【感想・ネタバレ】総員玉砕せよ! 新装完全版のレビュー

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Posted by ブクログ

基本的にマンガは読書記録に加えないのだけれど、これは水木さんにしか描けない戦記もの、NHKでドラマ化もされた名作の新装完全版ということで。新たに2021年に発見された構想ノートの一部が巻末に収録されていて、解説も含めてとても興味深い内容。同ノートのメモからも、戦争の惨禍を風化させないという著者の並々ならない決意が伝わってきました。お馴染みの、のほほんとしたタッチと、「90%が事実」という悲惨な物語のギャップが凄くて圧倒されます。特に戦場の描写がリアル。解説にある、鬼太郎が戦争体験から生まれたキャラクターという捉え方も腑に落ちました。

3
2022年08月12日

Posted by ブクログ

不条理という言葉を調べると「必然的な根拠が不在であり、すべては偶然に基づくということ」とある。戦場とは何時も不条理の連続であり、そこにまともな理由や根拠などは存在しない。一年兵は毎日の様に先任兵に殴られる日々。食糧もなく飲み水も無い中で戦うのではなく生き延びるだけの兵士たち。名誉の為に、死に急ぐ上官に無理やり連れて行かれる魂。敵の兵力・物量に対して圧倒的に劣勢な状況に置かれても引く事を許されず、玉砕後に生き延びた兵に対しては当たり前の様に、再び下される死の命令。戦闘で死ねるのはまだマシな方かもしれない。危険を伴う陣地づくり、何も見つからない食糧集め、熱帯特有の流行り病に、極度の飢え。兵士は常に死と隣り合わせで、1人や2人が命の火を消したところで、それが日常と、誰もが徐々に無頓着になっていく人間の生死への感情。
漫画家の水木しげる氏と言えば、妖怪漫画の「ゲゲゲの鬼太郎」が有名ではあるが、ご存知の通り、先の大戦に於いて、南方戦線に参加し腕を失っている。その氏の書き記した戦記にはお馴染みのタッチで描かれる様々な人間臭い人間が登場する。誰しも兵士である前に人であり、恐怖も空腹も恨みも欲望も抱える。それら感情全てが戦場という、現代の日本からは想像もできない湿気と血の匂いに満ちた空間を渦巻いている。嫌な上官が死ねば「ザマァ見やがれ」と思う事も普通の精神状態の中で湧いてくる。
普段私自身は漫画をほぼ読まないので、書籍の文字からその場の風景や人間達を想像の中に創り上げていく。だが水木しげる氏の見せたかった世界は漫画でなければ凡そ戦争を知らない世代には伝わりきらない。本書が漫画であるのはある意味必然だ。鬱蒼と繁るジメジメしたジャングルに、手に届くほどの位置を舞う敵機。不意に腹を抉る敵の弾丸、吹き飛ぶ身体の一部に苦悩の表情。それらは我々の想像の遥か先にあり、正に死の直前に位置して目にしたものでしか正確に描けないのだと感じた。確かに戦争物の映画も迫力のある映像と音の力で凄惨さは伝わってくるが、漫画に登場する暗い背景に文字で記される歌声などは、よりリアルに人間の感情、そして初めに書いた様な不条理を、最も的確に鋭く読者の心に響いてくるのではないかと思う。
読み終わった後に、何かドロドロとした暗い汚水に足を踏み入れた様な、とても気持ちが良いとは言えない感情が全身を包む。それは筆者が戦場で体験した気持ち悪さとは比では無いだろうが、少しでもそれに近い感覚を読者に与えたかったのではないかと思う。そうした意味で、未来に繋いでいかなければならない一冊になる事も納得いく。

1
2024年05月25日

購入済み

素晴らしい、そして恐ろしい

実体験を淡々と綴られているようで、実は本質に迫った時の表現が一番おそろしい。そう思わせてくれる漫画でした。

#感動する #タメになる

0
2022年09月29日

Posted by ブクログ

「玉砕」なんて言葉がフツーに、いや、命令としてまかり通るなんて日本くらいなもんだろうなと思う。現代にも変わらず続く愚行の精神。この国に無くて今後も望めそうに無いものが、基本的人権の教育と、過去から学ぶ姿勢。

0
2024年05月18日

Posted by ブクログ

戦争は地獄だということをこれ程までに訴えかけてくれる漫画は当時としては珍しかったんだろうな。
水木しげるのなんとも言えない人間味のあるキャラクター達がいとも容易く、あっけなく、強制的に死んでいくことのインパクトが凄い。
最後の聖ジョージ岬での全員特攻は創作らしいけど、あのラストによって戦時中の異常さがくっきりと浮き彫りになった。
わからないけど、なにかに祈らずにはいられない壮絶なラストだった。

0
2024年01月26日

Posted by ブクログ

映画「ゲゲゲの謎」から

映画にもこの漫画のエピソードが、少し出てきます。
水木しげるさんの体験をもとに描かれた漫画。
最初に開いた時に、やけに登場人物の紹介が丁寧だなあ、たくさんいるなあと思いながら眺めていました。覚えきれ無さそうだし、読みながらおいおい覚えられるかな、と読み進める事にしました。覚える前に、戦争によって次々とかえらぬ人になっていき、最後まで読んだ頃、ようやくこの本のタイトルをきちんと理解した気がします。あんなにいたはずなのに。

1
2023年12月25日

Posted by ブクログ

8月15日、終戦記念日。
改めて世界平和を願う。

「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる氏が描く悍ましい太平洋戦争の記録。90%が真実だという。

「玉砕」とは玉のように美しく砕け散ること。
「すべてのものは美しく砕け散れ」なんて命令…ほんとにつらい。

すべてのものが砕け散った時、砕け散ったものの美しくは誰が讃えるのか?

戦時には、「一億総玉砕」なんてスローガンもあったそうだけど、それはいったいなんのためなのか?
誰のために美しいのか?

下っ端兵士たちのぶざまでも生にしがみつきたいっていう姿もまた美しく思えて、泣けた。

0
2022年08月15日

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