安部龍太郎のレビュー一覧
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ネタバレ本能寺の変の背景を大胆に推測した一冊。
信長は、ポルトガルとの南蛮貿易で富を得て、それが権力の源泉になっていた。このころ、宣教師たちの日本での活動が最も盛んとなる。ポルトガルがスペインに併合されると、スペインとの交渉に入ったが、決裂。貿易で得ていた信長の力に陰りが生じる。それをみた足利義昭は、公家勢力と組んで、信長を潰しにかかる。その手下となったのが明智光秀。そのころ、宣教師たちは、キリシタンと近しかった秀吉と組み、キリシタンのネットワークを使って、秀吉に中国大返しをさせ、権力を握らせる。
雑誌などに掲載されたいくつもの文書をまとめたようで、少々全体的なまとまりには欠け、若干読みにくいが、歴史 -
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話題になり、人からもおすすめされたので手に取りました。
本能寺の変の謎を解く、といった作品は、おそらくこれまで多数あったと思いますが、国内の政治状況に加え、大航海時代という世界の歴史の中でとらえたこの作品は、かなり興味をそそる一冊となりました。
その観点からとらえ、その後の秀吉の天下統一、朝鮮出兵、関ケ原の戦い、大坂の陣まで長期を対象としているため、従来の歴史で習ったことの裏付けのなるかもしれない、という視点で読むとかなり面白い。
歴史は、その時代にとって不都合な部分は見えないようにするということがあるものですが、著者が指摘した、江戸史観4つの誤り(鎖国史観、身分差別史観、農本主義史観、儒教 -
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時代は昭和初期と明治維新の時を行き来する珍しいタイプの歴史小説。
アメリカのイエール大学で日本史を教える60歳の准教授が戦争に突き進む日本に警鐘を鳴らしていたが、効はならず歯がゆい想いをしていた。
そんなときになぜ、日本はこのように心なく無茶を押し付けるような国になったのだろうと思案した時に明治維新そのものに原型があったのではないかと思うようになる。
それをテーマにした書籍を書こうとするが、内容は学術書でなくて、小説とした。そしてテーマは青年期に対立した父の若き日々について。
彼の父は二本松藩の若き侍であり、江戸幕府側として戊辰戦争に参加していた。
その若き父が見たのは、薩長が旗を振る新政府 -
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安土桃山時代の名絵師・等伯の若き日から、織田信長の権力側から追われる身となった苦難の日々を経て、関白・近衛前久、狩野派の3代目直信(松栄)や京都奉行・前田玄以たちとの関係を経て、有名絵師として地歩を確立していくまで。妻・静子の献身的な支えが感動的だった。日蓮宗の僧侶・日堯上人の尊像を描くに当たり悟りがどこまで進んでいるかを絵が余すところなく表現している!そして若い僧侶・日槇の肖像画を描くに際しては一途さ、将来の大輪の花を予感させる作品へ向けた努力を惜しまない。等伯の絵のその凄みは実際にあった話だと納得できた。等伯という人の求道者ぶりがよく分かった。下巻へ向け、狩野派4代目州信(永徳)が敵役とし
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太平洋戦争前夜のアメリカ・イエール大学で教鞭をとる朝河貫一が、戊辰戦争を戦った二本松藩藩士の父の書き残した手記をもとに、明治維新の意味を問い直すため「維新の肖像」という小説を書くという二重構造となっている。
アメリカで反日の人々から迫害を受けながら、貫一は軍国主義に傾倒する日本を憂える。そして父の手記から、破滅への道へと邁進する日本の病根は明治維新にあると考えるに至る。
明治維新を否定的にとらえ、戊辰戦争で行った薩長の卑怯なやり方が関東軍で踏襲され、満州事変を起こしたと、貫一は考える。
書中の登場人物に、孝明天皇の崩御は長州による毒殺だとも、語らせる。
さらに、薩長同盟の立役者は坂本龍馬との説 -
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『葉隠』(はがくれ)は、江戸時代中期(1716年ごろ)に書かれた書物。肥前国佐賀鍋島藩士・山本常朝が武士としての心得を口述し、それを同藩士田代陣基(つらもと)が筆録しまとめた。全11巻。葉可久礼とも。『葉隠聞書』ともいう。以上、ウィキペディアから。
取り敢えず読んでみようと考えたが、どの本も難しそうだったので、入門としてこの漫画をチョイス。その上巻。
感想。
・一気読みできました。300ページの漫画上下巻で、言わんとすることがなんとなくわかった。
備忘録。
・「武士道とは死ぬことと見つけたり」の名言だけでは少し言葉足らずで、単に死ぬことが殿への忠義になるわけでは無い、との本著の見解。
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黒田如水の密書をめぐり、本多正純が各大名へ訊問する形で話が進んでゆく。
しかし、関ヶ原の前あるいは後と場面が錯綜し、読者もまま惑わされてしまう。
関ヶ原は、家康と三成との戦いというのが歴史の定説であるが、著者はその裏に如水と家康との権謀と策謀の戦いがあったとみる。
これがフィクションなのか、はたまた小説家の想像力によって描き出された歴史の裏面史なのか。
確かに、関ヶ原の戦いの最中、如水は九州の各地を次々と制圧していった。これは史実であるが、その裏にこれ程の策謀があったのだろうか。
如水の密書にいう「三方」とは、誰と誰のことだろうか。後半明かされるその人物の名前には、読者は皆”エッ”との声を上げ -
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5名の小説家による歴史座談会。山本兼一さんが亡くなられたので、途中から4名になっています。信長・秀吉・家康・幕末がテーマの4回。
やはり、同じ歴史上の出来事でも、それぞれが着目する点って違うんだな、と当たり前なんだけど新鮮に感じました。それだからこそ、数々の歴史小説を読む意味もあるというものです。まだまだ読書量も勉強も足りません。
司馬遼太郎の影響について言及されているのも興味深い。ざっくりいうと、司馬遼太郎を超えて行け、ということですな。あの竜馬を超えるのは大変でしょうねぇ。
三国志演義と三国史は別物。それに気づいたのっていつだろう?史書でなく小説・マンガから触れることが多いのが歴史だと思 -
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ネタバレ常に己の信念に忠実に生きてきた長谷川信春(後の等伯)。
十一歳で武家から染物屋に養子に出されて以降、戦国の激流に翻弄され続けて不遇な時を過ごすも、その都度自身の絵に境地を救われる。
このままでは終わりたくない。
いつかあの狩野永徳を越える絵師になる!と常に永徳を意識しながら。
山本兼一氏の『花鳥の夢』を読んでから俄然興味が湧いた今作品。
等伯がこんなにも追い詰められながら絵を描き続けてきたことに驚いた。
次々に不遇に見舞われても切り抜ける根性。
故に気迫と気高さが込められた等伯の絵。
特に長年等伯を支えてきた妻のために描いた故郷の山水図はどんなにか素晴らしいことだろう。
そしていよいよライバ -
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以前買った雑誌サライに「半島に行く」の連載を見付けた。二度行ったことのある丹後半島だったので、興味を持った。
さて、その連載が一冊の本となって上梓されたのを新聞広告で知り、購入、
気楽な歴史紀行と思ってたら、どうしてどうして、面白くて、久しぶりにページを捲る手が止まらない読書となった。
歴史作家と歴史学者と画家の三人が、司馬遼太郎氏の「街道を行く」のようなことをと考え、街道が整備されたのは江戸時代、むしろ昔は海こそが遠方との交通手段で、半島はその結節点と見込んで始まる企画。
六つの半島に旅して、語られる事物の豊かなこと。
奥能登の大屋敷。若しやと思ったら、網野義彦氏「日本の歴史を読みなおす」 -
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ネタバレ詳しくはないけど、等伯の画、好み。
華々しい狩野派と同時代のお話。
義父母の死、能登七尾から京の都へと。
「あなたは信長に勝ちたいとは思いませんか」
〜人は理不尽な暴挙に屈することのない気高さを持っていると、自分の生きざまによって知らしめたいのです。〜[日堯の肖像画]
近衛前久との出会い
〜死と向き合う不安と恐怖、それに打ち克とうとする信念と覚悟。〜[教如の肖像画]
『心に分別して思い言い顕す言語なれば、心の外には分別も無分別もなし』
〜言葉というは心の思いを響かして声を顕すという。〜神通というものは、魂の一切の法に通じてさわりのないものじゃ。〜すべての心の動きは悟りに通じておる。