竹本健治のレビュー一覧
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「家が呼ぶ」に大興奮して以来、すこしずつ朝宮運河さん編纂のアンソロジーを買い集めている。今作も大興奮!
✂-----以下ネタバレです-----✂
はじめに収録されたタイトルドンピシャの「恐怖」は、短くもラストにドキッとする極上の作品。最初からこの作品…もう期待しかないが、続くは小松左京「骨」。じっくり掘り進められた恐ろしく壮大な情景が、蘇る記憶とともに一気に駆け抜ける大迫力に感動…。
「夏休みのケイカク」「正月女」は現代の割と身近な景色を思い浮かべつつ読み進めていたけど、オチに違ったカラーのダークさがあり面白い。
今回すごく好きだった「ニョラ穴」は、SFチックな作風。日本のこ -
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★5 暗号ミステリーの名作! 明治の鬼才作家、黒岩涙香が残した「いろは歌」の暗号を解け #涙香迷宮
■あらすじ
囲碁の世界では有名な老舗旅館で殺人事件が発生した。主人公であるトップ囲碁棋士の智久は、刑事とともに事件解決を図っていく。
一方、明治時代の作家、翻訳家である黒岩涙香の山荘が発見される。そこには「いろは歌」に関する暗号が隠されたいた。主人公、暗号解読の猛者、研究者たちが難解な暗号に挑戦するのであった。
■きっと読みたくなるレビュー
こいつはすげぇ… 暗号ミステリーの名作ですね。
バケモノ感が満載、しかも楽しく読めて勉強になる、素晴らしい作品です。
まず本書の特徴としては、文学、ミ -
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2年前に新装版講談社文庫が再発されて、特別短編「匳」が収録されたので購入して再読。
たしかン十年前に講談社文庫で「虚無への供物」に続く第四の奇書という謳い文句で紹介され、手にとって寒い夜に読んだのが初見だった。
始まりからして霧のかかった夜に一人歩きしている大学生のシーンだったんで、あまり期待はしてなかったのだけど埴谷雄高の「死霊」と比較すると、ああなるほどとは感じた。この作家は後に発表する「ゲーム殺人事件」や「ウロボロス」シリーズの方が理解しやすいので、そちらを読んでからチャレンジされるといいかも。
2019年は「匣」の記念限定豪華本を上梓するとかでちょっと楽しみ。 -
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いやー、奇書。奇書だ奇書だとは聞いていたが、やっぱり奇書だった。22歳の青年がこれを書いたって?うそでしょー!?
さしずめ現代に蘇る黒死館殺人事件ってとこか。全編を通じて醸し出されるペダンティックで奇妙な空気は、僕のようなある種の人間を熱狂させる。
次から次へと姿を見せる謎、そして謎解き→その謎解きの否定といった推理小説の王道の繰り返し。もう、心躍らないわけがないって感じ。
ただ惜しむらくは、最後がしりすぼみだったこと。
結局、回収されていない謎がむちゃくちゃ多くないか?
なんかこう「ああ、惜しい。あと1ミリだったのに」感が漂うなあ。
ま、という欠点を補ってあまりある結論までの流れなので -
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この本を読んで、最初『読解力が足りないんじゃないか?』そう思った。
しかしもう、そう思った段階で作者の罠にはまっていたのだけど(笑)。
読んでいくうちに、幾重にもかこまれた迷宮に落ちていった。
そして、真実とかそういうものがあまし意味をなさなくなっていく。
仲間の殺人を信じ、それを暴こうという狂気。しかし、誰もそれに気づかない。
そして、狂ったったまま静かに迷宮の中でゆがんだ真実と、現実をすりかえる。
そして、そのまま音もなく本当に静かに物語は終焉してしまう。
読み終わったとき何となく、これがフィクションで本当によかったと思った。
■追記■
この作品が竹本さんのデビュー作(1978 -
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五年以上積読だったのを、ようやく読む。
「虚無への失楽」と「死霊」に大きく影響されているなと思いながら読んでいたが、解説を読むと確かに「ドグラ・マグラ」や「黒死舘」からの影響も。
ミステリはとくに、登場人物が魅力的かどうかが重要視されるが、
本作では人物の描きわけができていない、というより、されていない。
(女性の魅力のなさも)
そしてそれがメタミステリゆえに現れる特徴としても機能している。
若書きの作品としては巧妙すぎて卑怯だなーと思う。
登場人物たちは、いや「人形たち」は全員平板な顔つきをした、紙に書かれたままの顔で、語る、語る、語る。
とにかく独特の空間を作り出してい -
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ネタバレ日本では数少ない暗号小説の傑作。一冊の小説の中にブリッジの用語辞典がまるまる入っているという型破りなスタイルは、すれっからしのミステリ・ファンを心地よく挑発してくる。そして魅力的な謎が見事に解き明かされた後で、なお残る深い余韻。
「匣の中の失楽」でデビューした竹本健治という特異な作家にとって、本作を含む「ゲーム三部作」とは「ウロボロスの偽書」へ到る過程の作品なのか、それとも本格ミステリとメタ・ミステリが奇跡的にバランスした一つの到達点なのか。
いずれにしろミステリ・ファンにとっては、最高の悦楽を与えてくれる必読の作品であることは疑いない。