長山靖生のレビュー一覧
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先の大戦へと至る道は、主に注目される政治面や軍事面だけでない様々な面がある。その様々な面の内、この本が着目しているのは教育面。
「哲学館事件」や教科書採用過程における泥々の癒着など初めて知る事は多い。何より南北正閏論争の影響力の大きさには目を見張る。確かに、明治維新の表看板は天皇主権であり、目指した所は建武の新政だ。倒幕の錦の御旗である。その為、史実を無視し、南朝を正当化するのは流れとしては間違いではない。だが、北朝の血を継ぐ明治天皇に、南朝を正しとするのは余りにむごい。また、史実の無視は亡国への道であるように思う。
先の大戦を泥沼に引き釣りこんだのは、明治の教育を受けた者たちであったことを -
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[ 内容 ]
十九世紀から二十世紀初頭、資本主義の浸透と身分制度の解体が進み、現在の社会秩序の基礎が確立される過程の欧米諸国で書かれた「少年少女世界の名作」。
これを単なる子供だましと侮るなかれ。
『十五少年漂流記』に隠された英米仏の領土問題、『宝島』に貫かれているビジネスの過酷さ―。
そこには、近代史の真相、民衆心理、社会の根底にあるさまざまな仕組みやカラクリが隠されている。
世界の見方が変わる一冊。
[ 目次 ]
第1章 経済原理と世界戦略(フランダースの犬―貧しかった日本人にとっての「癒し系」 王子と乞食―偽王が偽造される民主主義への批判 小公子―日清戦争後の母子家庭を魅了した夢物語 -
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[ 内容 ]
日本SFの誕生から百五十年、“未来”はどのように思い描かれ、“もうひとつの世界”はいかに空想されてきたか―。
幕末期の架空史から、明治の未来小説・冒険小説、大正・昭和初期の探偵小説・科学小説、そして戦後の現代SF第一世代まで、近代日本が培ってきたSF的想像力の系譜を、現在につながる生命あるものとして描くと同時に、文学史・社会史のなかにSF的作品を位置づけ直す野心作。
[ 目次 ]
序章 近代日本SF史―「想像/創造」力再生の試み
第1章 幕末・維新SF事始―日本SFは百五十歳を超えている
第2章 広がる世界、異界への回路
第3章 覇権的カタルシスへの願望―国権小説と架空史小説
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文豪15人の「食」にまつわるアンソロジー。
文豪といっても知っている文豪もいれば知らない文豪もいる。
そもそも文豪の基準ってあるのかなぁ?
名前は知っているけど作品を読んだことがない人は多いのではないだろうか。
アンソロジーの良いところははいろいろな作家の作品が読めること。
森鴎外 「牛鍋」
1800字くらいで4頁しかない短編なんだけど
最初読んだ時に「なんだこれは?」
箸のすばしこい男と箸がすばしこくなろうとしている少女がひたすら牛鍋をを突っつく話。
弱肉強食の世界。
そして「人は猿より進化している」と。
一度読んだだけではなかなか理解が難しいが分かると面白い。
谷崎潤一郎 美食倶楽部 -
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残念ながらリアルタイムでは知らないのですが、萩尾望都の作品が、初期のものからずっと大好きです。母の影響です。小さい頃から、英才教育並みに、実家の書棚に並ぶその時代の少女漫画を読んできました。成長して読み返せば、どの時点で読み返したとしても新鮮に新たな感想を持つような、深みがある作品ばかり。最近の優れた漫画は映画的だなと思うことが多々ありますが、この時代の少女漫画は、文学的なものが多い。萩尾望都はその頂点では?
ちなみに実家の書棚には、竹宮惠子作品は「私を月まで連れて行って」しか並んでなかったです。キュートでオシャレでポップだけど、少しだけ切ないようなSFコメディ。こちらも大好きでなんども読み -
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萩尾望都氏は、まぎれもなくマンガ界の巨匠である。なにしろこうやって「作家論」の本が出ているのだから。
実は先日、「11人いる! 復刻版」を読んだばかり。昔読んだ時と比べると、かなり違った印象を受けた。自分を取り巻く環境や社会の変化もあるかもしれない。また、それだけの「深さ」がある作品なのだろう。
本書の「あとがき」にこうある。「まだ読んでいない萩尾作品がある人は幸いです。こういう本を書いておいてなんですが、皆さんもまずは他人の言葉など気にせず、読んで感じて味わって、自分の感覚で楽しんで下さい」と。未読の作品に限らず、既読の作品でも読み返せば、また違ったものが見えてくるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2021年9月頃に極私的萩尾望都月間を敢行したことで、萩尾作品を総復習できただけでなく、どこかしら世界の見え方が変わった気がしていた。
ところへ、都合よく作家論が出た。
その上読んでみたら、長山靖生氏の文章がそもそも美味しい上に、萩尾の味が思い出されてきて、評論を読むことでこれくらい「めくるめく」思いをしたのは久しぶり。
「一度きりの大泉の話」以後の歴史観を整理するという意味でも重要な一冊だと思う。
個人的には萩尾作品の幅の広さを一覧すると同時に、対象(読者層)の広大さを思った。
少女ではなく少年を経由することで、当時女性として描きづらかったことを描くという手法が、実は現代においてはフェミニ