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今こそ戦争を考える。
太平洋戦争に従軍した漫画家・水木しげるが
実体験を元に描いた未来へ残すべき傑作戦記漫画
大ボリューム20ページ
歴史的発見『総員玉砕せよ!』構想ノートを巻末特別収録
太平洋戦争末期の南方戦線ニューブリテン島バイエン。
米軍の猛攻で圧倒的劣勢の中、日本軍将校は玉砕を決断する。兵士500人の運命は?
著者自らの実体験を元に戦争の恐ろしさ、無意味さ、悲惨さを描いた傑作戦記漫画。
没後に発見された構想ノートを特別収録。
作品に込められた魂の決意が心に響く新装完全版!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
不条理という言葉を調べると「必然的な根拠が不在であり、すべては偶然に基づくということ」とある。戦場とは何時も不条理の連続であり、そこにまともな理由や根拠などは存在しない。一年兵は毎日の様に先任兵に殴られる日々。食糧もなく飲み水も無い中で戦うのではなく生き延びるだけの兵士たち。名誉の為に、死に急ぐ上官に無理やり連れて行かれる魂。敵の兵力・物量に対して圧倒的に劣勢な状況に置かれても引く事を許されず、玉砕後に生き延びた兵に対しては当たり前の様に、再び下される死の命令。戦闘で死ねるのはまだマシな方かもしれない。危険を伴う陣地づくり、何も見つからない食糧集め、熱帯特有の流行り病に、極度の飢え。兵士は常に死と隣り合わせで、1人や2人が命の火を消したところで、それが日常と、誰もが徐々に無頓着になっていく人間の生死への感情。
漫画家の水木しげる氏と言えば、妖怪漫画の「ゲゲゲの鬼太郎」が有名ではあるが、ご存知の通り、先の大戦に於いて、南方戦線に参加し腕を失っている。その氏の書き記した戦記にはお馴染みのタッチで描かれる様々な人間臭い人間が登場する。誰しも兵士である前に人であり、恐怖も空腹も恨みも欲望も抱える。それら感情全てが戦場という、現代の日本からは想像もできない湿気と血の匂いに満ちた空間を渦巻いている。嫌な上官が死ねば「ザマァ見やがれ」と思う事も普通の精神状態の中で湧いてくる。
普段私自身は漫画をほぼ読まないので、書籍の文字からその場の風景や人間達を想像の中に創り上げていく。だが水木しげる氏の見せたかった世界は漫画でなければ凡そ戦争を知らない世代には伝わりきらない。本書が漫画であるのはある意味必然だ。鬱蒼と繁るジメジメしたジャングルに、手に届くほどの位置を舞う敵機。不意に腹を抉る敵の弾丸、吹き飛ぶ身体の一部に苦悩の表情。それらは我々の想像の遥か先にあり、正に死の直前に位置して目にしたものでしか正確に描けないのだと感じた。確かに戦争物の映画も迫力のある映像と音の力で凄惨さは伝わってくるが、漫画に登場する暗い背景に文字で記される歌声などは、よりリアルに人間の感情、そして初めに書いた様な不条理を、最も的確に鋭く読者の心に響いてくるのではないかと思う。
読み終わった後に、何かドロドロとした暗い汚水に足を踏み入れた様な、とても気持ちが良いとは言えない感情が全身を包む。それは筆者が戦場で体験した気持ち悪さとは比では無いだろうが、少しでもそれに近い感覚を読者に与えたかったのではないかと思う。そうした意味で、未来に繋いでいかなければならない一冊になる事も納得いく。
Posted by ブクログ
水木しげるが戦線に参加した体験をもとにした漫画。
本作は、兵士が「お国のため、勇敢に戦い、散った」という美しい物語で決して語ろうとしない。美しく回収されてたまるか、という水木しげるの強い意志が感じられる。
一下級兵士にとっては、戦争とは不条理そのものだ。敵だけでなく、味方でさえも、自分の命を軽んじている。
日本の玉砕の文化は、武士道から来ていると推察する。個人の倫理としては美しいが、集団の倫理として機能するには、あまりに暴力性が高い。この実質無くして形式極まれりの武士道精神は、勝てもしない太平洋戦争の引き金になったとも思う。確か、岡倉天心が茶の本で、日本文化の象徴として武士道が海外に紹介されることについて、野蛮であると、憤りを露わにしていたことを思い出す。
特攻や玉砕を気高い日本的精神の表れとして、無闇に美化する言説には気をつけるべきだ。その状況に追い込んだ意思決定や組織構造の欠陥や兵士に与えた心理・物理的インパクトを冷静に分析することのほうが重要だと思う。それが、誰にも知られることなく亡くなっていった兵士たちに対して、現代に生きる我々ができる精一杯の弔いだと強く信じている。
Posted by ブクログ
現場の兵隊達は米国と戦う意義、気力を失っている。しかし彼らは戦場にとどまらないといけない。そして追い込まれた結果、集団自害を選択した。その行動原理の大元を特定するのは困難である。選択肢を奪われた軍隊がせめてもの誇りを守るため切腹見たく死んで行ったか。また言語化するのが困難な同調圧力からであろうか?
こんなにも死が身近にあるのにクーデターが起こらないのは大日本帝国の病理といったところでもあろう。
本書を素に我々は生死の表裏を身にしめて実感することになる。これは単なる大衆漫画を越えた一種の哲学書であると言えるのではないか?
以上リハビリの足しになればと書いた駄文である。
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少年・青年マンガ
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