浅田次郎のレビュー一覧
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普通の人々が気軽に外国へ行けるようになって四半世紀。こんなツアコンのドタバタ劇も当たり前の朝飯前。よーく解ろうものである。
文豪がふらんす物語を大上段に書き読者が雰囲気を味わい浸った時代があったのだよね。いやいや松本清張が「黒の回廊」(ヨーロッパツアーものミステリー)を書いたころ(1970年代)だってこんなに庶民が簡単に外国へ行きはしなかった。高根の花だった。いいなー!とミステリーに浸りつつ、行かれやしない旅行を一緒に楽しんだもの。と時代錯誤、思い出はこの辺でやめて。
浅田さんはこんな風のも書くのかと、王宮(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)のパロディとパリ観光案内っぽいのが面白かった。なぜかと -
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日中戦争を舞台としたミステリー。従軍作家として北京に滞在していた売れっ子推理作家に下されたのは万里の長城で起きた事件の調査。
関係者への聞き込みを進める際に、それぞれの軍関係者の一人称視点で語られる。事件の解き明かし自体は大したことはなく、事件の真相も安直すぎる。
ただし、大正の軍縮時代と昭和初期に入ってからの大陸での戦争遂行状態で兵役というものが全く異なっていたこと、それに伴って世代によって兵隊の資質が異なっていたことを知れたのは収穫。
また、士官学校出身の将校と、兵卒からのたたき上げの下士官の関係性を描いた作品は数あれど、最初の兵役満了後に一般社会人として生活をしたあと、予備役招集で -
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夢ネタ!イマイチ(笑)
そもそも、夢ネタ系は嫌いなのですが、本作は、夢そのものを語るというもの。
ストーリとしては、
ブラックの枕とホワイトの枕で見る夢が異なる設定。
エリート商社マンがスイス、パラオ、ジャイプール、北京、京都それぞれで見た夢を語ります。
見る夢は美しい夢、悪夢。
また、それぞれの地域で見る夢は、ラブロマンスであったり、インドの言い伝えであったり、戦争だったり..
そして、徐々に夢と現実の境があいまいになっていきます。
最後、京都のエピソードはミステリー感があって深かった..
しかし、やはり、全体的にはふわふわっとした内容で、登場人物たちの関係や事象の結果など、あいまい -
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正直いまいち(笑)
アメリカ人の青年を通しての日本文化論。
日本再発見小説という帯の触れ込みや、日本が好きになるという触れ込み、涙と感動の人間ドラマという帯のメッセージに対して、あまりにステレオタイプ+ユーモア的で、逆に日本をコケおろしているようにも感じられます。
ストーリとしては、
日本びいきの恋人ジェニファーから、結婚するなら、価値観を共有するために、日本へ一人旅をしてくるように言われます。パソコンもスマホも持たず、ラリーは一人、日本を旅することに。
彼の珍道中を通して、語られる日本
成田から、東京、京都、大阪、別府、釧路と3週間の旅です。
旅の所々でジェニファーに手紙を書くラリー
興 -
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エッセイ+時代小説といった形の短編集の6編
司馬遼太郎賞、中央公論文芸賞受賞作品
幕末の武士の悲哀が描かれています
■お腹召しませ
婿養子が公金を持ち出して失踪。
その責任を取って、妻子や周りから切腹を迫られる主人公。
その結末は?
■大手三之御門御与力様失踪事件之顛末
与力の一人が勤番中に姿を消す。
神隠しにあったのか?
その真相は?
■安藝守様御難事
藩主となって謎の稽古。
その稽古の意味も分からず、本番へ
その意味とは?
■女敵討
女房が不貞を働いていると聞いて、国元に戻り女房とその男を成敗することに。
国元に戻って、その二人の前でとった決断とは?
■江戸残念考
鳥羽伏見の戦い -
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1970年代の自衛隊の物語。
9編の短編連作集で、当時の自衛隊の若者たちの物語となっています。
戦闘シーンではなく、彼らの日ごろの生活が赤裸々に面白く、楽しく、哀しく語られています。
当時の自衛隊の世論での扱われ方がよくわかります。そして軍隊ではなく自衛隊であることの意味。
■若鷲の歌
幽霊化と思いきや、その正体は..
■小村二等兵の憂鬱
靴をなくしてしまった小村。その真相は
■バトル・ライン
先輩を殺そうと決意するも..
■門前金融
自衛隊員専門の金貸し
■入営
入営した新隊員の困惑
■シンデレラ・リバティ
外出時に会いに行った恋人、時間通りに戻れるか?
■脱柵者
自衛隊から脱走..
■越 -
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ネタバレ主人公はアメリカ人の青年で、結婚を申し込んだ彼女から、「日本を旅してきて」と言われる。彼の中には、日本びいきの彼女から吹き込まれた「素晴らしい国・日本」の印象と、日本と戦争をした退役軍人の祖父から聞かされ続けた「油断ならん国・日本」の印象が混在する。
彼女(わが心のジェニファー)を想いながら旅をする彼の、本音(心の中)と、建前(彼女への手紙の記述)のギャップが面白い。旅をしながらいろんな個性的な日本人と出会って、ちょっとロマンス(?)もあってこっけい。
最後には彼女の提案や、祖父の日本嫌いの裏に、いろんな思惑があったことが分かり、なかなか感動しました。 -
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「蒼穹の昴」から続く浅田次郎中国歴史冒険シリーズの第5部。蒙塵とは塵を被ること。ここでは天子が行幸するとき本来は道を清めてから行くが、変事の際には頭から塵を被りながらバタバタと逃げ出すという意味。
大清帝国のラストエンペラー愛新覚羅溥儀が紫禁城を追われ転々としながら日本軍の後押しで成立した満州国の執政に就くまでの裏側を溥儀の側室であった淑妃文繍へのインタビューという形で物語られる。
既に無力となっている清国皇帝の生活ぶりや皇后婉容と側室の淑妃文繍とによる異様な夫婦(家族)生活の実態など現代のわれわれには理解しがたいことなども興味深い。
溥儀のファミリー(皇后婉容と側室文繍)と大清帝国の行く末を -
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西太后から皇統を委ねられた宣統帝を廃し、勢いを増してきた革命派の孫文からも実験を奪い取り、中華帝国の皇帝と成り上がった袁世凱もこの国を征することはできなかった。
それに対し東三省(満州)を完全に支配し北京政府からも一目置かれている張作霖は遂に山海関を越えて中原を目指す。
結局、「蒼穹の昴」から続くこの壮大な物語は、中国大陸を支配した女真族(満州族)の太祖ヌルハチとダイシャンの悲願を乾隆帝、西太后を経由し張作霖まで受け継ぐ民族の魂を龍玉という形で追い求める冒険ストーリーなのかなと思う。
教科書に出てくる人物や事件などをぼんやり思い出しながら、中国という国の歴史を改めて知る長編小説で非常に興味 -
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李鴻章亡き後、皇帝も西太后の力も衰えたこの国の支配を目論む袁世凱の前に立ちはだかり存在感を増してゆく張作霖将軍。
一方、清国の命運を握る西太后と光緒帝は列強からの侵攻を食い止め国と民を守るため密かに心を通じ合い驚くべき決断をする。そして遂にラストエンペラー溥儀が時期皇帝として指名される!
広大な国土の中で繰り広げられる異民族の支配が続く中国大陸の長い歴史のなかで、植民地支配の波に翻弄される清国(中国)とその為政者の深く重い歴史。
高校で習った歴史の内容はすっかり忘れてしまったがこのシリーズであらためて勉強させてもらった。この先も楽しみ。