水木しげるのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
案内役の猫たちが、とぼけたいい味を出している。熊楠はロンドン時代から猫を飼っていたから、まさに適役。(猫と言えば、漱石を連想させるが、熊楠とは大学予備門で同級だったし、同じ時代のロンドンも経験していた)。
破天荒なその生涯。その計り知れない学識。それに輪をかける(あるいは水をさす)ように、下品で猥雑なエピソード、そして数々の奇行。身のまわりも衛生的とは言い難かった(はっきり言うと、汚かった)。水木しげるの絵のタッチは、なぜかしらこれらによく合う。
ここやあそこは話を盛ったかな。そう思って、途中から神坂次郎『縛られた巨人 南方熊楠の生涯』(新潮文庫)を併読するが、そこにもはっきりそう書かれてある。
後年は悲しい。研究所設立の資金集めの苦境、弟・常楠との絶縁、愛息・熊弥の精神病……、昭和天皇への御進講が唯一の救いとなる。亡くなるのは昭和16年12月、日米開戦の直後だった。
熊楠を描き切るには、相当なエネルギーが要ったはず。描いた水木しげるはこの時70歳。その力強い筆致に最後まで圧倒されまくる。 -
Posted by ブクログ
タイトルでもある「白い旗」の主人公は遠戚にあたる叔父である。彼は水木氏の兄の友人であったらしい。
水木氏の漫画に描かれているという話は聴いていたが、お正月に父の積読からそれを発見。しかも、彼が戦地から送った葉書のレプリカを父は作成し、栞として挟んでいた。
これには、一般的には名の知られていない英雄が漫画化されている。
戦争は確かに起こり、日本は負けた。
その表裏にあるリアルなドラマ。
奪われた時間。捻じ曲がる人生。
この事実をきちんと知ることを次世代に繋げたい。
幼い頃から娘には「ママンの課外授業」と題して感じて考える機会を与えた。
流行らないジャンルかもしれないが、どうしても大事にしたい一冊。
-
Posted by ブクログ
朝ドラ「虎に翼」の年に読んでおかないとと思って買ったままだった本
著者の水木しげるが「90%は本当」と言う内容は悲惨という言葉では言い表せないほどの戦争の有り様と理不尽さであった
また変にエモーショナルなわけではなく話は淡々と進んでいく。淡々と銃弾で身体を貫かれ、腕がもげ、脚が吹っ飛ぶ描写がなされている
また戦地であるニューブリテン島バイエンでの過酷な環境。ドラマティックではないからこそ突きつけられる内容が胸にずんと低く落ちてきた
当然のことだけれどこんなことが二度と起こってはならないし怒らないように一人の国民として本邦の政治家の動きを注意深く監視していかないといけないと強く思った -
Posted by ブクログ
ネタバレ特に戦中の壮絶な体験記が凄まじかった。凄まじい話なのに、緊張感がないようなあるような描き方で読みやすいと思ってしまった。
水木さんのマイペースさもすごかった。寝過ごして点呼には遅れ、大食いのためおかわりをもらいたくて早食いを極め、上司が弱気な発言をすれば「生きて帰るという強い意志が大事」と説く。
手を爆撃で失った後も、1日目は痛くて寝れなかったが、2日目から3日間熟睡した、ウジがわいていたものの、とても元気だった、とある。とても元気だった……ってどういうこと……?寝る力が治したと言う。
意志の力、という話の中で、生きて帰れると思ってるのは水木だけ、という話が特に印象深い。思い込もうとしているのではなく、水木さんだけ本当に生きて帰れるという前提で、過酷すぎる戦禍を生きていたみたいだ。
「私は、一番最後の不寝番で初めて、朝日の昇るのを見て、その美しさに驚き、敵中であることを完全に忘れていた。即ち『美』に見とれていたわけだ」p,70
ラーゲリから来た遺書や、夜と霧を思い出す。壮絶な状況で希望や生きようという意志の強さ、正気を持ち続けられる強さを支えるものはなんだったのだろう。
とにかくよく寝てよく食べ、理不尽なことからは逃げてきた人なのだな…と思う。
それがいちばんだいじ
言い方が正しいか分からないけれど、凄みのある、芯からの"のんきさ"は偉大だと思う。憧れる。そうありたい。
「人間なんていつ死ぬか分からんもんだ。そう思うと、毎日の『小さな幸福』といったようなものは、案外大切なものなんだ」p,191
水木さんの言として読むと、分かりきったことが結晶のように輝く。
「勇ましさのためにどんな目に遭うのか」
戦争反対 -
Posted by ブクログ
改めて水木しげる氏の漫画と共に昭和史を振り返る。戦争を経験した水木先生の視点は鋭い。わかっている事象ばかりだが、妙に考えさせられる。
気になった一文
『人生の夕日』これがまた意外にいいもんだ。
若いときは成功しようとかなんとか欲があるが、すべてが過ぎ去って年をとり、自分が決まって欲がらなくなる。
今まで気づかなかったいろいろなものが見えてくるのだよ。人間とか、人生とか、いやさまざまなことが、今までにない姿で見えてくるのだよ。
若い時のようにくだらぬ邪心が消えているというのか、正に人生は六十からだよ。
昔と違い、高齢化が進み、こんな境地に達するのは、65歳か70歳でしょうか。 -
Posted by ブクログ
水木サンの周りには個性の強い人が多い。
それは、水木サンの個性が
強いからこそ引き寄せてしまうのか、
それとも、出会う人一人一人の個性を
水木サンが見つけるのがうまいからなのか、
または、生きるか死ぬかの戦争で
人間としての本能がむき出しになったからこその
自我の強烈な表れを水木サンが目撃したからなのか、、、
いずれにせよ、水木サンと人々の邂逅が
この本にはまとめられている。
出会いがあるから、
人は笑ったり泣いたり、悩んだり
成長できたりする。
限りある人生の中で、たくさんの出会いで
まだ見ぬ感情を、思いを引き出していきたい。
人間関係に悩んでいても、
不思議とそう思える作品。
悩める自分に、ビビビビ ビーンと
ビンタをくらわされたような愉快な衝撃だった。
(再読)
表示されていない作品があります
セーフサーチが「中・強」になっているため、一部の作品が表示されていません。お探しの作品がない場合は、セーフサーチをOFFに変更してください。