタイミングが半分、天皇という象徴的存在なのが半分という感じかしら。
おもしろかった! -
Posted by ブクログ
ネタバレSFだけでなく、その周辺領域としてのマンガやアニメ、幻想文学やファンタジー、さらには現代アートや演劇まで戦後の様々な出来事が網羅されている。
それだけに、書名にある「SF事件史」からはかなり内容が拡散してしまっている印象は否めない。どちらかといえば、副題の「日本的想像力の70年」の方が本書の主題と内容を的確に表しているといえよう。
前作『日本SF精神史』が面白かった(評判も良かったようだ)だけに、散漫な感じの本書は残念。SFに絞るか、日本的想像力に主眼を置くか、どちらかに力点をおけば良かったのではないだろうか。
【2012/2/22 追記】
現在の「想像力の欠如」状況に至った過程とその理由が考察されていないのは残念。
著者は80年代以降に隆盛を極めているTVゲーム(とその派生である携帯ゲーム)について触れていないが、安易に攻略本に頼る傾向と併せて、それこそが「想像力の欠如」に至る一因なのではないかと愚考する。