壁井ユカコのレビュー一覧
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ネタバレ流されやすく押しに弱い性格をしているOLの、24歳の東京の生活と、17歳の地元で高校生代を交互に描いているお話。
高校時代から付き合っては別れてを繰り返す浮気癖持ちな都丸と、魔性の魅力を持ってつまらない日常を破壊する鞠子が彼女を翻弄する。
都丸がお金を無心しにきたり、鞠子が突然押しかけてきて居候を始めて虚言癖で主人公の生活をかき乱す。しかし、その波乱は小説の主人公らしくない主人公の平穏で退屈でただ過ぎ去っていくだけの庶務課OL生活にほんのささやかな華を添えることになり、彼女はうんざりした顔をしつつも満更でもない様子。
中盤でもうひと盛り上がりあればよかったのかもしれないけれど、さくっとまとまっていて面白かった。アンニュイな雰囲気で、でも、高校生活の瑞々しく無敵だと思っていたあの頃を懐古するような感じで割と楽しく没入できた。 -
購入済み
動き出した
チームとしてこれからやっと始まる感じ。ここまでがプロローグかなと。バレーボールの話としては少し我慢、少年たちの青春物語としては少年期の危うさを感じてハラハラしてしまうそんな話でした。次巻への期待が高まりました。
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ネタバレ表紙と挿絵を市川春子が描いている、というだけで興味を持って読んだ本です。
表紙やタイトルからは全く読み取れませんが、虫がキーになる話ですので、虫が苦手な方は慎重に読んだ方がいいと思います。
主人公が悪夢にうなされるところや3人で車に乗って山に向かったところなどはけっこう気持ち悪く感じました。
創作物を別の創作物に例えるのは良くないと思いつつも言ってしまうと、読み進めるにつれ乙一の「夏と花火とわたしの死体」のようだと感じました。
こちらはそこに仄かな恋愛要素とSF(?)の要素が混じっているのですが。
日常(田舎の子どもの暮らし)のリアルな描写と一連の蝉に関する非現実的な描写が調和しているとは思えませんでした。
主人公である倉田の様々なことに対する感度が非常に鈍感で、読んでてイライラしました。
佐野に対しても"普通は"おかしな言動をする人間には近づかないように思いますが、倉田は何度も二人きりで接触し、そのたびに危険な目に合っています。
もちろん、特に未成年に対し、成人が性的な目的で近づくのはあってはならないことだし、加害者が悪いのですが、そうなることが倉田には予見できたのでは?と思ってしまいます。
予想できることに対し、何の対策もせず自ら火に飛び込みに行く倉田の気持ちがさっぱりわかりません。
心身に危険が及ぶ可能性のあるものに、それらを犠牲にしてまで近づく行為を子ども特有の好奇心です、で理解するのは難しく、また、そうであったとしてもなぜ倉田が佐野に強く興味を持ったのか、の理由がほしいと思いました。
倉田は佐野の言動に動揺する態度を見せるものの、それを強く否定することはせず、あまりにも普通に接するため、異常である佐野の存在が正常であるように思えてしまいます。
倉田の態度によって現実と非現実の対比がうまくいっていなくて、蝉に関する一連のことがとってつけたような異物感を生んでいるように思いました。
登場人物3名の中で、わたしがいちばん苦手なのが倉田のようなタイプです。時点で恵。
恵は三浦もたびたび触れている通り、無神経で自己中心的な思考であるからなのですが、その分ストレートで裏表がないとも思います。
倉田の気に入らないところは、たとえば三浦に対して心配する素振りを見せ、恵や教師に隠していることを教えてほしいと言いますが、実際のところ心配しているわけではなく、単に好奇心や幼馴染の中で自分だけが仲間外れにされている疎外感を解消したいだけなんだろうな、というところです。
それを三浦が心配だから、と言い訳する、かつそれに自分さえ気づいていないところがいやらしいな~と思います。
人が言いたくないこと、隠しておきたいことを強引に知ろうとする気持ちもわかりません。
知られたくないと思っていることを知ろうとするなんて、他人の領域に土足で上がり込んで物を強奪していくようなものなのに、そこに気付けないのも鈍感で、恵とはまた別の意味で自己中心的だと思います。
三浦は好きな相手に病状を知られ、嫌われたり同情されたりしたくなかったのだと思いますが、倉田はそういうタイプではなく、むしろ相手が自分を頼ってくることを喜ぶタイプのように思います。
蝉の抜け殻を一緒に集めてくれた一件から何となく気にするようになっていて、そのころからなんとなく好きだったのだと思いますが、(三浦の病気のことを知りたがっていたのも、好きな人のことは何でも知りたいという気持ちもあったのかも)三浦が病気だとわかり、より一層わたしが支えてあげなくちゃ!と気持ちが盛り上がったんじゃないかと思います。
本人はそれを好意だと思っていますが、実際は支配欲とか庇護欲のようなたちの悪い気持ちのように感じて、倉田に対し嫌悪感を抱きました。
三浦はそのような目を向けられることが嫌なんだと思いますが、好きな相手からの一見好意に見えるものであれば嬉しく受け入れてしまい、気付いた時には色々な意味で倉田がいないと生きていけない状況になっているような気がします。
でもまだ高校生だし、大学生になったり社会人になったりする頃には佐野のことも千比呂のことも記憶から薄れ、まったく関係のない人と付き合っていたり、結婚したりしているかもしれないけど。
子どもの(未成年の)頃の体験や経験は尊いものだし、その人の人格や一生のベースになるようなこともあるでしょうが、大人になってから直面することはスケールも質も比べ物にならないので、お金も駆け引きも絡まなかった昔の思い出は途端に陳腐に思えてしまうでしょうから。
表題はサマーサイダーなのに、炭酸と思わしきものが出てきたのは冒頭の体育館のシーンだけであとは出てこず。
蝉の短い一生、人生の中であっという間に過ぎる学生時代、だんだんと失われていく三浦の視力、それぞれの一瞬を次々に泡が生まれてははじけて消えるサイダーに例えているのでしょうか。 -
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遺伝子操作が自在におこなわれるようになった世界の物語です。
大学生の三嶋行祐(みしま・ゆきひろ)の部屋に、一人の少女が居候を始めます。彼女は、「ダーウィンズ・ヒル」グループのトップである総領家の娘・総領マドカのクローンC4でした。
オリジナルの総領マドカが難病に倒れたため、C4の身体が利用される時が迫っていたある日のこと、C4は総領家からの脱走を試み、行祐のもとにたどり着きました。
こうして、行祐とマドカの共同生活がはじまりますが、C4の行方を追う総領家の手が彼らに迫ります。行祐の知り合いでスラムで生活しているセイドウとメッキが、金一封欲しさにマドカの身柄を取り押さえ、行祐は総領家の長男・総領晴継(そうりょう・はるつぐ)に叩きのめされます。
こうして、マドカの身柄は晴継の手に渡ることになりますが、晴継が行祐を傷つけたことを知ったマドカは、自分の身の危険を顧みず、いきなり晴継にカッター・ナイフを突き立てます。怒りに我を忘れた晴継に殴られて大けがを負ったマドカは、行祐に助けを求めます。行祐はマドカのもとに駆けつけますが、やがてマドカは命を落としてしまいます。
こうして、C4の遺体は総領家に引き取られ、彼女の身体はオリジナルのマドカの病気の治療に利用されることになりました。ところが、マドカに移されたC4の身体は、行祐と過ごした日々の記憶を残していました。マドカはその記憶をたどって、行祐のもとに現われます。
続編が出ていないので、行祐の母や、彼の親友のススキ家の問題が積み残されたままになっているのが、すこし残念ではあります。 -
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シリーズ最終巻。
ヨアヒムが力尽き、さらにベアトリクスも命を落とします。ハーヴェイは、ラボに利用され人を襲うだけの存在となったユドを止めるため、傷だらけの身体を引きずって最後の戦いに挑みます。
キーリは、これまでかかわってきたさまざまな人びとの思いに触れ、最後はベアトリクスに見送られて、少年のハーヴェイとともに「砂の海」の終着駅へと旅立ちます。
ユドの活動を静止させたハーヴェイは、キーリ、兵長とともに、大陸の北部、山脈のなかにある、遺跡にたどり着きます。そこでは、80年前の戦争から逃れてきた人びとが、下界との関係を断ってひっそりと暮らしていました。キーリはそこで、寿命を終えた兵長のラジオと別れを告げ、「核」が静止しつつあるハーヴェイとともに下界へと帰っていきます。
ほぼ予想通りの結末でしたが、ベアトリクスまで命を落とすとは思っていませんでした。ハッピー・エンドではありませんでしたが、救いのない物語ではなかったので、個人的には納得のできる締めくくりでした。 -
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「砂の海」をわたったキーリたちは、炭鉱の町での生活をはじめます。キーリは、「バズ&スーズィーズ・カフェ」でアルバイトし、ハーヴェイはこの町で情報屋をしている旧知の不死人ベアトリクスのもとを訪れます。
ベアトリクスは、ハーヴェイやヨアヒムら不死人を率いていたユドという男のゆくえにかんする情報を手に入れます。それは、ユドらしい不死人が12年前に捕らえられ、首都に連行されたというものでした。その一方でベアトリクスは、不死人であるハーヴェイにキーリの人生を巻き込むことは、彼女を不幸にすると告げます。
そんななかハーヴェイは、首都にある教会の研究施設(ラボ)で不死人たちをあつかっていたという片眼鏡(モノクル)の男・ダニールにさそい出され、彼の暮らす墜落した宇宙船にやってきます。そこで彼は、教会がラボで「核」の模造品をつくろうとしていることを知ります。
宇宙船を抜け出したハーヴェイは、キーリをベアトリクスに預け、一人でユドを探しに首都の機械都市に出かけることを決意します。
前半は、バズ&スーズィーズ・カフェやキーリたちの暮らすアパートで起こる心霊現象が中心の物語、後半は、宇宙船に暮らすマッド・サイエンティストの登場するSF的な物語になっていますが、このシリーズの独特の雰囲気の中でテンポのちがいがうまく中和されています。 -
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その壁を超えろ。
爽やかなスポーツ小説でした。「物語はここから始まる!」ですが、次も読みたいと思いました。
灰島公誓は、バレーに人一倍熱心で、また才能もあり、努力もしていた。しかし、バレー部のチームメイトが自殺未遂を起こし、中学を転校。東京から福井へやってくる。その中学では幼い頃の友人だった黒羽祐仁が、男子バレー部に所属していた。灰島の変わりように戸惑う黒羽は、彼の情熱に惹かれて、だんだん自分もバレーに熱心になる。しかし、灰島の圧倒的な才能からすれ違いが生まれ……というのが、第一話。
第二話は灰島も黒羽も全然出てこなくて、最初どうつながるのかと驚いたが、そこは彼らが進学した高校の話。語り手は、女子バレー部の二年生・末森荊。ボーイッシュな外見と性格、しかし停滞したバレーの実力にイライラを抱えている。同級生の男子バレー部棺野秋人に複雑な気持ちを抱いている。時は球技大会前。
第三話は、男子バレー部三年生、160そこそこの小田伸一郎と、チームメイト青木操が中心になる。二人の出会いから球技大会でのひとつの賭けが語られる。ここで灰島、黒羽、棺野と、男子バレー部のメンバーが出揃い、春高を目指すという物語が始まる。
きっと、マンガだったら最初に第三話の部分が来て、話数を経てから過去のエピソードとして第一話や第二話が語られるのだろう。けれど、この小説では違った。どこでどうつながるのか、タイトルが「清陰高校」なのに中学生なのはなぜか、疑問を持ちながら読み進めることになる。少しひっぱる力は弱いかもしれない。でも、最後まで読んだら、次も読みたくなる。だって、次が本番だから。この巻は、誤解を恐れずに言うなら、序章に過ぎない。でも、この巻があって、それぞれの背景を知ったから、バレーにかける情熱を知ったから、彼らに愛着が湧いた。
以前同作者の『サマーサイダー』を読んで、自分的にグロいホラーだったので、若干心配していたが、これはファンタジーではないようで、安心。あと、灰島と黒羽、小田と青木が、なんとも言い難い関係で、そういうところが妙にツボでした。