浅田次郎のレビュー一覧

  • 王妃の館 下

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    普通の人々が気軽に外国へ行けるようになって四半世紀。こんなツアコンのドタバタ劇も当たり前の朝飯前。よーく解ろうものである。

    文豪がふらんす物語を大上段に書き読者が雰囲気を味わい浸った時代があったのだよね。いやいや松本清張が「黒の回廊」(ヨーロッパツアーものミステリー)を書いたころ(1970年代)だってこんなに庶民が簡単に外国へ行きはしなかった。高根の花だった。いいなー!とミステリーに浸りつつ、行かれやしない旅行を一緒に楽しんだもの。と時代錯誤、思い出はこの辺でやめて。

    浅田さんはこんな風のも書くのかと、王宮(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)のパロディとパリ観光案内っぽいのが面白かった。なぜかと

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    2021年09月14日
  • 長く高い壁 The Great Wall

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    日中戦争を舞台としたミステリー。従軍作家として北京に滞在していた売れっ子推理作家に下されたのは万里の長城で起きた事件の調査。

    関係者への聞き込みを進める際に、それぞれの軍関係者の一人称視点で語られる。事件の解き明かし自体は大したことはなく、事件の真相も安直すぎる。

    ただし、大正の軍縮時代と昭和初期に入ってからの大陸での戦争遂行状態で兵役というものが全く異なっていたこと、それに伴って世代によって兵隊の資質が異なっていたことを知れたのは収穫。

    また、士官学校出身の将校と、兵卒からのたたき上げの下士官の関係性を描いた作品は数あれど、最初の兵役満了後に一般社会人として生活をしたあと、予備役招集で

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    2021年09月13日
  • 長く高い壁 The Great Wall

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    実力・実績の著者ならではの、情景描写のクオリティだが、結城昌治の戦争小説の名作「軍旗はためく下に」の劣化版コピー作品と評価されてもしょうがない作品。少し残念であった。

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    2021年09月08日
  • わが心のジェニファー

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    あるアメリカ人が恋人の命に従い日本を旅するお話。うらやましい、温泉宿に行きたくなった。
    東京2020が決まりすぐ書かれたものらしく、異国人の目を通して日本の美点を再発掘しようというのが小説の目論見としてあると思う。
    軽薄な主人公に辟易するが軽妙なテンポでさくっと読める。

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    2021年08月25日
  • 新装版 五郎治殿御始末

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    ※2006年?購入、これより旧版
     2006.4.14読書開始
     2017.5.6BookOff売却済み

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    2021年09月05日
  • ブラック オア ホワイト(新潮文庫)

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    夢ネタ!イマイチ(笑)
    そもそも、夢ネタ系は嫌いなのですが、本作は、夢そのものを語るというもの。

    ストーリとしては、
    ブラックの枕とホワイトの枕で見る夢が異なる設定。
    エリート商社マンがスイス、パラオ、ジャイプール、北京、京都それぞれで見た夢を語ります。

    見る夢は美しい夢、悪夢。
    また、それぞれの地域で見る夢は、ラブロマンスであったり、インドの言い伝えであったり、戦争だったり..

    そして、徐々に夢と現実の境があいまいになっていきます。
    最後、京都のエピソードはミステリー感があって深かった..

    しかし、やはり、全体的にはふわふわっとした内容で、登場人物たちの関係や事象の結果など、あいまい

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    2021年08月15日
  • わが心のジェニファー

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    正直いまいち(笑)
    アメリカ人の青年を通しての日本文化論。

    日本再発見小説という帯の触れ込みや、日本が好きになるという触れ込み、涙と感動の人間ドラマという帯のメッセージに対して、あまりにステレオタイプ+ユーモア的で、逆に日本をコケおろしているようにも感じられます。

    ストーリとしては、
    日本びいきの恋人ジェニファーから、結婚するなら、価値観を共有するために、日本へ一人旅をしてくるように言われます。パソコンもスマホも持たず、ラリーは一人、日本を旅することに。
    彼の珍道中を通して、語られる日本
    成田から、東京、京都、大阪、別府、釧路と3週間の旅です。
    旅の所々でジェニファーに手紙を書くラリー

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    2021年08月15日
  • 新装版 お腹召しませ

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    エッセイ+時代小説といった形の短編集の6編
    司馬遼太郎賞、中央公論文芸賞受賞作品
    幕末の武士の悲哀が描かれています

    ■お腹召しませ
    婿養子が公金を持ち出して失踪。
    その責任を取って、妻子や周りから切腹を迫られる主人公。
    その結末は?

    ■大手三之御門御与力様失踪事件之顛末
    与力の一人が勤番中に姿を消す。
    神隠しにあったのか?
    その真相は?

    ■安藝守様御難事
    藩主となって謎の稽古。
    その稽古の意味も分からず、本番へ
    その意味とは?

    ■女敵討
    女房が不貞を働いていると聞いて、国元に戻り女房とその男を成敗することに。
    国元に戻って、その二人の前でとった決断とは?

    ■江戸残念考
    鳥羽伏見の戦い

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    2021年08月09日
  • 歩兵の本領

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    1970年代の自衛隊の物語。
    9編の短編連作集で、当時の自衛隊の若者たちの物語となっています。
    戦闘シーンではなく、彼らの日ごろの生活が赤裸々に面白く、楽しく、哀しく語られています。
    当時の自衛隊の世論での扱われ方がよくわかります。そして軍隊ではなく自衛隊であることの意味。

    ■若鷲の歌
    幽霊化と思いきや、その正体は..
    ■小村二等兵の憂鬱
    靴をなくしてしまった小村。その真相は
    ■バトル・ライン
    先輩を殺そうと決意するも..
    ■門前金融
    自衛隊員専門の金貸し
    ■入営
    入営した新隊員の困惑
    ■シンデレラ・リバティ
    外出時に会いに行った恋人、時間通りに戻れるか?
    ■脱柵者
    自衛隊から脱走..
    ■越

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    2021年08月01日
  • わが心のジェニファー

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    ネタバレ

    主人公はアメリカ人の青年で、結婚を申し込んだ彼女から、「日本を旅してきて」と言われる。彼の中には、日本びいきの彼女から吹き込まれた「素晴らしい国・日本」の印象と、日本と戦争をした退役軍人の祖父から聞かされ続けた「油断ならん国・日本」の印象が混在する。
    彼女(わが心のジェニファー)を想いながら旅をする彼の、本音(心の中)と、建前(彼女への手紙の記述)のギャップが面白い。旅をしながらいろんな個性的な日本人と出会って、ちょっとロマンス(?)もあってこっけい。
    最後には彼女の提案や、祖父の日本嫌いの裏に、いろんな思惑があったことが分かり、なかなか感動しました。

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    2021年07月31日
  • 天子蒙塵 3

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    関東軍の謀略で父・張作霖を爆殺された張学良。蒋介石の国民党に東三省を渡し失意のうちに欧州に渡る。
    溥儀を執政に迎え満州を実質的に支配する関東軍に対しひとり馬占山のみが孤軍奮闘するが力及ばず。
    甘粕正彦、石原莞爾、川島芳子など満州を舞台に暗躍する役者達が続々登場。完結編が楽しみです。

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    2021年07月14日
  • 天子蒙塵 2

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    張作霖亡き後、息子の張学良は民国政府に服ろい、東三省(満州)には日本軍の後押しを受けて満州国が独立するが、ひとり馬占山のみが抗戦を貫く。
    溥儀は満州国執政に収まり婉容とともに関東軍の監視内に囚われた状況にあるが大清国の皇帝としての再興を目指す。
    そんな状況の中、春児、春雷、玲玲、文秀はそれぞれの立場で清国への忠義を尽くす。

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    2021年07月10日
  • 天子蒙塵 1

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    「蒼穹の昴」から続く浅田次郎中国歴史冒険シリーズの第5部。蒙塵とは塵を被ること。ここでは天子が行幸するとき本来は道を清めてから行くが、変事の際には頭から塵を被りながらバタバタと逃げ出すという意味。
    大清帝国のラストエンペラー愛新覚羅溥儀が紫禁城を追われ転々としながら日本軍の後押しで成立した満州国の執政に就くまでの裏側を溥儀の側室であった淑妃文繍へのインタビューという形で物語られる。
    既に無力となっている清国皇帝の生活ぶりや皇后婉容と側室の淑妃文繍とによる異様な夫婦(家族)生活の実態など現代のわれわれには理解しがたいことなども興味深い。
    溥儀のファミリー(皇后婉容と側室文繍)と大清帝国の行く末を

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    2021年07月07日
  • 珍妃の井戸

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    シリーズ番外編的な感じ。

    スタイルを変え、飽きさせない感じ。好みは分かれると思う。この井戸の実物をYouTubeで観てびっくり。

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    2021年07月03日
  • マンチュリアン・リポート

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    関東軍参謀による謀殺とされている張作霖爆殺事件の真相を探るため、天皇陛下より密命をくだされた軍人志津中尉からの報告書を読み進めていくスタイル。
    歴史の授業で習った微かな記憶はあるが、その経緯、中国内の軍閥の利害関係、日本軍との関わりなどある程度理解ができた。何より、爆殺の方法が多くの人間が想像していたイメージと全く違うことに新鮮な驚きを感じた。文庫本のカバーデザインに納得。

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    2021年07月02日
  • 中原の虹(4)

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    西太后から皇統を委ねられた宣統帝を廃し、勢いを増してきた革命派の孫文からも実験を奪い取り、中華帝国の皇帝と成り上がった袁世凱もこの国を征することはできなかった。

    それに対し東三省(満州)を完全に支配し北京政府からも一目置かれている張作霖は遂に山海関を越えて中原を目指す。

    結局、「蒼穹の昴」から続くこの壮大な物語は、中国大陸を支配した女真族(満州族)の太祖ヌルハチとダイシャンの悲願を乾隆帝、西太后を経由し張作霖まで受け継ぐ民族の魂を龍玉という形で追い求める冒険ストーリーなのかなと思う。
    教科書に出てくる人物や事件などをぼんやり思い出しながら、中国という国の歴史を改めて知る長編小説で非常に興味

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    2021年06月29日
  • 中原の虹(3)

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    西太后、光緒帝亡き後、一度は失脚した袁世凱が返り咲き、宣統帝よりの勅諚を受けて清国総理大臣につく。孫文を中心とする革命勢力と東三省を支配する張作霖の三つ巴のなかで愛新覚羅の末裔と大清帝国の行く末はどうなるのか。
    宗・元・金・明から続く中華大陸の異民族による支配の歴史は高校の世界史の授業を思い出させる内容で懐かしいが、時折り混ざる浅田次郎特有の幻想シーンなどはエンタメ要素が強すぎてややげんなり。

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    2021年06月25日
  • 中原の虹(2)

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    李鴻章亡き後、皇帝も西太后の力も衰えたこの国の支配を目論む袁世凱の前に立ちはだかり存在感を増してゆく張作霖将軍。
    一方、清国の命運を握る西太后と光緒帝は列強からの侵攻を食い止め国と民を守るため密かに心を通じ合い驚くべき決断をする。そして遂にラストエンペラー溥儀が時期皇帝として指名される!
    広大な国土の中で繰り広げられる異民族の支配が続く中国大陸の長い歴史のなかで、植民地支配の波に翻弄される清国(中国)とその為政者の深く重い歴史。
    高校で習った歴史の内容はすっかり忘れてしまったがこのシリーズであらためて勉強させてもらった。この先も楽しみ。

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    2021年06月21日
  • 一路 (下)

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    なぜだろ?緊迫感が無いまま、終わってた。最初から、どう考えても敵が勝つイメージが沸かず、帯にあるような一気読みとは、なりませぬ。

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    2021年06月16日
  • 中原の虹(1)

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    「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」と並行して物語は進む。舞台は満州に移り、匪賊張作霖が登場。日中戦争への足がかりが始まる。

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    2021年06月16日