水木しげるのレビュー一覧
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境港の水木しげる記念館を訪問し、せっかくだからということで読んでみた。記念館で水木しげるの人生については一通り見ていたが、それでも幼い頃からの水木ファンとしては、長年の疑問が解けるうれしい本だった。
まず何より、「ゲゲゲの鬼太郎」のルーツについて。戦前の紙芝居『ハカバキタロー』が元になったというのは何かで読んだことがあったが、どこまでそれを踏襲していて、どこからが水木御大のオリジナルなのかは定かでなかった。
この本によれば、そもそも紙芝居というものは印刷をしない原本限り、そのため御大も「ハカバキタロー」を直接見たことはなく、話に聞いただけ。それも怪談の「飴屋の幽霊」のようなよくある話だったと -
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現場の兵隊達は米国と戦う意義、気力を失っている。しかし彼らは戦場にとどまらないといけない。そして追い込まれた結果、集団自害を選択した。その行動原理の大元を特定するのは困難である。選択肢を奪われた軍隊がせめてもの誇りを守るため切腹見たく死んで行ったか。また言語化するのが困難な同調圧力からであろうか?
こんなにも死が身近にあるのにクーデターが起こらないのは大日本帝国の病理といったところでもあろう。
本書を素に我々は生死の表裏を身にしめて実感することになる。これは単なる大衆漫画を越えた一種の哲学書であると言えるのではないか?
以上リハビリの足しになればと書いた駄文である。 -
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徴兵されて戦場に行くとなれば、死というリスクが目の前にはっきりと現れてくる。戦争などなく、病気になる可能性はありながらも、多くの人は70年、80年を超えて長寿を全うできる(現在なら100歳を超えても元気な人は沢山いる)。戦争という暗い空気が世の中を支配している。そこに自分が20歳前後の若者で真っ先に戦争に連れて行かれる可能性がある年頃なら、戦場という大きな恐怖、国のために自らの命を捧げることへの意義、自分がこの世に生まれてきた意味など、凡ゆる考えが頭の中を巡っただろう。「ゲゲゲの鬼太郎」の作者として誰もが知る水木しげる氏も、この時期、その様な苦悩の中で生きていた。同氏の代表作としては、前述の妖
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ネタバレ冒頭から終わりまで繰り返し流れる女郎の歌。「私はなんでこのようなつらいつとめをせにゃならぬ。これもぜひない親のため」「国のため」。戦死者を"尊い"犠牲になったと言う人もいるけど、尊いのは失われた命であって、人の死を、命を犠牲にしたことを美化してはいけない。
舞台は昭和18年末のニューブリテン島。著者自身がモデルであろう、丸山の所属する支隊はココボからバイエンに上陸する。支隊のうち第二小隊は各分隊ごと雨の中で陣地構築をはじめるが、椰子の木を運んでいた小川がデング熱で死ぬ、正月用のブタを取りに行くため船に乗った境田がワニに喰われて死ぬ、魚取りで口に咥えた魚を喉に詰まらせて中山 -
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鳥取、境港市にある水木しげる記念館を訪れた際に購入。
昭和初期の著者の少年時代をコミックエッセイにしたもの。
水木さんが妖怪に造詣が深くなるきっかけとなった「のんのんばあ」との暮らし。初恋の女の子との死別や、友達が身売りされるのに助けてあげられないことへの無念、隣町の子どもたちとの戦争?など、現代ではなかなか考えにくいさまざまな経験が水木さんを作っていったことがわかる。
身近な人々との心温まる交流の中で成長することで、水木さんが形作られていったのだなあと思う。
また、ちょいちょい妖怪が出てきて水木少年とやり取りを交わし、現実なのか?空想なのか?分からなくなってしまう場面もある。
また、「妖怪が -
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案内役の猫たちが、とぼけたいい味を出している。熊楠はロンドン時代から猫を飼っていたから、まさに適役。(猫と言えば、漱石を連想させるが、熊楠とは大学予備門で同級だったし、同じ時代のロンドンも経験していた)。
破天荒なその生涯。その計り知れない学識。それに輪をかける(あるいは水をさす)ように、下品で猥雑なエピソード、そして数々の奇行。身のまわりも衛生的とは言い難かった(はっきり言うと、汚かった)。水木しげるの絵のタッチは、なぜかしらこれらによく合う。
ここやあそこは話を盛ったかな。そう思って、途中から神坂次郎『縛られた巨人 南方熊楠の生涯』(新潮文庫)を併読するが、そこにもはっきりそう書かれてある -
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タイトルでもある「白い旗」の主人公は遠戚にあたる叔父である。彼は水木氏の兄の友人であったらしい。
水木氏の漫画に描かれているという話は聴いていたが、お正月に父の積読からそれを発見。しかも、彼が戦地から送った葉書のレプリカを父は作成し、栞として挟んでいた。
これには、一般的には名の知られていない英雄が漫画化されている。
戦争は確かに起こり、日本は負けた。
その表裏にあるリアルなドラマ。
奪われた時間。捻じ曲がる人生。
この事実をきちんと知ることを次世代に繋げたい。
幼い頃から娘には「ママンの課外授業」と題して感じて考える機会を与えた。
流行らないジャンルかもしれないが、どうしても大事にしたい一冊
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