竹本健治のレビュー一覧
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牧場智久シリーズ二作目。
前作とは打って変わって幻想文学のような筆致で詰将棋、怪談にまつわる謎を追っていく。
目まぐるしく多発する謎が徐々に一つの糸に収束していく様は実に爽快だけど、その根幹にあたるトリックは今や手垢に塗れた手法だろう。ただしそれは決して作品を貶める玉疵とはならない。
本作の見どころは人間の思考、脳内の神秘≒ミステリーに迫っていく過程のメタフィクション性にあるように思える。本作の主題である詰将棋をはじめとした各要素もまるでフェリーニ映画のシンボリズムのようで、読みながら思考の海に沈むような感覚を覚える。
後続の作家への多大な影響も頷かせる竹本健治の力量に改めて気付かされる傑作。 -
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「家が呼ぶ」に大興奮して以来、すこしずつ朝宮運河さん編纂のアンソロジーを買い集めている。今作も大興奮!
✂-----以下ネタバレです-----✂
はじめに収録されたタイトルドンピシャの「恐怖」は、短くもラストにドキッとする極上の作品。最初からこの作品…もう期待しかないが、続くは小松左京「骨」。じっくり掘り進められた恐ろしく壮大な情景が、蘇る記憶とともに一気に駆け抜ける大迫力に感動…。
「夏休みのケイカク」「正月女」は現代の割と身近な景色を思い浮かべつつ読み進めていたけど、オチに違ったカラーのダークさがあり面白い。
今回すごく好きだった「ニョラ穴」は、SFチックな作風。日本のこういう作品って初めて読んだんじゃないかな。世界が広がって面白い。アンソロジーの良さ。
「或るはぐれ者の死」、「雛」は現代のどこかで広がっている異様な光景に思いを馳せるような話。「雛」の、チラッと見たら鬼の形相になっているっていう映画的な描写良かったなあ。
そして一番怖かったのは最後の「人獣細工」!
冷たく鋭く人間の尊厳に切り込んだ作品で、一番本能的な恐怖をおぼえたかもしれない…。何度も「冒涜だ…おそろしい…」とつぶやきながら、ページを捲る手が止まらなかった。
面白かったのでシリーズ前作の「再生」も買おうっと♪ -
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★5 暗号ミステリーの名作! 明治の鬼才作家、黒岩涙香が残した「いろは歌」の暗号を解け #涙香迷宮
■あらすじ
囲碁の世界では有名な老舗旅館で殺人事件が発生した。主人公であるトップ囲碁棋士の智久は、刑事とともに事件解決を図っていく。
一方、明治時代の作家、翻訳家である黒岩涙香の山荘が発見される。そこには「いろは歌」に関する暗号が隠されたいた。主人公、暗号解読の猛者、研究者たちが難解な暗号に挑戦するのであった。
■きっと読みたくなるレビュー
こいつはすげぇ… 暗号ミステリーの名作ですね。
バケモノ感が満載、しかも楽しく読めて勉強になる、素晴らしい作品です。
まず本書の特徴としては、文学、ミステリー、いろは歌、囲碁や連珠など、様々なウンチクが盛りだくさんなんです。古いアナログゲームや文学の研究書を読んでるみたいなの。
暗号ミステリーは『黄金虫』や『踊る人形』あたりは有名で読んでますが、他の作品についてもいろいろ紹介がされていて、興味深く読ませていただきました。
また『五目並べ』は知ってはいますが、『連珠』なんて名称は知りませんよ。しかもこんな深いルールや歴史があったなんて勉強になるなぁ。そして昔の人はスゴイ。
最近話題にもなっているは『ウミガメのスープ』も登場します。今はデジタルゲームが主流ですが、アナログな遊びやゲームも、残り続けてほしいですね。
そして本書のメイン「いろは歌」ですよ。
マジかよ、おいっ!て内容で、もう驚愕でしかありません。天才なのか変態なのか、あまりのすばらしさにド肝を抜きます。しかも終盤に出てくる奴なんてね… もうなんも言えねぇっす
なお、物語としてもミステリーファンが納得する内容になっていますね。
少しずつ不穏な空気になり、ついにはクローズドサークルに…
特にお気に入りは、犯人の動機ですね。この作品だからこその動機で、すっかり感服しました。
■きっと共感できる書評
現代はAIの時代で、これからもどんどん発展していくでしょう。
チェスや将棋などの戦略ゲームの解析はもちろん、言語生成、画像や映像生成まですべて機械処理で可能です。
それは素晴らしく便利で画期的ではあるのですが、どんなに情報整理が巧みになっても得られないものがある。人生を豊かに生きるには、個々人の経験や体験に勝るものはありません。
いろは歌でも、囲碁でも、将棋でも、なんでも夢中になれることはホントに幸せですね。さて、今日も本を読もう。 -
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2年前に新装版講談社文庫が再発されて、特別短編「匳」が収録されたので購入して再読。
たしかン十年前に講談社文庫で「虚無への供物」に続く第四の奇書という謳い文句で紹介され、手にとって寒い夜に読んだのが初見だった。
始まりからして霧のかかった夜に一人歩きしている大学生のシーンだったんで、あまり期待はしてなかったのだけど埴谷雄高の「死霊」と比較すると、ああなるほどとは感じた。この作家は後に発表する「ゲーム殺人事件」や「ウロボロス」シリーズの方が理解しやすいので、そちらを読んでからチャレンジされるといいかも。
2019年は「匣」の記念限定豪華本を上梓するとかでちょっと楽しみ。 -
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いやー、奇書。奇書だ奇書だとは聞いていたが、やっぱり奇書だった。22歳の青年がこれを書いたって?うそでしょー!?
さしずめ現代に蘇る黒死館殺人事件ってとこか。全編を通じて醸し出されるペダンティックで奇妙な空気は、僕のようなある種の人間を熱狂させる。
次から次へと姿を見せる謎、そして謎解き→その謎解きの否定といった推理小説の王道の繰り返し。もう、心躍らないわけがないって感じ。
ただ惜しむらくは、最後がしりすぼみだったこと。
結局、回収されていない謎がむちゃくちゃ多くないか?
なんかこう「ああ、惜しい。あと1ミリだったのに」感が漂うなあ。
ま、という欠点を補ってあまりある結論までの流れなので、星5つ。しつこいが奇書だ。 -
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この本を読んで、最初『読解力が足りないんじゃないか?』そう思った。
しかしもう、そう思った段階で作者の罠にはまっていたのだけど(笑)。
読んでいくうちに、幾重にもかこまれた迷宮に落ちていった。
そして、真実とかそういうものがあまし意味をなさなくなっていく。
仲間の殺人を信じ、それを暴こうという狂気。しかし、誰もそれに気づかない。
そして、狂ったったまま静かに迷宮の中でゆがんだ真実と、現実をすりかえる。
そして、そのまま音もなく本当に静かに物語は終焉してしまう。
読み終わったとき何となく、これがフィクションで本当によかったと思った。
■追記■
この作品が竹本さんのデビュー作(1978年)であるらしいが、非常に完成度の高い繊細な作品である。しかし残念ながら、この作品以上のものに出会ってはいない。デビュー作以上のものに出逢っていない作家は実は他にも多い。綾辻行人『十角館の殺人』森博嗣『すべてがFになる』・・・。綾辻さんのものは、これ以上のものに出会っていない・・・というより、他作は冒頭の消防法を無視したような館の見取り図で挫折してしまった(笑)。ちなみに実は奥さんのアニメ化された某作品も冒頭の地理学上ありえないような地図で挫折してしまった(駄目すぎ)。森さんの作品については、シリーズほぼ全部を一応読んで、やっぱし最初の作品が一番よかったと思っている。そして逆に『月光ゲーム』でデビューした有栖川有栖氏は、これでよくデビューできたと別の意味でびっくしした。多分、最初にデビュー作を読んでいたら絶対に他の作品を読むことはなかったと思う。しかし、一番驚いたデビュー作といえば清涼院流水『コズミック』である。何に驚いたって・・・もう、そりゃ厚みである。しかし、読んでさらにびっくりしてしまった・・・その内容のあましの薄さに。 -
Posted by ブクログ
五年以上積読だったのを、ようやく読む。
「虚無への失楽」と「死霊」に大きく影響されているなと思いながら読んでいたが、解説を読むと確かに「ドグラ・マグラ」や「黒死舘」からの影響も。
ミステリはとくに、登場人物が魅力的かどうかが重要視されるが、
本作では人物の描きわけができていない、というより、されていない。
(女性の魅力のなさも)
そしてそれがメタミステリゆえに現れる特徴としても機能している。
若書きの作品としては巧妙すぎて卑怯だなーと思う。
登場人物たちは、いや「人形たち」は全員平板な顔つきをした、紙に書かれたままの顔で、語る、語る、語る。
とにかく独特の空間を作り出している。
メタミステリというところだけでなく、文体や描写という点からも、インパクト大。