藤田和日郎のレビュー一覧
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ネタバレ青一のあまりに陰惨な戦いが現在へと繋がる5巻である。
この巻の前半では侵略者たちが双亡亭を扉にして地球に移住しようとしている姿が描かれ、双亡亭そのものの悪意に満ちたその相貌に青一が叫んでいる。
弟のマコトとの別離と再会の約束、そして改めて歴代首相らから依頼された「双亡亭を壊す」という約束など、ここでも見どころは多い。
そして後半では、再び舞台は双亡亭へと移り、乗り移られた修験者とパイロキネシスの老夫婦の戦いと、占い師の三姉妹の乗っ取られた長女と次女三女の戦いが描かれている。
特筆すべきは次女三女の暴かれた過去、出生に関わってくる双亡亭との因縁だろう。そのあまりに壮絶な半生と、そのトラウマを抉る悪意の強烈さは物語上でも最大のものだ。
であればこそ、そのトラウマに囚われる姉妹に訴えかけ、助けんとする凧葉の言葉の力強さは胸を打つ。
結局人は人に絶望して、そして人に救われるのだということをこれ以上ない強い筆致で描いてくれている。
物語は独特の空気を温めながら、徐々に過熱している。
文句なしに星五つ。救出への安堵に水を差す後書きも含めて、素晴らしい物語だなと思う。 -
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ネタバレ双亡亭のあちら側から現れる奴らの正体にメスを入れる4巻である。
これまでのホラーテイストの物語からSFのニュアンスを強める感と言っていいだろう。
合間に科学者組同士の(乗っ取られた側とそうでない側の)対決を挟みながら、青一が地球ではない場所で45年もの間戦い続けた経緯が語られている。
侵略者と、侵略者から青一達飛行機の搭乗員を救った星の抗争をメインに描いたこの巻ではあるが、抵抗しない「おじいちゃん」に怒りを教える青一の姿には胸打たれるものがある。
虐げんとする者どもに対し反抗せよと語る内容もまた、子供たちに向けて反骨を教えるニュアンスを感じるのだ。
だが、同時にその反抗が45年もの間続く凄絶な抗争となったことも描いている。ここに、読者となる少年少女たちに対し思索を余儀なくさせる物語的現実があるのは味わい深い。
物語的には合間の巻と言えるだろう。
ただ、個人的にここで語っている内容に対しては星五つで評価したいと思う。この物語が描く勇気の形が、ここでは簡単ならざる形で描かれていると思うのだ。 -
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ネタバレ屋敷の魔の手が異能者たちを襲う三巻である。
この巻ですべてが説明されているわけではないが、事実上の壊滅だろう。先の巻での引きがそのまま絶望的な展開を導いている。
この巻の肝は、絵の中で見せられる絶望と、それに対抗するための手段だろう。
異能者たちや自衛隊員が取り込まれる中で、同じく絵に取り込まれた凧葉は不思議な青年と会い、そしてその後の絵の襲撃を撃退している。
心強くあらねば、いかなる異能を持っていようとも何の役にも立たない。双亡亭の恐ろしさをまざまざと描いた巻だろう。
その悪辣さも特徴的だ。トラウマに直面させることで、催眠術で言う驚愕法のような手法で精神に空白を生じさせ、そこに逃れようのない悪意を刷り込む。
そうして生まれた隙を見逃さずとり憑く。実に凶悪である。
白眉はやはり紅の救出に向かった凧葉の力強さと、その言葉に背中を押されて自分を許すことができた紅。
彼女の言葉、弟と話すことを宣った彼女の姿は、腹の据わった力強さがあった。
こうしたシーン描写の力強さは、この物語を一段とエモーショナルにしてくれている。お見事だった。
今回も変わらず星五つで評価したい。
壊滅的状況と、それが相手の戦力を増す行為だと気づいた凧葉。
一方で、同様の敵を相手に制圧した青一は、緑朗と共に歴代総理と面会し、頭を下げられている。双亡亭と戦うためのすべを教えてほしいと。
こうした「日本のトップだった人たちが頼んでくる」というのもまた、子供への訴求力が高い物語展開じゃないかなと思う。
ただ、このホラーテイスト全開の作品を子供が読んで楽しめるのかは未知数ではあるが。(笑) -
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ネタバレ悪意と怪異の巣窟・双亡亭を壊さんと異能者たちが集う第二巻である。
この巻では巻頭に、政府の説明会で集う異能者たちが描かれていて、いよいよ双亡亭を壊すべく物語が動き始めている。
その脇を固めるのが緑朗と青一の二人の総理との会談だろう。双亡亭の闇を説明する総理と同期するように、物語は暗澹たる壊滅へと向かっている。
それにしても、実にスマートな物語運びだと思う。
集まった異能者たち、それは堕落した修験者であったり、米国の調査チームであったり、あるいは全てを見通す占い師三姉妹であったりするのだが、そんな彼らを緑郎の姉・紅や凧葉の視点を通すことで、彼らの儚い運命を予見している。
その上で、とり憑かれた人々との攻防を描くことで、彼らの退魔の能力の高さを見せつけた。
だからこそ、物語巻末における壊滅の模様は実にスマートに我々に「バカな……はやすぎる……」という感慨を催させるのである。
異能者たちのキャラの差別化や、青一を守る緑朗の覚悟など、随所にストーリーテリングの巧みさが光っている。
この巻も続いて星五つで評価したい。物語上での各所のインパクトというより、ダイナミズムで魅せていただいた一巻だった。 -
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ネタバレ自衛隊の爆撃をも物ともせず、中に入る者たちを取り込み化け物に変えてしまう。
そんな化け物屋敷・双亡亭を壊すべく立ち上がった人々の群像劇的物語である。主人公は(おそらくは)三人だが、基本線は群像劇と見ていいだろう。
それにしても、物語が開いていくワクワク感は素晴らしいものがある。
藤田さんが描く絵の濃さ、ホラー描写の巧みさも影響しているのだろうが、何よりストーリーテリングの手並みが本当に優れている。
おぞましき屋敷に因縁を持つ総理が、自身の手で双亡亭壊すべしと述べ、賞金を懸ける。
双亡亭に父を食われた少年・緑朗は双亡亭を壊しうる人との出会いを得て、双亡亭を目指す。
双亡亭爆撃の夜、45年前に行方不明となった旅客機に乗って現れた少年・青一は、その身をドリル状に変形して魔を撃つ。彼は緑朗と共に双亡亭を目指す。
そんな彼らの陰に隠れて、美大出身のただの人である凧葉は、ほんの弾みで言ってしまった言葉の責任にとらわれている。だが、今は彼は双亡亭を目指していない。
そんな彼らの群像劇は、同時進行で二つの物語を描きながら、そのそれぞれを丹念に描くことで中断のわずらわしさがなく、一方でテンポ感も良い。
日本のトップが軍隊を使っても壊せない家。その怪異を解決するという物語の主題も、子供への訴求力はかなり高い印象だ。
また、何より絵の力強さが尋常ではない。一個一個の描写が持つ力には惹きつけられた。
正直に述べれば、最初に読んだ際(三巻までまとめ読みしている)、風呂に入るのが少し怖かったくらい(笑)にはホラーめいた作品だ。
大変優れた物語のスタートである。星五つでぜひ評価したい。 -
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ネタバレラスト。
いや、1話目読んだときには、こんな壮大な話になるとは思わなかったです。
それどころか、1巻前でも、こんな展開になるとは思っていなかったという凄い展開。
たしかに、ついて行けなくて怒っている人もいるかもしれないのだけれど、わたした、これを大まじめにかいている藤田さんって、やっぱり素晴らしいと思います。
基本、わたしはひねくれ者だし、斜に構えたところがあると思っていますが、ストレートにいろいろにものに向き合おうとする強さは、やっぱり、凄いと思いますし、素直に脱帽します。
物語は、死なない。
このメッセージをものすごく強く伝えてくれただけでも、物語読みとして感謝したい気持ちです。
そして、いろいろ調べれば調べるほど、「マッチ売りの少女」から、メーテルリンク、宮沢 賢治へのこの流れ。
藤田 和日郎、おそるべし。 -
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大正時代より都下に建つ謎めいた廃屋「双亡亭」。
人を喰らうという噂のその屋敷は巨大な鉄球を撃ちこもうが空爆を仕掛けようが何をしようが絶対に壊れない最凶にして最恐のお化け屋敷。
昔日双亡亭に幼馴染の少女を取り殺された防衛大臣と総理は、職権乱用と公私混同を極めて、下記を合言葉に起ち上がる。
「双亡亭壊すべし!」
とにかく双亡亭の存在感がすごい。圧倒的に不気味。屋敷の猟奇的かつ芸術的な造形が廃墟マニアの心をくすぐる。
天井で途切れた階段や宙に聳える帽子掛け、濠を巡らした肖像画の為の小部屋など、軍艦島や九龍城塞、零シリーズなどホラーゲームに出てくるカオス構造の家屋に惹きつけられる向きの読者にはたまらないギミックが随所に仕込まれている。
双亡亭を壊さんと古今東西から馳せ参じたキャラが濃すぎる霊能者たちも凄い。全員とち狂ってるといっても過言ではない言動と顔芸のイカレっぷりで魅せてくれます。
貧乏絵描き・凧葉とJK巫女・紅の年の差コンビのコミカルな掛け合いも微笑ましく、ユーモアと恐怖とがミックスされてぐいぐい読める。
今後の展開から目がはなせません!