あらすじ
エッセイ+ショートコミックで、水木しげる氏が人生で出会った信じられない出来事、忘れがたい人々を振り返ります。のんびりとマイペースで、この上なくドラマティック!その見事な半生を一望できます!
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Posted by ブクログ
特に戦中の壮絶な体験記が凄まじかった。凄まじい話なのに、緊張感がないようなあるような描き方で読みやすいと思ってしまった。
水木さんのマイペースさもすごかった。寝過ごして点呼には遅れ、大食いのためおかわりをもらいたくて早食いを極め、上司が弱気な発言をすれば「生きて帰るという強い意志が大事」と説く。
手を爆撃で失った後も、1日目は痛くて寝れなかったが、2日目から3日間熟睡した、ウジがわいていたものの、とても元気だった、とある。とても元気だった……ってどういうこと……?寝る力が治したと言う。
意志の力、という話の中で、生きて帰れると思ってるのは水木だけ、という話が特に印象深い。思い込もうとしているのではなく、水木さんだけ本当に生きて帰れるという前提で、過酷すぎる戦禍を生きていたみたいだ。
「私は、一番最後の不寝番で初めて、朝日の昇るのを見て、その美しさに驚き、敵中であることを完全に忘れていた。即ち『美』に見とれていたわけだ」p,70
ラーゲリから来た遺書や、夜と霧を思い出す。壮絶な状況で希望や生きようという意志の強さ、正気を持ち続けられる強さを支えるものはなんだったのだろう。
とにかくよく寝てよく食べ、理不尽なことからは逃げてきた人なのだな…と思う。
それがいちばんだいじ
言い方が正しいか分からないけれど、凄みのある、芯からの"のんきさ"は偉大だと思う。憧れる。そうありたい。
「人間なんていつ死ぬか分からんもんだ。そう思うと、毎日の『小さな幸福』といったようなものは、案外大切なものなんだ」p,191
水木さんの言として読むと、分かりきったことが結晶のように輝く。
「勇ましさのためにどんな目に遭うのか」
戦争反対
Posted by ブクログ
水木サンの周りには個性の強い人が多い。
それは、水木サンの個性が
強いからこそ引き寄せてしまうのか、
それとも、出会う人一人一人の個性を
水木サンが見つけるのがうまいからなのか、
または、生きるか死ぬかの戦争で
人間としての本能がむき出しになったからこその
自我の強烈な表れを水木サンが目撃したからなのか、、、
いずれにせよ、水木サンと人々の邂逅が
この本にはまとめられている。
出会いがあるから、
人は笑ったり泣いたり、悩んだり
成長できたりする。
限りある人生の中で、たくさんの出会いで
まだ見ぬ感情を、思いを引き出していきたい。
人間関係に悩んでいても、
不思議とそう思える作品。
悩める自分に、ビビビビ ビーンと
ビンタをくらわされたような愉快な衝撃だった。
(再読)
Posted by ブクログ
エッセイと漫画で綴られた水木しげるの半生。軍隊ではひたすら理不尽にビンタされ、片腕を失いながらも生還した水木さん。水木さんが畏敬の念をこめて「土人」と呼ぶ人たちとの交流も楽しい。単なる反戦でなく氏の描く戦争体験がリアルで、また切なくて、それがとても面白い。全体にまとまりには欠けるが、どの章も引き付けられる。
Posted by ブクログ
去年は戦後70年の節目の年だったので、テレビや新聞・雑誌で、関連のドキュメンタリーや映画、特集記事などをかなりたくさん見ました。
「当時の記憶は辛くて、今までどうしても話す気になれなかった」と言っている人が日米ともにものすごく多いことに今更ながら驚きました。子供のころから「はだしのゲン」など、いくつかの戦争体験記を目にしてきましたが、それは勇気ある貴重な証言であり、実際は多くの人が語ることすらできずにいたことに今まで気づいていませんでした。
今回、この「カランコロン漂泊記」を読み、特に戦争中のことを書いたページに非常に感銘を受けました。
当時の名もなき兵士や名もなき犠牲者たちがどんな風に感じていたのかリアルに知ることができます。時間に制限のあるドキュメンタリーなどではカットされてしまうような、あるいは、単純に記録としては残っていないような市井の人たちの日々の様子がすごく伝わってきました。漫画だから拾えるエピソードがありのままの形で描かれているように思います。
南方に送られることが決まった時点で多くの人が「生きて帰れるわけがない」と思っていたこと、慰安婦の姿、「まじめに働いたら死ぬぞ」と言い合っていたこと、兵士たちが患ったさまざまな病気など、実際に体験した人にしか分からない小さなエピソードの数々こそが戦争の悲惨さをリアルに伝える貴重な資料となっていると思います。
「戦争論」については、正面から反論するのではなく、「当時の空気が思い出されてなつかしい」という一見肯定的な言葉でケムに巻きながらも、その思想の危うさを鋭く批判しているところはびっくりしました。
「この人、ただトボけているだけの人じゃないんだ!」と。
世の中には信望している主義主張を真っ向から批判したら、唾を飛び散らせて反撃してくる人もいますからね。
平和を訴える内容だけでなく、方法としても非常に考えさせられました。
Posted by ブクログ
同じ話をたぶん、何回も読んでいるけど、書く度に分かりやすくなっている、大先生文章が上手になっているんぢゃないか?第4章カランコロン的幸福論の“110点”のように水木さんは一週間ごとに賢くなっているのかもしれない。戦争中を含めて作者の体験談は説得力がある。そして文庫版のように小さな版だと,濃密な水木さんの絵は再現するのが難しいけど、この本は大きな判型で読め、原画の素晴らしさを感じられるのがウレシイ。
Posted by ブクログ
水木しげるの半生は、先の大戦を避けては通れない。軍隊組織の規範に忠実ではない彼の価値観は、上官のビンタでしごかれ不条理に感じるも妥協はすることはなかった。そんな意固地、いや信念が彼の世界観を揺るがないものとして確立していったのだろう。忖度や妥協は決して得策ではない。そう、損得というモノサシは胡乱な代物だと疑ってかかろう。そんな損得を具現化したのがあのネズミ男である。さすが。
Posted by ブクログ
ゲゲゲの鬼太郎で有名な水木しげる氏のエ漫画とエッセイ。淡々と語る死生観を読んでいると、激動の時代を生き抜いたからこそ悲観的にならないのかもしれないと考えさせられた。太平洋戦争で最前線に送られ、仲間がどんどん死んでいく。現代の我々にとっては異常な非日常空間にしか見えないのだが、水木氏の視点は「非日常の中の日常生活」に注がれている。
食べる、寝る、暮らす。戦死や慰安婦、軍隊での暴力など一般的な戦争の本では悲壮感が漂う表現になる題材だが、水木氏の語り口においては善悪とは異なるレイヤーに存在しているように感じる。
平和な時の命も、戦時下の命も、同じように一つの命なのだ。
漫画の中で水木氏の飼い猫が語る
「この世は通過するだけのものだから、あまりきばる必要はないよ」
という言葉が沁みる。
<アンダーライン>
★★「あの世」いいということが分かったりすると、人はすぐ自殺したりするだろう
★★★★人間なんていうつ死ぬか分らんもんだ。そう思うと、毎日の「小さな幸福」といったようなものは、案外大切なものなんだ。
★★幸福観察学
★★★★★「この世は通過するだけのものだから、あまりきばる必要はないよ」
Posted by ブクログ
エッセイ。漫画。戦争。
少年のころ、兵隊のころ、忘れられない人々、幸福論。
死んでいった人たちを思い出しながら、後悔しつつ、重たくない。
運命って紙一重だなぁ……。
Posted by ブクログ
戦争の悲惨な思い出も、貧乏な時代の思い出も、今はもう飄々と語ることができる遠い記憶の中。水木先生はとにかくよく食べる人だったらしい。だから、片腕は失っても、長生きされたのでしょう。人は人、自分は自分、で、ゆったり生きる、そういう生き方も大事かも知れない、と思った。