あらすじ
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今こそ戦争を考える。
太平洋戦争に従軍した漫画家・水木しげるが
実体験を元に描いた未来へ残すべき傑作戦記漫画
大ボリューム20ページ
歴史的発見『総員玉砕せよ!』構想ノートを巻末特別収録
太平洋戦争末期の南方戦線ニューブリテン島バイエン。
米軍の猛攻で圧倒的劣勢の中、日本軍将校は玉砕を決断する。兵士500人の運命は?
著者自らの実体験を元に戦争の恐ろしさ、無意味さ、悲惨さを描いた傑作戦記漫画。
没後に発見された構想ノートを特別収録。
作品に込められた魂の決意が心に響く新装完全版!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
基本的にマンガは読書記録に加えないのだけれど、これは水木さんにしか描けない戦記もの、NHKでドラマ化もされた名作の新装完全版ということで。新たに2021年に発見された構想ノートの一部が巻末に収録されていて、解説も含めてとても興味深い内容。同ノートのメモからも、戦争の惨禍を風化させないという著者の並々ならない決意が伝わってきました。お馴染みの、のほほんとしたタッチと、「90%が事実」という悲惨な物語のギャップが凄くて圧倒されます。特に戦場の描写がリアル。解説にある、鬼太郎が戦争体験から生まれたキャラクターという捉え方も腑に落ちました。
Posted by ブクログ
不条理という言葉を調べると「必然的な根拠が不在であり、すべては偶然に基づくということ」とある。戦場とは何時も不条理の連続であり、そこにまともな理由や根拠などは存在しない。一年兵は毎日の様に先任兵に殴られる日々。食糧もなく飲み水も無い中で戦うのではなく生き延びるだけの兵士たち。名誉の為に、死に急ぐ上官に無理やり連れて行かれる魂。敵の兵力・物量に対して圧倒的に劣勢な状況に置かれても引く事を許されず、玉砕後に生き延びた兵に対しては当たり前の様に、再び下される死の命令。戦闘で死ねるのはまだマシな方かもしれない。危険を伴う陣地づくり、何も見つからない食糧集め、熱帯特有の流行り病に、極度の飢え。兵士は常に死と隣り合わせで、1人や2人が命の火を消したところで、それが日常と、誰もが徐々に無頓着になっていく人間の生死への感情。
漫画家の水木しげる氏と言えば、妖怪漫画の「ゲゲゲの鬼太郎」が有名ではあるが、ご存知の通り、先の大戦に於いて、南方戦線に参加し腕を失っている。その氏の書き記した戦記にはお馴染みのタッチで描かれる様々な人間臭い人間が登場する。誰しも兵士である前に人であり、恐怖も空腹も恨みも欲望も抱える。それら感情全てが戦場という、現代の日本からは想像もできない湿気と血の匂いに満ちた空間を渦巻いている。嫌な上官が死ねば「ザマァ見やがれ」と思う事も普通の精神状態の中で湧いてくる。
普段私自身は漫画をほぼ読まないので、書籍の文字からその場の風景や人間達を想像の中に創り上げていく。だが水木しげる氏の見せたかった世界は漫画でなければ凡そ戦争を知らない世代には伝わりきらない。本書が漫画であるのはある意味必然だ。鬱蒼と繁るジメジメしたジャングルに、手に届くほどの位置を舞う敵機。不意に腹を抉る敵の弾丸、吹き飛ぶ身体の一部に苦悩の表情。それらは我々の想像の遥か先にあり、正に死の直前に位置して目にしたものでしか正確に描けないのだと感じた。確かに戦争物の映画も迫力のある映像と音の力で凄惨さは伝わってくるが、漫画に登場する暗い背景に文字で記される歌声などは、よりリアルに人間の感情、そして初めに書いた様な不条理を、最も的確に鋭く読者の心に響いてくるのではないかと思う。
読み終わった後に、何かドロドロとした暗い汚水に足を踏み入れた様な、とても気持ちが良いとは言えない感情が全身を包む。それは筆者が戦場で体験した気持ち悪さとは比では無いだろうが、少しでもそれに近い感覚を読者に与えたかったのではないかと思う。そうした意味で、未来に繋いでいかなければならない一冊になる事も納得いく。
Posted by ブクログ
冒頭から終わりまで繰り返し流れる女郎の歌。「私はなんでこのようなつらいつとめをせにゃならぬ。これもぜひない親のため」「国のため」。戦死者を"尊い"犠牲になったと言う人もいるけど、尊いのは失われた命であって、人の死を、命を犠牲にしたことを美化してはいけない。
舞台は昭和18年末のニューブリテン島。著者自身がモデルであろう、丸山の所属する支隊はココボからバイエンに上陸する。支隊のうち第二小隊は各分隊ごと雨の中で陣地構築をはじめるが、椰子の木を運んでいた小川がデング熱で死ぬ、正月用のブタを取りに行くため船に乗った境田がワニに喰われて死ぬ、魚取りで口に咥えた魚を喉に詰まらせて中山が死ぬ。死、死、死。あっさりと人が死んでいく。そして事あるごとに上官は「ビビビビビン」と兵にビンタをくらわせる。「初年兵とたたみはたたけばたたくほどよくなる」と。
……おかしみのある場面を差し込みながら"そこにいる"一兵士の目線での戦地での暮らしが描かれるが、命の軽さに呆然とする。あとがきに「軍隊で兵隊と靴下は消耗品」「将校、下士官、馬、兵隊といわれる順位の軍隊で兵隊というのは"人間"ではなく馬以下の生物と思われていた」とある通りである。
年が明け、敵が上陸しワランゴエ河口を占領。これに対し支隊長(田所少佐)は戦車への肉攻、橋頭堡へ斬込隊での夜襲を命令する。丸山も斬込隊を命じられるが水を汲みに行く間に自身の属する第一分隊が全滅。第三分隊に合流するが、敵に包囲された彼らは玉砕を命じられる。酒が配られ、兵士たちは女郎の歌を歌い、踊る。「親のため」「国のため」。誰が喜んで死ねるだろうか、そう自分に言い聞かせるしかない。
バイエン支隊の玉砕の報告を受けた後方の司令部は大本営及び方面軍へ発表する。発表の後に生き残りの存在が発覚するが、それは許されないことだった。
ニューブリテン島の自然を背景に載せられた『美しき天然』の一節。「生きとしいけるものが嬉々として生きるのは神の意志だろう」「しかしここに生きてはならぬ人間がいた」。ここで軍医は「虫けらでもなんでも生きとし生けるものが生きるのは宇宙の意志です」「人為的にそれをさえぎるのは悪です」「軍隊というものがそもそも人類にとって最も病的な存在なのです」と言い、司令部に命乞いをするが聞き入れてもらえず自決する。…この軍医の言葉やその前の支隊長に玉砕を命じられた時の中隊長の言葉には、戦争を経験した著者の怒りが滲んでいる。
生き残りは再度突撃を命じられ聖ジョージ岬で"玉砕"する。聖ジョージはキリスト教の聖人の名前だが、最後の見出しは「みなごろしの岬」。兵を殺したのは敵(連合国軍)だがその状況に追い込んだのは司令部である、日本である。
NHKアーカイブスにあった「生き延びてはならなかった最前線部隊 ~ニューブリテン島 ズンゲン支隊~」を見たが、南方では蛆がわきやすく死体があっという間に白骨化するという。最後のページに描かれた死体、そして白骨。史実で生き残りは玉砕の前に終戦を迎えているが、それで戦争の悲惨さが薄まるわけでは、決してない。
Posted by ブクログ
作者曰く90%実話
精緻な背景画にデフォルメされた人間
従軍慰安婦から始まり、初年兵への理不尽な暴力、上官の描写、、、全てがリアリティーを持っていて、ステレオタイプの戦争否定では伝わらない、戦争の悲惨さが伝わる
傑作!
描かれていないのは、米軍側だけ
素晴らしい、そして恐ろしい
実体験を淡々と綴られているようで、実は本質に迫った時の表現が一番おそろしい。そう思わせてくれる漫画でした。
Posted by ブクログ
以前から知っている作品ではあったけれど、今年の夏こそ読むと決めて購入。
水木しげる先生の緻密な絵から、戦争の無情さを感じました。ラストにかけての情景は目を逸らしたくなるほど。しかしこれが戦争であるのだと見せつけてくるようで。目を逸らしちゃダメだと強く思いました。
漫画なので読みやすい。その分色んな情景が絵でダイレクトに伝わりやすい。
Posted by ブクログ
現場の兵隊達は米国と戦う意義、気力を失っている。しかし彼らは戦場にとどまらないといけない。そして追い込まれた結果、集団自害を選択した。その行動原理の大元を特定するのは困難である。選択肢を奪われた軍隊がせめてもの誇りを守るため切腹見たく死んで行ったか。また言語化するのが困難な同調圧力からであろうか?
こんなにも死が身近にあるのにクーデターが起こらないのは大日本帝国の病理といったところでもあろう。
本書を素に我々は生死の表裏を身にしめて実感することになる。これは単なる大衆漫画を越えた一種の哲学書であると言えるのではないか?
以上リハビリの足しになればと書いた駄文である。
Posted by ブクログ
最前線の兵士の目を通して、前の戦争の不条理さが伝わってくる。玉砕と伝えたからには、生き残る兵士がいてはならない、という理屈は、兵士一人一人の命をあまりにも軽視しすぎ。手段が目的となってしまった悲惨な状況に胸が痛む。
Posted by ブクログ
淡々と綴られる戦地での日常と、戦場ではなく日常の中で失われる命の描写がとてもリアル。
本作にはごく普通の若者たちの非業な死がたくさん描かれており、平和が当たり前の現代では考えられない命の軽さに、戦争の異常性を改めて思い知らされた。
戦争は虚しく、悲しい。
戦争を知らない世代だからこそ、読まないといけない一切だと思いました。
Posted by ブクログ
朝ドラ「虎に翼」の年に読んでおかないとと思って買ったままだった本
著者の水木しげるが「90%は本当」と言う内容は悲惨という言葉では言い表せないほどの戦争の有り様と理不尽さであった
また変にエモーショナルなわけではなく話は淡々と進んでいく。淡々と銃弾で身体を貫かれ、腕がもげ、脚が吹っ飛ぶ描写がなされている
また戦地であるニューブリテン島バイエンでの過酷な環境。ドラマティックではないからこそ突きつけられる内容が胸にずんと低く落ちてきた
当然のことだけれどこんなことが二度と起こってはならないし怒らないように一人の国民として本邦の政治家の動きを注意深く監視していかないといけないと強く思った
Posted by ブクログ
水木しげるが1973年に発表した長編漫画。著者が従軍した南方戦線で下された玉砕命令の顛末を描いた戦記作品。戦闘が主ではなく、一般兵たちの生活がユーモラスに描かれており、より身近に血の通った人間として感じられます。一方で、馬よりも下に見られていた兵士の死の描かれ方も他の作品とは異なると感じました。実体験がなければ、この描き方は出来なかっただろうと思います。玉砕に向けての上官の狂気を感じる命令や行動は恐ろしく、ラストのシーンも含め戦争への虚しさが残ります。「90パーセントは事実です」ということがもっとも怖い。
Posted by ブクログ
「玉砕」なんて言葉がフツーに、いや、命令としてまかり通るなんて日本くらいなもんだろうなと思う。現代にも変わらず続く愚行の精神。この国に無くて今後も望めそうに無いものが、基本的人権の教育と、過去から学ぶ姿勢。
Posted by ブクログ
戦争は地獄だということをこれ程までに訴えかけてくれる漫画は当時としては珍しかったんだろうな。
水木しげるのなんとも言えない人間味のあるキャラクター達がいとも容易く、あっけなく、強制的に死んでいくことのインパクトが凄い。
最後の聖ジョージ岬での全員特攻は創作らしいけど、あのラストによって戦時中の異常さがくっきりと浮き彫りになった。
わからないけど、なにかに祈らずにはいられない壮絶なラストだった。
Posted by ブクログ
水木しげるの実体験がベースとなった戦争漫画。白黒の漫画ですが、南国特有の湿度が伝わってくるようでした。
序盤は軍隊の理不尽さはあるものの、まだ平和。終わりに向けての悲惨さが尚更強調されます。従軍している兵隊も、指揮官も皆、普通の人間。玉砕を判断した若い指揮官に、上に立つ資質があったのか疑問に思うけれど、特定の思想に囚われた人はどこにでもいます。昔だから起こったことではなく、同じような状況があったとしたら、現代でも起こり得るのでは、と暗い気持ちになりました。
関係ない事のように思っても、実際に我が国で昔起こったこと。当然ですが、戦争なんて絶対にしてはいけないよね、と改めて感じさせる作品でした。
Posted by ブクログ
現代の漫画とは違うリズム。単調なコマ割りと、短いテンポによって、異常な状況の俗世的な兵士の様相が描かれている。
なんとも言えない蒸し暑い感覚。根底にあるのは圧倒的虚無感とそれに対する怒り
後半に向けての加速と、絵の変化は生々しすぎて少し休憩しながら読み進めた。
Posted by ブクログ
“ゲゲゲの鬼太郎”の作者、水木しげるによる90パーセント事実の戦記漫画。
前線でありながら、どこか牧歌的なノンビリした展開から、玉砕命令が出てから次々と死んでゆく仲間たち、それでも死にきれない者たちが淡々と描かれている。そして迎えるラスト…
あとがきの「ぼくは戦記物をかくとわけのわからない怒りがこみ上げてきてしかたない」が戦争に対する全てを物語っていると感じた。
Posted by ブクログ
『ゲゲゲの鬼太郎』のような妖怪漫画で知られる水木しげるによる戦争漫画。本人も実際に参戦していた戦争で、9割史実を元にしている。現代も理不尽はあるが、戦争はより残酷。精神論は今でも蔓延っているため、こうならないよう自戒しながら読んだ。
Posted by ブクログ
戦争という極限状態が「普通」になっていく状況で、組織全体が正気を失い、破滅へと進んでいく様子がありありと描かれている。でもそこにいる人間は人間性を失っていない。これが戦争の恐ろしさなんだろうな。
Posted by ブクログ
命なんて虫けらのようにあっと言う間もなく消えていなくなってく戦友たち 戦争の無惨さ無意味さ、形容し難い身に余る思いが、今を生きる私には理解しきることは出来ないけれど、目に入る絵と言葉は痛みと空虚でしかなかった
Posted by ブクログ
水木しげる『総員玉砕せよ! 新装完全版』講談社文庫。
没後に発見された『総員玉砕せよ!』構想ノートを巻末特別収録という新装完全版。
太平洋戦争に従軍した水木しげるの実体験に基づく戦争漫画の傑作。
この平和なはずの現代、ロシアがウクライナに侵攻を続けている。侵攻という生やさしいものではなく、非人道的な兵器まで使い、無差別攻撃を行っており、もはやジェノサイドと言っても過言ではない。世界各国はロシアを批難し、ウクライナを間接的に支援するものの核兵器による報復を恐れてなのか、ロシアを直線的に攻撃することはしない。イラクやアフガニスタンを攻撃したアメリカですらロシアには手出しをしない。誰もが戦争の悲惨さを知るのにロシアの凶行を止めることが出来ず、ウクライナはまるで蛇の生殺しという状況である。何とかロシアを止める手立ては無いものか……
さて、本書。嫌になるくらいの戦争の悲惨さが描かれる。前線で闘う兵士たちの陽気な描写と戦争の悲惨さ、残酷さとが相まって、虚しさを覚える。
太平洋戦争末期の南方戦線ニューブリテン島バイエンで、米軍の猛攻による圧倒的な劣勢の中、日本軍将校が玉砕を決意する。まるで消耗品或いは虫けらの如く、死を命ぜられる兵士たちの無念たるや。
定価858円
★★★★
Posted by ブクログ
映画「ゲゲゲの謎」から
映画にもこの漫画のエピソードが、少し出てきます。
水木しげるさんの体験をもとに描かれた漫画。
最初に開いた時に、やけに登場人物の紹介が丁寧だなあ、たくさんいるなあと思いながら眺めていました。覚えきれ無さそうだし、読みながらおいおい覚えられるかな、と読み進める事にしました。覚える前に、戦争によって次々とかえらぬ人になっていき、最後まで読んだ頃、ようやくこの本のタイトルをきちんと理解した気がします。あんなにいたはずなのに。
Posted by ブクログ
8月15日、終戦記念日。
改めて世界平和を願う。
「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる氏が描く悍ましい太平洋戦争の記録。90%が真実だという。
「玉砕」とは玉のように美しく砕け散ること。
「すべてのものは美しく砕け散れ」なんて命令…ほんとにつらい。
すべてのものが砕け散った時、砕け散ったものの美しくは誰が讃えるのか?
戦時には、「一億総玉砕」なんてスローガンもあったそうだけど、それはいったいなんのためなのか?
誰のために美しいのか?
下っ端兵士たちのぶざまでも生にしがみつきたいっていう姿もまた美しく思えて、泣けた。
Posted by ブクログ
戦争の不条理やむごさ、やるせなさ。漫画だし重苦しくもならないし、すっと読めるんだけど、実際にあったことなんだもんなぁ(一部はフィクションだけど)と思うと、こういう形で作品が残っていて、読めることに感謝。