【感想・ネタバレ】新装版 匣の中の失楽のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年03月21日

これは、ストレートなミステリーではない。
ミステリーとしてではなく、一種の文学として読むべきだ。

溢れる蘊蓄、幻想的な世界観、メタ的趣向にアンチミステリー。
と、日本三大奇書のエッセンスを凝縮したような作品である。

冒頭から不確定性原理を全面に押し出していて、入れ子細工になった構造も美しい。
...続きを読むみを分ける作品だとは思うが、一生に一度は読んでもらいたい。

最後に、
これを読んだ時には「虚無への供物」は未読だったのだが、文庫版解説でまあまあなネタバレを喰らった。初読の人には注意していただきたい。

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Posted by ブクログ 2021年12月25日

素直に読めば奇数章の物語が「現実」で、所謂解決編が欠けている偶数章の物語が、ナイルズの書いた小説になるのだと思う。そう読まなくったって良いのだけれど。で、そんな風に読めば、意外なくらい(アンチでない)ミステリとして、かっちりとまとまっている。発表当時ならともかく、今となってはそうしたところや全然読み...続きを読むやすいところが、むしろ評価ポイントな気がする。あと、ディスカッション・ドラマの体裁には個人的に、「虚無への供物」より「死霊」を連想した。

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Posted by ブクログ 2018年07月05日

2年前に新装版講談社文庫が再発されて、特別短編「匳」が収録されたので購入して再読。
たしかン十年前に講談社文庫で「虚無への供物」に続く第四の奇書という謳い文句で紹介され、手にとって寒い夜に読んだのが初見だった。
始まりからして霧のかかった夜に一人歩きしている大学生のシーンだったんで、あまり期待はして...続きを読むなかったのだけど埴谷雄高の「死霊」と比較すると、ああなるほどとは感じた。この作家は後に発表する「ゲーム殺人事件」や「ウロボロス」シリーズの方が理解しやすいので、そちらを読んでからチャレンジされるといいかも。
2019年は「匣」の記念限定豪華本を上梓するとかでちょっと楽しみ。

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Posted by ブクログ 2017年08月01日

『虚無への供物』の後に読むとほんとに工夫されてるなと思う。別の角度から再表現してるというか。虚無への供物もそうだけれど、酩酊感で作中に気を取られているところに終盤のラッシュがあって、正気に戻って現実世界に立ち返ると、現実にいながらにして作中に巻き込まれてる。哲学の思考実験とか、不確定性原理とかスリッ...続きを読むト実験とか、ラプラスの魔とか、そういう知識を面白がって中学くらいから調べて読んでいた無意味と思われるような趣味が『匣の中の失楽』で普通に語られているのがほんとに嬉しい。四大奇書読破の最後の一冊に相応しかった。

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Posted by ブクログ 2016年11月16日

いやー、奇書。奇書だ奇書だとは聞いていたが、やっぱり奇書だった。22歳の青年がこれを書いたって?うそでしょー!?

さしずめ現代に蘇る黒死館殺人事件ってとこか。全編を通じて醸し出されるペダンティックで奇妙な空気は、僕のようなある種の人間を熱狂させる。
次から次へと姿を見せる謎、そして謎解き→その謎解...続きを読むきの否定といった推理小説の王道の繰り返し。もう、心躍らないわけがないって感じ。

ただ惜しむらくは、最後がしりすぼみだったこと。
結局、回収されていない謎がむちゃくちゃ多くないか?
なんかこう「ああ、惜しい。あと1ミリだったのに」感が漂うなあ。

ま、という欠点を補ってあまりある結論までの流れなので、星5つ。しつこいが奇書だ。

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Posted by ブクログ 2016年07月18日

この本を読んで、最初『読解力が足りないんじゃないか?』そう思った。
しかしもう、そう思った段階で作者の罠にはまっていたのだけど(笑)。

読んでいくうちに、幾重にもかこまれた迷宮に落ちていった。
そして、真実とかそういうものがあまし意味をなさなくなっていく。
仲間の殺人を信じ、それを暴こうという...続きを読む狂気。しかし、誰もそれに気づかない。

そして、狂ったったまま静かに迷宮の中でゆがんだ真実と、現実をすりかえる。
そして、そのまま音もなく本当に静かに物語は終焉してしまう。

読み終わったとき何となく、これがフィクションで本当によかったと思った。

■追記■
この作品が竹本さんのデビュー作(1978年)であるらしいが、非常に完成度の高い繊細な作品である。しかし残念ながら、この作品以上のものに出会ってはいない。デビュー作以上のものに出逢っていない作家は実は他にも多い。綾辻行人『十角館の殺人』森博嗣『すべてがFになる』・・・。綾辻さんのものは、これ以上のものに出会っていない・・・というより、他作は冒頭の消防法を無視したような館の見取り図で挫折してしまった(笑)。ちなみに実は奥さんのアニメ化された某作品も冒頭の地理学上ありえないような地図で挫折してしまった(駄目すぎ)。森さんの作品については、シリーズほぼ全部を一応読んで、やっぱし最初の作品が一番よかったと思っている。そして逆に『月光ゲーム』でデビューした有栖川有栖氏は、これでよくデビューできたと別の意味でびっくしした。多分、最初にデビュー作を読んでいたら絶対に他の作品を読むことはなかったと思う。しかし、一番驚いたデビュー作といえば清涼院流水『コズミック』である。何に驚いたって・・・もう、そりゃ厚みである。しかし、読んでさらにびっくりしてしまった・・・その内容のあましの薄さに。

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Posted by ブクログ 2016年07月13日

五年以上積読だったのを、ようやく読む。
「虚無への失楽」と「死霊」に大きく影響されているなと思いながら読んでいたが、解説を読むと確かに「ドグラ・マグラ」や「黒死舘」からの影響も。

ミステリはとくに、登場人物が魅力的かどうかが重要視されるが、
本作では人物の描きわけができていない、というより、...続きを読むされていない。
(女性の魅力のなさも)
そしてそれがメタミステリゆえに現れる特徴としても機能している。
若書きの作品としては巧妙すぎて卑怯だなーと思う。
登場人物たちは、いや「人形たち」は全員平板な顔つきをした、紙に書かれたままの顔で、語る、語る、語る。

とにかく独特の空間を作り出している。

メタミステリというところだけでなく、文体や描写という点からも、インパクト大。

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Posted by ブクログ 2016年07月06日

前に双葉文庫版を読んでいるから、一応再読に入るのかしら?やはり凄い作品だ!一体どちらが現実で、どちらが作中作なのか全くワカラナイ…この終わり方では彼ら自体もしかしたら存在などしていなかったのでは?・・と、思ったり思わなかったり。とにかく頭の中がパニックになること必須。これを機にたくさんの人に読まれま...続きを読むすように。ちと高いけどw

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Posted by ブクログ 2016年01月31日

ページの多い本だったけど、集中して面白く読めた。
勿論、古い作品で謎な部分も多いので、全てを読みつくしたのではないことは
わかっているが、それでもやはり面白い。

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Posted by ブクログ 2024年04月10日

日本における第四の奇書と言われているこの小説は、1978年に発売された著者のデビュー作です。
約800ページと、かなりの長編です。
専門的な話が出てきますが、基本的にはテンポよく読めました。
どんでん返しの要素もあり、本格ミステリでしたが、奇書と言われるだけのことはありました。

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Posted by ブクログ 2023年05月30日

 こりゃ参りました。奇数章と偶数章で小説内の現実と作中作である虚構が入れ替わり、しかもどちらが現実かも判然としないという構成からして度肝を抜かれますが、自然科学、人文科学からカルト論までジャンルを超えて繰り広げられる目くるめく知的対話に圧倒されっぱなしでした。

 推理小説マニアの大学生・曳間(ひく...続きを読むま)が、密室で殺害された。しかも仲間が書いている小説の予言通りに。現実と虚構の狭間に出現する5つの≪さかさまの密室≫とは?

 『黒死館殺人事件』『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』の系譜に連なる、正に「第4の奇書」と呼ぶに相応しい大作です。しかも著者が22歳から23歳の若さで書き上げたということにも驚嘆。
 奇書の異名を持つため、読む側も相当身構えて臨むのですが、意外にリーダビリティーは高く、「読みにくい」という感じはしませんでしたね。寧ろ小説の構造とその追求しようとするものが難度の高い知識を求めたんだと思います。
 そして、これほど突出した作品が書かれた以上、「第5の奇書」はもはや生じ得ないのではないかとさえ思わされます。そのクオリティーは異次元レベルで、正直とても理解が追いつきません。
 が、作品に没頭しきれない自分もいました。それは、ストーリーが精緻かつ複雑ゆえに、登場人物がプロットに奉仕する駒のように感じられ、語り手が定まっていないことも相俟って小説に入り込めなかったからだと思います。実際、似たような名前の人物たちの特徴を捉えきれず難渋しました。ただ、これは本格ミステリーやアンチミステリーにはつきものなのであれば、それはもはや嗜好の問題であって、もっと泥くさい人間模様を描いてほしいという向きは他の作品を当たってくださいということになるんでしょうね。ともあれ本作によって他では体験できない読書ができることは確かです。

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Posted by ブクログ 2023年03月05日

どっちが現実でどっちが虚構なのか。
現実と劇中劇がぱたぱたと入れ替わる複雑な構造だけど、ちゃんと「今、どちらなのか。どちらの事件の話をしているのか」を明確にしてくれる文章だから余計な混乱しなくて意外とノンストレス。
最終的に「現実」とされたサイドは本当に現実なのか。実は書かれてないだけで「……という...続きを読む結末にしてみたんだけどどうかな」と語り出す「真・現実パート」があるんじゃないか……みたいな不思議な読後感でした。

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Posted by ブクログ 2022年04月08日

第4の奇書と呼ばれる本作。
いつものように内容を全く知らずに読み始めました。
解説には「ミステリーとアンチミステリーを両方兼ね備える作品」とあります。

真剣に推理を巡らせながら犯人を当てよう!と意気込んで読むのではなく、どちらかと言うと、謎を疑問に思いながら頭の中に記憶しておき、流れに身を任せ騙さ...続きを読むれながら読んだ方が楽しめる作品です。

ドグラマグラ・黒死館殺人事件・虚無への供物の三大奇書の中で、特に『虚無への供物』への愛が強い作品だと感じます。
オマージュ作品なのかな。

推理の中で哲学的な引用が多く組み込まれているのですが、精神世界(あるいは夢)の場面ではドグラマグラを連想させますし、羽仁の家は館と呼ばれてもおかしくない豪邸であり、黒死館殺人事件を連想させます。
溜まり場の『黄色い部屋』には、夥しい数の人形が飾られており、黒死館のテレーズ人形を彷彿とさせます。
住む土地の名称に色が使われていたり、登場人物達が次々と推理を披露していく展開は、まさに虚無への供物を読んでいる時の感覚が思い出されます。

この作品ならではの魅力はどこなのかと考えると、巧みな言葉のトリックと「さかさま」の密室。それともう一つあるのですが知らない方が楽しめるので、書くのやめときます^ ^

呪術や密教の図や重力方程式、物理の二重スリット実験、エクゴニンの構造式など、とにかく推理の中に蘊蓄が沢山出てきて、読んでる方はもう大混乱で、それが狙いか!と、けむに巻かれないよう必死に追いかけます。
あ、メモ必須です。

一冊の本でたくさんの本を読んだような感覚。
ここまで細かく多方面に推理を巡らせる本は初めてです。
作者の知識の豊富さに感動します。
勿体ぶらず、中途半端でも惜しげなく推理を披露するので、脳内は大混乱ですがw

次は「第5の寄書」と呼ばれる
山口雅也『奇遇』を読みたい(ღ♡‿♡ღ)
『生きる屍の死』が私の中で5本の指に入る程大好きなミステリーで、かなり面白かったので期待してしまう♡

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Posted by ブクログ 2021年06月04日

再読。最初に読んだのは高校生の頃だったのでそれはもうこの小説に酔っていた。数学、物理、量子論、虚数、トポロジーに、心理学、精神病理学、占術、魔術などなどなどのめくるめく展覧会。この小説を読むだけでこの世界というものの一端を知った気になれた学生時代。乾くるみさんが解説というか「蛇足のようなもの」で書か...続きを読むれていたとおり、この作品は高校生ぐらいの頃に読むのが一番楽しい読書体験となるだろう。

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Posted by ブクログ 2017年05月10日

噂に聞いてたとおり、なにが現実でなにが作中作なのか……酩酊感がすごい。
この人物はどっちで死んだんだっけ?などもごちゃごちゃになってくるので読むときは勢いをつけて一気に読みきってしまったほうがいいと思う。
私は、だらだらとしてしまったので結構戻って確認したりしながらになってしまった。

結局最後はこ...続きを読むれが真実なのかな、というようなのはあるもののもうここまで来るとなにがなんだかわからないし推理を信用できないというのが正直なところ。

構造はややこしいものの、文章自体は読みやすいのでこれを若くして書いたというのはほんと物凄いことだなぁと。

何年後かでも一気に読めそうな時がきたらまた読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2017年02月09日

第4の奇書ともいわれる本書では、章をまたぐ度に「ん?今まで何の話を読んでたんだろ?」と訳がわからなくなる。そして、松山俊太郎氏の解説を読むと「あぁ、なるほど、うーん、でもまだよくわからん」となるが。。これはちょっと落ち着いて再読せねばなるまい。

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Posted by ブクログ 2017年02月04日

本編は講談社ノベルス版で読んでいたけど、小説はやっぱり文庫版サイズで統一したいという思いと、ノベルス版になかったサイドストーリー目当てで。サイドストーリーは本編の前日譚にあたるのかな。ナイルズとホランド、そして黒魔術師曳間の、現実と現実の狭間のお話。

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Posted by ブクログ 2017年01月28日

日本四番目の奇書?はたして。
ミステリーマニアの仲間たちのなかで、奇妙な連続殺人が起こる。それは仲間の一人が書いた小説と酷似していて…。
上記の情報は前もってわかっていて、それだけに本格推理物として読もうとすることはどうしてもできず。内容もミステリの部分よりも衒学的で奇をてらうような語りが心をつかん...続きを読むで離さない。序盤の「十戒」を自分達でたてる辺りで狂気を感じただ傍観するように読み進める。
確か書店のフェアで見つけて、ポップを書いた人は書庫に籠って時間を忘れてよんでしまったみたいなエピソードがあって、それはすごくわかる。ある種の人間をひきつけてやまない妖しさがあるというか。だから、人によって評価はわかれるだろう。
ミステリとして読むには時間をかけすぎてしまったなぁ。最後までキャラを覚えられなかったよ。影山くんはデュフフとか笑ってそうだなぁ可愛いなぁくらいのキャラがたってたけど、羽仁甲斐布瀬根戸ホランドはうぅーん。この辺は作者の意図もあるのかしら。ほかの人の感想を読んでみる。

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Posted by ブクログ 2016年01月30日

双葉文庫版を10年以上前に読んだきりですが、今回こちらに「匳の中の失楽」も併せて収録されるということで購入。久しぶりの再読になりました。
この作家さんにしか出せない空気感みたいなのが濃厚に漂ってて良いですよね。あの章が変わる毎に襲い来る酩酊感を楽しみながら、今回も作品の中を漂ってきました。

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Posted by ブクログ 2020年07月18日

とても難しくて私にはよくわからなかった。
現実と非現実世界が複雑で
頭の中が整理できないまま終わった感じ。
心理戦のラストも納得いかない。

しかし昔の小説は密室がお好きね。
そういえば昔の2時間サスペンスドラマも密室が多かった気がするな。

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