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日清・日露戦争に勝利した日本は帝国化に向かうべく、また青年層の贅沢化と個人主義化への懸念を払拭するために、国民教育における愛国教育を推進した。それはやがて妄想レベルにまで進み、三つの象徴的事件――哲学館事件、南北朝正閏論争、進化論問題を引き起こす。これらのスキャンダルから、明治初頭の実学優先・合理主義の教育が教養・精神主義に転換し、国家と天皇の神聖化、帝国神話強化に向かうメカニズムを解読する。教育の右傾化が危惧される今こそ必読の一冊。
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Posted by ブクログ
先の大戦へと至る道は、主に注目される政治面や軍事面だけでない様々な面がある。その様々な面の内、この本が着目しているのは教育面。 「哲学館事件」や教科書採用過程における泥々の癒着など初めて知る事は多い。何より南北正閏論争の影響力の大きさには目を見張る。確かに、明治維新の表看板は天皇主権であり、目指した...続きを読む所は建武の新政だ。倒幕の錦の御旗である。その為、史実を無視し、南朝を正当化するのは流れとしては間違いではない。だが、北朝の血を継ぐ明治天皇に、南朝を正しとするのは余りにむごい。また、史実の無視は亡国への道であるように思う。 先の大戦を泥沼に引き釣りこんだのは、明治の教育を受けた者たちであったことを思えば、教育面の重要性は高い。幕末出身者は、それこそ天地がひっくり返る体制崩壊や内乱、亡国・亡藩を肌身で経験していた故に、どうにか踏みとどまった。しかし、それらを経験せずに教育だけ受けた者たちはある一線を踏み越えてしまった。 丹念な史実の探究と正確な記述。それを基にした教育の重要性と、イデオロギーに支配されずに伝達できる環境。それらの貴重さを改めて考える。
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