【感想・ネタバレ】日本回帰と文化人 ――昭和戦前期の理想と悲劇のレビュー

あらすじ

西洋文化を旺盛に摂取しつつ繁栄を遂げてきた近代日本は、昭和期に入ると急速に「日本回帰」へと旋回する。そのうねりのなかで文学者や思想家たちもまた、ときにそうした運動の主導者となっていった。和辻による日本古典美の称揚、保田らの「日本浪曼派」、北原白秋や斎藤茂吉の戦争詩歌、そして三木の東亜協同体論や京都学派の「世界史の哲学」――。戦後タブー視されがちであったこれらの作品を、当時の時代状況や彼らの内的論理に注目しつつ読み解き、「日本的なもの」の核心に迫る意欲作。

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Posted by ブクログ

戦前の文化人、小説家、哲学者、詩人が戦意高揚の声を上げ、それが「日本回帰」ということで説明される。必ずしも戦争賛成というわけではなかったが…戦後抱えることになった懊悩で戦後も「日本回帰」の努力を続けた人たち。読んでいく中で、白秋、朔太郎、達治、光太郎、折口信夫(釈超空)、茂吉たち実に多くの詩人たちが、本人の気持ちは別として、また物資不足の中で矛盾を感じつつ、戦争礼賛の作品を発表していたことが、「日本の美」を主張したい気持ちと重なっていたのだということが良く理解できた。戸坂潤の「なぜ人々は日本的なるものと言って、日本民衆的なものと言わないのか。…日本的なるものの定量分析は、現代の日本の民衆とつぎ合わされていない」との昭和12年の文章は興味深い。
面白い話としては明示初期に佐田介石が仏教哲学の立場から地動説を排撃した!これも欧化への抵抗だった。また京都学派が使用学問の正系を直接引き継ぐ東大派を意識して「日本的なるもの」への関心が強かったという指摘はなるほど!という感じ。

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2021年09月10日

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