長山靖生のレビュー一覧
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ネタバレファム・ファタールだとか運命の女だとかいって、悪女とか、男を破滅させる魔性の女とかのニュアンスを持つが、なに、冷静に考えれば女と男は同時に転げ落ちるのであって、どちらがどちらを向上させもしなければ、どちらがどちらを引き摺り落としもしないはず。
が、「サロメ」をはじめ、19世紀末から20世紀初め頃の世紀末芸術で大々的に取り上げられたからには、その影響下にある文豪が、限られたフレームワークの中で、実人生と夢幻が切り結んだ際に、こういう作品をものしたことは、2025年に安易に切って捨てるべきではない。
編者の詳細な解説とともに、楽しめた一冊。
■森鴎外「杯」
目を瞠るようなお耽美。象徴、寓話。
■田山花袋「少女病」★
マジキショワロタ。
他人事ではない……。
しかも作家自身への言及が過酷で、マゾっぽくてまたキショワロタ。
さすがフトニスト。
発表は同年らしい。
この自己対象化コメディセンス、意外と西村賢太に通じるのでは。
■立原道造「白紙」★
美しすぎる散文。詩。
■永井荷風「庭の夜露」
かなりマイナーな作品らしい。
茫洋とした短編だが、確かにこの本のこの部分に位置するのはふさわしい。
■山川方夫「昼の花火」★
中島らもいわく、〈だから「あいつも生きてりゃよかったのに」と思う。生きていて、バカをやって、アル中になって、醜く老いていって、それでも「まんざらでもない」瞬間を額に入れてときどき眺めたりして、そうやって生きていればよかったのに、と思う。あんまりあわてるから損をするんだ、わかったか、とそう思うのだ。〉
作者にとって額に入れておきたい瞬間だったのでは。
ホロニガ抒情、読者へのお裾分け。
■泉鏡花「雪の翼」
文意が読み取れず、集中できず。
■夏目漱石「硝子戸の中」★
6~8回の抜粋。
既読なので再読のはずだが、忘れていた、にもかかわらず、ひどく感動してしまった。
たぶん、初読の二十歳ごろにはタナトスに接近していたのに、中年に入った今は身近な人にあてられて生のほうを向いているから、「そんなら死なずに生きて居らっしゃい」が染み入ったのでは。
■中島敦「下田の女」
作者18歳で、初めて活字になった作品。
振り回されたい……。
■谷崎潤一郎「青い花」
女に服を買ったというそれだけをここまで。文体芸。
語り手の岡田と、あぐり。
2年後に「痴人の愛」へ。プロトタイプ。
■芥川龍之介「なぜソロモンはシバの女王とたった一度しか会わなかったか?」
編者の解説にもあるが、かなりハイコンテクストに読める作品。
■高見順「強い女」
たった3ページ。
■堀辰雄「辛夷の花」
マジで好きな小説……と嬉しくなったが、実は12年前に「大和路・信濃路」(新潮文庫)で既読なのだった。
■坂口安吾「いずこへ」
再読。
デカダンスとエシカルの綱渡りのような両立!
■久生十蘭「姦」
2020年に、河井克夫の漫画化「久生十蘭漫画集 予言・姦」で既読のはずなのに忘れていた。
■太宰治「葉桜と魔笛」
再読。
◇解説 長山靖生
25ページに渡る、力作。 -
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SF少女マンガの通史であるが、サブタイトルに「昭和黄金期を中心に」とあるように主に1970年台から80年台にかけて活躍した作家が中心の構成となっている。
2024年に「SF少女マンガ全史」と題して出す本であるからには、米沢嘉博の「戦後少女マンガ史」「戦後SFマンガ史」の2冊には書かれていない80年台から現在に繋がる流れを期待したいところだが、
90年台以降の作家については第1章の「SF少女マンガ概史」で清水玲子やよしながふみなど幾人かがざっくりと紹介する程度で、2章以降の個々の作家や作品の論評ではほぼ言及がない。それに対して、大島弓子や岡田史子、内田善美、高野文子といったSFマンガというとちょっと疑問符が付く作家に紙幅をかなり割いており、「全史」というぐらいならもっと取り上げるべき作家はいるだろうにと思わざるをえない。何せ高河ゆんやCLAMPすら全く出てこない。80年台以降の「リュウ」あたりから始まって「ウィングス」や「ZERO-SUM」などに続くSF・ファンタジー作品の流れはほぼ無かったことにされており、今現在、マンガを読んでいる若い層からすれば「おっさんのノスタルジー」以外のなにものでもないだろう。(老害という気はないが、マンガ評論とか書く人、ガロ・COM系と(いわゆる)24年組あたりで価値観が止まってる人多い気がする)
とはいえ、古き良きSF少女マンガのガイドブックとしては悪くない。とくに第4章まるごと使った萩尾望都評は萩尾望都の本を出している著者だけあって読み応えがある。ただ、竹宮惠子への記述がけっこう悪意を感じるのは著者が萩尾望都推しの所為か。
人名と作品名の索引がないのもマイナスポイントかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ当然、SF漫画の大傑作『11人いる!』にひっかけたタイトルだろう。どうせなら「!」も付ければよかったのに。それほどの、なかなかの力作だった。
あいにく、自分は、当時は妹の持ち込んだ少女漫画を盗み見するくらいにしかそちらの世界には触れていないので、『11人いる!』以外は、その続編を少しと、『ポーの一族』『トーマの心臓』あたりを、後追いで読んだ程度。『11人いる!』のテイストと違って、正直、のめり込めなかった。
また、読んだタイミングも後追いで、1975年当時ではなかった。
「まず強調しておきたいのは『11人いる!』が1975年の作品だということ。つまり劇場版『宇宙戦艦ヤマト』(1977)や『未知との遭遇』(同、日本公開は翌78)や『スターウォーズ』(同、日本公開は翌78)より前で、SFブームに乗った作品ではなく、その先駆けだったという点です。」
1982年の『ブレードランナー』より前だったとは思っていたが、ヤマトやスターウォーズよりは後に読んだ印象だ。人類の未来、科学の進歩に夢も希望もあった当時の空気が横溢しているのは、当時も感じてはいたように思う。
「(「爆発会社」で描かれた)臨海地区に立ち並ぶ未来の都市建設群は、同年三月から始まる大阪万博のパビリオン群を先取りしたかのようでした。(中略)当時の萩尾は「人類の進歩と調和」に期待を抱いていたのではないでしょうか。」
ともかく、著者による萩尾望都絶賛は、厭味がなく気持ちよい。
残念ながら、作品を追っての変遷や、細かい描写による表現の分析にはついていけなかったが、それでも、昭和における少女漫画の立ち位置や時代が求める表現の模索などに関しての俯瞰的な考察は、非常に面白かったしためになった。
70-80年代は、『ドカベン』『ブラックジャック』などの「チャンピオン」系から、やがて『Dr.スランプ』『北斗の拳』の「ジャンプ」系に触れてきたので、それらいわゆる少年漫画の作品をとらまえて、本書のような分析は可能だろうか?と思いながら読んだりもした。ジェンダー云々による比定はいけないのかもしれないけど、少女漫画との差を思い知る感がある。
ジェンダーといえば、今回改めて『11人いる!』は復習しておいたが、確かに、まだあの当時は女性の社会進出は(『11人いる!』では大学進学ですら)珍しい存在として扱われている。主人公タダの相方フロルの言動の端々にも「女なんか」や、「女になってやってもいいよ」と、女性を男性より下に見た発言がちらほらと出てくる(両性具有で今後性別を選択する種族という設定で、キャラとして「男になりたい」という役割を担わされていたということもある)。 本書にも、
(「11人いる!」の中で)受験生の中に女性がいることに男たちが驚く場面があることは、女性の社会進出がまだ一般的ではなかった当時の社会認識を反映していました。」
と分析している。
斯様に、本書では、萩尾望都、萩尾作品についてだけではなく、その社会的背景、その他の少女漫画作家や男性作家との関係、位置関係、さらには日本の戦後漫画史も俯瞰して見せてくれて、非常に読み応えのある内容になっていた。
あいにく、自分が、せいぜい庄司陽子の『生徒諸君!』や、大和和紀『はいからさんが通る』、美内みずず『ガラスの仮面』などの有名作品、里中満智子の短編作品などを著名作家の作品にしか触れてこなかったので、作者の深い考察にはとうていついてはいけなかったが、こうした趣味の分野を深掘りしていく作業は、さぞや楽しかったのだろうなと、その文章が発する熱量を羨ましく感じながら拝読した。 -
Posted by ブクログ
戦前の文化人、小説家、哲学者、詩人が戦意高揚の声を上げ、それが「日本回帰」ということで説明される。必ずしも戦争賛成というわけではなかったが…戦後抱えることになった懊悩で戦後も「日本回帰」の努力を続けた人たち。読んでいく中で、白秋、朔太郎、達治、光太郎、折口信夫(釈超空)、茂吉たち実に多くの詩人たちが、本人の気持ちは別として、また物資不足の中で矛盾を感じつつ、戦争礼賛の作品を発表していたことが、「日本の美」を主張したい気持ちと重なっていたのだということが良く理解できた。戸坂潤の「なぜ人々は日本的なるものと言って、日本民衆的なものと言わないのか。…日本的なるものの定量分析は、現代の日本の民衆とつぎ合わされていない」との昭和12年の文章は興味深い。
面白い話としては明示初期に佐田介石が仏教哲学の立場から地動説を排撃した!これも欧化への抵抗だった。また京都学派が使用学問の正系を直接引き継ぐ東大派を意識して「日本的なるもの」への関心が強かったという指摘はなるほど!という感じ。 -
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ゴジラとエヴァについての蘊蓄の良質なサマリー。
いろいろな裏話を読めばオタク的知識欲は大いに満足される。
が、この二つを併記した意味は何か、となると、正直疑問符がつく。
後書きで著者はいみじくもアニメか特撮か、どちらかを選べと言われたら、というような問いを立てているが、オタクトークとしては盛り上がりそうだが、それだけとも言える。
ゴジラと言えば安藤礼二や加藤典洋をはじめ、一級の思想家が多くを論じている。ここにエヴァをどう絡ませたのかに興味があったのに、、、
もっとも私も含めた、この二つの作品に関する小ネタならいくら読んでも退屈しない、というタイプの人には一読の価値はあり。