水木しげるのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
前回の「日本人とはなにか」レビューで私は「死後の世界の魂は、日本人の多くは我々の生活圏内の直ぐ近くにいると思っている」という意味のことを書いたが、図らずも、本書を読むとその仮説を応援してくれているみたいに感じた。
本書は、3つの雑誌に書き継いだ氏の妖怪図鑑のようなものである。学術書ではないので、出典や証言の但し書きがない。人物或いは図が、具体的に何処を示していて、何処から事実に即していて、何処からが氏の創作なのかが判然としない。けれども、紐解けばわかるが、単なる氏の想像の産物として描いているわけではない。ことは推察できる。
前半160頁に渡り氏のカラー図画があり、後半150頁はその解説となっている。解説を読むと、必ずその場所に行っていることが推察される。後半は韓国、台湾、中国、マレーシア、インド、イタリア、ロシア、アメリカ、ニューギニア等々と世界の「目には見えないが、そういうものがいる」ものを漫画として写しとっている。
解説子の言うには、水木しげる氏は、好奇心旺盛で、海外に行って多数の写真を撮りまくった。その「視点」が常人のものではないのだという。首塚大明神のように実在の景色に昔の人々を配して絵を描く場合もあるけれども、「山みこ(日本土佐)」や「はれものの精(マレーシア)」のように、普通の森や何処にもありそうな古い井戸が描かれている。普通の森や井戸なのに、氏の描き込みにより、図画はどんどん暗く特別な空間になってゆく。実際にそれを見たか、或いは地域に行ってその空気を吸って「感じ」なければ描けない絵の数々である。
氏は「妖怪人類学」を呼称していた。決して学術的ではないのに、説得力がある。蓋し、あとを引き継ぎ学を大成する者、一人も居ないと考える。 -
Posted by ブクログ
8月、特に前半は散々だった。だから癒やしを求めに旅に出た。そこでせっかくだからと寄った境港にある水木しげる記念館で水木しげる先生の半生に出会い、そして彼の言葉にずいぶん励まされた。そんなとき、この本を購入した。
水木先生の半生についてが大半を占めているこの本だが、冒頭に示されている幸福七カ条には、このようにある。
第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条 しないではいられないことをし続けなさい。
第三条 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追求すべし。
第四条 好きの力を信じる。
第五条 才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条 なまけ者になりまさい。
第七条 目に見えない世界を信じる。
よし、ではこの七カ条を早速実践しよう!と思って本当にその通りにすると、正直言って人生失敗しそう。というのも、水木先生自身、この七カ条通りに生きているとは思えないのだ。子どもの頃は絵の才能を開花させ好きなことに没頭していたようだが、想像を絶する悲惨な戦争体験と、戦後金欠で苦労した話、40歳まで全然お金もなくひたすら紙芝居や漫画を描く日々。やっと鬼太郎でまとまったお金を手にすることになり、その後は妖怪をめぐる旅に出たり、若い頃にできなかった「好き」の追求をしていたようだが、「なめけ者」といって想像するような半生にはとても思えない。
この本は、自分はそう生きることができなかった、でも本当はこう生きた方が幸せだったのはないか、という振り返りの本とでも言おうか。でも、だからといってこの本に価値がないというわけではない。というのも、この七カ条の言わんとする価値観は、実践できるかどうかを問わず、やはり大切なことだからだ。 -
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ちくま文庫オリジナルの水木しげるアンソロジーの第2弾。選者は俳優の佐野史郎。
前巻のヤマザキマリとはまた違った貸本時代の短編を中心とした如何にも佐野史郎が好きそうなラインナップ。選者によってここまでテイストの違うアンソロジーが出来るというのが水木しげるという漫画家の凄さとうか捉えどころの無さだなと思う。
水木しげるはヤマザキマリが選んだような割とストレートな社会批判をやったりする一方で、ナンセンスや下ネタ、ねずみ男的なエゴや享楽性の肯定だったり、或るいは全てを突き放したような無常感や諦念、虚無を感じさせるものだったり本当に捉えどころがないが、同時にどれを読んでも「水木しげる」という描かれる内容を超えた普遍的な個性がある。
何だかよく判らない、底の知れない怖さ、何を描いてもその背景に立ち上がってくる「水木しげる」という存在自体が水木しげるの面白さ、魅力なのかなぁなどと思う。
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